ビタミンCとガン:ハダカデバネズミにおける関連性

13.09.19 オーソモレキュラー医学ニュース

オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(点滴療法研究会)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)姫野 友美(ひめのともみクリニック)
齋藤 糧三(日本機能性医学研究所) 北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)
翻訳協力西本貿易株式会社ナチュメディカ事業グループ

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執筆者: Steve Hickey, PhD

(OMNS、2013年7月30日) ハダカデバネズミは、他の小型げっ歯動物よりもはるかに長生きであるにもかかわらず、ガンに対する耐性が高い。実験用マウスは、概して寿命が3年未満で、ガンで死ぬことが多い一方、メクラネズミは、30年まで生きることがあるのに、腫瘍は稀である。最近、その説明となる事実を発見したと主張している研究グループがある[1]。ハダカデバネズミは、ヒアルロン酸(ヒアルロナン)と呼ばれる長鎖生体分子を基盤とした非常に強い組織基質を有しているようである。この分子は、関節炎の改善において、グルコサミンやコンドロイチンなど、他のグリコサミノグリカンとともに広く使用されていることから、サプリメント使用者なら聞き覚えがあるかもしれない。こうしたサプリメントは、損傷した軟骨などの結合組織を再生して強化するため用いられる。同様に、ヒアルロン酸は、メクラネズミが土にトンネルを掘るため自己の組織を強化するのに役立つ。このネズミは、とくに大きな型のヒアルロン酸を有している。ヒアルロン酸は、ヒアルロニダーゼと呼ばれる酵素によって分解される。メクラネズミの体内では、この酵素と関連酵素がゆっくり作用するため、ヒアルロン酸が自己の組織に蓄積することが可能となる。

 

ヒアルロン酸はガンを抑制する

メクラネズミは、その豊富なヒアルロン酸によって、周辺組織が強化され、ガン細胞による浸潤を拒んでいる。微少な腫瘍は、大きくなりにくく、局所的にも広がりにくく、遠位部位にも転移しにくい。また、ヒアルロン酸は、ガン細胞の増殖を抑制するシグナルとして作用する。ハダカデバネズミの細胞は、見たところ、このシグナルに対する反応性がはるかに高く、広がるガンができる可能性がさらに低くなっている。この研究による「大発見」は、世界有数の科学誌であるNature誌で最近報告され、国際的なメディアですぐに取り上げられた[1]。健康食品店でサプリメントとして入手できるヒアルロン酸は、体内にある天然の分子であることから、この研究はオーソモレキュラー医学を裏付けるものとなっている。それなら、なぜ我々はそれほどの感銘を受けていないのか?

 

ビタミンCはガンの広がりを防ぐ

メクラネズミにおけるガンについて調べたこの最近の研究論文は、以前の研究結果を確認し補強するものとなっている。昔、1966年に、外科医でオーソモレキュラー専門医であったEwan Cameronは、ヒアルロニダーゼとガンに関する著書を出版した[2]。これは今では高価な逸品とされている。30年以上前、Ewan CameronとLinus Paulingは、高用量のビタミンCが腫瘍の広がりを防ぐ仕組みについて当時最新の説明を行った[3,4]。彼らは、ヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンが高粘度質であるため細胞の増殖が抑制されることを示唆している。ガン細胞が広がるためには、局所細胞にあるこうした分子を壊すことによって、この抑制から逃れなければならないのである。CameronとPaulingは、以前、ヒアルロニダーゼおよびヒアルロン酸分解酵素の重要性について記述している[5]。彼らは、ガン細胞がヒアルロニダーゼおよび他の組織分解酵素を放出する仕組みについて説明した。彼らが言ったとおり、「新生組織形成と正常な細胞増殖との唯一の違いとして、新生組織形成ではヒアルロニダーゼが持続的に放出される」[3]。ビタミンCはヒアルロン酸の分解を阻害する、と彼らは示唆している。言い換えれば、CameronとPaulingは、数十年前に、この最近の研究の先手を打っていたのだ。絶えず他の科学者の20年先を走っていたLinus Paulingの記述を思い出した人もいるかもしれない[6]。
ビタミンCがヒアルロニダーゼおよび関連する分解酵素を抑制することは、この十年の間に明らかにされている[7,8]。しかし、これについても新たな発見ではない。1951年という昔に、Edmond Reppertとその同僚がそれを見つけ出していた[9]。前述のメクラネズミの研究は、CameronやPaulingなどによる中核的なアイデアを確認するものであり、高用量のビタミンCによる重要な抗ガン作用を裏付けている。ビタミンCがガンを攻撃する方法について、この数十年間で、さらに多くのことが確証されている[10-13]。

 

まとめ

我々は、メクラネズミに関する前述の研究論文を歓迎しているが、PaulingやCameronなど、オーソモレキュラー分野の研究者によるずっと以前の研究には言及がなかったため、それほど熱烈には歓迎していない。この論文では、昔のアイデアを新しいアイデアとして示している。この研究結果を確認する場合、オーソモレキュラー医学を無視すべきではない。ビタミンCは、ガンの安全な治療のための効果的な基盤となる。前述の論文や、世界中のマスコミ報道は、こうした重要な関与に言及していないのである。

 

参考文献

1. Tian X, Azpurua J, Hine C. Vaidya A, Myakishev-Rempel M, Ablaeva J, Mao Z, Nevo E. Gorbunova V. Seluanov A. (2013) High-molecular-mass hyaluronan mediates the cancer esistance of the naked mole rat(ハダカデバネズミのガン抵抗性には高分子量ヒアルロナンが関わっている), Nature, Jun 19, doi: 10.1038/nature12234.

2. Cameron E. (1966) Hyaluronidase and Cancer(ヒアルロニダーゼとガンとの関係), Pergamon Press.

3. Cameron E. and Pauling L. (1973) Ascorbic acid and the glycosaminoglycans: an orthomolecular approach to cancer and other diseases(アスコルビン酸とグリコサミノグリカン: ガンやその他疾患に対する正常生体分子論的アプローチ). Oncology, 27, 181-192.

4. Cameron E, Pauling L, Leibovitz B. (1979) Ascorbic acid and cancer: a review(アスコルビン酸とガンとの関係: あるレビュー), Cancer Res., 39(3), 663-681.

5. Gonz lez MJ, Miranda-Massari JR, Mora EM, Guzm n A, iordan NH, Riordan HD, Casciari JJ, Jackson JA, Rom n-Franco A. (2005) Orthomolecular oncology review: ascorbic acid and cancer 25 years later(腫瘍に関する正常生体分子論的レビュー: アスコルビン酸と 25年後のガンとの関係), Integr Cancer Ther., 4(1), 32-44.

6. Roberts H. (2004) Vitamin C, Linus Pauling was right all along. A doctor’s opinion(Linus Paulingは最初からずっと正しかった: ある医師の見解), Medical News Today, Aug 17.
http://www.medicalnewstoday.com/releases/12154.php

7. Okorukwu ON, Vercruysse KP. (2003) Effects of ascorbic acid and analogs on the activity of testicular hyaluronidase and hyaluronan lyase on hyaluronan(精巣のヒアルロニダーゼとヒアルロナンリアーゼのヒアルロナンへの活性に対するアスコルビン酸とその類似物の影響), J Enzyme Inhib Med Chem., 18(4), 377-382.

8. Spickenreither M, Braun S, Bernhardt G, Dove S, Buschauer A. (2006) Novel 6-O-acylated vitamin C derivatives as hyaluronidase inhibitors with selectivity for bacterial lyases(細菌性リアーゼに対して選択性を有するヒアルロニダーゼ阻害剤としての新規6-O-アシル化ビタミンC誘導体), Bioorg Med Chem Lett., 16(20), 5313-5316.

9. Reppert E, Donegan J, Hines LE. (1951) Ascorbic acid and the hyaluronidase hyaluronic acid reaction(アスコルビン酸およびヒアルロニダーゼのヒアルロン酸反応), Exp Biol Med., 77(2), 318-320.

10. Hickey S (2013) Antioxidants may prevent cancer and some may even cure it.(抗酸化物質はガンを予防し、その一部にはガンを治す可能性さえある)
http://www.orthomolecular.org/resources/omns/v09n02.shtml

11. OMNS (2011) Intravenous vitamin C as cancer therapy.(ガン療法としてのビタミンC静脈投与)
http://www.orthomolecular.org/resources/omns/v07n03.shtml

12. OMNS (2010) Cancer and vitamin C: Evidence-based censorship.(ガンとビタミンC: 科学的根拠にもとづく検閲)
http://www.orthomolecular.org/resources/omns/v06n23.shtml

13. OMNS (2008) Vitamin C slows cancer down. And, doctors say, can reverse it as well.(ビタミンCはガンの速度を低下する。また、医師によると、ガンが好転する可能性もある。)
http://www.orthomolecular.org/resources/omns/v04n19.shtml

 

日本語訳監修:北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)