分子整合栄養医学は、ノーベル賞を2回受賞した科学者ライナス・カール・ポーリング博士(1901-1994)によって提唱*1され、分子生物学を基礎に身体の状態を分子レベルで分析する栄養療法で、エイブラム・ホッファー博士、分子栄養学研究所の金子雅俊先生に継承され、現在多数の先生方が実践しています。
オーソモレキュラーの実践医療のすすめ
私たちの学生時代は西洋医学一辺倒で教育を受けていました。西洋医学以外は医学ではないというような考え方を持っている医師たちは大変多かったように思います。病院での専門医療を卒業し、全人的な医療に携わると西洋医学一辺倒では患者さんたちを診ていけないことに気づきます。開業後10年目で以前から専攻していた東洋医学(漢方療法)にあわせてオーソモレキュラー(分子整合栄養医学)栄養療法を取り入れて診療しています。
オーソモレキュラ栄養療法を取り入れた患者さんを解析すると、鉄不足、ビタミンB群不足、亜鉛不足が目立ちました。鉄不足は肩こり、ビタミンB群不足は読書ができなくなる、亜鉛不足は肌の乾燥という訴えが多く認められました。
今後さらに不定愁訴を訴えている患者さんにオーソモレキュラー(分子整合栄養医学)栄養療法を取り入れていきたいと考えています。
食事とサプリメントなどで補うオーソモレキュラー栄養療法
オーソモレキュラ栄養療法の目指すところは、西洋医学で治せない不定愁訴(ふらつき、低体温、食欲不振、うつ状態、不眠など)を、栄養・食事などの補完療法で改善させること、血液検査の結果から栄養素の欠乏状態を把握し、欠乏していると思われる栄養素を食事・サプリメントなどで補完し、無駄な投薬を減らし、心療内科などの受診抑制を行うことを目指しています。
みぞぐちクリニックのホームページの栄養解析から引用*2した表ですが、血液生化学検査から読み解く非常に有効な表です。
ALT値が9という値ですと、ほとんどの医師は正常と判断すると思いますが、オーソモレキュラーではビタミンB6不足と判断し、ビタミンBの補給を開始します。
私の経験ではビタミンの補給を行うとかなりの方で不定愁訴が改善されます。
また尿素窒素が低値であれば、たんぱく質摂取不足であり、たんぱく質を多くとるように指導します。表にはありませんが鉄摂取不足(鉄は100以上が理想的)も不定愁訴の大きな原因となります。
鉄の下限値は48μg/dlですが、100以下のデータですと、結構不定愁訴が出現し、ヘム鉄を補充してやれば不定愁訴が改善していきます。
したがって、血液データを丁寧に観察し、その内容を正確に判断し、不足した栄養素を補充してやることで不定愁訴は改善させることができ、病院巡りを阻止することができます。
(表1)問診票
さて、当医院に受診しオーソモレキュラー栄養療法を受けた54名の方に事前にチェックしてもらった問診票(表1)の項目の解析を行いました。
また、栄養療法後に再度問診票に記載した項目の解析も行いました。鉄不足には肩こりなどの疼痛の訴えが最も多く、ビタミンB群不足では以外にも読書ができなくなるという訴えでした。
記憶力の衰えを感じることイライラ感、音に敏感になるという訴えも多く認められました。亜鉛不足の項目では、肌が乾燥やすいという訴えが最も多く、次いで食欲不振、洗髪時に髪が抜けやすいという訴えも多く認められました。
栄養素不足が推測できた患者さんにマルチビタミン、ヘム鉄を服用させると、数か月後にはほとんどの症状が改善されていました。
まとめ
不定愁訴の多い患者様には丁寧な問診を行い、血液検査の少しでの異常も見落とさず、不足している栄養素を食事とサプリメントなどで補うことで、多くの方々を原因不明の病魔から救うことができるのではないかと考えます。従ってオーソモレキュラー医学を学ぶことは、診療するうえで大きな武器となりうると考えます。
参考資料
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