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新型コロナ予防・治療プログラムとイベルメクチン

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育 ... [続きを見る]

今回は、救命救急医学の専門家集団が提唱した2つの新型コロナ予防および治療プロトコル『MATH+』と『I-MASK』の内容をご紹介いたします。

また、『I-MASK』プロトコルで用いられるイベルメクチンは、各国の研究結果から新型コロナウイルスに有効である可能性が考えられています。本稿では、このイベルメクチンについて、2ヶ国の研究結果の概要と主な作用についてもお話ししてします。

救命救急の専門家が提唱した新型コロナ治療プロトコル

新型コロナウイルスパンデミックが米国を襲ったのは、2020年3月のことでした。

ポール・マリク教授(救急医学の専門家でイースターン・バージニア大学の救命救急医療部)やピエール・コリー部長(ニューヨークのベス・イスラエル病院)が中心となり、「新型コロナウイルスから人々の命を救い、パンデミックを抑える」ための救命救急医学専門家集団『FLCCCアライアンス(Front Line COVID-19 Critical Care Alliance)』を立ち上げました。

<写真>ポール・マリック教授(イースターン・バージニア大学)


FLCCCは、新型コロナ入院患者に向けた治療プロトコル『MATH+』を提唱しました。このプロトコルは、これまでの臨床経験と科学的エビデンスに基づいて作成されており、軽症者から重篤患者までをカバーしています。プロトコルのメインとなる治療薬は以下の4つです。

  1. メチルプレドニゾロン
  2. アスコルビン酸(ビタミンC)
  3. チアミン(ビタミンB1)
  4. ヘパリン

『MATH+』という名称は、これら4つの治療薬「Methyl-prednisolone」「Vitamin C」 「Thiamine」「Heparin」の頭文字に加え、ビタミンD・亜鉛・メラトニンといった補完治療を「+」として組み合わせたものです。

この治療プロトコルにおいて注目すべきは、従来の薬剤一辺倒の治療とは異なり、治療のコアにビタミンや亜鉛などを追加した点にあります。

新たなプログラム『I-MASK+』とは?

2020年10月、FLCCCは『MATH+』に続き、新しいプログラムを提唱しました。新プログラムの名称は『I-MASK+』と名付けられました。

『MATH+』が入院患者に向けた治療プロトコルであるのに対し、『I-MASK+』は新型コロナ予防および感染初期の外来プロトコルとして作成されているのが特徴です。著者らは『I-MASK+』について、「今後の新型コロナパンデミックに対応するための戦略として、より大きな意味を持つだろう」と考えています。

なお、『I-MASK』はイベルメクチン※1 の“I”にマスク(MASK)を付け加えたもので、「マスク・手洗い・三密の回避」を指しています。「+」に関しては、ビタミンC・ビタミンD・亜鉛・メラトニン・ケルセチンの投与を意味し、オーソモレキュラー医学的治療を組み合わせています。

※1:副作用が比較的少ないことで知られる寄生虫薬。

I-MASK+』の詳細

<表>新型コロナウイルスに対する「I-MASK+」プロトコル


表に記載したプロトコルの対象者は、以下の通りです。

1.病院・関連施設において新型コロナ感染者と接している医療従事者
2.新型コロナに感染した患者の濃厚接触者

イベルメクチンの投与法は、対象者が置かれている状況によって変わります。また、ビタミンC・ビタミンD・ケルセチン・亜鉛・メラトニンについては、以下の作用を期待してイベルメクチンとの併用を行います。

①炎症および酸化の抑制
②殺ウイルス作用
③自然免疫の維持
④ウイルス複製の抑制
⑤ウイルス変異の抑制

細胞内亜鉛を高く維持することでウイルスの複製を抑制するため、亜鉛欠乏は避ける必要があります。とはいえ亜鉛には細胞内に入りにくいという特性があります。この時に役立つのが「ケルセチン」です。

亜鉛と比べると、ケルセチンにあまり馴染みのない方もいるかもしれませんが、ケルセチンには殺ウイルス作用、抗炎症作用、抗酸化作用があると言われています。

さらに注目すべき作用として、亜鉛を細胞内に運搬するサポートを行うことが挙げられます。そのため、このプロトコルのように亜鉛とケルセチンを併用するのは絶妙であると言えるでしょう。

なお、外来初期治療プロトコルは「確かに感染はしているものの症状自体は軽い自宅療養者に適用され、イベルメクチンと他栄養素の摂取量は増量されます。

また、自宅での病状の把握および進行した場合の早期発見のために、パルスオキシメーターを用いたセルフチェックが含まれています。

新型コロナウイルスとイベルメクチン

前述の『I-MASK+』で治療薬として使用されている「イベルメクチン」について、少しだけ付け加えてお話ししたいと思います。イベルメクチンを発見したのは、北里大学特別栄誉教授の大村 智先生です。

マクロライド系の抗生物質であるイベルメクチンには抗ウイルス活性と抗炎症作用があり、世界中で新型コロナウイルスに対するイベルメクチンの効果を見極めるための臨床試験が行われています。

その数はすでに86研究となっており、実施国数としては27カ国にのぼります。これらのうち結果が公表されているのは18研究で、多くの研究においては新型コロナの予防および治療に有効であると結論付けられています。

イベルメクチンを用いた2つの研究

新型コロナとイベルメクチンに関する研究の中から、インドとペルーで行われた研究の概要をご紹介します。

<インドで行われた研究の概要>

インド国内の病院において、イベルメクチンを投与された医療従事者と投与されなかった医療従事者を比較したところ、投与された人々の感染率は低下しました。さらに、イベルメクチンを投与された患者の死亡率は有意に改善しています。

<ペルーで行われた研究の概要>

ペルーではイベルメクチンが配布された各州において新型コロナ感染者数が激減した一方、配布が遅れたリマ州では感染者が急増しました。しかしながら、ペルー国内での国民へのイベルメクチン配布という試みは、大統領交代による混乱の中で中断されました。その結果、各地の感染者数は増加したのです。

新型コロナウイルスに対するイベルメクチンの「5つの作用」

イベルメクチンについて、期待される主な作用は以下の5つとなります。

(1) ウイルスの複製を阻害し、感染細胞培養において48時間でほぼすべてのウイルス物質が消失する。

(2) 感染者の家庭内感染の伝播と発症を防ぐ可能性がある。

(3) 症状が出始めてから初期・早期の治療を行うことで軽症〜中等症患者の回復を早め、悪化を防ぐ可能性がある。

(4)入院患者の回復を早め、ICU入室および死亡を回避させる可能性がある。

(5)地域住民に配布することで致死率が大幅に低下する可能性がある。

最後に

新型コロナ対策としてのイベルメクチンの使用については、2021年2月9日に行われた東京都医師会定例記者会見の中で、尾﨑治夫会長も国に対して認めてほしいと訴えていました。

イベルメクチンは寄生虫薬としての認可しか得ていないため、現時点では健康保険の適用外処方となります。

各国の研究によりエビデンスが示されているものの、医師が新型コロナウイルス患者に使用しにくいのが現状です。今後、医師がイベルメクチンの投与をさらに行いやすい環境が整うことを望みます。





<参考文献>

柳澤 厚生 (ヤナギサワ アツオ)先生の関連動画

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