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慢性疲労のための食事療法とサプリメントの使い方

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育 ... [続きを見る]

国際オーソモレキュラー医学会公式教育セミナーが初めて東京で開催された際に、講師の一人、カナダのアイリーン・バーフォード=メイソン先生が「慢性疲労のための食事療法とサプリメントの使い方」について講演しました。アイリーン・バーフォード=メイソン先生は元トロント大学医学部病理学講師、現在はトロント総合病院コンナッハ頭頸かん研究所部長です。免疫学、細胞生物学に造詣が深く、複雑な栄養学的研究をエビデンスに基づいてわかりやすく解説することで定評があります。

女史の最新著書「Eat well, Age better (賢く食べて、良い歳を重ねる)」はカナダで健康書のベストセラーになり、「慢性疲労のための食事療法とサプリメントの使い方」はその中の1章に取り上げられています。

慢性疲労とビタミン・ミネラルのアンバランス

ここで述べる慢性疲労はいわゆる特殊な免疫不全が関わっている慢性疲労症候群ではなく、一般的な持続性の全身疲労のことです。すなわち、慢性的な疲労感により、肉体または頭脳労働能力の低下、落ち込み、倦怠感、意欲の低下、時に苛立ちを伴います。ひどい場合は仕事、家庭あるいは社会生活に支障を来たします。

膠原病や貧血などの医学的原因が除外される場合、このような持続的な疲労の原因は食事や栄養のアンバランスによる可能性が考えられます。なかでもビタミンB群、ビタミンC、マグネシウム、チロシンの欠乏による疲労が多くを占めます。

ビタミンB群

水溶性のビタミンB群は細胞の代謝で重要な補酵素の働きをし、その不足は疲労の原因となります。運動、加工食品の摂取、糖分/澱粉の多い食事はB群の不足をおこします。B群は欠乏症状が出る前の軽度の不足の段階から疲労感を訴えます。

見逃せないのは薬剤によって引き起こされるB群の欠乏です。代表的な例として、避妊薬はビタミンB2、B、B12、葉酸を、H受容体拮抗薬はB12、葉酸を、プロトンポンプ阻害薬はB12の欠乏を引き起こします。これらの薬剤投与中に疲労感を訴えた場合はB群の投与だけで改善します。

フルタイム勤務の男性215例を対象にした研究では、高用量ビタミンB群、ビタミンCおよびミネラルを投与したところ、主観的気分、ストレスの認識、身体的活力、激しい精神的処理における認識能力の改善が見られています。

疲労の改善や心身能力レベルの向上のために、ビタミンB群はまず投与してみる第1選択となります。各ビタミンB群を最低25m含むマルチミネラル・ビタミンのサプリメントとして摂取するのが効果的です。

ビタミンCと疲労

酸化ストレスの増加と疲労とは深い関係にあります。そしてビタミンCは酸化ストレスを減らし、疲労を改善します。韓国の研究グループが、ビタミンCの疲労に及ぼす効果を検討しています。会社員114人にビタミンC10gを静脈内に単回投与したところ、ベースラインにおけるビタミンC濃度の低い群において投与後の疲労および酸化的ストレスが減少、一方で投与前のビタミンC濃度が高い群では、効果が認められていません。

ビタミンCをサプリメントとして摂取する場合、消化管でゆっくりと吸収する徐放性製剤が推奨されます。徐放性製剤の場合、1回1g以上を1日2回摂取します。

マグネシウム欠乏と疲労

マグネシウムは体内でタンパク質合成および細胞膜構築、神経伝導、ホルモンおよび神経伝達物質の合成・結合、全てのエネルギー代謝(ATPは主にMg-ATPとして細胞に存在)、筋収縮後の弛緩など多岐の代謝・機能に関わっています。このため、マグネシウムの欠乏は持続的な疲労を誘発します。

マグネシウムの欠乏は過剰なアルコール、食物脂肪、食塩とリン酸 (ソーダ)、さらに多量の発汗、激しい運動、更年期、長期にわたる強いストレス、月経過多、利尿薬の使用で引き起こされます。また、身体的ストレス(痛み、妊娠、睡眠不足など)、医学的ストレス(心的外傷、熱傷、感染、外科手術、薬剤、放射線など)、環境ストレス(騒音、公害、暑さ、寒さ、アレルゲンへの曝露)、感情的ストレス(興奮、試験のストレス、不安、うつ病など)でも起こします。

マグネシウムの欠乏は血液検査では診断が難しいとされています。これは体内のマグネシウムの99%が組織内に蓄積され、血清中マグネシウム濃度では正確に欠乏を判定できないからです。なお、利尿剤およびプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用している場合は、マグネシウム欠乏の影響が増大するので注意が必要です。

マグネシウム欠乏は以下の症状から判定します。

(1)平滑筋のマグネシウム欠乏症状

   息切れ、運動後の喘鳴、血管性頭痛、頻尿、便秘

(2)骨格筋のマグネシウム欠乏症状

   足の痙攣、筋肉の緊張、線維束性攣縮、筋肉痛、むずむず症候群

(3)心臓血管のマグネシウム欠乏症状

   不整脈、動悸、血圧上昇

高齢者では酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムは確実に吸収されない。クエン酸マグネシウムは良く吸収されるが、急速に排せつされてしまう。最も吸収・保持に適した形態はタンパク結合型のグリシン酸マグネシウムです。

夜の就寝前に、グリシン酸マグネシウム100 mgで服用を開始、1日2~3回の軟便がみられるまで3日ごとに用量を増量します。必要により昼に50 mgを1〜2回追加します。

チロシンと疲労

チロシンはアミノ酸で魚、鶏肉、肉などのタンパク質に富む食品に多く含まれています。チロシンはドーパミンの前駆体 (構成単位)で、ドーパミンは、アドレナリン、ノルアドレナリンへと代謝されるチロシンは必須アミノ酸ではないが、ストレス下においては条件的必須アミノ酸と位置付けられている。

ドーパミンは注意力/集中力を高める働きがあり、知覚情報を脳へと伝えます。また、自発行動およびエネルギー消費を調節します。理想的には、ドーパミンレベルは一日の勤務時間中に高い方が良いとされています。そして、ドーパミンレベルが低い場合、うつ病患者において倦怠感および意欲の欠如が見られることがあります。

チロシンの摂取により作業記憶や情報処理の正確さを改善します。チロシンの欠乏はストレス、不安、気分低下および能力低下に繋がる場合があり、チロシン補充は、脳のドーパミンおよびノルアドレナリンを増やすことで、これらの欠乏症状を改善します。

チロシンサプリメントによるチロシン補充は、長期に渡る肉体的または精神的なストレス下において、精神集中、明晰さ、スタミナを増強させ、ストレスによる血圧上昇を抑えます。注意すべきことは甲状腺ホルモン補充療法中には甲状腺機能の検査を定期的に行う。また、メラノーマの既往がある患者には使用しない。

チロシンサプリメントは必ず空腹時に服用します。起床時に1500~2000 mgを服用し、服用後30分間は食事を摂らないようにします。午後の中頃に追加服用(1000~1500 mg)してもよいが、食後2時間経過していることが必要です。

ストレスのかかる出来事の前、例えば競技大会(ゴルフ、テニス、自転車レース等)、試験(特に口頭試験)、発表前に1000~1500 mg を服用するのが効果的です。

おわりに

アイリーン・バーフォード=メイソン先生の講義は理論的であり、かつ実践的でした。慢性疲労は日常によく遭遇あるいは自分自身が経験する症状です。私も患者や自分自身に女史の方法を試みてみましたが、実に効果的でした。「疲労」を栄養バランスの障害と捉えること、すなわち私たちの視点を変えることで新しい展開が生まれます。

<写真>アイリーン・バーフォード=メイソン先生

柳澤 厚生 (ヤナギサワ アツオ)先生の関連動画

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