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がん治療の効果を最大限に引き出す“3つの柱”

この記事の執筆者

ごきげんクリニック浜田山

ビタミンC点滴療法や栄養療法のメッカとも言えるリオルダンクリニック(アメリカ)へ研修のため留学。留学中、米国抗加齢医学会の専門医試験に最年少で合格。また米国で開催される国際学会に多数出席し、世界の機能 ... [続きを見る]

私がリオルダンクリニックで研修を行った1年半の間、クリニックでの研修に加えて様々なカンファレンスに出席したり、自分の勉強に集中することができました。この機会を得られたことで、アメリカの統合医療の流れや考え方をかなり吸収できたと思っています。

どうして私がこんなに自信満々かと言うと、スイスで著名な統合医療医・Dr. Thomas Rauの「Swiss Biological Medicine Academy」(4日間セミナー)に出席し、自分が勉強してきたがん治療に対する考え方が間違っていなかったことを再確認できたからです。

今回は1年半のアメリカ留学で学んだがん治療のダイジェストに、スイスのエッセンスを加えてまとめさせていただきます。なるべくわかりやすくするために、以下3つの柱に分け、それぞれご説明いたします。

①炎症の治療
②正常細胞の健康をサポート
③がんを殺す

①炎症の治療(体に悪いものを除去する)

<図>がん治療の3つの柱


後で説明する「②正常細胞のサポート」と「③がんを殺す」を無駄にしないためにも、がん患者さんの身体からがんになった原因を徹底的に除去し、治療を行います。

この炎症の治療が不十分な状態だと、せっかく他の治療を行っても“焼け石に水”もしくは“がんとのイタチごっこ”になってしまうので、3つの項目の中でも一番大切なポイントであると考えて下さい。

医学的に言うと、慢性炎症やその原因となる感染や毒素、アレルギーなどの治療がこの項目に該当します。患者さんによって炎症の場所や原因は異なりますが、口腔内や腸内の炎症、毒素の除去をおろそかにしてはいけないことは明白です。

腸の改善

まず、砂糖・乳製品・グルテンなどの食物アレルギーの原因となる食品および加工食品を徹底的に避けることが重要です。加工食品に含まれる添加物はがんの原因になる場合がありますし、そもそも加工食品にはかなりの頻度で砂糖や小麦が含まれています。

腸の健康は何よりも重要です。食物アレルギーなどで腸の粘膜(タイトジャンクション)に隙間ができると、アレルギーが悪化するだけでなく、そこから重金属や有機毒素が体内に侵入する原因にもなります。

腸内の感染によってパイエル板(腸にある免疫器官)の働きや、T細胞という免疫細胞の働きが悪くなってしまうと、がんの治療が難しくなります。

口腔内の改善

また、口腔内にアマルガムやその他重金属はないか、根管治療歴やキャビテーションがないかチェックすることも非常に重要です。トラブルがある歯に対応した臓器にがんができることは、よくあることのようです。

解毒(デトックス)

体内の重金属、ホルモンバランスを乱す有機毒素の蓄積がないかを検査し、ある場合には速やかにデトックスして下さい。

デトックス治療としては、食事をデトックス仕様に変えてみたり、キレーション療法、解毒作用のあるクロレラ(緑藻類の一種)やゼオライトなどのハーブやミネラル、遠赤外線サウナも有効です。

何故その毒素が溜まってしまったのか、解毒システムを司る遺伝子のチェックを行うことも解毒治療の方法を考える上で役立ちます。

②正常細胞の健康をサポート

体に悪い感染や炎症(毒素など)をコントロールしてマイナスポイントを減らしたら、次は正常細胞をより健康にし、免疫がスムーズに働けるようにしてプラスポイントを稼ぎましょう。

具体的には、以下のような項目をチェックし改善します。

  • 栄養素や酸素がきちんと細胞に届いているか
  • ホルモンや神経物質、自律神経の乱れがないか

足りない栄養素やホルモンがあると正常細胞の働きはもちろん低下してしまいますし、そもそもがん細胞は「正常細胞が低酸素になった結果生まれたもの」です。

高圧酸素などの酸素効率を高める治療が低酸素の状態を改善し、がんに効果的なのはこのためです。睡眠時無呼吸の改善や、細胞の膜電位つまりは細胞間環境を改善するアルカリ治療もここに分類されます。

しかし、ここで2つの注意点があります。第一に、一般的な検査の基準値は「平均的な日本人の値」であるため、必ずしも理想的な値ではないということ、第二に正しい検査なしでは状態を正確に把握することができないということです。

例えば、食事に強く影響を受けるため、血清の脂肪酸を調べてもオメガ3やオメガ6の値が適正かどうかを判断することはできません。脂肪酸の値を見るためには、細胞膜の量を調べる必要があります。

また、心血管リスクになることが知られているLDLですが、全てのLDL高値が必ずしも悪者という訳ではないので、リスクとなるsd-LDL(超悪玉コレステロール)もしくはLDL-pで判断します。神経伝達物質であるノルアドレナリンもがんの血管新生を進めるため、上昇がないかチェックすることが重要ですが、スポット検査よりも24時間蓄尿検査の方が正確で理想的です。

このように検査には十分注意を払い、より最適な治療を行うためには栄養素のサプリメントについても活性型か、量は十分か、さらに踏み込むとホルモンであれば人工ホルモンではなくナチュラルホルモンであるかなど、考慮すべき点はたくさんあります。

③がんを殺す

ここまできてようやく、がんを積極的に攻撃する治療法が効果を発揮できる状態となります。

標準治療である手術・化学療法・放射線治療は、全てこの「③がんを殺す」に分類されます。これらの治療を積極的に導入するのが、がん治療をする上で手っ取り早い方法と考えがちですが、これまでご説明した「①抗炎症」や「②正常細胞のサポート」なしでは、期待する効果は得られないと考えます。

まずは食事から砂糖、精製炭水化物を除去します。さらに、がんを促進するインスリンの上昇を抑えるために血糖値をコントロールして下さい。持続血糖測定器を使って、ご自身の血糖値の上昇パターンを把握できると完璧です。

がん治療においては、高タンパクの食事も非常に危険です。グルタミンはがんのエネルギー回路に直接入ることができ、がんを促進させます。必須アミノ酸を摂ることは重要ですが、必要量(1日15g)以上は食べないようにしましょう。

また、前回の記事でもご紹介したがんの代謝療法、高濃度ビタミンC点滴やインスリンとともに少量の抗がん剤を使用するインスリン増感療法(IPT)、免疫療法の効果のあるヤドリギエキス 、局所温熱療法なども併用できる場合はした方が良いでしょう。

がんと真剣に向き合うということ

ここまで、様々な治療法やチェック項目をダイジェストでご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。何か治療に取り込めそうなものはありましたか?

今回私がお話しした内容について「何となく納得できたかも」と思える場合は、今すぐにでも実践されることをおすすめします。と言うのも、今までご説明した治療を徹底して行うことこそが、がんを克服する方法だからです。

冒頭でも触れた「Swiss Biological Medicine Academy」にて、Dr. Rauがお話してくださったエピソードがとても印象的だったので、最後にご紹介したいと思います。

<写真1>Dr. Thomas Rau


一つ目は、クリニックのホテルの食事係スタッフに「もしも患者さんに禁止している砂糖や乳製品を使用した食事を出した場合、解雇も辞さない」という契約を交わしていることです。

もう一つは、最後に私がした「様々な制限がある食事などの生活習慣を、どうやったら患者さんに変えてもらえるか」の質問に対する答えです。Dr. Rauは、その患者さんが砂糖や乳製品を今後も摂り続けると決めたのであれば、他の医師のところへ行っていただくそうです。

少々厳しすぎる気もしますが、医師として患者さんの症状の改善に必ずコミットしたいと思った時、治療する上で大切なことを約束していただくためには、そこまでの真剣さで向き合うのが筋なのかもしれないと改めて痛感しました。

患者さんと医師が、がんと真剣に向き合うからこそ発揮される治療効果とも言えるかもしれません。

<写真2>参加者との写真





※本記事は『統合医療でがんに克つVOL.142(2020年4月号)』にて掲載された「リオルダンクリニック通信11」を許可を得た上で一部調整したものです。

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