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世界的に蔓延するビタミンDとマグネシウム不足、相互関係における有効な補充法とは?

この記事の執筆者

湾岸スタジオビル診療所

•1984年慶應義塾大学医学部卒、同内科学教室入局 1988年慶應義塾大学内科 腎・内分泌・代謝科勤務 1992年米国UCSF留学 1994年東京都国保連合会福生病院内科医長兼透析室長 1999年フジテレビジョン健康相談センター長 2007年フジテレビ湾岸スタジオビル診療所開設

目次

    ビタミンDとマグネシウムは、人体の健康と病気にとって、非常に多くの点で重要です。
    成人の大多数は、ビタミンD、マグネシウムともに不足しているにも関わらず、多くのヘルスケア専門家を含め、一般的に認識が低いのが現状です。マグネシウムとビタミンDは生体のすべての臓器で利用され、その不足状態はいくつもの慢性的内科疾患の発症に関与します。
    一方で、反論もあります。ビタミンDとマグネシウム双方の補充は、今や治療よりもむしろ疾患の予防手段として重要であると考えるべき時にきています。

    はじめに

    マグネシウムとビタミンDは直接、生涯にわたって骨と筋肉の代謝を調節し、食事からのカルシウムとリンの吸収にとって欠かせません。慢性的ビタミンD不足とマグネシウム不足は、しばしば低カルシウム血症を伴います。そのため、骨吸収を促し全身の骨ミネラル濃度を減少させ、結果として骨軟化症や骨粗鬆症を引き起こします。高齢者におけるビタミンDとマグネシウム補充療法は、脊椎以外の骨折、全死亡率そしてアルツハイマー型認知症の発症を減らすことも明らかにされています。
    マグネシウムとビタミンDの恒常性について説明し、次にマグネシウムとビタミンDの相互関係において、見落としてはならない補充療法のポイントをご紹介します。

    マグネシウムの恒常性

    1日の推奨される用量Recommended daily allowance (RDA)は、米国の基準では男性5-6 mg/㎏、女性4-5mg/㎏となっています。食事からの摂取では、ほとんどの成人にとって不十分です。何故なら、食品の加工過程で多くのマグネシウムが失われるからです。加工食品を最低限に、という理由はここにあります。
    マグネシウムが豊富に含まれるものには、ほうれん草、ナッツ類、種子類が挙げられます。マグネシウムは、ATP産生、DNA/RNA生合成、ブドウ糖の代謝において必須のミネラルです。
    また、マグネシウムは数百もの全身の代謝過程(ビタミンD代謝を含む) の補因子、補酵素として働きます。血圧、心筋興奮性、神経伝達、神経筋伝導の調節にも欠かせません。

    マグネシウムの正常レベル

    成人では、マグネシウムの99%が骨、筋肉そして軟部組織に含まれます。
    血清にはごく少量だけ存在し、全身の貯蔵量を正確には反映しません。正常範囲とされる血清レベル1.5-2.5meq/Lでは、身体全体においては中等度から重度の不足を伴っているのが現実です。

    マグネシウム不足の要因

    ほとんどの成人は、食事のみではRDAの推奨量を摂取しきれていません

    長期にわたるPPI(プロトンポンプ阻害薬)の服用、長期の利尿薬の服用、過度の飲酒とりわけビタミンDサプリメント製剤の大量使用がマグネシウムの枯渇を導きうる点には十分な注意が必要です。

    ビタミンDの恒常性

    ビタミンDは、1928年に脂溶性ビタミンとして誤って分類されましたが、皮膚での生合成が主な供給源となるため、今ではホルモンとして考慮されるべき栄養素です。

    ビタミンD2は自然には生合成されません。ビタミンD3は、日光暴露の紫外線によって皮膚で内因性に生産されるほか、食事(乾燥したマッシュルームやサーモン)とサプリメントからの補充が可能です。D3の生合成量は、皮膚色素沈着、体格、露出した皮膚の量、日焼け止めの使用程度、衣類や日よけ等によって左右されます。

    非活性型ビタミンDは、血液中でビタミンD結合蛋白と結合し、まず肝臓、次いで腎臓にて水酸化されて活性型となります。25(OH)ビタミンDは、体内で備蓄(半減期28日) されます。1,25(OH)2ビタミンDは、活性型(半減期15時間) とされ、目標の組織で、ビタミンD受容体の活性化を介して機能します。

    ビタミンDとマグネシウムの相互作用

    ビタミンDの代謝過程における複数の段階は、補酵素としてのマグネシウムに依存しています。マグネシウム不足は、副甲状腺ホルモン合成と分泌を低下させ、機能するビタミンD受容体の数までも減少させます。そのため、ビタミンDを摂取していても、マグネシウム不足があると活性型ビタミンDはしばしば低い状態が続きます。また、マグネシウムの補充なしにビタミンDを大量に摂取すると、動物では冠動脈の動脈硬化をもたらすことも示されています。

    ビタミンD不足の原因
    • 日焼け止め
    • 年齢
    • 肥満者/CKD(慢性腎臓病)患者
    • 吸収不良症候群
    • 抗てんかん薬/抗レトロウイルス薬
    • リンパ腫
    • 原発性副甲状腺機能亢進症
    • 慢性肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、結核、慢性真菌症など)
    ビタミンDの状態の評価

    血清25(OH)ビタミンDは、ビタミンD不足を疑う場合、スクリーニング検査として有用です。血清ビタミンDレベルは10-30ng/mlの範囲で、通常は検査会社から報告されます。検査会社の正常範囲の下限は、くる病のような骨格に関連する症状の防止に必要なレベルを反映しており、疾患の予防には全く不十分です。
    疫学的研究では、世界中の成人の約75%は、血清25(OH)Dレベルが30ng/ml未満です。未熟児の死亡率、抑うつ、糖尿病、メタボリック症候群、脂質異常症、心血管病などの減少や予防には、30-40ng/mlレベルが望まれます。より高い50-80ng/mlレベルは、認知症やある種の悪性腫瘍の予防のために必要です。
    疾病予防に最も有効な血清25(OH)Dレベルは、60ng/mlとされ、その値は日光暴露によって体内で生成される最高総量です。

    一般の人々へのビタミンD補充

    ビタミンDの経口投与量は不足の程度によります。D2での補充は、血清25(OH)Dレベルが14日という迅速さで基礎値に減少しうるので、適していません。高齢者の転落や骨折リスクが増加するため、間欠的な3か月毎の30万単位での大量投与は避けるべきです。
    したがって、毎日5000単位での補充が推奨されます。
    ビタミンDレベルは、3〜4か月毎にチェックし、60-80ng/mlを維持できるよう調整します。
    一度そのレベルを満たすことは、その後の25(OH)Dレベルを維持するポイントとなります。これに準じない場合、組織の1,25(OH)2Dレベルは直線的に減少し、ある種のがんのリスクを上昇させる場合があります。

    慢性腎臓病や末期腎不全患者へのビタミンD補充

    末期腎不全患者の大多数は、25(OH)Dと1,25(OH)2Dの両方が不足しています。
    活性型ビタミンDの投与は、顕著に副甲状腺ホルモンを下げ、末期腎不全患者の生存率を上昇させ得ます。

    マグネシウムの状態の評価
    血清と赤血球内の分析

    循環血液中のマグネシウムは、異なる分画(血清、赤血球、白血球、血小板)に存在します。血清では、マグネシウムはfreeなイオン化型または蛋白/陰イオン結合型かのどちらかで存在します。イオン化型マグネシウムは生物学的に活性型で、血清または赤血球内で測定されます。血清マグネシウムが正常な患者でも、細胞内は不足する可能性があるのです。
    血清カルシウムレベルは、低アルブミン血症では補正される一方、血清マグネシウムの補正に関してはまだ確立されていません。

    推奨されること

    今日手に入る分析法で、慢性的マグネシウム不足の診断方法として確実に信頼できるものはないのが現状です。そのため、マグネシウム不足を日頃から疑い、マグネシウムの豊富な食品またはサプリメントの摂取がより容易で実践的な方法といえます。

    自然なマグネシウム元素の重要性

    マグネシウムサプリメントにおいて、マグネシウム元素と生物学的利用度の中身はそれぞれ異なり、どちらがより優れているか示す証拠は現時点ではありません。日々の需要に合わせるためにマグネシウムを一度に大量に摂取しないことが重要です。
    マグネシウムが豊富な食事と併せて、サプリメント2〜4粒(種類は問わない)の摂取が奨励されます。

    ただし、中等度のCKD(慢性腎臓病)の人には、50〜75%減らして投与し、重度のCKDや末期腎不全患者においては、マグネシウム補充は避けるべきです。

    結論

    ビタミンDのスクリーニング分析法は、今では普及し、正常範囲の下限値は報告されていますが、疾病の予防としてはまだまだ不十分です。疫学的な研究では、世界中の成人のうち約75%が血清25(OH)Dレベル30ng/mL未満です。現在世界的に認知され、ビタミンD補充は一般的に行われつつあります。

    一方、マグネシウム不足の危険性はまだ十分に認知されていません。血清マグネシウムレベルが正常であっても、生体にとって中等度から重度の欠乏状態に陥っている可能性があります。
    残念ながら今日まで、全身の慢性的な不足を決定するシンプルで正確なスクリーニング検査方法は存在しません。マグネシウムはビタミンDの代謝において必須であり、ビタミンDの大量摂取は、重篤なマグネシウムの枯渇を招く恐れがあります。

    適切なマグネシウム補充療法は、ビタミンD療法の重要な側面として考慮されるべきです。

    最後に

    健康維持と疾病予防のために、理解のある医師に相談し、血清25(OH)ビタミンDを測定してもらいましょう。
    測定した結果、数値が低い場合でもすぐにビタミンDのみを摂取・補充しようと考えてはいけません。補充したビタミンDの代謝過程でマグネシウムを消費してしまい、隠れたマグネシウム不足をさらに増長し、マグネシウムの枯渇を招きかねません。
    まずはマグネシウムが豊富に含まれる食材・食事やサプリメントから適切に補充した上で、ビタミンDを補充することが望まれます。



    <参考文献>
    • Pramod Reddy, Linda R. Edwards: Magnesium Supplementation in Vitamin D Deficiency.  American Journal of Therapeutics 2019 ; 26, e124-e132.
    • PubMed search of several reported associations between vitamin D and Mg with diseases.
    • https://vitamindwiki.com/Magnesium+is+needed+by+Vitamin+D+in+8+places+-+2013