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男性機能の低下、気になっていませんか?

この記事の執筆者

佐井泌尿器科・皮フ科クリニック

皮膚科、泌尿器科の分野の専門的な医療に加えアンチエイジングにも力を、レーザー等による外面的なアンチエイジングだけではなく、内面からのアンチエイジングも重視し、漢方や点滴療法などにより未病を防ぐ意味での ... [続きを見る]

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今日、LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と診断される男性の数が増えています。LOH症候群とは、男性ホルモンが低下することで生じる疾患です。

男性ホルモンの減少によって低下するのは、性機能だけではありません。脳の認知機能も低下するため、抑うつ症状、不眠、疲労感などを引き起こし、日常生活のみならず社会生活にまで支障をきたしかねません。男性ホルモン減少の原因としては加齢が一般的にも知られていますが、40代の比較的若い年齢でも生じる場合があり、最近の研究ではメタボリック症候群との関係が取り沙汰されています。

また、うつ病治療を行われている方の中には、LOH症候群が原因となっていることがあります。この場合、通常のうつ病治療では効果がないため、男性ホルモンの補充療法を実施することが多いです。しかし、最近Dr.Wangらの研究により「レスベラトロール」(赤ワイン等に含まれるポリフェノールの一種)が男性ホルモンを増加させることがわかり、栄養療法を用いたLOH症候群治療の可能性が示唆されました。

増加傾向にあるLOH症候群

LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と診断されている男性の数が増えています。LOH症候群とは、男性ホルモンが低下することで生じる疾患です。

症状としては、男性ホルモンの減少により性機能だけでなく、脳の認知機能も低下し、抑うつ症状、不眠、疲労感などを引き起こし、日常生活のみならず社会生活にまで支障をきたします。

男性ホルモン減少の原因としては、一般的に加齢が挙げられますが、40代の比較的若い年齢でも生じる場合があり、最近の研究ではメタボリック症候群との関係が取り沙汰されています。

メタボと男性機能

Dr.Wangらは、高カロリーおよび高コレステロール食のマウスの精巣細胞におけるホルモン産生に対する有害な影響を調べる研究を行いました。すると、これらの食餌により血清テストステロンおよび黄体形成ホルモンの有意な減少が生じ、メタボリック症候群が男性機能に大きく影響を与えていることが指摘されています。1)

このマウスにブドウ由来ポリフェノールのレスベラトロールを投与すると、ホルモン産生に対する悪影響の減少がみられました。レスベラトロールが、男性の肥満に関連した続発性性腺機能低下症を改善する可能性が示唆されました。

男性ホルモンの分泌が抑制されると、脳のストレス耐性が低下し、さらにストレスにも弱くなります。この悪循環により男性ホルモンはいっそう減少してしまいます。こうして男性ホルモンが減少すると、脳の認知機能が低下し、さらには抑うつ症状、不眠、疲労感などを引き起こすと考えられています。

Dr.Wangらの研究では、高カロリーおよび高コレステロール食(HCD)を与えたマウスのLeydig細胞におけるホルモン産生に対する有害な影響と、レスベラトロール投与によってもたらされる恩恵について調べました。マウスに高カロリー食を単独(以下HCD群)、またはレスベラトロールを追加した(以下HCD + Res群)食餌を18週間与えました。同用量のレスベラトロールを含まないまたは同用量の標準食餌を与えたマウスを対象としました。

結果は、対象と比較し、HCD群において血清テストステロンおよび黄体形成ホルモン(LH)の有意な減少がみられました。ホルモンの変化と一致して、精巣組織における精細管アンドロゲン受容体(StAR)およびステロイド産生酵素の発現は、HCD群において有意に下方制御されていました。

一方、レスベラトロール追加群は、精細管アンドロゲン受容体およびステロイド産生酵素の発現を有意に改善し、HCD + Res群の血清テストステロンおよび黄体形成ホルモン濃度を増加させる可能性が示されました。また、HCD群のマウスはMnSOD(マンガンスーパーオキシドディスムターゼ)およびGPx4(グルタチオンペルオキシダーゼ4)のmRNA発現において、統計的に有意な下方制御を示しました。レスベラトロール追加群は、HCD群と比較して精巣のMnSODおよびGPx4発現を改善させました。

この研究では、レスベラトロールがHCDを与えられたマウスのLeydig細胞のステロイド産生への有害な影響を弱める可能性が明らかにされました。抗酸化防御メカニズムと黄体形成ホルモンレベルのアップレギュレーションは、その保護に役割を果たすかもしれません。レスベラトロールが男性の肥満に関連した続発性性腺機能低下症を標的とした治療アプローチの可能性を秘めていることが示されたのです。

レスベラトロールと性機能

レスベラトロールは長寿遺伝子を活性化させることで有名ですが、EDにも効果的であることがわかっています。性的刺激を受けるとNO(一酸化窒素)が生成され、これがグアニル酸シクラーゼを介してGTPがcGMPに変換され、これが陰茎海綿体の平滑筋細胞を弛緩させ勃起が完成します。

レスベラトロールは、陰茎海綿体の平滑筋細胞内でNOを増加させることによりEDを改善します。また、レスベラトロールの摂取による血中遊離テストステロンの増加でもEDの改善が期待できます。

まとめ

LOH症候群の治療は通常、テストステロン補充療法を行います。一方で、ホルモン補充の基準を満たしていない人に対しては性欲、エネルギーおよび身体能力の改善を得るための栄養療法が注目されています。レスベラトロールはこのような場合に良い適応と思われます。





<参考文献>

  • Wang HJ,Wang Q,Lv ZM,et al.:Resveratrol appears to protect against oxidative stress and steroidogenesis collapse in mice fed high‐calorie and high‐cholesterol diet.Andrologia;47,59-65,2015

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