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発酵玄米の健康効果

この記事の執筆者

下北沢西口クリニック

医学博士。産業衛生専門医・指導医。社会医学系専門医・指導医。専門は予防医学、産業保健、分子整合栄養療法

日本食は身体に良いと言われています。その中でもとりわけ発酵食品は、古くから健康に良いことが知られており、今日でも多くの発酵食品が食生活に取り入れられています。味噌、醤油、納豆、ぬか漬け、かつお節などが代表的な発酵食品です。発酵食品は原料や、発酵過程の違いによって成分や機能が変化することがわかっています。つまり、食材を発酵させることで、より多くの健康効果が期待されるのです。

また、玄米はオーソモレキュラー医学の観点からも重要である各種ミネラルやビタミンB群、食物繊維といった栄養素を豊富に含んでいます。加えて玄米は食後血糖値の上昇を抑えることから肥満や糖尿病の予防作用など、白米と比べた際の栄養価の高さが注目されてきました。

そして近年、この玄米を発酵させることで各種酵素が生じ、アミノ酸やビタミンB群が増加すること、さらに発がん予防作用を有することが基礎研究によって明らかになってきました。「医食同源」という考えによれば、私たちの体を作る栄養素によって健康が左右されるのは当然のことです。

日本古来の健康食品である玄米と発酵の組み合わせこそ、日本人が誇る長寿の大きな理由の一つと考えられており、今後の健康面への活用が期待されています。

玄米とは

本題に入る前に、まず玄米の定義についておさらいしましょう。玄米は表皮、胚芽がついたままのお米です。この表皮、胚芽に多くの栄養素が含まれているのです。玄米に含まれる主な栄養素は、ビタミンB群、γ‐オリザノール、フェルラ酸、フィチン酸、γ‐アミノ酪酸(GABA)、各種ミネラル、食物繊維などです。

玄米に含まれている栄養素

玄米に含まれるそれぞれの栄養素について簡単にご紹介します。

ビタミンB1(チアミン)

ビタミンB1が不足すると脚気になることは有名です。糖質をエネルギーに変換する時に必要なビタミンです。神経障害改善作用、鎮痛作用、胃腸管運動促進作用などを持っています。

ビタミンB2(リボフラビン)

ビタミンB2は、糖質、アミノ酸、脂質の代謝、そしてエネルギー産生に関与する酸化還元酵素の補酵素です。発育促進の役割を果たすほか、皮膚、髪、爪の細胞の再生にも関わっています。

ビタミンB3(ナイアシン)

ナイアシンはペラグラの特効薬としても有名です。エネルギー産生やアミノ酸、糖質、脂質代謝に関わる活性型補酵素として働きます。特に、エネルギー産生は非常に重要で、コエンザイムQ10とともにミトコンドリアのエネルギー産生能を高めます。また、循環を促進し血圧を安定させ、LDLを低下させます。結果として、脂質異常症の改善や動脈硬化の予防につながります。さらに解毒作用、抗酸化作用、抗アレルギー作用を有することも知られています。

そのほかにも以下の作用が期待されています。

・大腸がんの予防(大腸の炎症を抑制する)
・睡眠改善
・うつ病の治療
・統合失調症の治療
・アルツハイマー病の予防

パントテン酸(ビタミンB5)

パントテン酸は、エネルギー産生の補酵素の成分です。クエン酸回路、脂肪酸のβ酸化の代謝系において重要な役割を果たしています。また、多くの酵素反応に関与しているほか、HDLを増やし、ホルモン・抗体の産生にも関わっています。

ビタミンB6

ビタミンB6は、多くのアミノ酸代謝の補酵素として重要な役割を果たします。赤血球中のヘモグロビン、神経伝達物質の合成に関わっています。皮膚の抵抗力を高め、免疫機能の維持作用および脂質代謝に関与してコレステロールを低下させることが知られています。

ビオチン

ビオチンは糖代謝、脂肪酸代謝、アミノ酸代謝の補酵素としてエネルギー産生に関与しています。また皮膚、粘膜、髪の毛や爪の健康にも深く関わっている栄養素です。

γ-オリザノール・フェルラ酸

γ-オリザノールは古くから医薬品として、下記の治療に用いられてきた安全な化合物です。

・心身症におけるうつ・不安・緊張の抑制
・コレステロールの吸収阻害
・排泄促進による脂質異常症の治療

γ-オリザノールはポリフェノールの一種であり、酸化防止作用、紫外線吸収作用を持ちます。そのため化粧品の材料として、また、食品添加物としては「酸化防止剤」として用いられています。さらに、脳内神経伝達物質のエンドルフィン、成長ホルモンを増加させ、筋疲労を防ぎ、運動能力を高めるとも言われています。

脳内では、海馬のインスリン様増殖因子Ⅰ(IGF-Ⅰ)を増加させ、血管新生、神経再生を促します。海馬の機能を高めるため、アルツハイマー病の予防や改善にも効果があると報告されています。また、炎症を抑制してアディポネクチン(善玉物質の一つ)の分泌を増やし、メタボリックシンドロームを改善する効果も持っています。IgEを捕捉し、アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症などのⅠ型アレルギーを予防することも示唆されています。

フェルラ酸は、γ-オリザノールを加水分解することで得られます。植物の細胞壁の構成成分であるリグニンの中間体であり、pH調整剤(食品添加物の一つ)としても用いられます。

フィチン酸

フィチン酸は金属のキレート作用を持っており、金属を排泄する作用があります。また、抗酸化作用、老化防止作用、抗がん作用もあるとされています。果汁、色素の変色防止やビタミンCの安定化に効果があるため、食品添加物として飲料、お菓子などに使用されます。一方、化粧品の原料としても利用されています。

γ-アミノ酪酸(GABA)

GABAはタンパク質を構成しないアミノ酸です。Gamma-Amino Butyric Acidの頭文字を取ったもので、日本においても「ギャバ」として知られています。ヒトにおいては、抑制系の神経伝達物質として機能しており、降圧作用、脳機能改善作用などが認められています。GABA は交感神経を抑えるとともに、ノルアドレナリンの分泌抑制により血管収縮を抑え血圧を低下させると考えられています。

発酵玄米のサプリメント

最後に、発酵玄米のサプリメント「フブラ」についてお話しします。

玄米発酵食品であるフブラ(FBRA:Fermented Brown rice and Rice bran with Aspergillus oryzae)は、アスペルギルス・オリザ菌を用い玄米を発酵させて作った食品です。驚くべきことに、この「フブラ」には栄養素が40種類以上含まれています。発酵過程を経て、多くの栄養素において玄米よりも数倍から数十倍栄養価が高くなることも知られています。

フブラを用いてマウスの実験を行った研究では、大腸、肝臓、すい臓、食道、胃、膀胱、口腔、肺、前立腺などにおいて、化学物質による発がんを抑制することが報告されています。また、この発がんの抑制が炎症を抑えることによってもたらされることも明らかになってきました。まだヒトでの効果は科学的に証明されてはいないものの、副作用がなく食品としても摂取が可能であるため、健康増進作用だけでなく、発がん予防・がん治療にも用いることが可能ではないかと今後の動向が期待されています。

発酵玄米ご飯、味噌、(甘酒を作るための)玄米麹をはじめ、玄米と発酵の組み合わせの食品は色々ありますが、サプリメントとして摂取できる発酵玄米は簡単に多くの栄養素を補充することができます。私にとって発酵玄米は幼い頃からとても身近にあるサプリメントでした。それは薬剤師であった叔母の勧めで、祖母がそのサプリメントを食後に忘れず服用しているのをずっと見て育ったためです。祖母は約40年、発酵玄米のサプリメントを飲み続け、その間全く病気にかかることなく98歳まで長生きしました。

私の父ががんを発症した時、母は迷わずそのサプリメントを取り寄せて父に飲ませました。もちろん、それだけが要因ではなかったと思いますが、父はがんを克服して元気になりました。また、昨年亡くなった第71代内閣総理大臣 中曽根 康弘氏も昭和57年からこのサプリメントを愛用していたそうです。

このサプリメントは玄米に麹菌を加えて発酵させて作られていますが、腸内の善玉菌を増やすことも示されており、今後ますます注目されてくるのではと考えています。





<参考文献>

  • 谷口久次、橋本博之、細田朝夫 他:米糠含有成分の機能性とその向上.日本食品科学工学会誌 59(7):301-318,2012.
  • 食と健康研究所ふぶらぼホームページ:https://fbra.jp/