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リオルダンクリニック研究所の開発研究-セイヨウヒルガオの葉抽出液に強力な血管新生阻害作用-

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学医学部内科助教授を経て、2000年〜2008年同大学保健学部救 ... [続きを見る]

カンザス州ウイチタ市のリオルダンクリニックではがん治療を中心に様々な基礎研究や開発が行われています。なかでも、この研究所で開発・製品化されたセイヨウヒルガオの葉の抽出エキスは強力な新生血管阻害作用があり、がんの補助療法として臨床に使われています。セイヨウヒルガオ葉抽出エキスの興味深い物語を紹介しましょう。セイヨウヒルガオはヨーロッパを原産とし、白〜淡いピンクの花を咲かせます。世界中に分布し、日本でも観賞用植物として輸入されましたが繁殖力が強く、要注意外来生物に指定されています。

1年で卵巣がんが消えた女性の物語

カンザス市に住んでいる、ある一人の女性が卵巣がんのステージ3Cと診断されました。がん専門医の主治医からはこのままでは生きられる見込みはないので、化学療法を受けるようにと勧められました。この女性の母親は7年前に同じ卵巣がんで化学療法を受け、副作用にとても苦しんで亡くなっていました。彼女は母親の最後を思い出し、化学療法を拒否することに決めました。

女性はオクラホマのインディアンのシャーマン(部族の宗教的指導者で祈りや病気の治療も行う)を訪ねました。彼女はシャーマンから、野生の植物から採取したいというチンキエキスを毎日飲むようにと渡されました。このエキスを言われた通り毎日飲み続けました。すると、彼女のさまざまな症状がまさに溶けていくように良くなってきたのです。エキスがなくなるとシャーマンのところにもらいに行きました。何度か通ううちに、シャーマンからそのエキスがセイヨウヒルガオ[写真1]の葉から採取したものだと教えてもらいました。そして1年後、彼女はがんがすべて消えたと主治医から告げられました。彼女はその後、何事もなく生活しています。彼女は自分のがんが消えたことを多くの医者に話しましたが、まったく信じてもらえませんでした。

[写真1]セイヨウヒルガオ(Wikipediaより転載)

リオルダンクリニックで研究を開始

ある日、彼女はリオルダンクリニックに現れました。そして自分の体の中で起きたことをヒュー・リオルダン博士に話しました。リオルダン博士はご存知の通り高濃度ビタミンC点滴療法によるがん治療で知られています。リオルダン博士は、セイヨウヒルガオのエキスががん細胞になんらかの働きをしたと考え、すぐに息子のニール・リオルダン博士(以下ニール博士)[写真2]にセイヨウヒルガオの葉エキスを調べさせることにしました。

[写真2]ニール・リオルダン博士

ニール博士はこのエキスが弱いながらもがん細胞を殺す作用と免疫力を高める作用があることをつきとめました。しかし、これだけでは女性の卵巣がんが消滅することはありえません。この答えが見つかるまで4年の歳月が過ぎました。それはあるときに突然わかりました。セイヨウヒルガオの花はとても綺麗で可愛らしいのですが、一方農家や園芸家にはとても嫌がれています。その理由こそが、まさにがん治療のブレイクスルーだったのです。

セイヨウヒルガオのエキスは、がんの血管新生を抑制

セイヨウヒルガオは群生をなしてどんどん増えていきます。そして周囲の他の植物を排除していくのです。その機序は自ら周囲にさまざまな物質を播種し、他の植物の成長を阻害することで排除しています。ニール博士が調べると、セイヨウヒルガオの葉のエキスの中にプロテオグリカン(多糖類タンパク質)の一種が含まれていました。

がん細胞が集まって腫瘍塊になると、自ら生存するために化学物質を放出、新生血管を宿主に作らせます。がんは新生血管から血液を集めて栄養を取り入れ、急速に成長するのです。セイヨウヒルガオの葉エキスに含まれているプロテオグリカンは、血管の新生を抑える作用があったのでした。ニール博士は実験動物に腫瘍を移植し、このエキスの効果を調べたところ、腫瘍の成長を77〜99%も抑えました。有精卵を使った血管新生の実験でも、腫瘍細胞は周囲に血管新生を起こしますが[写真3(左)]、セイヨウヒルガオの葉エキスを加えると血管新生が抑制されます[写真3(右)]。

[写真3]有精卵によるがん細胞の血管新生実験

(左)がん細胞の周囲に多数の新生血管を形成

(右)セイヨウヒルガオの葉エキスで血管新生を抑制

さらに患者での投与で、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を低下させることが明らかになり、これが血管新生を抑制していると考えられています。

サプリメントとして市場に

ニール博士はその後3年かけ、セイヨウヒルガオの葉エキスを分離抽出する技術の試行錯誤を重ね、ついにがんの補助サプリメントとして市場に出すことに成功しました。ニール博士はAidan Products社を設立、このサプリメントを「Cスタチン(C-Statin)」と名付け、医師向けに販売しています[写真4]。また、同じ製品を「バスクキュスタチン(VascuStatin)」という商品名でAllergy Research社からも販売しています。

[写真4]C−スタチン(Aidan 社)とバスキュスタチン(Allergy Research社)

投与禁忌

このサプリメントは血管新生を抑えるため、心筋梗塞、狭心症、閉塞性動脈硬化症など新生血管による血流のバイパスが必要な患者には禁忌となります。

まとめ

私は子宮体がんで肺と肝転移の女性にC-スタチンを投与した経験があります。それまでに他院で何度か凍結法で転移巣を治療していたのですが、高濃度ビタミンC点滴療法にC-スタチンを併用投与しました。その後は10年間、現在も全く再発せずに経過しています。私は明らかにこの併用療法が奏功したと考えています。

C−スタチンは循環腫瘍細胞検査(CTC)で検出されたがん細胞の薬物効果のリストにも掲載されています。多臓器転移のある患者さんにチャレンジしてみたいサプリメントです。

参考

Aidan 社C-Statinのウエブサイト:https://www.aidanproducts.com/product/c-statin/

Allergy Research 社のVascustatin:http://www.allergyresearchgroup.com/vascustatin-formula-120-caps

 

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