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整形外科領域での栄養療法~骨粗鬆症に対する栄養療法~

この記事の執筆者

医療法人社団二柚会 大友外科整形外科

皆様、『骨粗鬆症』をどのようにお考えでしょうか。日本整形外科学会によると、『骨粗鬆症とは、骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。』と説明されています。そうです。骨粗鬆症は病気であり、この病気になると骨折が体のあちらこちらで繰り返し起こるようになってしまうのです。特に大腿骨頚部骨折は、別名“Hip Attack”、“骨卒中”とも呼ばれています。なぜかというと、この骨折を起こした人の1年後に起こることがかなり深刻な結末だからです。データでは、60%の人は介護が必要になり、50%の人は既に他の骨折を起こしており、40%の人が一人で歩けません。さらに、33%の人が介護施設に入所しており、10%の人は亡くなっています。また、骨粗鬆症の恐ろしさは、骨折してから初めて気付くという点にあります。整形外科医である私は、骨粗鬆症は予防が大切な病気であり、また必ず予防できる病気だと考えています。今回は、予防という観点から、骨粗鬆症の栄養療法について述べてみたいと思います。

なぜ栄養療法が必要なのか

そもそも栄養療法とは何かご存知でしょうか。それは、私たちの身体(脳)にある分子(栄養素)を最適な量を用いることによって、組織(臓器)や細胞の機能を向上させ、病態を改善させる治療法です。私たちの骨は立派な組織です。骨は神経や血管に富む骨膜に囲まれています。コラーゲンで土台を作ってミネラルを蓄えている骨には骨細胞、破骨細胞、骨芽細胞などたくさんの細胞が存在し、骨髄では血液を作っています。骨という組織を建物で例えるとメンテナンス付きの鉄筋コンクリートです。その構成成分は、わかりやすくすると鉄筋部分がコラーゲン、コンクリート部分がカルシウムをはじめとするミネラルになります。立派に見える建物も、鉄骨部分が錆びていれば強度を失い、地震で倒壊してしまうように、骨もコラーゲンが劣化してしまうと、見かけは丈夫そうでも転倒により簡単に骨折してしまうようになります。最近、骨強度ということが言われはじめています。骨強度=骨密度+骨質と表すことができます。骨密度にはミネラル、骨質にはコラーゲンが関わっています。骨密度が高くても、骨質が脆いと骨強度は下がって骨折につながってしまいます。この骨質の低下が骨粗鬆症による骨折を引き起こす原因であることもわかってきています。骨質を高めることは、骨粗鬆症を予防することにつながってきます。そのために必要なのが、栄養療法ということになります。

25OHビタミンDの知識の重要性

骨粗鬆症の栄養療法を学ぶために必要な知識がいくつかあります。まず知っておかなければならないのが、25OHビタミンDの知識です。25OHビタミンDは骨粗鬆の方に限らず、ほぼ全ての年代の方が不足しています。整形外科を受診して骨粗鬆症の血液検査を受けるとその値が低いことを指摘されます。保険治療では、保険で認められた“お薬”としてのビタミンDが処方されます。化学的に合成された“活性型ビタミン製剤”という“お薬”です。ヒトが必要としているのは、“お薬”ではなく、本来自然に存在する“栄養である25OHビタミンD”なのです。25OHビタミンDは骨の中にカルシウムを運んでくれるだけでなく、腸や粘膜や免疫に関わり、運動能力もあげて転倒しにくくしてくれることがわかっています。お魚に多く含まれていますが、苦手な方はサプリメントで効果的に蓄えることができます。

コラーゲンの生合成の知識の重要性

次に必要な知識は、コラーゲンの生合成です。コラーゲンはタンパク質の一種です。タンパク質は、たくさんのアミノ酸がつながった鎖のようなものです。このアミノ酸のつながり方で出来上がるタンパク質の性質が決まります。コラーゲンのアミノ酸のつながり方は特徴的です。グリシン-X-Y-グリシン-X-Y-グリシン-X-Y-となり、コラーゲンの1/3はグリシンというアミノ酸で構成されています。Xの位置、Yの位置には様々なアミノ酸がくっ付きます。生まれたてのコラーゲンは一本の糸のようなものです。一本の糸では弱いので、骨のように丈夫な構造になるために、人体はそれを3本の撚り糸のように束ねて強い繊維にします。この時に必要になるのが、鉄とビタミンCになります。コラーゲン合成にはアミノ酸、鉄、ビタミンCが必要なのです。コラーゲンは骨の主成分だけでなく、皮膚、血管、歯茎、腱、靱帯、軟骨にも必要なので、体を支えるあらゆる部分に必要なものになります。タンパク質(アミノ酸)、鉄、ビタミンCが不足していると、コラーゲン合成がうまくできなくなるのです。つまり、これらが骨粗鬆症の予防をするために必要な栄養素であると言えます。

糖質はコラーゲンを劣化させる

骨質が弱くなるのは栄養不足だけではありません。過剰な栄養も骨質を悪くしてしまいます。コラーゲンは、繊維同士が橋渡しをされてさらに束ねられ強度を上げています。たくさんのロープを様々な場所で鉄製のS字フックで繋いだのもがその状態だと思ってください。しかし、鉄製のS字フックが錆びてしまったらどうなるでしょうか。S字フックが壊れてロープが束ねられなくなって、バラバラになってしまいます。強度が落ちてしまうのです。実はコラーゲンを束ねるフックを錆びさせて劣化させるものがあります。それが糖なのです。糖が豊富な甘いものを食べると血糖値が急上昇します。血糖値がある値を超えていくと、糖がタンパク質にくっついてその性質を変えてしまうことがわかっています。それが糖化反応(グリケーション)と呼ばれる現象です。お腹が空いてしまい、とりあえずチョコレートやジュースを飲むなどの習慣が、急な高血糖状態を作ってしまい、体の中で糖化反応を起こしてしまい、知らないうちにコラーゲンを劣化させているということになります。さあ、考えてみましょう。糖質が大好きな方が、たんぱく質、鉄、ビタミンCが豊富なものを食べているでしょうか。つまり、そのような方はコラーゲンを劣化させるばかりで新しいコラーゲンも作っておらず、わざわざ骨粗鬆症になるための食事をしているということになります。

ビタミンB群の重要性

もう一つ問題があります。糖質の多い食事をしているとビタミンB群が減って、ホモシステインという悪玉アミノ酸が増えてくるというものです。ホモシステインは血管障害も起こすので心筋梗塞、脳梗塞の危険因子であることが知られていますが、認知症、骨粗鬆症の人でも高くなることが知られています。2022年の厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると介護・支援が必要になった主な原因は、1位が認知症、2位が脳血管障害、3位が骨折、転倒となっており、きっとホモシステインの血中濃度も高いのではないかと推測されます。ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸をサプリメントで摂取することでホモシステインの血中濃度を効果的に下げることができます。これも有効な栄養療法になります。

有害金属の問題

更にあまり知られていないものとして、有害金属の問題があります。コラーゲンを束ねて強くするためにケイ素が必要なのですが、それが鉛に置き換わってしまうと骨の中に鉛が蓄積することになります。それがどうして問題なのかというと、骨粗鬆症になったときに骨吸収が進むと、骨から鉛がたくさん出てきてしまい、体の中の代謝に悪影響を及ぼしている可能性があるからです。自検例ですが50代の閉経後の女性と20代の閉経前の女性にCa-EDTAによるキレーションを行い、1時間後の尿中鉛濃度を測定したところ、骨吸収の進んでいる閉経後女性は閉経前女性の4.6倍も鉛が検出されたのを確認しています。ヒトは有害金属を捉えてくれるメタロチオネインというものを持っています。それは亜鉛を摂取することで増えてくることが知られています。骨に有害金属である鉛が取り込まれる前に、それを取り除くためにサプリメントで亜鉛を補っていくのも栄養療法の一つになります。

おわりに

最後に私のクリニックの患者さんのお話をしたいと思います。74歳の女性ですが、2024年12月にD E X Aを使って骨密度を測定したらY A M(若い人と比べてどれくらいの骨密度があるかを見るもの)で大腿骨が79%、腰椎が81%でした。海外に住んでいた娘さんが食事に関しての知識が豊富で、食品添加物は避けて、高タンパク質食、低糖質食、良質な脂質を摂取するなどの食生活を長年に渡って実践している方でした。初診時採血で、食事だけでヒトはここまで良好なデータになるのかと思ったほどの結果でした。骨密度は悪くはないのですが、この患者さんは運動習慣がありませんでした。骨粗鬆症の治療には実は運動も大切なのです。私のクリニックには、加速度トレーニングができる機器を備えており、この患者さんにも週に3回のトレーニングをしてもらいました。6ヶ月後に骨密度を測定したら、整形外科医の私も今まで見たことがない素晴らしい結果でした。Y A Mで大腿骨が94%、腰椎が92%となっており、運動前と比較すると骨密度が大腿骨で15%、腰椎で11%も上昇していたのです。骨粗鬆症の“お薬”による治療では、せいぜい3〜5%の骨密度上昇ですから、このかたの上昇率はどれほどすごいかお分かりでしょう。骨粗鬆症に対する加速度トレーニングの運動療法は、栄養療法と併用することで強力な骨粗鬆症の予防の手段となる可能性があります。

骨粗鬆症の予防は栄養療法(食事管理、栄養補給)だけでなく、加速度トレーニングなどの有効な持続できる運動を一緒に行うことが大切だと理解していただけたと思います。今から食べるものを考えて、組織としての骨を健康に保つようにすれば、骨粗鬆症の予防ができると思います。皆さんも、今日から骨活を始めてみませんか。

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