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がん治療に特化した患者さん教育が始動(リオルダンクリニック)

この記事の執筆者

ごきげんクリニック浜田山

ビタミンC点滴療法や栄養療法のメッカとも言えるリオルダンクリニック(アメリカ)へ研修のため留学。留学中、米国抗加齢医学会の専門医試験に最年少で合格。また米国で開催される国際学会に多数出席し、世界の機能 ... [続きを見る]

がんによる死亡率や再発のリスクを“劇的に”減らし、がんと宣告された後でも生き生きと暮らすことができる方法があるとしたら?

しかもそれが最新の医療技術や薬ではなく、自分でできてお金も大してかからず、辛い副作用もない。がんだけでなく糖尿病や心臓病など、他の慢性疾患の治療や予防にもなる。そんな夢のような方法があるとしたら、試してみたいという方も少なくないと思います。

今回から数回にかけてご紹介するのは、リオルダンクリニックで新しい高濃度ビタミンC点滴の研究の被検者になっていただいている患者さんに、がんを治す「スクール」として2週間かけて勉強していただいている内容です。

その内容は、以下の8つです。

(1)家族や友人、コミュニティとの関係、信頼、サポートの強化
(2)ストレス管理、解消
(3)質の良い睡眠
(4)運動不足の解消
(5)健康的な食事
(6)解毒
(7)サプリメント、高濃度ビタミンC点滴など、統合医療
(8)がんのメタボリックタイプに合わせた治療

幸いなことに、上記(1)から(8)のうち一つでも改善すると、がんによる様々なリスクを大幅に減らすことができますが、複数を改善することで相乗的な効果が期待できます。

今回はこれらを総合的に改善することがいかに大切かお話ししたいと思います。

生活改善とがんの関係

これらのような生活習慣の改善が健康に良いことは感覚的に理解できるとしても、“がんの生存率や再発率が劇的に良くなる”とはにわかに信じられない人が多いのではないでしょうか。「そんなことでがんが治ったら苦労しないよ…」と。

しかし、すでに科学的には明らかなのです。実際に、アメリカの癌学会や癌研究所では運動や食生活などのライフスタイルに対する指針を出しています。そして、そのような指針を実践する数が多ければ多い(良いライフスタイルを送れば送る)ほど、がんの発生率は減り生存率が増えることが多くの大規模研究の結果から示されています。

例えば、6万5000人以上の閉経後の女性を対象としたある研究では、生活を改善した数が多い人は少ない人に比べて、12.6年後のがんの発生率が17%、死亡率が20%も減ることが示されています。

また、ハーバード大学が行った同様の13万5000人を40年以上調査した研究では、良いライフスタイルは悪いライフスタイルに比べて、がんの発生率を41%、死亡率を約60%減らすと報告されています。これらのパーセンテージは驚異的な数字であるため、にわかには信じられない方も多いかもしれません。しかし、この類の研究は他にも数多く存在しており、それぞれの値は違うものの同様の内容となっています。

個別のがんでも同様の結果に

特定のがんに関しても同じです。乳がん2,3期の患者さんにライフスタイルの教育を行った研究では、何もしていないグループよりも11年後のがん死亡率が56%、再発のリスクが45%低く、再発した場合も生存期間の延長が認められました。

カリフォルニア大学の前立腺がんの研究でも、ライフスタイルの改善はPSA(前立腺特異抗原)の低下やがん細胞増殖の抑制に寄与し、後に手術やホルモン療法などの積極的な治療が必要になった割合も22%低下しました。

さらに5年後の追加調査では、ライフスタイルを改善しなかったグループは、がんを予防したり老化を遅らせることで知られている「テロメア」が短くなっていたのに対し、たった3ヶ月でもライフスタイルを改善したグループは、5年後になってもテロメアの長さが長くなっていました。他にも結腸直腸がんや頭頸部がんなど、多くのがんで驚くべき効果が報告されています。

生活習慣の改善が、がんに効果的な理由

なぜ、ただの“生活習慣の改善”でこれほどの効果が出るのか。理由は簡単です。世間では、がんに対して「不幸にも生まれつき遺伝子に変異があったため起こる」という誤解が蔓延していますが、遺伝的に起こるがんは全てのがんの5〜10%程度と言われています。その他の約9割のがんに関しては、私たちの日々の生活の中でできたものなのです。例えば、日々食べるジャンクフードや睡眠不足により遺伝子の発現が変化し(これを「ソーシャルゲノミクス」と言います)、それによってがんが発生します。

私たちの体の中で、日々どれだけのがん細胞が新しく生まれているかは誰にもわかりませんが、新たに生まれたがん細胞は悪いライフスタイルのマイナスの相乗効果によって、発見されるまで5〜40年ほどかけてゆっくりと成長していきます。

転移に関しても、一つの細胞の一つの遺伝子発現の変化から直線的に発生するわけではなく、複数の細胞の複数の遺伝子発現の変化から枝状に発生すると考えられています。つまり、生活習慣の改善によって、がんが新しくできないように、またはこれ以上成長しないように、あるいは転移を防ぐようにコントロールすることが可能なのです。こう考えると、生存率が伸びるのも当たり前に感じられるのではないでしょうか。

特定の習慣とがんとの因果関係

例えば、タバコは死亡率を70%増加させることが7,000以上の論文や研究で報告されていますが、肺がんと診断された後でもタバコをやめた患者さんは、やめなかった患者さんに比べて生存率が40%も改善したとするメタアナリシスは有名です。これは、タバコががんの発生だけでなく、がんの成長・転移にも関係していることを示す証拠になるでしょう。

先ほど出てきた「ソーシャルゲノミクス」の観点でも同じです。ストレスやうつなどががんから守る遺伝子を変化させてがんを発生させやすくする一方で、ヨガやストレス解消がこの遺伝子を守ることもわかっています。

タバコやストレスの他にも加工赤身肉・砂糖・肥満・運動不足など、がんとの因果関係が明白なものは山ほどあります。これらを極力控える、かつ上述のように良いライフスタイルを組み合わせて実践すればするほどがんによるリスクが低下することは、科学的に証明されています。

Anti-Cancer Living』という本

リオルダンクリニックで新しい高濃度ビタミンC点滴の研究の被検者になっていただいている患者さんに、がんを治す「スクール」として2週間かけて勉強していただく内容があります。それが以下の8つです。

(1)家族や友人、コミュニティとの関係、信頼、サポートの強化
(2)ストレス管理、解消
(3)質の良い睡眠
(4)運動不足の解消
(5)健康的な食事
(6)解毒
(7)サプリメント、高濃度ビタミンC点滴などの統合医療
(8)がんのメタボリックタイプに合わせた治療

実は、この中の⑴〜⑹の生活習慣の改善と解毒に関しては、2018年に出版された『Anti-Cancer Living』(図)という本がベースになっています。

<図>『Anticancer Living』

この本は、アメリカのがん治療の中枢とも言えるMDアンダーソンがんセンターの統合医療プログラムの教授によって書かれており、生活改善のがんに与える影響について、膨大な医療論文を元に科学的に説明されています。

著者の先生は(1)〜(6)を行うことでがんの再発を50%減らせると仰っていますが、ロナルド・ハニハイキ先生(リオルダンクリニック所長)はさらに「(7) サプリメント、高濃度ビタミンC点滴などの統合医療」と「(8)がんのメタボリックタイプに合わせた治療」を加えることで、残りの50%もコントロールできるのではないかと考えています。

がんのメタボリックフェノタイプ

前述した(1)〜(8)の項目のうち「(8) がんのメタボリックタイプに合わせた治療」はがんのメタボリックフェノタイプに関する項目で、近年注目を集めているスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)やメトホルミン(糖尿病治療薬)などの一般薬剤をごく少量、がんへ適応外使用する方法です。

がんの種類による代謝(糖質・アミノ酸・脂肪のうち、どれを栄養として良く利用するか)のタイプに分けて、その代謝経路をブロックし、がんを兵糧攻めにするのでよく効きます。

がんが糖質をよく食べることはご存知の方も多いと思いますが、がんの種類によって利用するものも異なります。例えば、乳がんや前立腺がんは脂肪、リンパ腫はグルタミンも好きで栄養として利用するので、それらの対策も行います。

もちろん、これらの薬剤をサプリメントで代用することもできます。ご自身のがんのメタボリックフェノタイプを調べて治療に生かすことも、今後の予後の改善に役立つのではないかと考えられます。

ライフスタイルの改善は「積極的な経過観察」

ライフスタイル要因はプラスにもマイナスにも作用し合います。例えば慢性的なストレス状態では、健康的な食品による効果を低下させるだけでなく、食品の好みまで変化させる可能性があります。

その結果、良くない食品を選びがちになったり、運動へのモチベーションを低下させたりします。逆に運動をすることでストレスが減り、栄養の代謝や睡眠の質を改善することができます。まずはできることから、そして、できることならできるだけたくさんの良いライフスタイルを取り入れてみてください。

自分でがんの進行をコントロールし、死亡率や再発率を大きく減らすことができるとしたら、そのために全力を尽くさない理由はあるでしょうか。もちろん、長年続けてきたライフスタイルを変えることはとても難しいことですが、がんは人生を大きく変え、多くを消耗してしまいます。

ガイドラインや日本の医学会が追いつくのを待っていてはいけません。ご自身の選択で、ご自身の人生をコントロールしていきませんか?






※本記事は『統合医療でがんに克つVOL.133(2019年7月号)』にて掲載された『リオルダンクリニック通信2』を許可を得た上で一部調整したものです。

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