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Leaky Gut syndrome(腸もれ症候群) あなたの腸は穴だらけかもしれない?

目次

    最近の栄養医学の分野で非常に話題になっていることは、水溶性食物繊維とビフィズス菌や悪玉菌のウエルシュ菌などの腸内細菌の働きで出来る酢酸・酪酸・プロピオン酸などの短鎖脂肪酸の働きのことである。加工食品の摂取や抗生物質の服用が多いと腸内細菌叢が乱れて、これら短鎖脂肪酸の生産が悪く、腸内粘膜細胞が荒れて細胞間に隙間が出来て、未消化物、たん白質、多糖類、細菌やウィルスなどの大きな分子(異物)が通過して、「Leaky Gut syndrome・腸もれ症候群」を起こす。リーキーガットになると異物混入のために、異物を撃退するために免疫システムが働き、食物へのアレルギー反応を起こしたり、重篤なアナフィラキシーショックが発生することがある。

    この10年間に喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が急速に増えていて、厚生労働省は国民の約2人に1人が、このアレルギー疾患に罹患していると推測している。

    最近、皮膚の発赤、腫れ、湿疹、痒み、肌荒れ、下痢、便秘、腹痛、吐き気、嘔吐、気分のイライラ、不安、うつ、意欲低下、集中力の低下、免疫力の低下など様々な症状を訴える患者が多い。そしてその原因が腸内細菌叢の乱れでリーキーガット症候群によるものであろうと指摘されている。病院に行くと、リーキーガット症候群についての知識がないと、食物アレルギー、アトピー、うつ、過敏性腸症候群、自閉症、ADHD(注意欠陥多動性障害)、発育障害、統合失調症などの診断名のもとに、種々薬剤が投与されることになる。

    禅宗の修行に来る前の娑婆では、喘息、花粉症やアトピー性皮膚炎のアレルギー疾患のあった人たちが、修行僧の食事には、毎日食べる食事の中に食物繊維が30グラム入っていて、しばらくするとアレルギー疾患が消えていったという。

    Hippocratesヒポクラテス says, All the diseases begin in the gut.

    紀元前のギリシャ時代に生きたヒポクラテス(BC 460~370)は、医聖と呼ばれたり、医学の父と尊敬されているが、彼が“全ての病気は腸に原因がある”と述べている。ヒポクラテスは紀元前のギリシャ時代にエーゲ海のコス(Kos)島に生まれ、ギリシャを放浪して医学を身に着け、医術を磨いた。彼の医学は原始的な迷信や呪術から切り離され、臨床を重んじ経験医学へと発展させた新しい医学派を成立させた。

    ヒポクラテスは、この医学を生まれ故郷のコス島で多くの医師たちを教育し、これが多くの医師に伝承され、没後100年経って弟子たちに依って「ヒポクラテス全集(Opera magna hippocratica)」が編纂された。その中に有名な「ヒポクラテスの誓い」が記述されていて、欧米の医学部では学生時代に暗唱させられる。

    その中で大切なことが3つあり、①患者に毒になるものを与えないことと、②患者や家族に節度ある態度で接し、みだらな行為を行わないこと、③患者の秘密を守ることなどが記述されている。(詳しくは筆者の著作・医者も知りたい面白医学事典・2017年花乱社・ヒポクラテスの誓いの項参照)前にも述べたように、そのヒポクラテスが、全ての病は腸に始まると説かれていて、このリーキーガット症候群のことを学ぶにつけて、その慧眼振りに驚きである。

    どのような人が腸漏れ症候群になり易いか?

    文献②の藤田紘一郎氏の著書「腸もれ」によると、次のような人は腸もれ症候群の人か候補者であるという。

    • 食物アレルギーがある
    • お腹が弱く、下痢や腹痛を起こす
    • いつもなにかしら不調である
    • 原因不明の病気に悩んでいる
    • パン・パスタ・ピザ・うどんなど「小麦食品」をよく食べる
    • 炭水化物や甘いものが好きである
    • 食卓に野菜やサラダがなくても気にならない
    • 普段、野菜や海藻、きのこを余り食べない
    • 生鮮食品よりも加工食品を食べることが多い
    • スーパーで、食品成分表・産地を確認しない
    • 良く抗生物質を服用する
    • 頭痛・生理痛で鎮痛剤をよく服用する
    • 仕事や人間関係でストレスを抱えている
    • 生活不規則で、睡眠不足である
    • 家の中が清潔に保たれていないと気がすまない
    • 除菌グッズや除菌スプレーを頻繁に使用する
    • 年中、風邪を引いている
    • 疲れがとれず、慢性的な疲労感がある
    • チョットしたことでイライラしたり、落ち込んだりすることが多い
    腸の免疫について

    人の免疫細胞のおよそ70%が集まるといわれている腸は、大きくわけて3つの異なるバリア機能があると考えられている。そして、免疫細胞のリンパ球には3種類のT細胞がある。

    3つの異なるバリア機能
    1. 腸内細菌叢(腸内フローラ)が関与する環境因子バリア。健全な腸内細菌叢を維持することで病原性の高い菌を排除してくれる。
    2. 物理的因子によるバリアで、腸管を形成する細胞と細胞のつなぎ目がしっかりと閉じて有害物質の侵入を防ぐとともに、細胞の表面に粘液の層を形成し、外からの細菌や様々な物質が直接、腸の細胞に触れることを妨げている。
    3. 生物学的なバリアで、これらは抗菌ペプチドや免疫をつかさどる細胞が該当する。腸はこのように多くの防御システムを備えている。しかし、日常生活の中にある様々な要因、たとえば、高脂肪食や飲酒、果糖、食品添加物、ストレス、薬剤の服用(NSAID、プロトンポンプ阻害薬、抗生物質など)などでバリア機能は崩れる。
    3種の免疫細胞
    1. キラーT細胞でこれは、戦闘員にあたる。
    2. ヘルパーT細胞は免疫システムの指令塔にあたる。
    3. 制御性T細胞(Tレグ・Treg)は、なだめ役にあたる。短鎖脂肪酸が増えるとTレグ細胞が増えて、炎症を抑え、状態を改善する。
    何が「腸もれ(腸内細菌叢の乱れ)」を起こすか?

    腸内細菌叢の働きが、3日から5日でターンオーバーする(生まれかわる)腸粘膜の新陳代謝に関係するという。この高速新陳代謝を担うのが、100兆個存在する腸内細菌である。その種類は1000種類あり、その全体の重さは1.5㎏ある。30%が善玉菌の乳酸菌ビフィズス菌やアシドフィルス菌であり、10%が悪玉菌のウェルシュ菌(クロストリジウム菌・ガス壊疽菌)や病原性大腸菌である。残りの60%が日和見菌のバクテロイデスやフェルミクテスである。善玉菌、悪玉菌と日和見菌のバランスが非常に大切で、このバランスが壊れたら新しい細胞の誕生が間に合わなくなるので、結果的に腸に穴が開く「Leaky Gut」になる。結果として、過剰な免疫反応のために腸そのものが炎症を起こしまた悪玉菌が増える。そして、アンモニアが発生して腸細胞を傷つけると更に「Leaky Gut」になるし、数が減っても色々の病を起こす。炎症性腸疾患(自己免疫疾患であるクローン病や潰瘍性大腸炎)を発症する。一方で、本来腸で排除されるべき様々な有害物質が体内に入り込み、血管を通り身体のいたるところに運ばれ、行き着いたところで炎症を起こすことにより、肥満、糖尿病、肝臓病などに代表される生活習慣病や血管障害・ガン・アレルギー、パーキンソン病、うつ病の発症や進行とも関係していると考えられている。

    タモリと京大のノーベル賞受賞者・山中伸弥先生が出演されて構成して出来たNHK特集の健康シリーズの中の「腸」に関するものの中で、多発性硬化症の患者の腸内細菌叢を調べたら、悪玉菌のウェルシュ菌(クロストリジウム菌)の割合がすくなかった。検査の結果、クロストリジウム菌によって作られる炎症反応を抑えるリンパ球の中のTレグ (Treg)細胞が少ないことが分かり、食物繊維の量を増やすことによって病気が改善したという。

    この腸内細菌叢の乱れの原因は、死んだ食べ物と言われる精製された加工食品、冷凍食品、白砂糖、白い小麦粉などの摂取である。その悪い理由としては、精製の過程でビタミン・ミネラルや食物繊維などの栄養素が取り除かれる。また小麦食品に入っている「グルテン」や牛乳に入っている「カゼイン」にもアレルギーのある人は、それらを取り続けると「Leaky Gut」を起こし、最終的に脳細胞の機能障害を起こすために、多くの学校に行けない子たち、働けない大人たち、そして年配者の痴呆患者を多く発生させているのではなかろうか、と筆者は危惧している。

    腸もれを治す4つのカギ

    腸内細菌は「生きる力」を創り出す

    1. 腸内細菌数を増やす
    2. 腸内細菌叢の働きを高める
    3. 腸粘膜のバリア機能を回復させる
    4. 体のあちこちに発生している「炎症」を抑制する

    以上4つの働きを高めるために、有機脂肪酸の中のスーパー・ヒーローである酢酸・酪酸・プロピオン酸の短鎖脂肪酸を増やすことである。

    そのためには、前から繰り返し述べている野菜・豆類・海藻・発酵食品・オリゴ糖が腸内細菌叢の餌になって、短鎖脂肪酸が増え、腸粘膜のバリアー機能が高まり、Tレグ細胞が増えて体内炎症が収まる。(Tレグ細胞を意図的に増やすためには、ビタミンAやクルードなビタミンD3を1日に2~3万単位服用すると良い。)

    第二次世界大戦前の日本の食事の中に食物繊維が1日25g含まれていたという。戦後は残念ながら10g以下である。アメリカ合衆国に住む機械や電気を使わない宗派・アーミッシュの人々の食物繊維摂取量が多く、アレルギー疾患は皆無であるという。
    短鎖脂肪酸が増えると、脂肪細胞が脂肪取り込み受容体センサーの感受性が落ち、交感神経系が活発になり、脂肪を燃やしてエネルギーを消費し、体重減少につながるという。従ってダイエットの成功のカギは食物繊維である。
    糖尿病患者で食物繊維摂取量が増えると短鎖脂肪酸が増えインクレチン分泌量が増えて、インスリン分泌量が増量し糖尿病が軽減する。

    腸もれ「Leaky Gut」の修復法は生きた食べ物と言われる本物の食べ物を食べることである。これは全粒穀物粉パン、シリアル、小麦胚芽、全粒穀物(精白などしていない穀物・玄米・オートミール・全粒粉小麦)、新鮮野菜、豆類、果物、肉類、魚貝類,全体食と言われる小魚やエビなど・昆布・海藻・ハーブティー、水素水などが腸内細菌叢のバランスを保つために良い。野菜や果物の食物繊維(とくに水溶性食物繊維)が大腸の善玉菌の作用により、酢酸、酪酸・プロピオン酸(短鎖脂肪酸)に変わり分解・吸収される。これが腸もれを修復し、漏れによって起こる炎症反応もこの短鎖脂肪酸が抑えることが出来る。

    この水溶性食物繊維はペクチンに多く含まれている。オート麦(燕麦えんばく・オートミール)・人参・果物(とくにペクチンの多いリンゴ)・発酵食品(味噌・納豆)がよい。味噌は乳酸菌・酵母菌・麹菌が善玉菌の餌になる。オリゴ糖は大豆・ごぼう・玉ねぎ、蜂蜜に豊富にあり、酢酸、酪酸・プロピオン酸(短鎖脂肪酸)は大腸粘膜修復に効果がある。水溶性食物繊維の多いものには、海藻類、きのこ類、野菜、果実 アボカド・ゆず・プルーン・イチジクなどがある。

    腸内細菌叢検査法

    腸内細菌叢の分布は検査可能である。細菌培養法とゲノム解析法があると聞くが、筆者はまだ経験していない。これにより善玉菌が多いか少ないか、悪玉菌の多少も把握できるであろう。しかし、いずれにしても、腸内細菌叢の改善法は、水溶性食物繊維の摂取と加工食品の摂取を止め、自然食品の摂取に心掛けることである。

    最近、スーパーマーケットやレストランで販売されている「サラダ用野菜」は、“ウオッシュ・野菜”と言われて、次亜塩素酸ナトリウム(ハイター消毒液)で消毒されている。体内で次亜塩素酸ナトリウムが腸内細菌叢を破壊するかもしれないし、胃酸で発がん物質の「ニトロソアミン」に変化するので、危惧している。

    SIBO(小腸内細菌異常増殖症候群)

    SIBOはSmall Intestinal. Bacterial Overgrowthの略語である。腸内環境に良いと言われる食べ物をほんの少しの量しか食べていないのに、お腹がパンパンに張って具合いが悪くなる人がいる。「SIBOは本来であればあまり小腸に存在していない腸内細菌が、小腸内で過剰に繁殖して起こす病気である。」もともと小腸は内視鏡でも見えないブラックボックスであった。しかし、ここ最近ダブルバルーン内視鏡やカプセル内視鏡という技術が開発され、小腸の診断が可能になって、SIBOが注目され始めた。これが原因でリーキーガット症候群を併発する可能性がある。まだSIBOは日本ではまだあまり知られていない病気で、頑固な下痢、便秘、腹痛、お腹のゴロゴロした違和感といった症状がある。最新の研究では、過敏性腸症候群と考えられてきた患者さんの85%が、SIBOだったという報告もある。          

    しょっちゅう間食をして空腹タイムを作らない人、夜寝る直前に夜食を食べる人などは、小腸の働きが悪くなる可能性あり。またストレスによる脳腸相関のバランスの乱れも、小腸の機能低下を招くといわれている。またSIBOは胃酸低下が原因と認識されていて、PPIなど医師が気軽に処方する「胃酸を下げる薬」もその一因である。治療法としては、野菜などの水溶性食物繊維の摂取の他に、オリーブ葉エキスとたん白質消化剤に、小腸粘膜のエネルギー源であるアミノ酸グルタミン(胃薬マーズレン)が良いであろう。

    おわりに

    今回はテレビ番組でも、取り上げ始めている「リーキーガット症候群(腸もれ症候群)」とSIBOのことを述べた。
    腸に悪い食べ物や薬剤、腸に良い食べ物について何度も別々に書いたが、重要で印象づけるために意図的に少しずつ重複させている。

    ※この文章は、九大医学部同窓会雑誌・学士鍋(令和元年6月20日号)に掲載されたものを、許可を得て転載している。


    <参考文献>
    • トンプソン真理子『リーキーガット症候群』(Amazon Service International Ltd,2015年)
    • 藤田紘一郎『「腸もれ」があなたを壊す!』(株式会社永岡書店,2016年)
    • 生田哲『子どもの脳は食べ物で変わる』(株式会社PHP研究所,2018年)
    • 溝口徹『最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門』(光文社新書,2018年)
    • 高橋嗣明『学校に行けない子供・仕事に行けない大人』(KKファインフィクサー,2018年)