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「ティータイム」が血圧変動を制す?

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学医学部内科助教授を経て、2000年〜2008年同大学保健学部救 ... [続きを見る]

私たち日本人は、緑茶が発揮する作用についての情報に触れる機会が多い一方で、同じ「お茶」という分類でありながら、紅茶の効用についてはあまり知らないように思います。紅茶を普段から飲んでいる人たちは、心臓病などの動脈硬化性疾患、高血圧、高脂血症、炎症性疾患、糖尿病などの予防効果が報告されています。それは、紅茶に含まれているフラボノイド(主にカテキンやクエルセチンなど)によるものと言われています(1)。

そこで、今回はオーストラリアのエディスコーワン大学医学部栄養疫学部門のジョナサン・ホジソン教授(2)が率いる研究チームの紅茶と高血圧についての研究を紹介します。

血圧を下げたいなら紅茶を楽しんで

<写真>ジョナサン・ホジソン教授(エディスコーワン大学ウェブサイトより)

ホジソン教授は、植物栄養素が循環器系の健康にどのように関わっているかについて永年研究を行っていました。その一つが紅茶です。

ホジソン教授は2003年に高齢女性(70歳以上)218名について習慣的に飲む紅茶の量と血圧の変化について調べました。すると、1日紅茶2カップを飲む習慣は、収縮期と拡張期の血圧を軽度ではあるものの、確実に下げたことがわかりました(3)。

2012年には、対象者に1日3カップの紅茶を飲んでもらった後、24時間の血圧を連続測定しました。その結果、3ヶ月後(図1)、6ヶ月後の収縮期血圧と拡張期血圧が紅茶を飲んだ群でマイルドに下がりました。この論文は、アメリカ内科学紀要に発表されました(4) 。

<図>1日3カップの紅茶摂取3ヶ月後の血圧(文献4より改変)

さらに、ホジソン教授が率いるオーストラリア、ロシア、オランダの国際研究チームは研究を続けました。2013年、111名の男女に1日3カップの紅茶を6ヶ月間摂取してもらい、24時間の血圧の変動巾を調べました。すると、飲み始めてすぐに夜間の血圧変動が減少したのです(5)。早朝血圧の大きな変動が脳卒中や心筋梗塞の発症を誘発すると言われています。たった“3カップの紅茶を飲む”という習慣が、これらの病気を引き起こしにくくするというのは注目に値します。

ホジソン教授は「紅茶を飲むことで体重や腹囲を減らすことができるか?」という内容についても調べました。結果、驚異的とまでは言えませんが、3ヶ月後に-0.64kgと体重は減少、腹囲も-1.88cm減少しました(6)。しかし、残念ながら紅茶を飲み続けても6ヶ月後には元の体重と腹囲に戻っていました。

ストレート?ミルク?飲み方による違いはあるのか


紅茶の飲み方はストレート、ミルク、レモンと人によって嗜好は分かれます。ホジソン教授は、なんとミルクティーの効果についても調べました(7)。平均22歳の男女17名に1日3カップの①お湯②ストレートティー③ミルクティーをそれぞれ4週間ずつ飲ませました。そして、血管内皮機能検査を行ったのです。

すると、どうなったか。結果は、①お湯を飲ませたコントロール群と比べ、②ストレートティー群では血管内皮機能は増加しました。一方、③ミルクティー群では血管内皮機能の減少がみられました。血圧に関しては、②ストレートティー群ではマイルドに低下、③ミルクティー群では上昇しました。

この結果を聞くと、紅茶はストレートが良いのかと思いますよね。しかし、ホジソン教授は「この研究のみでミルクティーよりストレートティーの方が良いと結論付けることはできない」と解説しています。

日々のティータイムにこそ、オーガニック紅茶を


さて、健康のために紅茶を飲む習慣はオーソモレキュラー医学の立場からも推奨します。ところが、アメリカのNPO法人「ザ・オーガニックセンター(The Organic Center)」(8) や自然保護団体グリーンピースのインド支部(9)は、紅茶に付着した農薬について問題視しています。彼らの調査によると、紅茶や緑茶にEUで設定された基準値を超える複数の農薬(防虫剤)が検出されている商品があり、実際に抜き打ち検査で摘発もされています(10)。

野菜やフルーツとは違い、茶葉は収穫後に付着した農薬を洗い落とすことができません。農薬が子どもの知的機能の発育や成人の認知症に影響を与えることは以前の記事でも言及しています。

紅茶を飲む習慣は、十数年、時にはそれ以上にもわたります。そう考えると、やはり可能な限り、有機栽培(無農薬)の紅茶、緑茶、中国茶を選ぶことが肝要です。





<参考文献>

(1) Hodgson JM and Croft KD: Tea flavonoids and cardiovascular health. Mol Aspects Med. 2010;31:495-502.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20837049

(2)  https://www.ecu.edu.au/schools/medical-and-health-sciences/our-staff/profiles/professors/professor-jonathan-hodgson

(3) Hodgson JM et al. Tea intake is inversely related to blood pressure in older women. J Nutr. 2003 Sep;133:2883-6.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12949382

(4) Hodgson JM et al. Effects of black tea on blood pressure: a randomized controlled trial. Arch Intern Med. 2012:23;172(2):186-8

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22271130

(5) Hodgson JM et al. Black tea lowers the rate of blood pressure variation: a randomized controlled trial.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23553154

(6) Sohn SK et al. Effects of black tea on body composition and metabolic outcomes related to cardiovascular disease risk: a randomized controlled trial. Food Funct. 2014 25;5(7):1613-20

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24889137

(7) Ahmad AF et al. Effect of adding milk to black tea on vascular function in healthy men and women: a randomised controlled crossover trial.  Food Funct. 2018 13;9(12):6307-6314

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30411751

(8) 米国NPO法人ザ・オーガニックセンター

https://www.organic-center.org/organic-black-tea-and-a-healthy-heart/

(9) グリーンピース・インドによる紅茶葉の残留農薬に関するレポート

 http://www.indiaenvironmentportal.org.in/files/file/TroubleBrewing.pdf

(10) 台湾で茶葉からの基準値を超える農薬を検出(内閣府)

http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04260220493

柳澤 厚生 (ヤナギサワ アツオ)先生の関連動画

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