酸化還元生化学において、DMSOは酸化されると、効果的な抗炎症作用を持つジメチルスルフォン(MSM)や、特有のニンニクやハマグリのような匂いを発するジメチルスルフィド(DMS)に変化します。以下の図表でその過程を示しています。(図1)
- 治療法・栄養
「DMSO ― 忘れられた治療薬」その1
医療の分野では、広範な治療効果があり、毒性が最小限の治療薬が常に求められてきました。ナイアシン、ビタミンC、ビタミンD、NAD+、グルタチオン、マグネシウム、イベルメクチンなどは、この基準を満たしています。しかし、安全性、有効性、汎用性の観点からさらに注目に値する治療薬が存在し、それがDMSO(ジメチルスルホキシド)です。
DMSO(ジメチルスルホキシド)とは
(図1)
DMSOの主な用途
- 抗炎症作用
- 鎮痛作用
- 抗凝血作用
- 抗菌作用
- 抗アミロイド(タンパク質シャペロン)作用
(脳内の動き)
DMSOは現存する中で最も安全な薬剤の1つであり、この点ではビタミンCにも匹敵すると言えるかもしれません。また、以下の症状に対して非常に効果的な治療手段としても知られています。
- 脳卒中および脳内出血
- 脳および脊髄の損傷
- 麻痺
- 心臓発作
- 認知症
- アミロイドーシス
- 発達遅延
- ダウン症候群
- 精神障害
- レイノー症候群
- 静脈瘤
- 慢性疼痛
- 関節炎、滑液包炎、痛風
- 捻挫や打撲
- 線維筋痛症および椎間板疾患
- 頭痛および三叉神経痛
- 傷跡や手術後の傷
- むずむず脚症候群
- スポーツによる負傷
- 自己免疫疾患(ループス、多発性硬化症、重症筋無力症、喘息、過敏性腸症候群)
特に素晴らしい点として、DMSOは様々な方法で投与可能である点が挙げられます(局所、経口、静脈内、筋肉内、皮下注射)。カナダでの私の臨床経験では、DMSOは安全で効果的であり、特に脳卒中後の麻痺や難治性の痛み、捻挫や打撲、自己免疫疾患など、上記の広範な症状の治療に役立ちました。
また、DMSOは、皮膚や静脈内での栄養吸収を高めるキャリア溶液としても有用で、血液脳関門を超えて脳内に栄養を届ける助けとなります。唯一の難点としては、DMSO使用者の皮膚や息からニンニクやハマグリのような匂いが発生することが挙げられます。この副作用は通常、使用後数時間から3日程度続く場合があります。
DMSOの特性
DMSOの本当に興味深い特性の一つは、分子量が小さく極性が高い溶媒であるため、生体膜を損傷させることなく通過できる点です。このため、DMSOは体内に素早く吸収され、皮膚に塗布した場合、5分以内に血中に、1時間以内には骨にまで到達します。また、体内からも迅速に排出され、蓄積することはありません。
DMSOのこの驚くべき浸透力は、1960年代に医療分野で初めて使用された際、一部の医師にとって懸念材料でした。しかし、DMSOは有害であるどころか、実際には組織保護作用と抗炎症作用を持つことがわかりました。実際、DMSOが持つ部位特有の抗炎症作用、鎮痛作用、血管拡張作用が鍼治療と類似していることから、多くの医師がDMSOを「液体の鍼治療」と呼んでいました。
DMSOの効果
DMSOは、血流が遮断された組織を保護し、血流が急速に再開された際に起こる再灌流障害も防ぎます。抗がん効果としては、代謝産物の解糖系からミトコンドリアのクレブス回路(細胞呼吸)へのシフトを促進します。また、脳卒中や外傷による脳損傷の際にナトリウムやカルシウムイオンが急速に細胞に流入すると細胞死が引き起こされることがありますが、DMSOはナトリウムとカルシウムのチャネルを調整し、これを防ぎます。
日本ではあまり一般的でないかもしれませんが、カナダの厳寒期には凍傷による指や足趾の切断が起こるケースも多く、DMSOは凍傷による切断を防ぎ、患部を救うことができます。やけどについても同様で、DMSOはやけどによる痛みと炎症を和らげ、感染を防ぐことで治癒を促進します。重度のやけどは常に感染リスクが伴います。
この図は、DMSOがプロスタグランジンに作用し、炎症、血管拡張、血管収縮に関与する仕組みを説明しています。(図2)
(図2)
次回は、DMSOに関する使用方法や注意事項について解説します。
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