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感染症から身を守るための免疫強化術【第2弾】

生物の生存戦略と免疫の意味論;しなやかな免疫バランスを維持する

この度「パンデミックの時代にウイルスから身を守るには免疫力が大切なので、専門家が推奨する免疫強化法について寄稿せよ」とお招き頂きました。

私は免疫学の素人ですが、これまで生物進化や活性酸素代謝の視点から生体防御機構を研究してきました。本稿では、生物の生存戦略における感染と免疫の関係について考察したいと思います。

生物の「生存戦略」としての免疫システム

人体は栄養素の塊りです。そのため、常に“餌”として外敵に狙われる宿命にあります。人類永遠の宿敵は細菌やウイルスなどの病原体であり、免疫系は彼らに対する防御機構として進化を遂げてきました。

病原体の種類は極めて多様であり、広範なスペクトルの免疫力が必要となります。免疫系には自然免疫獲得免疫があります。このうち獲得免疫は「液性免疫」と「細胞性免疫」から構成されていて、人それぞれ顔形が異なるようにヒト白血球抗原(HLA:白血球の血液型)と呼ばれる広範なエピトープ(抗体の特異的結合部位)が関与しています。

遺伝的レパートリーの拡大で感染症対策として進化したのがセックスであり、多様性の拡大で様々な病原体に対応が可能となります。病原体の主要な感染経路は皮膚および消化管粘膜であり、そこに多くの免疫系細胞が集結しています。身体の外装である皮膚は免疫防御系が極めて強靭であり、皮膚が自家移植しかできないのはこのためです。

内壁を構成する消化管は、異種生命体である食物の入り口です。これらを異物として排除すると餓死してしまうので、口から入る異物に対する消化吸収システムと共生微生物圏が免疫栄養学として進化してきました。

両者が協働する栄養代謝と免疫の軍事訓練が営まれています。「免疫力は強ければ良い」との意見もありますが、これは誤りです。免疫力が強すぎると異物に過剰反応して食物アレルギーを起こします。口から入る物を拒否しないのはこのためです。

これは下の口である膣から入ってくる精子に対しても同様であり、これを拒否すると種が絶滅します。受精、着床、妊娠、陣痛、出産、授乳の全プロセスも免疫系で高次に制御されているのです。今生を生きる栄養免疫学と遺伝子を明日へ継承する生殖免疫学の動的バランスの基に、我々は今日まで生き延びてくることができました。

ヒトは約37兆個の細胞で構築されています。その身体には数百兆個もの細菌と無数のウイルスが共存しており、その共存関係こそが人体のスーパーシステムを維持するモジュールとなっています。

「どんな食材をどのように調理し、いつ・どのように食べるか」が、栄養エネルギー代謝と免疫栄養系のバランス維持の基本になります。

揺り籠から墓場までの健康を維持する食事には、自分の歯でしっかり噛んで食べる“顎力”が重要です。これと同時に、脳と免疫系を調和させるシステムとして「末梢組織から中枢神経を軍事訓練する筋肉活動」が不可欠です。

握力・顎力・歩行力に加え、脳免疫系を高次に活性化する文化に触れて感動と出会うこともまた、免疫系バランスの維持のためには必要不可欠です。

免疫バランスを維持するための3か条

最後に、免疫バランスを維持するために重要な3つのポイントを簡単にご紹介します。これらの詳細に関しては、井上正康のホームページをご参照ください。

①食によるケア
  • 基本的には水溶性(海藻類)&不溶性食物繊維(根菜類)を常食して、腸内フローラの多様性を維持する。
  • 毎朝、箸が立つほど具沢山の味噌汁と固めのおかずを良く噛んで食べることで顎力を鍛える。
②全身から脳免疫統合系への刺激
  • 毎日、自分の手で全身の動脈マッサージを行い、血流改善と動脈硬化を抑制する。
  • マイカーに頼り切らず、可能な限り毎日歩いて歩行力を鍛える。
③メンタルな刺激で脳を活性化
  • 多くの楽しい人々と出会い、飲食を共にしながら語り合う(脳免疫統合系と脳血流改善)。

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