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プロテインマニア【後編】

この記事の執筆者

デンタルスタジオ・ラグフォーム新百合ヶ丘

大学卒業後、高齢者医療と美容医療を平行して取り組むことで、加齢による顎顔面の機能・形態変化の若返りを主眼とした治療を行う様になる。

自己紹介

寒いのが苦手です。

前編では私自身の経験談を踏まえながら、吸収・消化の観点から考察したタンパク質の摂り方についてお話しいたしました。後編では、身体作りの上で重要なポイント、タンパク質の摂取に際する注意点などをお伝えしたいと思います。

 

効率の良いタンパク質の摂り方について考える

牛肉についてお話しすれば、部位毎に脂肪量が変わるため、100g辺りのタンパク質の含有量も変わります。身体作りのために牛肉を取りたい場合は、赤味が多い部分を用いることが望ましいですが、価格面とタンパク質の含有量を考えると優先的に選ばれるタンパク源にはなりません。

牛肉(サーロイン)と鶏もも肉そして鶏むね肉の「Protein Efficiency Ratio」を比較しますと、まず100g辺りのタンパク質の含有量に関しては、鶏肉の勝利です。ですが、体重増加に関しては牛肉の方が高いというデータがあります。これは脂肪の含有量によるカロリー差であることが伺えます。つまり「とにかく増量したい」という方には牛肉が適しています。ただし、ほとんどのデータが鶏肉の皮を剥がした状態で算出されているため、あくまでも牛肉と鶏肉(皮なし)との比較になります。

さらに消化のされやすさを加味すると、タンパク質摂取における牛肉と鶏肉の効率差は縮まります。

次に、牛肉(赤身)と鶏むね肉(皮なし)を100g辺りで比較しましょう。タンパク質の消化と生体利用の割合は同程度になります。ですが、タンパク質量に焦点を当てると、鶏むね肉の方がやはり多く含まれています。(※牛肉(赤身)と鶏もも肉では同程度)同量のタンパク質を摂取する場合、牛乳600ml、卵4個分に相当します。そう考えるとサプリメントから摂取するならホエイプロテイン、食べ物から摂取するなら鶏むね肉が最もタンパク質の摂取効率が良いということになります。

ここまでの話から身体作りには下記のポイントが大切だとわかりましたので、さらに掘り下げていきます。

(1)適切量、体重を増やす
(2)筋肉量を増やす((生体内で摂取したタンパク質を有効に活用する)ためには、タンパク質の分解とアミノ酸の吸収を効率良く行う必要があります)

上記のポイントを更に効率化するためには、小腸におけるアミノ酸の吸収率を評価する必要があります。

アミノ酸

胃で消化されたアミノ酸は小腸で吸収されます。タンパク質を構成するアミノ酸には様々な種類があります。身体作りを行う上で、タンパク質の摂取はもちろん重要ですが、欲を言えば身体作りに最も必要なアミノ酸を優先的に摂った方がより効率的です。

「Protein digestibility-corrected amino acid score」では、消化管から吸収されるタンパク質の消化性を評価することはできますが、その評価は排出された糞便中から行います。より確実に吸収効率を測定するには、小腸の末端である回腸で評価を行う必要があります。

そこで登場したのが「Digestible Indispensable Amino Acid Score(DIAAS)問」という評価法です。こちらの評価法を用いると、吸収のされやすさは鶏肉より牛肉の方が少し勝ります。順番としては卵・牛乳が同程度、続いてホエイプロテイン、牛肉と続きます。鶏むね肉はその次(下)に位置する吸収率です。つまり、体内に一度入ればホエイプロテインと鶏むね肉は最強タッグなのですが、腸管からの吸収効率には脆弱な結果が出てしまいます。要するに、多量に食べると吸収しきれずに腸管に詰まるということです。

以上のように評価法によって差異はありますが、少なくともタンパク質を効率良く摂取して身体作りを行う場合には、上記の食品が有効と言えます。

タンパク質の“摂り過ぎ”を考える

次にタンパク質の摂取量について考慮する必要があります。いくら吸収されやすいから、と無尽蔵に大量に摂取すれば、腸管で詰まりかねません。また、「遅延型フードアレルギー」のリスクも上昇するため、特定の食品を過剰に摂取することは避けるのが賢明です。

フードアレルギー

食物アレルギーには2種類あります。

①食べてすぐに症状があらわれる「即時型フードアレルギー」(蕎麦や小麦などにみられる)
②食べて数時間後に不調があらわれる「遅延型フードアレルギー

遅延型フードアレルギーは、何を食べたかよりも“特定の食材をどれだけ食べたか”が誘因となります。即時型フードアレルギーに関する免疫はIgE抗体が担い、遅延型フードアレルギーに関してはIgG抗体が反応します。つまり、アレルギーといってもこれら2つは根本的に別物なのです。

即時型フードアレルギーは、特定の食品の摂取により身体が異物の侵入を認識し、免疫機能が異物を排除する過程においてその力が過剰に生じることで引き起こされます。一方、遅延型フードアレルギーは特定の食品の過剰摂取によって、その食品に特有のタンパク質が腸管壁に多量に詰まることで生じます。

しかし、欧州や米国の多くのアレルギー学会では遅延型フードアレルギー検査のみを食物アレルギーの診断に用いることは推奨しておりません。理由は、IgG抗体の発現は食物へのアレルギーや牛乳摂取にみられるような不耐症(摂取した食物を消化吸収できず下痢などを起こすこと)を示しているのではなく、食物の暴露に対する生理化学反応を示しているためです。

言い換えれば、アレルギー原因としての断定はできないが、その一方でIgG抗体の増加は身体が食物由来(外来性)の特定のタンパク質に曝されている結果、免疫系が外来タンパク質を認識し反応を生じます。つまり、遅延型フードアレルギー検査は「日常的に摂り過ぎている食品目を客観的に判断する1つの指標」としては大変有用です。

さて、ここで「特定のタンパク源ばかり摂取することが、果たして適正な身体作りにつながるのか?」という話になりますね。免疫が反応するということは、慢性炎症の発生が懸念されます。ひとたび慢性炎症が起きれば、細胞のエネルギー産生効率が下がります。そうなればタンパク質の吸収にも筋トレにも悪影響を及ぼしかねません。身体作りのためにタンパク質を摂取しても、これでは本末転倒です。

ここまでお話ししたことを一度整理しましょう。タンパク質の摂取には、下記4点が必要条件として挙げられます。

1)同量の食べ物に含まれるタンパク質の含有量
2)消化・吸収のされやすさ
3)吸収されてから排泄に至る過程における体内での持続性
4)継続的に摂取する場合の生体への親和性(アレルギーや不耐性の出現の有無)

食べ過ぎの判断には遅延型フードアレルギー検査は有効であり、食事メニュー作りの指標になります。とは言っても、摂取効率の良いタンパク質のみ食べ続けて良いのかという疑問が残ります。

これからのタンパク質の摂り方を考える

食事による身体の不調について、ドイツのエルランゲン大学病院アレルギー科で行われた調査では、食事が原因のアレルギーが疑われる患者のうち、食物不耐性が原因で起きた免疫反応はわずか2〜5%に留まり、多くの症例は非免疫反応でした。さらに、食物不耐性によって引き起こされる不調の原因の多くは、アレルギーではなく酵素障害や慢性感染症・心身症だったと報告されています。

つまり、食後に不調を訴える方の大半はアレルギーというよりも食品の消化・吸収のトラブル(遅延型フードアレルギーはこの範疇に入りますが「アレルギー」として認定するか否かは欧米では一定の議論があるようです)であると推察されます。いずれにせよ、本当に効率良くタンパク質を摂るためには、効率の良い食品を選ぶだけでなく、吸収する側(=私たちの身体)もタンパク質を吸収しやすい状態に整える必要があるということです。これは鍵と鍵穴のような関係と言えるでしょう。

どんなに高価で優れたタンパク質を摂取しても、身体に慢性的な感染や炎症が生じていたり、ストレスが続くようなことがあれば、摂取したタンパク質は理想的には吸収されません。冒頭でお話しした通り、当時の私は2kgの鶏むね肉をとにかく食べることを意識していました。しかし、仮に一度に食べ切ることができたとしても、効率的には吸収されないどころか身体の不調を引き起こすリスク要因にもなり得たということです。無駄に食べてしまっては鶏さんに申し訳が立ちません。まずは、摂取したタンパク質を最大限有効に吸収できるコンディション作りをすること。これがその時の正解だったのです。

従来、筋トレを行うには“筋トレ前の高カロリー・高タンパク食の摂取”から始めますが、これからはタンパク質摂取の前に腸内環境の改善や酵素活性、ストレスレベルのコントロールなどを行い、理想的な吸収状態に変えてから食事・トレーニングのメニュー作りの実施が重要となります。タンパク質の摂取を考える前に、現在の自分自身の消化・吸収力について知る必要がありそうです。具体的な方法については次回以降にお伝えしていきます。





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