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オーソモレキュラー医学入門【第5章】ビタミンE

この記事の執筆者

ナカムラクリニック

医師 神戸市中央区にて、内科・心療内科・精神科・オーソモレキュラー療法を行う「ナカムラクリニック 」を開業している。対処療法だけでなく、根本的な原因に目を向けて症状の改善を目指す栄養療法を実践している ... [続きを見る]

「オーソモレキュラー医学」。それは、ビタミン、ミネラルといった栄養素を補充することで、疾病の予防および治療を行う医療です。

エイブラム・ホッファーとアンドリュー・W・ソールが記した『Orthomolecular Medicine For Everyone』は、発売年から今日に至るまで、医師等専門家をはじめとする多くの人々の医学書・指南書として支持されています。そして2019年10月、ついに『Orthomolecular Medicine For Everyone』の日本語版『オーソモレキュラー医学入門』が発売されました。

今回、『オーソモレキュラー医学入門』を翻訳された中村 篤史先生(ナカムラクリニック)が、全18章400ページにわたる本編から、改めて各章毎のポイントをまとめて下さいました。

・すでに『Orthomolecular Medicine For Everyone』『オーソモレキュラー医学入門』を読破された方

・興味はあるものの、まだ読めていない方

・「そもそも、オーソモレキュラー医学とは?」という方

全ての方に読んでいただきたい情報を連載でお送りします。是非、お見逃しなくご覧ください。

ビタミンEの発見

ビタミンEは、実験動物の不妊や流産を防止する成分として1922年に発見されました。トコフェロール(ギリシャ語でtocosは「出産」、pheroは「もたらす」の意)と呼ばれるのは、この理由のためです。その後、1931年にビタミンEによる習慣流産の治療(成功率8割)、1937年には切迫流産と妊娠中毒症への有効性が報告されました。

シュート兄弟とビタミンE

ビタミンEについて、効果が期待されるのは生殖に関する症状ばかりではありません。1936年から1950年にかけてシュート兄弟が行った研究および報告をみれば、ビタミンEの多様な有用性に驚くでしょう。以下に彼らの実績を記載します。

※1:全身に炎症を引き起こし、様々な症状を引き起こす病気。

ビタミンEとは

酸素が豊富にある状況で、生きている植物や動物の体が急に燃える(酸化する)ことがないのは、生体内に抗酸化物質が含まれているためです。植物は多価不飽和脂肪酸の酸化を防ぐためにトコフェロールを生成します。ビタミンEは動物の体内でも同様の働きをし、脂質やビタミンAを保護しています。つまり、ビタミンEは体内の重要な脂溶性抗酸化物質なのです。成長過程にある動物にとって、内分泌、筋肉、末梢血管系の適切な成長や機能に不可欠な存在です。

摂取量についての捉え方

ビタミンEの1日の必要量は、妊婦も含めて22 IU(15 mg)となっていますが、これは極めて低い数値と言わざるを得ません。あくまで、欠乏性疾患を防ぐための量(例えるなら脚気にならない程度のビタミンB1、ペラグラにならない程度のビタミンB3といった具合)と考えるべきです。オーソモレキュラー医学を実施する医師は、心血管系疾患の治療のためにビタミンEを1日3000 IUまで使うこともあります。生体組織にビタミンEを行き渡らせるには長い時間がかかります。血中濃度は比較的速やかに上がりますが、組織内の濃度に関してはそうもいかないのが実状です。

ビタミンEの働き

ビタミンEはどのように効くのでしょうか。ビタミンEの摂取によって以下のような効果が期待されます。

  • 生体組織の酸素必要量を減らす。
  • 血栓を溶解させ、塞栓を防ぐ。
  • 側副循環を改善する。
  • 創傷が治癒するときの瘢痕収縮を防ぐ。
  • 筋力を刺激する。
  • 毛細血管を保護する。
  • 炎症性マーカー(CRPなど)を低下させる。
  • 前立腺癌やアルツハイマー病の発症リスクを低下させる。

有効な疾患

ビタミンEが著効する具体的な疾患としては以下が挙げられます。

  1. 心血管系疾患(心臓病、血栓症、高血圧)
    炎症によって動脈硬化の進行、血栓形成、交感神経系の興奮等が生じやすくなりますが、ビタミンEの抗炎症作用がこれらの症状を緩和します。

  2. 神経系疾患(てんかん、アルツハイマー病)
    抗てんかん薬を使っている子どもは血中ビタミンE濃度が低いことから、薬と並行して1日400 IUのビタミンEを数か月間にわたり投与したところ、大部分の子どもにおけるてんかん発作の発症頻度が60%以上減少し、半数の子どもにいたっては90~100%減少したという研究があります。

  3. ガン
    直腸ガン患者に1日1000 IUのビタミンEを2週間投与したところ、CD4/CD8比が増加し、T細胞のIL2やIFNγの産生能が高まったことを示す研究があります。

  4. 糖尿病
    ビタミンEは糖尿病性網膜症および糖尿病性腎症の発症に対して、インスリン療法単独の場合よりも発症リスクが軽減する可能性があります。これはビタミンEによる血管拡張作用、側副循環促進作用によるものと考えられます。

  5. アンチエイジング
    老化した皮膚や日焼けした皮膚は、固くなったゴムのように弾力を失っている状態です。これは、フリーラジカル(主に活性酸素)が長鎖のタンパク分子と結合して(スルフヒドリル結合)生体高分子としての可動性が低下するためです。ビタミンEはフリーラジカルの発生を抑制し、老化による悪影響を軽減します。さらに、「ビタミンEの血中濃度が正常範囲内高めであることは、全死亡率、死因別死亡率ともに統計的に有意差をもって顕著に低い」とする研究があります。