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座らないでイワシを食べる【後編】

この記事の執筆者

デンタルスタジオ・ラグフォーム新百合ヶ丘

大学卒業後、高齢者医療と美容医療を平行して取り組むことで、加齢による顎顔面の機能・形態変化の若返りを主眼とした治療を行う様になる。

自己紹介

寒いのが苦手です。

座りがちな生活が疾患リスク、死亡リスクに悪影響を及ぼすことを示す文献は多くあります。そして、あらゆる側面において栄養素は重要な役割を担っています。今回はその中でも身体作りに欠かせない「タンパク質」に焦点を当て、私自身が実践しているタンパク質の摂取法についてご紹介したいと思います。

<前編はこちら

イワシの栄養価

イワシに含まれるタンパク質は、100gあたり24.6gほどです。この量は、一般的に食べられている動物性タンパク質の中で最もタンパク質含有量が多い鶏胸肉の皮なし(100gあたり23.3g)をも上回ります。さらに、肉と違ってオメガ3脂肪酸も豊富で、タンパク質と同時に良質な脂質も摂ることができます。

動物脂肪の摂取にみられるような血管への悪影響もありません。その上、イワシにはカルシウムやビタミンDも豊富に含まれています。イワシ100gあたりで1日の摂取量のうち3分の1が摂取できるので、乳製品にアレルギーをお持ちの方などにも向いています。

また、不足しがちな鉄やマグネシウム、セレンも豊富です。また、不足すると貧血や疲労の原因にもなるビタミンB12に関しては、1日あたりの摂取量の3倍以上の量が含まれています。

このように、イワシには良質なタンパク質、油、そしてミネラルが一度に摂れるというメリットがあります。

さらに近年では、イワシのタンパク質をアルカリプロテアーゼ処理して得られるバリルチロシン(サーデンペプチド)が、アンジオテンシンIに対するアンジオテンシン変換酵素の働きを阻害することで血圧を下げる作用を有していることが報告されています。

アンジオテンシンIが変換酵素の働きによりアンジオテンシンⅡに変換されると血圧が上がりますが、この働きをバリルチロシンが抑制することで血圧の上昇が緩和するという仕組みです。

鮮魚としてのイワシ

スーパーまで買い物に行き、大型魚や養殖魚を避けて買い物をしますとかなり品数が減ってしまいます。

そういった時にイワシ(刺身用)が売りに出ていると非常に嬉しくなります。というのも、イワシはプランクトンしか食べないため、重金属の濃縮の心配がないためです。

また、養殖ではなく天然ものですし、なおかつ値段も手頃です。私の場合は刺身では食べずに、3枚におろして加熱して食べています。

丸ごとイワシを食べる際には、やはり小骨が気になると思います。この小骨問題を解決してくれる強力な助っ人が「圧力鍋」です。私は以下の3つのパターンでイワシを食べています。

  1. 圧力鍋で煮る
  2. フードプロセッサーでつみれにする
  3. 3枚におろしてオリーブ漬けにする

3の場合、電子レンジで加熱することで小骨が気にならなくなります。そのため普段電子レンジを使用されないという方には1もしくは2の食べ方をお勧めします。

缶詰としてのイワシ

缶詰は油漬が多く、余計な添加物も含まれていない上に値段も手頃です。骨まで食べられますし、何より手軽なのが大きな魅力です。私は普段インスタント食品や冷凍食品は食べないのですが、何か食べたい時や1品足したい時にはイワシの缶詰を選びます。

中身の詰まったイワシの缶詰ですと、1缶100円前後で24gほどのタンパク質が摂取できるので非常に効率的です。イワシはタンパク質だけではなくDHAやEPAも豊富に含んでいます。また、オリーブオイル漬けですとオメガ3とオメガ9の両方の油を摂取できます。

気をつけたいのは食塩の摂取量

イワシの缶詰を食べる場合、最大の問題は食塩になります。市販されているイワシの缶詰を見ると、食塩含有量は0.9g~1.5gほどあります。食塩無添加の場合ですと1缶あたりのイワシに含まれる食塩は0.3gほどです。しかし、市販されている缶詰の多くには食塩が添加されています。

食塩の摂取基準は国によって異なりますが、欧米では1日あたり3.8〜6gほどです。文献に目を通しますと「0.5gを下回らなければ食事からの摂取は少ないに越したことはない」という意見が多く見受けられます。

とりわけ加工食品には食塩が含まれているものが多く、日常の食事で無意識的に相当量の食塩を摂ってしまうため、現代において食塩を意識して摂取する必要性はあまりないと言えるでしょう。

ちなみに、日本人における食塩の平均摂取量は女性で8.9g、男性では11.8gであり、いずれも欧米の摂取基準を大きく上回っています。

以前フィリピンに行った際、友人が地元のレストランでフィリピン料理をご馳走してくれたのですが、日本食に比べて塩分が強い味付けだったことが印象に残っています。友人曰く、フィリピンの食卓では元々酸味と塩味のある料理を好むそうです。「気温が高く塩分が失われやすい土地柄ならではのメニューだな」と思いました。

ところが、そんなフィリピン人の食塩の平均摂取量も1日あたり7.3gと日本より少ないのです。これは日本食がミネラルを取り除いた精製白米を主体とした献立であるが故に、自然に主菜や副菜にナトリウムの含有量が多くなっていることが1つの要因と考えられます。

したがって、かなり意識を高く持たないと食塩の摂取量を減らすことは難しいかもしれません。例えば今回の主役であるイワシに置き換えてみると、缶詰をたくさん食べると塩分を摂り過ぎてしまうため、缶詰を煮返したり摂取量を1日1缶までにするなどの工夫が必要です。

1缶あたりの食塩の含有量で比較すると、オイルサーディンの方が煮付けの商品よりも少なく、0.9g〜1.2gの商品が多くなります。しかし、摂取する食塩量を制限するためには、もう一押し打ち手が欲しいという印象です。

干物としてのイワシ

イワシの商品には大きく分けて生、缶詰、干物の3種類があり、干物に関しては無塩の商品もあります。そして、人間用のみならずペット用の商品も存在します。さすが獣医さんは進んでいます。

缶詰のイワシと比較するためにタンパク質量で塩分を換算しますと、0.16g~0.95gとなり、缶詰よりさらに少なくなります。煮干しの摂取量としては33gほど。煮干しは手軽に小分けして食べられますので、1食あたり10g程度の煮干しを食べれば、1日の摂取タンパク質量は有意に増やすことができます。

これらを踏まえて、私は日常生活のサイクルの中で下記3点で基礎的なタンパク質の摂取を行っております。

  • 仕事上での外食で店やメニューが選べる時は「サバ」
  • 家では「イワシ」(生を調理するか缶詰を煮返す)
  • 弁当は煮干し

魚食のすすめ

米国では今から40年以上も前から分子栄養学を基にした食事療法がもたらす慢性疾患への影響が調査されてきました。昔の論文に目を通しますと「日本人は魚を欧米人よりはるかに多く食べているため、(彼らのデータは)成績が良すぎて米国のデータには組み入れられない」といった記載を目にすることができます。

しかし、近年では日本人の食生活も大きく変化し、それに伴う慢性疾患の増長が見受けられます。これは大変残念なことです。

前編の冒頭でお話しした講習会の中で、ボディービルダーの方々は皆さん手作り弁当を持参していました。彼らの自己管理意識の高さには脱帽するばかりです。

毎日自炊するのが難しい場合でも、自分の身体を管理するために市販の加工食品に頼り過ぎず、ホールフードを少しでも用意するのが一番です。今日から用意できる最も簡便な方法は「煮干し」です。

煮干しなら外に持ち歩いても缶詰のように開けた時の匂いが少なく、缶を処分する手間もかかりません。手軽な弁当にも最適です。次は座らないでイワシが食べられる職場づくりをしていこうと、一人勝手に思っております。





<参考文献>

https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-018-1062-2

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6133005/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10962520/

https://www.eatthismuch.com/food/nutrition/sardines,3341/