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医師と患者の理想的な関係と、私が目指す「医師像」

この記事の執筆者

ごきげんクリニック浜田山

ビタミンC点滴療法や栄養療法のメッカとも言えるリオルダンクリニック(アメリカ)へ研修のため留学。留学中、米国抗加齢医学会の専門医試験に最年少で合格。また米国で開催される国際学会に多数出席し、世界の機能 ... [続きを見る]

今回はいつもと少し毛色を変え、リオルダンクリニックで出会った印象的な患者さんや国外で出会った先生方の話も交えて、私が尊敬する「理想の患者像・医師像」についてお話ししたいと思います。

リオルダンクリニック の「8つの信条」

リオルダンクリニック には8つの美しい信条があり(図1)、その一番始めが ‘Empowering ourselves as co-learner’  です。’Empower’ の意味を辞書で引いてみると「権限を与える・力を与える」となり、動詞の末尾に ingがついているので名詞にします。

’ourselves’ は「私たち自身」、 ’co-learner’ の ‘co’ は「共同・共通」、’learner’ は「学ぶ人」なので、直訳すると「私たち自身に共同学習者として力を与えること」になります。

<図1>リオルダンクリニック の8つの信条


さて、ここでの“私たち自身”は誰を指すのかですが、日本人的な感覚では「クリニックの信条なら、そこで働くスタッフを指すのでは?」と思いそうなところです。しかし、リオルダンクリニック では患者さんのことも、医師のことも ‘co-learner’ と呼びます。

つまり、’ourselves’にはスタッフだけではなく患者さんも含まれているのです。

医師と患者の理想的な関係

ここで私は、理想像(あるいは「あるべき姿」とでも言うのでしょうか)としては、実は患者や医師といった境界・区別は大してなく、その患者さんが健康上の問題を解決するサポートを行うチームメイトが医師であるという、また、医師と患者の間に上下関係はなく患者さんが主役であるという、昔から言われていたことがようやく腑に落ちた気がしました。

もちろん、医師は医学部での医学教育を受け、その後の臨床経験を積んでおりますので、患者さんよりも広い範囲の知識を持っているかもしれません。ただ、いくら医師とはいえ、何でも知っている完璧な人間ではありませんし、その患者さんに対してどれだけ有用な知識を発揮できるかは、ケースバイケースです。

治療が上手くいく患者さんに共通する「意識」

リオルダンクリニックで出会った患者さんの中には、ご自身に関係する領域について、医師を凌ぐほどの知識をお持ちの方もたくさんいらっしゃいました。そして、何よりご自身で情報を集める努力をされた患者さんの方が(もちろん一般的にですが)、治療が上手くいっていたように見受けられます。

その方が知っている情報量もそうですが、治療成功の一番の鍵はその方自身が積極的に治療に関わっているかどうかかと思われます。

現代では、関連書籍・YouTube・ウェブサイトなど、情報を得ようと思えばいくらでも集められますし、Facebookのグループなどで同じ悩みを持つ患者さんと情報共有したり、励まし合ったりすることもできます。

例えばリオルダンクリニックだけでなく、スイスのクリニックにいらしていた方でも、中国やインド・アメリカなど世界中から家族みんなで数週間にわたり滞在されていたり、リオルダンクリニック来院前にはご自身で調べて「メキシコまでがん治療に行ってきました」というような、本当にびっくりするほどの行動力をお持ちの患者さんが多いなと感じました。

生活習慣を変える上で、ご家族の理解が重要になることも皆さんよく理解しておられ、ご家族全員で受診される患者さんの多さも印象的でした。

海外で出会った優秀な先生方のお人柄

アメリカにいた時、多くの先生とお会いする機会に恵まれましたが、優秀で実力がある先生ほど行動力があり積極的な先生が多いと感じました。

アメリカの様々な学会でもスイスのセミナーでも、アメリカ、ヨーロッパ全土はもちろん、中国・インド・タイ・韓国・中東など世界各国からお越しの先生方が、ご自身の診療で忙しいはずなのにも関わらず、熱心に勉強されていました。

また、私のような若輩の医師の疑問にも真摯に答えて下さいました。それから例えば、患者さんに新しいデバイスや治療法を教えてもらった時、オープンマインドで検討されている場面を何度も目の当たりにしました。とりわけ新しい検査などに関しては、患者さんの方がよく知っていることは決して珍しいことではありません。

そして新しいサプリメントや点滴などは、まずはご自分で試されます。もちろん身体の状態が違うため、先生が試したからといって患者さんが良くなるかどうかはわかりません。しかしながら治療を受けられる患者さんの気持ちがわかったり、サプリメントの飲みにくさ、生活習慣を変える難しさなどを知っておくことは、患者さんと治療のご相談をされる際、非常に役に立つものです。

コロナウイルスの流行で明らかになったこと

少し話は逸れますが、新興感染症・COVID-19の未曾有の流行で、今まさに医師の真価が問われているように感じてなりません。

医師の中にも、既存の組織や治療・しがらみなどに囚われ、患者さんを助けるよりも自分の保身に徹する医師と、標準治療にないものでも効果があるなら積極的に活用し、1人でも多くの患者さんを助けようと、自分の周りに留まらず世界で情報をシェアする医師がいます。

自分が憧れるのはもちろん後者ですが、いざ情報発信など挑戦してみようと思っても、なかなか上手くいきません。自分のプライドを守ろうとする多くの医師が、必死になってあからさまに邪魔をしてくるのです。

同じ医療者として悪く言いたくはありませんが、当初は正直驚きました。いったい世界中でどれだけの患者さんが犠牲になれば目を覚ますのか、いつになったら患者さんを本気で助けたいという気になって可能性を探り始めるのか。

一方で、そのような先生の大切な方(例えばご両親やお子さん)が感染したとしても、現状のまま保険診療という枠組みの中でしか診療できない医師もいるのだろうかと思うと、何とも虚しい気持ちになります。

ただ、どんなに妨害や誹謗中傷されたところで、私には「あるべき姿」を体現して示してくださる憧れの医師が世界中にいらっしゃいます。その偉大な背中を一生懸命、自分なりに追いかけることしかできませんが、切磋琢磨する仲間も、一緒に治療をがんばって下さる患者さんもいるので、少なくとも孤独ではありません。

 ‘co-learner’として目標を見失わないよう、患者さんと共により良い健康を日々追求していくしかないと思っております。





本記事は『統合医療でがんに克つVOL.143(2020年5月号)』にて掲載された「リオルダンクリニック通信12」を許可を得た上で一部調整したものです。

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