ナイアシンは最も安全で効果的なコレステロール抑制手段である(しかしメディアから決してこれを知ることはない

13.04.02 オーソモレキュラー医学ニュース

オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(点滴療法研究会)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)姫野 友美(ひめのともみクリニック)
齋藤 糧三(日本機能性医学研究所) 北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)
翻訳協力西本貿易株式会社ナチュメディカ事業グループ

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

(OMNS、2013年3月21日)  ナイアシンの健康効果に対して、また異議が唱えられている。なぜか。簡単に言えば、金銭の追求のためである。年間1兆ドル規模の製薬業界にとって、コレステロール低下薬は、まさにドル箱である。一方、ナイアシンは、安価で、処方箋不要で、安全である。薬剤のほうがはるかに危険で、有効性もかなり低い。ナイアシンは、効かないから攻撃されているのではない。実際に効くから攻撃されているのだ。

今、話題になっているもの

「HPS2-THRIVE(補足:心疾患予防研究2-血管イベントの発生率低下のためのHDL治療):ナイアシン療法に効果はなく、有害の徴候あり」 – Forbes誌 [1]

「ACC(補足:米国心臓病学会):HPS2-THRIVEがナイアシンの終わりをもたらすおそれ」 – Medpage

「心臓発作と脳卒中のリスクが高い患者に対し、ナイアシンは予想外の重篤な副作用をもたらす一方、価値ある効果はなし」 – Sacramento Bee誌

「ナイアシン療法は役に立たず、時には有害」 – Naharnet

「研究によると、ナイアシンは心疾患への効果はなく、害をもたらすおそれあり」 – USA Today誌

悲しいことに、こうした見出しは、詳しい話を無視したものであり、また、ラロピプラントとスタチン系薬剤による有害な影響は無視しつつ、ナイアシンを責めているため、間違っている。スタチン系薬剤は広く使用されているが、一部の人には重篤な副作用があり、また、その使用者のほとんどには役立たない。[2]

 

「ナイアシンは本当に有効である。これほど効果があるものは他に手に入らない。」

(クリーブランドクリニック循環器内科部長であり、過去に米国心臓病学会の会長を務めたSteven E. Nissen, M.D.が2007年1月23日付NY Timesにて引用)

 

本当の話

徐放性のナイアシンと、ラロピプラントと呼ばれる薬剤を含む複合薬トレダプティブの効果を調べ、広く公表された最近の介入研究について、メディアでは、ナイアシンが危険な副作用をもたらす可能性があることを示すものと解釈している。この研究の意図は、高コレステロールと心疾患の症状低減のため、すでに一定用量のスタチン系薬剤を摂っていた被験者に対するトレダプティブの効果を測定することにあった。[3] しかし、この研究は、特定の薬の組合せによる効果に焦点を合わせていたため、ナイアシンの有効性を判断することはできない。必須ビタミンであるナイアシンは、コレステロールの低下における安全性と効果がきわめて高いことがすでに知られている。どちらかといえば、この研究は、よく知られているナイアシンの効果を、試験がまだ不完全である薬による未知の危険と混同している。

 

HPS2-THRIVE(心疾患予防研究2-血管イベントの発生率低下のためのHDL治療)研究

トレダプティブに関する上記の試験は、2つのグループに分けた合計25,673人の被験者を対象として行われた。このうち一つのグループは、一定用量のスタチン系薬剤と、徐放性ナイアシン+ラロピプラントを併せて摂り、他方のグループは、同じ用量のスタチン系薬剤とプラセボを併せて摂った。[3] この2グループを約4年間追跡し、医学的転帰を表にまとめたところ、ナイアシン+ラロピプラントを与えたグループのほうが、ミオパシー(筋力低下)の量がわずかに高くなっていた。この結果はとくに、一般集団と比較してミオパシーの割合が高い傾向があるサブグループにて見られた。このグループでは、ナイアシンによる効果は何も見られなかった。また、ナイアシンを与えたグループのほうが、投薬を中止する割合が高くなっていた。その主な理由は、スキンフラッシュ(皮膚紅潮)を引き起こすという、よく知られているナイアシンの影響によるものであった。

このトレダプティブの試験は、時期尚早に中止され、トレダプティブは市場からすでに回収されている。しかし、これをナイアシンの使用に反対する論拠と見なすべきではない。それよりも、副作用があることがわかっている上記の2つの他剤と組み合わせて徐放性ナイアシンを使用することに対する警告と見なすべきである。これは、徐放性または緩効性のナイアシンのほうが単純な標準型ナイアシンよりも安全性が低いという事前知識に合致する。さらに言えば、この試験で使用されたスタチン系薬剤およびラロピプラントとの組合せに特別な問題があるのかもしれない。これは、スタチン系薬剤など他剤と組み合わせた場合のラロピプラントとその効果に関する知識が不十分であることを強調するものである。トレダプティブは現在、一般の患者には入手不可能であり、米国内で販売が許可されたことは一度もなかったが、医師は、有益な効果があることからナイアシンの使用を引き続き勧めている。

 

「ナイアシンは、コレステロール抑制のために現在入手できる最良の物質である。ナイアシンは、冠動脈疾患と脳卒中の発生率を下げ、平均余命を増やす。」 
(メイヨークリニック研究員William B. Parsons Jr., M.D. [4] )

 

犯人はどっち? 薬のほうか、ビタミンのほうか?

トレダプティブの治験で用いられたどの成分を、問題の原因として責めるべきか? 見出しでは、ナイアシンが問題に荷担しているような印象を自動的に受ける。結局のところ、ナイアシンはフラッシュを生じることもある! とはいえ、必須栄養素であるナイアシンは、60年以上にわたり、非常に高用量(1,000~2,000 mgまたはそれ以上)で、きわめて安全に使用されている。ナイアシンは、循環器疾患による死亡率を下げ、たとえ患者が服用をやめて10年経ってもその効果があることがわかっている。[5-7] ナイアシンによる脂質異常症の予防効果(好ましくない血中脂質プロファイルの修正効果)は、PGD1(プロスタグランジン)経路を通して生じることがわかっている。一方、ラロピプラントは、PGD1経路を阻害する比較的新しい薬である。ナイアシンの副作用として一部の患者に生じることがあるフラッシュを防ぐため、複合薬のトレダプティブにラロピプラントが含まれていたが、これは循環器疾患に対する臨床的に有益な効果を得るために含まれていたわけではなく、ナイアシンによる望ましい効果をも阻害した可能性がある。細胞内のプロスタグランジン経路は複雑であり、現在、集中的研究のテーマの一つとなっている。一部の研究では、ラロピプラントに、血小板のDP1受容体に対する副作用が見られており、これは、肺組織や脳などにある、皮膚内の血管以外の受容体に有害な副作用をもたらす可能性があることを示唆している。[8.9]

スタチン系薬剤と一緒にラロピプラントを摂った場合の安全性について、まだ入念な研究は行われていない。これらの薬剤の設計と製造を行っている製薬会社と、それを使用する患者は、きわめて副作用に警戒する必要がある。というのは、重篤で予測不可能な副作用が生じ得るからである。ラロピプラントと比べて、ナイアシンは、すでに広く研究されており、数千もの研究で、安全であることがわかっている。ナイアシンの使用と効果については、1943年以降PubMedに掲載された7,000を超える公表文献に記載されている(また、その別名である「ニコチン酸」としての公表文献は35,000を超える)。ラロピプラントについて記載した研究は100未満で、最近7年以内のものしかない。このように、全体的に見ても、研究では、ナイアシンによる危害の証拠は示されておらず、また、試験では、薬の新たな組合せによって、一部の人に有害反応をもたらす可能性があることが明らかになったように見える。そのため、スタチン系薬剤と徐放性ナイアシンとの組合せでは、ラロピプラントが犯人の可能性がある。

 

ナイアシンの形態と効果

ナイアシンには、ナイアシンアミドや、標準的な「速放性」ナイアシンなど、いくつか形態がある。このどちらも、すべての生命体にとって不可欠な代謝酵素である細胞内NAD(補足:ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)を増やす効果があるが、重要なこととして、VLDL(超低密度リポタンパク質)、トリグリセリド(アテローム性動脈硬化の危険因子の一つ)および総コレステロール値を下げながら、どのスタチン系薬剤よりもHDL(善玉コレステロール)値を上げることができるのは、ナイアシンだけである。高リスクの循環器疾患患者のほとんどにとって、こうした成果は一般に願わしいものである。しかし、ナイアシンは、ナイアシンアミドよりも、多種の細胞におけるNADの増加効果が高いこともわかっているため、疾患の予防効果では、ナイアシンのほうがナイアシンアミドより優れていることになる。

 

ナイアシンフラッシュ

一部の人に対する問題として、ナイアシンは、「ナイアシンフラッシュ」という有名な副作用を引き起こすことがある。人によっては、治療のための高量摂取後に、こうした一時的な(30~60分の)、時には痒みを伴う皮膚の発赤が生じる。しかし全体的に見れば、ナイアシンフラッシュは、有益な健康効果に関連している。ナイアシンはとくに、高親和性のGタンパク質共役受容体であるGPR109aとGPR109bを活性化し、それが様々なプロスタグランジン類の放出につながり、結果としてフラッシュ反応が生じる。血管拡張とフラッシュをもたらす、ナイアシンのこうした影響は、脂質異常症を治すものとして広く理解されている。ナイアシンフラッシュを副作用と表現する人もいるが、体が自分の脂質代謝経路を修正しているということであり、これはアテローム性動脈硬化の予防において重要となり得る。[10]  緩効性や徐放性のナイアシンなど、その他の形態のナイアシンは、フラッシュを引き起こさないが、アテローム性動脈硬化の予防や治療の効果は他より低いとも考えられる。また、人によっては、緩効性ナイアシンや、フラッシュを生じないナイアシンを摂った結果、肝臓中の酵素が警戒すべきレベルに増えることがある。[4] ほとんどの説明において、ナイアシンフラッシュは有益な効果に関連付けられているものの、不快と感じる人もいる。ナイアシンは使いたいがフラッシュは避けたいという場合、フラッシュ反応が最小限に抑えられる最大用量を見つけることは簡単である。ナイアシンが重篤な有害反応を引き起こすことはめったにないが、どちらかといえば反応は一時的なもので、最悪の場合でも少し不快な程度である。

 

ナイアシンの効果を得る方法

ナイアシンはビタミンB群の1つであり、他のビタミンB群と同様、細胞エネルギー代謝に必要な必須栄養素である。これは、全粒穀物、新鮮な果物・野菜、獣肉、魚類、マメ類、ナッツ類をはじめ、多種多様な食品から摂ることができる。また、ナイアシンは、HDL(善玉コレステロール)値の増加による心血管系リスクの低減、関節炎の痛みと炎症の予防、および不安症とアルコール依存症を含む種々の精神的疾患の治療に対する効果があることから、安価で安全なサプリメントとして、広く使用されている。適切に使用すれば、ナイアシンはきわめて安全である。[11]

ナイアシンフラッシュを生じることなく、サプリメントでナイアシンの効果を得るためには、最初は1日1回、少量のナイアシンを摂取することから始め、日ごとに用量を徐々に増やしていく方法がある。そうすれば、体が用量の増加に順応して、フラッシュを大体防ぐことができる。適切な開始用量は25 mgで、食品と一緒に1日1回摂る。25 mgという用量を摂るには、純粋なナイアシンが100 mg含まれている錠剤を購入すると良い。この100 mgの錠剤を4つに割り、数日間は毎日1片ずつ摂る。次に、この25 mgという量を1日2回に増やし、朝晩に分けて食品と一緒に摂る。その後数週間かけて、徐々に用量を増やしていく。この方法を用いれば、顕著なフラッシュを生じることなく、数百mgという用量のナイアシンを、分割して食事と一緒に摂ることができようになる。時折ナイアシンフラッシュが生じる場合は、用量を少し減らす。適切な形態や注意事項、用量、ならびナイアシンの効果については、もちろん、かかりつけの医師に相談して話し合うべきである。

 

参考文献

1. Husten L (2012) HPS2-THRIVE: No Benefit, Signal Of Harm For Niacin Therapy. (HPS2-THRIVE:ナイアシン療法に効果はなく、有害の徴候あり) Forbes. http://www.forbes.com/sites/larryhusten/2012/12/20/hps2-thrive-no-benefit-signal-of-harm-for-niacin-therapy .

2. Roberts H, Hickey S (2011) The Vitamin Cure for Heart Disease: How to Prevent and Treat Heart Disease Using Nutrition and Vitamin Supplementation.(心疾患のビタミン療法:栄養・ビタミン補給を用いた心疾患の予防・治療法) Basic Health Publications. ISBN-13: 978-1591202646

3. HPS2-THRIVE Collaborative Group. (2013) HPS2-THRIVE randomized placebo-controlled trial in 25 673 high-risk patients of ER niacin/laropiprant: trial design, pre-specified muscle and liver outcomes, and reasons for stopping study treatment.(25,673人の高リスク患者における徐放性ナイアシン/ラロピプラントのHPS2-THRIVE無作為化プラセボ比較試験:試験設計、事前に指定された筋肉と肝臓への成果、および試験治療を中止した理由) Eur Heart J. 2013 Feb 26. doi: 10.1093/eurheartj/eht055

4. Parsons WB. (1998) Cholesterol control without diet! The niacin solution.(食事療法なしでコレステロール抑制! ナイアシンという解決策) Scottsdale, Ariz: Lilac Press, ISBN-13: 978-0966256871.

5. Canner, P.L., Berge, K.G., Wenger, N.K., Stamler, J., Friedman, L., Prineas, R.J., and Friedewald, W. (1986) Fifteen year mortality in Coronary Drug Project patients: long-term benefit with niacin.(冠動脈疾患予防薬プロジェクトの参加患者における15年死亡率:ナイアシンによる長期効果) J Am Coll Cardiol, 8(6): 1245-1255.

6. Carlson, L.A. (2005) Nicotinic acid: the broad-spectrum lipid drug.(ニコチン酸:広域スペクトル脂質改善薬) A 50th anniversary review. J Intern Med, 258(2): 94-114.
7. Guyton, J.R., and Bays, H.E. (2007) Safety considerations with niacin therapy.(ナイアシン療法に伴う安全性の考慮) Am J Cardiol, 99(6A): 22C-31C.

8. Sood A, Arora R. (2009) Mechanisms of flushing due to niacin and abolition of these effects.(ナイアシンによるフラッシングのメカニズムおよびこうした影響の廃絶) J Clin Hypertens (Greenwich). 11(11):685-689. doi: 10.1111/j.1559-4572.2008.00050.x.

9. Vosper H. (2011) Extended release niacin-laropiprant in patients with hypercholesterolemia or mixed dyslipidemias improves clinical parameters.(高コレステロール血症患者または混合型脂質異常症患者における徐放性ナイアシンとラロピプラントとの組合せによる臨床パラメータの改善) Clin Med Insights Cardiol. 5:85-101. doi: 10.4137/CMC.S7601.

10. Tuohimaa P, Järvilehto M. (2010) Niacin in the prevention of atherosclerosis: significance of vasodilatation.(アテローム性動脈硬化の予防におけるナイアシン:血管拡張の重要性) Med Hypotheses 75(4):397-400.

11. Hoffer A, Saul AW, Foster HD (2012) Niacin: The Real Story: Learn about the Wonderful Healing Properties of Niacin.(ナイアシン:本当の話:ナイアシンの素晴らしい治癒特性について学ぶ) Basic Health Publications. ISBN-13: 978-1591202752.

翻訳監修:齋藤 糧三(日本機能性医学研究所)