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全ての進行がん患者さんに知ってほしい!次世代のがん治療「CDC6shRNA療法」

この記事の執筆者

ごきげんクリニック浜田山

ビタミンC点滴療法や栄養療法のメッカとも言えるリオルダンクリニック(アメリカ)へ研修のため留学。留学中、米国抗加齢医学会の専門医試験に最年少で合格。また米国で開催される国際学会に多数出席し、世界の機能 ... [続きを見る]

今回ご紹介するがん遺伝子治療、とりわけ「CDC6shRNA療法」は、未承認医薬品を用いた治療となります。次世代の治療として国際的に期待されているものの、まだまだ発展段階の治療であり、残念ながら全てのがんを完全に治せるわけではありません。

自費治療となるため、標準治療と比較すると費用もかかります。こうした点を踏まえ、治療のメリット・デメリットを患者さんに十分理解していただいた上で、治療するか否かをご検討いただく必要があることは重々承知しております。また、「がん患者さんみんながこの治療をするべき」と言っているわけではありません。

しかし、スキルス胃がんやステージ4の乳がん、膵臓がんなど治療が難しいがんに対して、にわかには信じられないほどの効果を発揮し、標準治療では考えられないような結果を起こすことがあるのも事実です。余命数週間と宣告された患者さんのがんが消えたり、完全に消えないまでも増大がストップもしくは完全にコントロールできるようになるなどのケースが後を絶ちません。

科学的な根拠としても、基礎論文は『サイエンス』や『ネイチャー』、『セル』など、錚々たる科学雑誌に掲載されたもので、信憑性が高いものであると考えられます。

もしもあなたが、あるいはあなたの大切な人が「進行がん」と診断され、化学療法や放射線療法の効果が乏しくがんの進行をコントロールできない場合、もちろん大前提としてビタミンC点滴や糖質制限、栄養療法などには取り組んでいただきたいですが、諦めてしまうその前に、あくまでも延命ではなくがんの根治を目指して、救世主となり得る「CDC6shRNA治療」を一度ご検討いただきたいと思うのです。

CDC6shRNA治療とは?

前置きが長くなりましたが、ここでCDC6shRNA治療について簡単にご説明いたします。この治療はいわゆる遺伝子治療の1つです。

がんは私たちの体の設計図である遺伝子に生まれつき変異があったり、生活習慣などの外部環境によって遺伝子発現が変化することで起こると考えられています。遺伝子をターゲットにした遺伝子治療にはいくつか種類があります。

例えば、がん細胞と戦うTリンパ球の遺伝子に影響を与えるのがTCR遺伝子治療やCAR、がんを抑え込むがん抑制遺伝子を送り込むものがp53、p16、PTENなどの遺伝子治療です。

今回の遺伝子治療はCDC6というがんの原因とも言えるタンパクをターゲットにしています。CDC6はがんの6つの特性のうち「がんの無限増殖」、「がんの細胞死の回避」などに深く関わっており、このタンパクが消去されたがんは、際限のない増殖をやめ、老化して細胞死を起こします。

つまり、正気に戻って普通の細胞のように振る舞い始めるのです。また、CDC6タンパクは正常細胞には基本的に発現せず、治療の副作用も一時的な発熱や軽い倦怠感以外に大きな副作用はありません。

特に効果が期待できるがんの種類

CDC6shRNA療法は様々な種類のがんに用いられていますが、特に効果が期待できるのはスキルス胃がんや乳がん、膵臓がんなど一般に進行が早く、予後が悪いとされているがんです。

このように性質が悪く増大速度が速いがんほど、CDC6の発現が強いということなのか劇的に効く可能性があり、逆に進行がゆっくりで穏やかな性質のがんの場合はCDC6が効いたかどうか判断が難しいことがあります。

治療の方法

CDC6shRNA治療は大きな可能性を秘めていますが、製剤の製造方法、投与量、投与ルート、投与頻度によって治療効果は全く違ってきます。なかでも投与方法は重要です。いくら効果のある薬剤でも、がんの細胞に届かなければその効果を発揮できないからです。

進行したがんは体の広範囲に広がっていることが多いので、複数の投与経路を併用することが必要になります。例えば、スキルス胃がんで腹膜播種がある場合、胃の原発病変には内視鏡やエコーを用いて経皮的に直接注射し、腹膜播種病変にはエコーガイド下で腹腔内に薬剤を散布、体に広がっているかもしれない目に見えないような小さな病変に対しても静注を併用する、といった具合です。

がん細胞を栄養している血管が明らかであれば、動脈カテーテルを用いてがん病巣に直接薬を注入することもできます。

CDC6shRNA治療との出会い

私がこの治療法を知りここまで惚れ込むことになったのは、あるスキルス胃がんの患者さんの経験があったからです。

クリニックでは、進行したがんの患者さんに断糖などの食生活をはじめとした生活習慣の改善や、効果が期待できそうな治療法をご提案するライフスタイルコーチングを行っていました。そしてこの治療法を知ったのは、ステージ4のスキルス胃がんがごく最近発見された患者さんに、何とか良い治療法がないか探していた時でした。

スキルス胃がんは粘膜の下を這うように広がるため、胃が硬く広がりにくくなり、食事を十分には食べられなくなってしまいます。その方もお食事が喉を通らないのが一番の問題でした。週5回のビタミンC点滴で幾分元気を取り戻されて気分も良くなっておられたようでしたが、化学療法で全身状態がまたガクッと悪くなってしまいました。

その後、ご家族の必死の説得によってCDC6shRNA治療を受けられたのですが、驚いたことに治療のたった2日後には体調が改善してきました。食事も食べられるようになり「治療の効果をはっきりと体感しているので、この治療を継続したい」と患者様ご本人からご連絡をいただきました。

ご家族も「顔色が明らかに変わり、気持ちも前向きになったのがとても嬉しい」「こんなに劇的に良くなることがあるのかしら」と感激されていました。

この患者さんは化学療法もされていたので何が効いているかの判断は難しいところですが、患者さんは明らかに化学療法ではなく、CDC6shRNA治療が効いていると手応えを感じられているようでした。

とにかくこの方の場合は時間がなく、延命ではなく根治を目指せる有効な治療法が他にない状態ですし、スキルス胃がんはCDC6shRNA治療のとても良い適応ですので私も大変期待しています。何とかこのまま奇跡に奇跡を重ね、スキルス胃がんの根治という最終ゴールを掴み取っていただきたいです。

この患者さんのお陰でCDC6shRNA治療を知ることができ、胃がん闘病中の叔父もこの治療を4回受けました。叔父のがんはスキルス胃がんではなく、一般的な増大速度の遅い胃がんです。結局CDC6shRNA治療の効果が明らかではなかったため、治療は一旦中断しました。叔父は今後、断糖とがん代謝療法、ビタミンC点滴など統合医療を組み合わせて闘病していく予定です。

<写真1>スキルス胃がんが2週間で消えた例


このように、当然ではありますがCDC6shRNA治療で劇的な効果を得る場合もあれば、この治療だけではなかなか難しい場合もあります。ただし、がんのタイプなどの適応と適切な治療方法を選択すれば、どんなに厳しい状況であっても完全寛解やがんの治癒などの奇跡に近い結果を実際に起こしている患者さん方が少なくないのも事実です。

願わくばまさに今、スキルス性胃がんや進行乳がんなどの厳しい状況に置かれ、有効な治療法がなく無念さを感じておられる患者さんにとって、この情報が希望の1つとなれば、これ以上に嬉しいことはありません。

<写真2>耳下腺がんの例

<写真3>子宮がんの脳転移が3ヶ月で消えた例





※本記事は『統合医療でがんに克つVOL.145(2020年6月号)』にて掲載された「リオルダンクリニック通信14」を許可を得た上で一部調整したものです。

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