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Orthomolecular Medicine for Pets

この記事の執筆者

アリスどうぶつクリニック・どうぶつ統合医療センター

“ペットのオーソモレキュラー栄養療法”。

この言葉を耳にした時、聞き慣れない方は多いのではないでしょうか。オーソモレキュラー栄養医学は、日本において「栄養療法」「分子栄養学」「分子整合栄養医学」とも称され、二度のノーベル賞受賞を果たしたライナス・ポーリング(1901~1994年)によって提唱されました。一般的にペットの栄養療法というと、成長のためにカルシウム剤、関節の痛みにコンドロイチンを与えるといったレベルでの理解がされています。しかしながら、このような方法では根本的に改善することは難しいです。

もし、あなたが犬や猫を飼っているなら、裏面に記載されているペットフードの原材料や成分まで確認してから与えていますか?体は食べたものからできています。ペットも私たちと同様に、劣悪な食習慣により病気になることが多いのです。

ペットのオーソモレキュラー栄養療法では、まず血液検査を行います。単に悪い部分を見つけ出し、病名を付けるのではありません。詳細に解析し栄養状態を把握後、分子細胞レベルでその子の健康状態・体質に合ったオーダーメイドの治療法を提案します。与えている食事に問題がある場合は適切な食事への変更、血液の栄養解析により体内の栄養素に関する問題がみられた場合は、体内の細胞に適切な栄養素(ドクターズサプリメント)を用いて全身の改善を目指します。さらに、がんや慢性疾患の影響で体が疲弊している深刻な場合は、高濃度ビタミンC点滴療法やマイヤーズカクテルといった点滴療法を用います。

オーソモレキュラー栄養療法は、体を構成する約37兆個(人間の場合)の細胞の働きを向上させることで、根本的な改善を促す治療法と言えます。健康維持だけでなく、病気の予防やアンチエイジング、あらゆる慢性疾患からガンの治療にまで用いることが可能です。

愛するペットの健康のために

オーソモレキュラー栄養療法(orthomolecular medicine)は、我が国では「栄養療法」「分子栄養学」「分子整合栄養医学」とも称されます。適切な食事や栄養素(ドクターズサプリメント)、そして点滴療法を用い、体を構成する約37兆個(人間の場合)の細胞の働きを向上させることで様々な疾患の治療を行います。"orthomolecular nutrition and medicine"(分子整合栄養医学) とは、ノーベル賞を二度受賞したライナス・ポーリング(1901 ~1994)が提唱した造語です。

ライナス・ポーリングは「多くの疾患は、体内の分子が本来あるべき正常な状態でなくなるために、不足している栄養素を至適量補給することによって自然治癒力を高め、病態改善が得られる」と述べています。彼のこの言葉は、ペットにも当てはめることができるのではないでしょうか。実際に、ペットのオーソモレキュラー栄養療法も同様の治療指針のもと実施されています。

栄養療法のすすめ

ペットのオーソモレキュラー栄養療法の流れをみていきましょう。まず始めに、飼い主に事前に記入してもらった問診表を見ながらカウンセリングを行います。問診内容は、病歴、既往歴、現症といった項目のほかにも生活環境、食事内容、おやつ、与えているサプリメントなど、できるだけ多くの情報を得られるようにします。セカンドオピニオンの場合は、今までの治療内容を伺います。血液検査、尿検査、糞便検査、各種画像検査などの検査結果が出ているのなら、そのデータを拝見した上で、診察には十分に時間を取ります。

オーソモレキュラー栄養療法を実施する際は、その時体内で起こっている変化を詳細に把握するために血液検査から始めます。言葉を話さないペットの治療において、血液検査データはとても重要な手がかりです。一般的な血液検査の基準値のみの判断とは異なり、血液検査結果を詳細に「栄養解析」することにより、顕著な異常、隠れた異常を発見し、病態との相関性を明らかにします。その結果によって、必要ならば食事を提案し、さらに問題が認められた場合はドクターズサプリメントを用いた栄養素の積極的な摂取と、状況によっては高濃度ビタミンC点滴療法、マイヤーズカクテルなどを用い、各々が持つ自然治癒力を最大限に引き出すアプロ―チを全ての土台として治療を開始します。

ペットフードの見極めが大切

特に食事指導には時間を取ります。人も動物も毎日食べているものが体を作っていますので、栄養療法を始めたり継続していくためには見逃せないポイントです。一般的には動物の栄養はペットフードのみで良いと考えられています。しかしながら、そのペットフードの原材料や組成については多くの人は認識していません。実際、かなり粗悪な内容のフードも多く販売されているのです。

野生の動物とは異なり、ペットは自分で食べるものを選ぶことができないため、飼い主の考えによって食習慣が決まります。犬、猫は元々肉食動物ですが、中にはトウモロコシ、ポテト、小麦など炭水化物が主材料で、蛋白質の含有量が極端に少ないフードがかなり多く販売されております。組成も蛋白質が20~25%、炭水化物が50%を表示するフードも多く、このような糖質過剰のフ―ドが様々な病気の原因となっています。大切なペットに健やかな生活を送ってもらうためには、蛋白質38~40%以上、炭水化物20~30%以下のバランスの取れたフードを与えるのが理想的です。

サプリメントと点滴療法

さらに、血液検査データに基づき必要な栄養素を解析した後は、サプリメントで栄養素を補い病態を改善します。サプリメントは、クルード(天然の加工されていない)なプレカーサー(前躯体)の摂取が原則です。徹底した衛生管理のもと安全性、親愛性の高い製品とするよう「健康補助食品GMPマニュアル」に適合する製造管理・品質管理の下に製品化した製品を使用します。

点滴療法には、高濃度ビタミンC、マイヤーズカクテル、グルタチオン、血液オゾン療法、水素療法などがあり治療目的により選択します。点滴療法は、抗酸化作用や免疫力を高める、代謝を良くするなど、体の根本に働きかけるものが多いため、一つの点滴が様々な症状にまたがって効く可能性があります。今回は、高濃度ビタミンC点滴療法とマイヤーズカクテルについて簡単にご説明します。

高濃度ビタミンC点滴療法は、主にガン治療に他の治療と併用します。動物も人と同様、2〜3頭に1頭はガンになると言われています。手術、放射線療法、抗ガン剤の3大医療が動物のガン治療においても行われていますが、改善がみられないケースも多く存在します。ビタミンC点滴は、抗ガン剤の副作用などによって疲弊し見放された動物の生活の質(QOL)の改善や延命治療を目的とした場合の治療法の一つとして挙げられます。 

マイヤーズカクテルにはビタミン、ミネラルなどの栄養素が多く含まれています。栄養療法においては欠かせない点滴療法と言っても過言ではありません。マイヤーズカクテルは、ガンの補助療法、ウイルス感染、アレルギー疾患、感染症、皮膚疾患、関節・椎間板疾患、消化器疾患、肝臓、胆のう・胆道疾患、泌尿器生殖器疾患、ガン、AIDS、肝炎といった多くの重症疾患の治療、予防医療、アンチエイジング、老齢動物の健康維持など、その適応は多岐にわたります。

人と動物と栄養

日々診察を行う中で「もしかして、この子も栄養不足なのでは?」と感じることがあります。そのため、点滴による栄養補充は、健康に生きる上で動物にとっても有効な選択肢であると思うのです。ペットに向けたオーソモレキュラー栄養療法はまだ始まったばかりですが、人と同じ脊椎動物である動物には、基本的には人と同様に導入が可能です。動物本来の食性を考え、栄養素が不足している場合はサプリメントや点滴療法の実施によって体の状態、そして症状を改善することを目的としています。

ペットは大切な家族の一員。「人」と「動物」の垣根を越えた治療法。それがオーソモレキュラー栄養療法と呼べるかもしれません。





<参考文献>

  • 金子雅俊:分子整合栄養学の原点. 特別セミナー. 1-6.2019 
  • 廣田順子:犬・猫の点滴療法・栄養療法の実際. JVM. Vol 71. No.3. 172-177.2018

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