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【症例】新型コロナ重症患者が高用量ビタミンC点滴で回復(アメリカ)

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育 ... [続きを見る]

武漢(中国)から始まった新型コロナウイルス(COVID-19)は感染拡大を続けており、現在200か国以上で症例が確認されています。これまでのところ、COVID-19に対する治療として、実証済みの選択肢はありません。重症になると、サイトカインストームが誘因となり急性呼吸不全症候群へ進行する可能性があります。このような状態になれば、致死率は50%近くに上昇してしまいます。

最近になり、マクラーレン・フリント・ミシガン州立大学病院(米国)の集中治療チームは、重篤な患者が高濃度ビタミンC点滴療法により急速に回復した事例を『Journal of Case Reports』に報告しました。今回はこの症例の詳細をお伝えし、コロナ重症患者に対するビタミンC投与について考察したいと思います。

患者の基本情報

<プロフィール>

  • 74歳の白人女性。旅行歴はなし。
  • 2日前から軽度の発熱、乾性咳および息切れが出現し、救急外来を受診。

<来院時の状態と診断>

  • 体温37.3℃、血圧121/82、脈拍87/分、呼吸数16呼吸/分、酸素飽和度は87%と低下。
  • 胸部X線検査では肺炎の疑いあり。
  • 血液検査ではリンパ球減少とLDH、フェリチンおよびIL-6の上昇を示す。

治療内容

今回の治療では最初に、経口でヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、亜鉛、ビタミンC2gの摂取から開始されました。しかしながら、入院1日目から4日目までの間に徐々に息切れが増加、吸入酸素必要量も10Lと増加、6日目には女性の呼吸困難は急速悪化し、酸素必要量は15Lに達しました。この時の血圧は78/56 mmHg、心拍数112/分、体温38℃、呼吸数は28回/分でした。また、胸部レントゲン写真では肺炎および間質性浮腫による両側の肺胞浸潤を呈し、人工呼吸器下で管理されることとなりました。

敗血症性ショックの合併のためノルエピネフリンによる昇圧を開始、平均動脈圧が65 mmHgを超えました。その後、点滴による高用量ビタミンC(今回の場合は11g)の24時間投与を開始しました。すると、彼女の臨床状態は緩やかに改善、挿管4日目には昇圧剤が不要になりました。10日目の胸部レントゲンでは、肺炎と間質性浮腫の有意な改善を示し、人工呼吸器から離脱しました。ビタミンC投与は開始から10日間継続しました。

彼女は救急救命室から隔離室へ移送され、身体的および職業的リハビリテーションを受けました。彼女は発症後16日目の段階ではSARS-CoV-2のRT-PCR検査で陽性を示し、さらに14日間の観察後に安定した状態で退院しました。

今回の症例に対する考察

何十年にもわたる研究によって、ビタミンCは免疫細胞機能の重要な構成要素であり、様々な免疫機構において重要な役割を果たすことがわかってきています。ビタミンC欠乏症の患者は致命的な壊血病を発症する可能性があり、肺炎を含む感染症に非常に敏感です。ビタミンCは、好中球の運動性、食作用、活性酸素種の活性化による微生物の殺傷およびアポトーシスを増強し、その抗酸化特性によって酸化的損傷を防ぎます。 さらに、BおよびTリンパ球の増殖と抗体産生を促進します。

最近では、ビタミンCがIL-6を含む炎症誘発性サイトカインの生成を防ぐとのデータが出ています。昨今のメタアナリシスにおいては、ビタミンCが重度の敗血症ならびにARDS患者の人工呼吸の持続時間とICU滞在期間を減少させることを示しました。こうしたデータの蓄積も影響しているのか、COVID-19の治療にビタミンCを用いる臨床試験も行われています。武漢大学のPengらは、ビタミンC点滴の効果を研究するための第II相試験を開始しました。この臨床試験では、重篤患者は1日あたり点滴で24gビタミンCを7日間投与されます。

また、シアトル地域のCOVID-19重症患者を調査したバトラージュらの研究によると、ICUの滞在期間の中央値と人工呼吸器装着期間はそれぞれ14日と10日である一方、本症例の場合、それぞれ6日と5日と大幅な期間短縮がみられました。

おわりに

ビタミンCは免疫システムの中心的要素であり、抗酸化作用と抗炎症作用が証明されています。特に持続的にビタミンCを点滴で使用した場合の重度の敗血症とICUケアにおける役割については、多くの研究でテストされています。今回報告した症例では、高用量のビタミンC静脈内投与によって、施設における平均人工呼吸器装着日数・ICU滞在日数を短縮し、人工呼吸器装着からの早期回復、病期の短縮がみられました。

本症例報告の検討をきっかけに、人工呼吸器とICU管理を必要とするCOVID-19重症患者における高濃度ビタミンC点滴療法の効果を正確に判断するためにも、ランダム化比較試験による臨床評価を行うことが重要ではないかと結論付けました。




<参考文献>

柳澤 厚生 (ヤナギサワ アツオ)先生の関連動画

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