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がんに対する糖質制限と運動療法・血流促進

この記事の執筆者

下北沢西口クリニック

医学博士。産業衛生専門医・指導医。社会医学系専門医・指導医。専門は予防医学、産業保健、分子整合栄養療法

今回は当ウェブメディアに向けてもご執筆いただいている宮川 路子先生ご自身が更新されているブログ『こころと身体の栄養療法』より『がんに対する糖質制限と運動療法 血流促進』をピックアップし、ご紹介いたします。

がん治療の大前提、まずは標準治療を受ける

がんの治療は標準治療(手術、化学療法、放射線治療)が基本となります。現在、抗がん剤に対する偏見によって、効果のある治療を放棄してしまう患者さんが多いのが問題となっています。

  • 抗がん剤は効かない
  • 抗がん剤は副作用が苦しいから辛い思いをするだけだ 
などと思い込んでいる方が抗がん剤治療を拒否してしまうのです。これは大きな誤りです。

もちろん、抗がん剤が効くがんと効かないがんがあるのは事実です。また、がんの種類によって抗がん剤の種類も異なります。副作用も様々です。現在、抗がん剤の副作用にはいろいろな方法で対応がなされ、苦しいながらも頑張って、元気を取り戻せるものが多くなっています。中には、劇的な効果が得られる抗がん剤も出て来ています。

放射線治療は副作用が強くて大変だから受けたくない、という人も多いようです。たしかに皮膚炎がひどくなってやけどのようになり、後からひきってしまったり、口内炎、潰瘍などの消化管障害、骨髄抑制、脱毛などさまざまな副作用が出ます。けれども放射線治療はとても良く効く場合が多いのです。

抗がん剤、放射線ともに手術との組み合わせで、治療効果を万全のものにするために行うこともあります。放射線の副作用については、ビタミンCや水素による治療でとても軽く抑えることが可能と思われます。ただし、これらの治療は現段階では保険ではカバーされませんので、自費診療となってしまいます。

実は私は今その研究をカロリンスカ研究所で行っているところです。よいご報告ができるようにがんばっています。これらの治療を保険ですべての人が受けられるようになることが私の願いです。「標準治療では、もうできる治療がありません」と主治医から言われた場合は別ですが、標準治療で”打つ手”があるときにはまずそちらを優先させてください。一番大きい過ちは、標準医療を拒否して、初めからいわゆる民間療法に頼るということです。

インターネットで検索をすると、いかにも効果がありそうな宣伝文句を並べているクリニックがたくさんあります。まったく副作用がなく、効果が高いというイメージを持ってしまいそうになりますが、こういったクリニックで高価な治療だけを受けても治るという保証はありません。もちろん、効果がないわけではないと考えますが、そのような治療を取り入れるにしても、標準治療を受けるということが前提であると考えます。

有名な方の例では、川島なお美さん、小林麻央さんはお二人とも推奨される標準治療といわれるものをすぐに受けず後回しにして民間療法を試していた結果、手遅れとなってしまったようです。いろいろな事情があったのだとは思いますが、もしお二人が普通の人で、民間療法などを受ける余裕がなかったとするならば、もう少し予後が変わっていたのではないかと思うととても残念な気持ちです。

現在、日本の医療制度ではとてもレベルの高い標準治療を誰もが平等に受けることが可能となっています。そして、世界でも水準の高いその治療によって、がんはもはや必ず亡くなるという病気ではなくなっているのです。その事実から眼をそむけ、素晴らしい標準医療を受ける権利を放棄して、民間療法を選択するということは考えられません。まずは標準治療を受けることを第一選択としてください。

がん治療に糖質制限は必須

がんの予防はもちろんのこと、がん治療の際に糖質を制限することは絶対にはずせません。
標準治療を受けながらでも追加できる治療、追加するべき治療が糖質制限なのです。これは、どんな種類のがんであっても、どのような状態の人であってもがんをやっつけるためには必ず行うべきです。標準治療の邪魔をすることもありません。

しかも、糖質制限には費用があまりかかりません。もちろん、食費が少しかかりますが、人が食べる量は決まっていますから、民間療法のような法外な値段がかかることはないのです。また、糖質制限は副作用がありません。糖質を制限するだけですから、他の栄養素でしっかりと栄養を補えば大丈夫です。タンパク質、脂質をしっかり摂ってください。

糖分はエネルギー源として必須である、という考えの方も多いのですが、そんなことは決してありません。糖がなければ私たちの身体はタンパク質や脂質をエネルギーに変えることができるのです。ただし、極端に徹底し過ぎると便秘になってしまう可能性があります。徹底した糖質制限の欠点は食物繊維不足になることです。根野菜も摂らず、肉ばかり食べているというのは良くない影響も出ます。

私は主食なら玄米、全粒粉のパンを少しだけ食べる、そして根野菜もある程度良いとしています。そのかわりに、後からご紹介する運動を追加するのです。

糖質制限はなぜがんに効くのか

糖質制限はがんに効くと言われています。なぜなら、がん細胞は糖質をえさとして生きているからです。がん細胞は、正常細胞の何倍もの量のブドウ糖を取り込みます。糖質がたくさん血液中にある状態(血糖値が高い状態)になるとがんは勢いを増して増殖します。ですから、がんにえさを与えないように血糖値を上げないような食事を摂ることが大切なのです。このことを理解していただくために私はいつも2つの例で説明をしています。それは、高カロリー輸液を始めたがん患者さんの例と、PET検査についてです。

高カロリー輸液を開始した末期がん患者

がんの治療に携わっている医師であれば、昔は誰でも経験していたことです。がんで食べられなくなった患者さんはどんどんやせ衰えていきます。入院していると、家族は心配して医師に「こんなに体重が落ちて、体力もなくなって心配です。なんとかなりませんか?」と聞きます。今ではもう末期の患者さんにこのような処置をすることはほとんどありませんが、昔は「じゃあ、ちょっと栄養のある点滴をしましょうか」と、高カロリー輸液の点滴を始めることがありました。

すると、何が起きるかおわかりでしょうか?栄養がたくさん入って、患者さんは元気になるのでしょうか?答えはもうおわかりですね。

患者さんは決して元気にはなりません。なぜなら、身体の中に巣食っているがん細胞が、天から降って来た恵みの雨のように、点滴の栄養を取り込んで勢いを増して増殖してしまうからです。点滴をする前は、栄養がありませんから、患者さんも痩せてしまったかもしれませんが、がん細胞も勢いが弱っていたはずなのです。
ひよひよと生きながらえ、平衡状態を保ちながら共存している状態だったがん細胞が一気に元気になると、患者さんはあっという間に状態が悪化してしまうのです。

もちろん、これは糖質が入っている場合であり、脂質のみの点滴であれば、がん細胞がこれを利用することが出来ませんから大丈夫です。糖質はがん細胞にエネルギーを与えて元気にします。入院して点滴を受ける際には、糖質の入っていない点滴をお願いするようにしましょう。ご飯が食べられるのであれば糖質の点滴は必要ありませんし、もし絶食となっている場合、栄養についてはイントラリポスなど、脂質の点滴を追加して頂けるように話してみてください。

PET検査の仕組みとがん

PET検査(positron emission tomography,陽電子放出断層撮影)は、がんが糖質を好む性質を利用して体内のがんを発見するための検査です。放射性物質で印をつけた糖に近い成分の薬を注射すると、がんがそれをブドウ糖だと間違えてたくさん取り込むことにより、がんがある場所がわかるというものです。検査の前には絶食が必要です。糖が十分に与えられているとがんが検査薬を取り込まないためです。

また、運動をすると筋肉にブドウ糖が多く取り込まれるので、検査薬も筋肉に集積してしまいます。ですから検査中はもちろん安静にしますし、検査前日も運動しないようにしなければいけません。PET検査について学ぶと、がんの治療において何をしたらよいかがよくわかります。

まず第一は糖質制限です。できるだけ糖質を食べない、ということです。エネルギーは糖質、脂質、タンパク質から得ることができますから、糖質をまったくとらなくても大丈夫なのです。しかも、エネルギー効率から言えば、脂質、タンパク質の方がより多くのエネルギー(ATP)を作り出すことができます。

糖質をエネルギーに変えるときに必要となるのが、ビタミンB1です。糖質の代謝に関わるピルビン酸脱水素酵素の活性をビタミンB1がコントロールしていますので、糖質を食べるとビタミンB1が減るのです。
ビタミンB1は抗がん作用がありますから、これが減ると、がんにとっては好都合になります。このことも、糖質制限をしなければいけない理由の一つです。

また、糖質を摂ったときに分泌されるインスリンは細胞に障害を与えます。インスリンには発がん作用、さらにがんを増殖させる作用があるのです。がんの治療においては、インスリンを出さないように、糖質制限をして、血糖値をできるだけ上げないことが重要となります。とはいっても、糖質をゼロにする食事というのはとても難しいものです。甘いお菓子は我慢できたとしても、ご飯、パン、麺類などを一切食べないというのは大変です。

そこで、摂ってしまった糖質に対して何をするかといえば、運動です。

PET検査のところでお話ししましたが、筋肉を動かすとそこに糖が取り込まれて使われます。
運動がとても効果的であるということです。運動によって筋肉を動かし、血糖をたくさん吸収してもらえば血糖値が下がり、がん細胞にブドウ糖をあげないようにすることができるわけです。がんの予防にはもちろん効果がありますし、がんと闘うときにも運動をぜひ心かけてください。闘病中で体力がないのに、運動なんてとても無理!と思われるかもしれませんが、いろいろと工夫をすることができます。




以降では、がんの方におすすめの無理なくできる運動のご紹介、糖質制限時の良い塩梅の食事内容とその場合に摂取がのぞまれるサプリメント、そして宮川先生のお父様が実際に行った治療法と経過について 等、最後まで学びとなる内容が敷き詰められています。
続きは是非、下記『こころと身体の栄養療法』ページより直接ご覧になっていただければと思います。