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食事とライフスタイルで将来のアルツハイマー病を予防:英国から世界に発信する国際プロジェクトがスタート

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育 ... [続きを見る]

私の友人で著名な栄養学者であるイギリスのパトリック・ホルフォード博士からメールが届きました。その内容は「アルツハイマー病の予防を啓蒙する新しい国際的キャンペーンをスタートするので、日本オーソモレキュラー医学会もこの国際的プロジェクトに参加をしませんか」というものでした。

ホルホード博士は2013年に国際オーソモレキュラー医学会の名誉の殿堂入りをし、今回のコロナウイルス感染では「新型コロナにビタミンCを」(Vitamin C for COVID)という国際キャンペーンを立ち上げています。

アルツハイマー病は予防できる

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)は認知症の3分の2を占めます。記憶や思考能力がゆっくりと障害され、最後には単純な作業もできなくなります。そして、アルツハイマー病を発症すると、患者と家族に酷い苦しみを与え、さらに膨大な医療費が費やされます。現在のところアルツハイマー病の有効な治療薬はありません。そもそもアルツハイマー病の中で遺伝子によって引き起こされる例は1%に過ぎず、殆どのアルツハイマー病は予防が可能であることがこれまでの研究で明らかになっています。

ホルホード博士(写真1)が国際広報ディレクターを務めているこのプロジェクトは、非営利組織であるFood for the Brain Foundation「脳のための食」財団が主体となっています。世界のアルツハイマー病と栄養療法の研究者12人が一同に集まり、クスリではなく、ライフスタイルでアルツハイマー病を予防するプログラムを提唱したのです。

<写真1>プロジェクトの国際広報ディレクターを務めるパトリック・ホルフォード博士。2013年国際オーソモレキュラー医学会の名誉の殿堂入り。

この国際チームを率いているのがオックスフォード大学薬学部名誉教授のデーヴィッド・スミス博士です(写真2)。

<写真2>オックスフォード大学薬学部名誉教授のデーヴィッド・スミス博士。プロジェクトの科学諮問委員会のトップを務める。2022年国際オーソモレキュラー医学会の名誉の殿堂入り。

スミス教授は1998年に血漿ホモシステインの上昇とビタミンB群(葉酸、ビタミンB12、およびビタミンB6)の血中濃度の低下が、病理学的に確認されたアルツハイマー病および脳血管性認知症を発生させる重要な危険因子であることを発見しました。これは、血漿ホモシステイン濃度を低下させる高用量のビタミンB群(葉酸、ビタミンB6およびB12)をサプリメントとして2年間投与した無作為化二重盲検プラセボ対照試験により、認知症の予測因子である高齢被験者の脳萎縮率が遅くなるという発見に繋がります。

この研究では高用量のビタミンB群の投与により軽度認知障害のある高齢者の脳萎縮の加速率を53%以上も大幅に減らすことがわかったのです。この功績でスミス教授は2022年の国際オーソモレキュラー医学会名誉の殿堂入りをしています。

新しいアルツハイマー病予防教育プログラム

このプロジェクトは3年間の準備期間の後、2022年11月1日に科学諮問委員会により国際キャンペーン「アルツハイマー病は予防できる!」を発表しています。メールやSNSを通じて「食事とライフスタイルによってアルツハイマー病が予防できる」ことが世界中の何百万人の人々に情報としてアナウンスされています。

このプロジェクトでは、次のようなアルツハイマー病予防プログラムを提供します。

  1. 市民はオンラインでプロジェクトに無料登録をする。
  2. 登録した市民は「10〜20年以上先の将来にアルツハイマー病を発症するリスク」を判定するオンラインテストを無料で受けられる。
  3. 市民はパーソナライズされた脳アップグレードアプリ「Cog-Nition」に参加し、アルツハイマー病のリスクを改善させるための相談や、食事やライフスタイルの教育を受けることができる。
  4. 1年毎にテストを受けて、アルツハイマー病のリスクが改善されるかを自分で確認する。

アルツハイマー病を予防する食事とライフスタイル

プロジェクトでは食事とライフスタイルについて8つの重要な因子を挙げています。

  1. 低糖質ダイエット
  2. 脳機能を高める脂質(オメガ3脂肪酸、リン脂質、ビタミンDなど)の摂取
  3. ビタミンB群を摂取して血中ホモシステイン値を低く保つ
  4. アンチエイジングを期待できる抗酸化物質やポリフェノールの摂取
  5. 健康な腸内環境による健康な腸脳相関を維持
  6. 健康な身体を保つ運動やアクティブな日常生活
  7. 社会や周囲に積極的に前向きに関って活動する
  8. 良い睡眠、安定した精神、明確な生きる目的を持つ

これら8つの項目一つ一つに0〜100のスコアを付けます。0がリスクなし、100が最悪状態のリスクとし、認知症リスク値を全体と各因子項目全てが0となるようにパーソナルな改善プログラムを提供します<図>。

<図>オンラインテストを回答すると総合認知症リスク(左)と個別因子のスコアがわかる。

認知症のこのプロジェクトのビジョンは、今後数年間に英国及び海外の数百万人の人にアプローチし、年齢に関連した認知機能低下を防ぐことです。5年後には100万人が認知症患者の発生を減らすことが目標となっています。

おわりに

私が代表理事をしている一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会では、国際キャンペーン「アルツハイマー病は予防できる!」に積極的に関わっていきます。そのためには国内の専門家、学会、企業、市民グループとの連携を進めています。食事とライフスタイルでアルツハイマー病を予防することは、まさにオーソモレキュラー医学会の真骨頂です。そして、日本で600万人いる認知症患者から、毎年数十万人の患者のアルツハイマー病を発症させない、あるいは発症を遅らせるだけで多くの患者や家族が苦しまず、幸せな人生を過ごして頂けることを確信しています。

【参考】

FOOD FOR BRAIN FOUNDATIONホームページ  https://foodforthebrain.org/

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