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妊娠期間中はオーガニック食品を推奨

〜おなかの赤ちゃんを農薬から守る〜

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育 ... [続きを見る]

妊娠期間中の食事は、母親だけでなくその後生まれる子どもにも影響を与えます。
今回は、オーガニック食品の摂取が子どもの健康を守る上で果たす役割について、研究結果を踏まえてご紹介します。

妊娠中のオーガニック食品摂取が農薬曝露を軽減する

研究内容

妊娠期間中、知らぬ間に摂取した食品から体内に農薬を取り入れていること、そしてそれが胎児にどのような悪影響を及ぼすかを示唆する論文が発表されました。2019年、米国のボイシ州立大学と米国疾病管理予防センター(CDC)は、共同で「妊婦における食品からの農薬の体内吸収〜オーガニック食品による介入」についての研究結果を環境科学の国際的専門誌『Environment International』に発表しました。

妊娠13週までの第1期の妊婦(18〜35歳)20名を対象として、無作為に10名ずつ下記2群に分けました。

(1)コントロール群・・・1週間分の市販の野菜とフルーツを週1回自宅に配送。
(2)オーガニック食品群・・・無農薬の野菜とフルーツを週1回自宅に配送。

妊婦は週に1回尿の採取を行い、後日ピレスロイド系農薬と有機リン系農薬の量を測定しました。

研究結果

ピレスロイド系農薬の指標であるフェノキシ安息香酸は(2)オーガニック食品群より(1)コントロール群が有意に高値でした(0.95 vs 0.27µg/L,p<0.03)。一方、有機リン系農薬については両群で差はありませんでした。

研究者らは「これまでに農薬曝露による子どもの知的機能の低下が指摘されている。しかし、妊婦や胎児への影響についてはまだ明らかにされていない。今回の研究により、妊娠中は無農薬のオーガニック食品に切り替えることで、一部の農薬の曝露を減らせることが明らかになった」と述べています。

妊娠中のオーガニック食品の摂取が先天性疾患リスク軽減につながる

それでは、妊娠中にオーガニック食品に切り替えることでどのようなメリットがあるのでしょうか。野菜や果物に付いた農薬が、生まれる子どもの健康に影響を与えるのでしょうか。

ノルウェー公衆衛生研究所による研究

この回答となる研究が2016年、ノルウェー公衆衛生研究所より環境医学専門誌『Environmental Health Perspectives』に発表されました。母親が妊娠中にオーガニック食品を摂取していると、生まれた男児の先天性尿道下裂発症リスクが半分以下になるというものです。尿道下裂は陰茎の形態異常で、尿の出口(外尿道口)が亀頭まで届かず、その手前に出口が開きます。これまで尿道下裂は、環境因子や妊娠中の食事、胎盤を介した内分泌攪乱によって起こされるのではないかと言われてきました。

ノルウェー公衆衛生研究所は、男児を出産した35,107名の母親を対象に、妊娠中に摂取した6つのグループのオーガニック食品(野菜/果物/パン・シリアル/牛乳・乳製品/卵/肉)について、質問紙法を用いて調査しました。新生児の74名(0.2%)が先天性尿道下裂と診断されました。そして、妊娠中にオーガニック食品を多く摂取している母親の出産した男児が尿道下裂になる確率は58%低いという結果となりました。オーガニック食品の中では「野菜」と「牛乳/乳製品」の摂取が確率の低下に強く関与していました。

研究チームは「健康な妊娠のために野菜などバランスの良い食事が大切だが、さらにオーガニックフードを選ぶことでプラスアルファの恩恵がある」と結論付けています。

安全な妊娠のために

妊娠中に摂取する食事は、胎盤を通じて胎児に移行します。食材に付着している農薬によっては胎盤の機能不全や炎症を引き起こし、胎児の健康な成長を妨げる可能性があります。残念ながら、日本は農薬使用量に関しては後進国です。<図>
単位面積あたりの農薬使用量は、ヨーロッパ各国と比べると格段に多いのが現状です。健康かつ安全な妊娠のために、妊娠期間中の農薬を含む食品の摂取は極力避けることを推奨します。

<図>FAO「Statistical Yearbook 2010、OECD「OECD Environmental Performance Reviews JAPAN 2010」を基に農林水産省で作成。農薬は平成18(2006)年の値。

「あなたの赤ちゃんが健康に生まれるための12のヒント」

ここで、ワシントンに本拠地を置くNPO団体オーガニックセンター(The Organic Center)が推奨する「あなたの赤ちゃんが健康に生まれるための12のヒント」をご紹介したいと思います。

  1. オーガニックフードを食べてお腹の中の子どもを毒性のある合成農薬から守る
  2. オーガニックフードから必要な栄養を十分に摂る
  3. 浄水器で濾過した水を飲む
  4. オーガニックの果物や野菜の食べられる部分は全て食べる
  5. プラスチックの容器は使わない
  6. 外から帰宅したら靴を脱ぎ、家の中に泥などが入らないようにする
  7. 家で使う全ての洗剤の成分を確認する
  8. 化粧品や石鹸などに有毒の化学物質が含まれていないか確認する
  9. アンモニアを含有するヘアカラーは使わない
  10. 妊娠中のサプリメントはオーガニック材料からできているものを選ぶ
  11. 有機のお茶を飲む
  12. 同じ考えの妊婦や友人と交流する

[参考URL]https://www.organic-center.org/organic-fact-sheets/12-tips-for-a-safer-pregnancy/(The Organic Center “12 Tips for a Safer Pregnancy”より一部翻訳)





<参考文献>

柳澤 厚生 (ヤナギサワ アツオ)先生の関連動画

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