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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Richard Z. Cheng, M.D., Ph.D.
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会 第4代会長(2012-2023))
溝口 徹(医療法人回生會 みぞぐちクリニック 院長)
姫野 友美(医療法人社団友徳発心会 ひめのともみクリニック 院長)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

2025年ノーベル医学賞 – 病気の根本原因ではなく、体の仕組みを解き明かす医学の頂点

執筆者:リチャード・Z・チェン(Richard Z. Cheng, M.D., Ph.D.)

オーソモレキュラー医学ニュースサービス編集長(Orthomolecular Medicine News Service, Editor-in-Chief)

現代のライフスタイルが免疫バランスを崩す理由と、オーソモレキュラー医学がそれを回復させる方法

「ノーベル賞の研究は免疫システムがどのようにバランスを保っているのかを示しました。一方、オーソモレキュラー医学は免疫システムがなぜ崩れるのか、そしてそれをどのように回復するのかを示しています。」

ノーベル賞が注目したものとそうでなかったもの

2025年のノーベル生理学・医学賞は、制御性T細胞(Treg)とFOXP3遺伝子が免疫系による私たち自身の組織への攻撃を防ぐという画期的な発見を称えるものでした。

この研究により、免疫バランスがどのように維持されるかが明らかになりました。これは、免疫の許容性と自己免疫性の両方を説明する優れた分子メカニズムです。

しかし、オーソモレキュラー医学の観点からすると、更に重要な疑問が生じます。

そもそもなぜ免疫バランスを保つ仕組みはうまく働かなくなるのか、そして現代ではなぜそれがこれほど頻繁に起こるのか。

オーソモレキュラー医学は、その上流に目を向けます。現代社会では、FOXP3とTregの機能を制御する酸化還元代謝が常に損傷を受けていることを認識しています。これらは偶然の変異ではなく、現代社会における予測可能な生化学的影響、つまり私たち自身が酸化還元環境のバランスを傷つけているのです。

簡単な3つの例:ノーベル賞の「仕組み」とオーソモレキュラー医学の「原因」が交わるところ

1.食事と代謝-日常の妨害者

ノーベル賞の研究では、Treg が炎症から私たちを守ってくれると説明されています。

オーソモレキュラー医学は、精製された炭水化物、種子油、加工食品中心の食生活は、Tregの働きを抑制すると指摘します。

血糖値や酸化ストレスが上昇すると、T細胞は炎症性T細胞「Th17」モードへ移行し、Tregのバランスが崩れます。一方、抗酸化物質を豊富に含む全粒食品、低炭水化物食は、体の酸化ストレスを穏やかに回復させ、腸管由来の酪酸を生成します。酪酸は短鎖脂肪酸であり、FOXP3を直接活性化します [1-3]

臨床的現実:数週間、質の高い食事と適度な運動を取り入れることで、数十億ドルの薬が目指すもの、つまり“免疫バランス”を根本から回復することができます。

2.ビタミンと微量栄養素の修復-免疫の生化学的基盤

ビタミンD3はビタミンD受容体を介してFOXP3遺伝子を活性化します [4, 5]

ビタミンCはTET酵素を活性化することで、FOXP3のメチル化を解除し安定化を助けます [6, 7]

ナイアシン(ビタミンB3)や酪酸はGPR109Aを介してシグナルを送り、免疫細胞を寛容モードへ変え、炎症性サイトカイン IL-10産生を促します [8]

これらの栄養素が不足すると(現代では不足しがちです)、免疫調節機能が崩れてしまいます。これらの栄養素を補うことは代替医療ではなく、細胞レベルでの代謝・免疫調整を正常に機能させるための根本的なプロセスです。

現実的な違い:従来の医学ではTregを増やす新薬開発を目指すのに対し、オーソモレキュラー医学では、体内でTreg を自然に作り出せる力を再構築します。

3.毒素、ストレス、酸化還元制御の喪失

大気汚染、プラスチック、農薬、慢性感染症、そして絶え間ないストレスはすべて、酸化ストレスとミトコンドリアの損傷を引き起こします。これらはFOXP3の発現とTregの形成を直接抑制し、炎症性「Th17」細胞の優位性を促進します [9, 10]

現代における毒素の過剰蓄積は、目に見えない自己免疫の引き金です。オーソモレキュラー医学による解毒療法は、ノーベル賞で解明された経路が依存する酸化還元環境そのものを回復します。

ノーベルはスイッチの仕組みを解明し、オーソモレキュラー医学は、そのスイッチがショートして暴走するのを防ぐのです。

免疫の寛容性を損なう10の根本原因

以下に挙げる10の「根本原因」は、それぞれ" detailed in From Mutation to Metabolism - Part I (Cheng, Preprints 2025)  [11]で詳述されており、酸化還元経路とミトコンドリア経路を通じて免疫バランスの喪失に寄与しています。これらの根本原因を無視すると、自己免疫、がん、代謝異常といった現代病の病原体が、次々と再発していくでしょう。

1.不健康な食生活と代謝ストレス

過剰な糖分とオメガ6系種子油はROS(活性酸素)を増加させ、Tregの働きを抑制します [ 1、12 ]

2.微量栄養素欠乏症(ビタミンC、ビタミンD、亜鉛、マグネシウム、ナイアシン、セレンの不足)

微量栄養素の欠乏は、FOXP3と酸化還元酵素を不安定に させます[ 4、7、13 ]

3.環境毒素- PM 2.5、重金属、BPA /フタル酸エステル

酸化ストレスやホルモンの乱れを引き起こします [14]

4.慢性感染症と腸内フローラの乱れ

酪酸を作る腸内フローラの減少によりTregの数も縮小します [15, 16]

5.ホルモンの不均衡

エストロゲンやプロゲステロンは通常Treg細胞を増殖させます [17-20]

6.心理的ストレス

慢性的なコルチゾール上昇はTregの形成を減少させます[21, 22]

7.運動不足

運動不足はミトコンドリアとリンパの機能を弱めます [23, 24]

8.医療による負荷

抗生物質や多剤投与は腸内細菌と解毒経路を損傷します [25, 26]

9.エピジェネティックな感受性

FOXP3の安定性は突然変異ではなく、メチル化パターンによって決定します [7]

10.幼少期の生活環境

母親の栄養や乳児の腸内フローラは、長期的な免疫のベースを整えます [27, 28]

10種類すべてに共通するのは、ミトコンドリアと酸化還元の損傷です。エネルギー代謝が衰えると、免疫システムは内部の調節機能を失います。

オーソモレキュラー医学がバランスを回復させる仕組み

  • 栄養第一

人口でない食品、糖質のコントロール、抗酸化物質の多い食品を摂取することで、

ROS(活性酸素)が減少し、ミトコンドリアの働きが整い、Tregが増加します。

  • 微量栄養素の補充

ビタミン C (経口または静脈内)、十分な量のビタミン D3、ナイアシン/ニコチンアミド、亜鉛/マグネシウム/セレンを適量補うこと。

  • デトックスと体内環境の修復

毒素への曝露を減らし、グルタチオンを回復することで肝臓と腸の働きを整えます。

  • ライフスタイルの調整

運動、ストレス回復、睡眠、ホルモンバランスはミトコンドリアと免疫の相互作用を強化します。

これらは代替医療ではなく、過度なストレスを受けた免疫システムに対する生化学的な応急処置なのです。

要約すると

ノーベル賞受賞の研究者たちは、少数のT細胞が炎症を抑制していることを明らかにしました。

一方、オーソモレキュラー医学は、現代のライフスタイルがT細胞を破壊し続けていることを指摘しており、体内環境を整えれば、ノーベル賞研究で示された“T細胞による調整の仕組み”が再び本来の力を発揮しやすくなる、という考え方が提示されています。

最後に

2025年のノーベル賞は、免疫システムがどのようにバランスを保っているかを明らかにし、これは分子生物学の大きな成果でした。

一方で、オーソモレキュラー医学では、なぜそのバランスが失われるのか、そして根本原因からバランスを回復する方法を説明しました。

私たちが体内環境を整えることで、FOXP3とTregは薬に頼らずとも、本来の役割である体のバランスを整える働きを自然に取り戻すのです。