新型コロナウイルスの後遺症としてブレインフォグが問題となっています。ブレインフォグとはその名の通り、脳に霧がかかったような状態を指し、思考力の低下や無気力、眠気の誘発など日常生活動作に支障をきたしてしまう可能性があるものです。
ブレインフォグvol.1~脳に霧がかかる?!~
ブレインフォグはその名の通り脳に霧がかかった状態を言います。ブレインフォグは昔からあったものなのですが、近年、新型コロナウイルスの後遺症としてブレインフォグを訴える方が多くなってきています。ブレインフォグのメカニズムはまだわかっていないことが多いものの、
- 頭がボーッとする(思考力の低下)
- 眠気が続くような感覚がある(睡眠の質の低下)
- 目の前のことに集中できない(集中力の低下)
- 色々なことを考えてしまい混乱する
- 頻繁に物忘れをする(認知障害)
- 言いたいことがスラスラ出てこず、言葉に詰まる
等の症状が出てきてしまうものを言います。
これらを改善するためには脳への血流量を増やす、脳の細胞を活性化するなどが挙げられます。そのためにも脳の血流を改善するような栄養素を摂取することが重要となってきます。
ブレインフォグとは
ブレインフォグのメカニズム
ブレインフォグのメカニズムとして現在仮説段階ですが、2つ考えられています。
- 新型コロナウイルスに罹患した後に抗体ができ、その抗体が神経細胞に作用して、有髄神経細胞のミエリン鞘を攻撃して、神経終末からの神経伝達物質の放出量が低下し、結果的に思考力が低下してしまうこと
- 新型コロナウイルスに対して免疫細胞がサイトカインを放出し、そのサイトカインによって神経細胞を攻撃し、神経終末からの神経伝達物質の放出量を低下させることで、脳活動水準が低下してしまうこと
等と言われておりますが、まだ詳しいことはわかっておりません。
イチョウ葉エキスとプラズマローゲンの効果
そこで、われわれ研究チームはまず脳の血流量を改善させることで、神経細胞に対して酸素供給量を増加させて活性化させる方法、有髄神経細胞のミエリン鞘を回復させることで、神経伝達をスムーズに行う方法はないかと模索したところ、脳血流量を改善させる栄養素としてイチョウ葉エキスに着目をしました。またミエリン鞘はプラズマローゲンによって回復する可能性が示唆されたために、イチョウ葉エキスとプラズマローゲンを合わせた栄養素が効果的ではないかと考えられました。
1)イチョウ葉エキス
元来イチョウ葉にはフラボノイドが含まれており、活性酸素の除去を促す作用があると言われています(1)(2)。
ブレインフォグを引き起こす原因の一つに炎症における活性酸素の発生が考えられるため、第1段階でこの活性酸素を除去することができると考えられます(3)。
またイチョウ葉エキスにはテルペンラクトンも含まれ、血液の粘度を低下させ、血流量を増加させることにより、結果的に脳血流量も改善するといわれています(4)。
このように活性酸素の除去と脳血流量の改善によって、ブレインフォグの一部が改善されると予測されるました(3)(5)。
またブレインフォグ以外においても、年齢とともに血管の硬化が進むことによって、脳血流量が低下をするため、認知機能が低下してしまう可能性が考えられるため(6)、イチョウ葉エキスを使用することは適切であると考えられました。
2)プラズマローゲン
プラズマローゲンは人体において神経系、心臓、骨格筋に存在するリン脂質の一種です(7)。
神経系の中でも脳には90%占めると言われています(8)。
とりわけ本研究においてはブレインフォグ、つまり中枢神経に注目していますが、脳内のグリセロリン脂質の30%、ミエリン鞘のエタノールアミングリセロリン脂質の最大70%がプラズマローゲンです(9)。
脳は神経細胞の集合体です。神経細胞には様々な種類がありますが、その中でも有髄神経細胞の軸索にはミエリン鞘が存在し、これは前述したエタノールアミングリセロリン脂質で構成されています(10)。
このミエリン鞘とミエリン鞘の間をランヴィエの絞輪と言い、神経伝達はここを使用して行われています(11)。
このミエリン鞘において機能低下(プラズマローゲンの不足)が引き起こされると、うまく神経伝達が出来なくなってしまうために、結果的に認知機能が低下してしまうと言う可能性が考えられます(12)。
まとめ
本研究におけるイチョウ葉エキスとプラズマローゲンを組み合わせた物質を使用してブレインフォグの改善を見たものは世界で初めてです。
イチョウ葉エキスによる抗酸化作用と脳血流量改善、プラズマローゲンによる脳細胞の活性化(ミエリン鞘の修復)・認知機能の改善の多角的なアプローチによってブレインフォグを改善させることができたと考えられます。
参考文献
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