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亜鉛の投与が新型コロナ重症化を防ぐカギに?

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育 ... [続きを見る]

亜鉛の新型コロナウイルスに対する作用について、これまで臨床的エビデンスはありませんでした。

そんな中、今年3月から10月にニューヨーク大学医学部が行った研究において、ある重要な結果が発表されました。コロナ陽性患者3,473名を対象に行った亜鉛およびヒドロキシクロロキンの投与と死亡率の相関関係について指し示したのです。

ニューヨーク大学医学部が行った研究の持つ意味

ニューヨーク大学医学部のジェニファー・フロンテラ教授の研究グループは、亜鉛の投与が新型コロナ感染の院内での死亡率を24%減少させると発表しました。(1)

 <画像>研究の代表者 ジェニファー・フロンテラ教授


今年10月にはトランプ大統領の新型コロナウイルス感染が報道されましたが、この時に主治医団がトランプ大統領の治療について発表しました。その中にも亜鉛とビタミンDが含まれていました。(2)  以前から細胞内の亜鉛が十分であると、コロナウイルスのようなRNAウイルスの複製が阻害されることが知られています。(3)

そこで、新型コロナウイルスのパンデミックを抑えるために、亜鉛の補給が提案されていました。しかし、今回のニューヨーク大学の研究結果が発表されるまで、亜鉛が新型コロナウイルス感染に効果があるという臨床的なエビデンスはなかったのです。「治療」を目的とした場合、臨床的なエビデンスが重要です。そうした観点からも、ニューヨーク大学が出したこの研究結果は、とても重要で大きな意味を持つものです。

ヒドロキシクロロキンとの併用により亜鉛の細胞膜透過性が高まる?

急性感染の時に経口で亜鉛を摂取しても、短時間で細胞内に届けることは難しいです。この問題を解決するのが、抗マラリア治療薬であるヒドロキシクロロキン(以下クロロキンと表記)です。クロロキンには抗ウイルス作用があり、新型コロナウイルスの治療薬の一つにもなっています。クロロキンは、亜鉛の細胞膜透過性を高めて細胞内の亜鉛濃度を増加させる作用があります。(4)

つまり、クロロキンと亜鉛を同時に投与することで細胞内に亜鉛を迅速に届けることができるのです。ここにニューヨーク大学の研究者は目を付けたのです。

研究の概要

2020年3月10日から5月20日までの間にニューヨーク市の4つのニューヨーク大学関連病院に入院したPCR陽性の成人患者3,473名を対象に、多施設コホート研究を実施しました。このうち、1,006名に亜鉛1回50mgを1日1〜2回、クロロキンは1回400 mg を1日2回、その後は4日間1回200 mg を1日2回投与しました。

その結果、亜鉛とクロロキンを投与した患者の死亡率は12%であり、投与されなかった患者の17%と比較すると院内死亡リスクが24%減少しました。なお、クロロキンの単独投与もしくは亜鉛の単独投与では死亡率の減少は認められませんでした。

オーソモレキュラー医学からみた、新型コロナ予防のための亜鉛

亜鉛欠乏の症状の一つに味覚障害があります。また、新型コロナウイルス感染時にも特徴的な症状として「味覚障害の出現」が現れるのは、ご存知の方も多いかと思います。これは、第一に味蕾(みらい:主に舌に存在する味覚を感知する器官)へのウイルス感染、第二に亜鉛の消費量による亜鉛欠乏、もしくはこの両方が合わさった状態であると考えられます。いずれにせよ、予防のためには日頃から食事やサプリメントから亜鉛を摂取することがポイントになります。というのも、新型コロナに感染してから亜鉛を摂取するのでは、細胞に十分な亜鉛を届けるのが間に合わないかもしれないからです。

今回ご紹介した研究で脚光を浴びた亜鉛は、日本においても食習慣の変化により不足しがちなミネラルの一つです。とりわけ子どもや高齢者、若年層の女性の亜鉛不足が指摘されています。 (5)

また、国際オーソモレキュラー医学会が新型コロナウイルス感染予防および軽症化のために推奨する5つの栄養素の中にも亜鉛は含まれています。特に重症化しやすい高齢の方や基礎疾患をお持ちの方は、サプリメントで1日30〜50mgの亜鉛摂取を推奨します。(5つの栄養素についてまとめた記事はこちらに掲載しています。まだご覧でない方は、本記事と合わせて参考にしていただければと思います)

亜鉛やビタミンDなどの栄養素が新型コロナウイルスから自分の体を守ることを示すエビデンスが構築されてきています。ここで指摘したいのが、亜鉛やビタミンDの欠乏症の問題です。欠乏症であった場合、亜鉛やビタミンDの投与で欠乏状態を改善することにより、本来自身が持っている免疫力や抗炎症・抗ウイルス能力が発揮され、新型コロナウイルス感染からも自らを守ることができます。

「常に栄養素が十分に満たされて、高い健康レベルを保つように心がける」。これがオーソモレキュラー医学の基本的かつ礎となる考え方です。





<参考文献>

(1) https://www.researchsquare.com/article/rs-94509/v1
(2)https://www.insider.com/science-behind-supplements-trump-taking-coronavirus-zinc-vitamin-d-2020-10
(3)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2973827/
(4) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4182877/
(5)https://kenkyuukai.m3.com/journal/FilePreview_Journal.asp?path=sys%5Cjournal%5C201512071739194306467A888B69D8387AD0D2EE8FDDB85F741EAD08EB0816B27C73198F6F377C.pdf&sid=738&id=2091&sub_id=35763&cid=471