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東京都民の98%がビタミンD不足〜日本人の健康の危機

この記事の執筆者

鎌倉元気クリニック

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会 代表理事。鎌倉元気クリニック 名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育 ... [続きを見る]

2023年2月3日、栄養医学専門誌のJournal of Nutritionに掲載された論文に日本中が衝撃を受けました。それは「東京都民の98%はビタミンD低下〜欠乏状態であった」東京慈恵医科大学臨床検査医学講座の研究グループからの発表でした

この10年間にビタミンが不足の都民が増加!?

日本内分泌学会と骨代謝学会の基準で、血清ビタミンDの正常値は30ng/mL以上、そして20-30ng/mLを「ビタミンD不足」、20ng/mL未満は「ビタミンD欠乏」と診断しています。

慈恵医大の研究グループは2020年から2021年に慈恵医科大学健診センターを受診した都市部の住人5,518人について血清中25-ハイドロキシビタミンD(以下血清ビタミンD)を測定しました。

その結果、正常であったのは僅か2%、ビタミンD不足が19%、ビタミンD欠乏が79%、すなわち合わせて98%の東京都民がビタミンD不足〜欠乏であったわけです(図1)。

<図1>東京都都民5,518人の血清25(OH)ビタミンD値

2011年の慶応大学の研究グループが医学部附属病院女性勤務者(39-49歳)の血清ビタミンD値を測定したところ、正常であったのは21%、ビタミンD不足が47%、ビタミンD欠乏が32%、すなわち合わせて79%がビタミンD不足〜欠乏であったわけです。

この10年間に益々ビタミンDが不足している人の比率が著しく増加しています。東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座研究グループを率いているのが越智小枝教授です(写真)。

<写真>慈恵医科大学の越智小枝教授と筆者

筆者は越智教授と情報交換をする機会があり、この論文のことが話題になりました。98%の都民がビタミンD不足であるというデータに驚いたのが越智教授自身でした。新しい自動液体クロマトグラフィー装置を用いたので、当初は想定装置の問題ではないかと疑いました。

様々な検証を経て、データが正しいことを確認して発表したそうです。

この論文(図2)を読んで、日本人の健康レベルに危機を感じたのは私だけでないでしょう。

<図2>Journal of Nutritionに掲載されたと東京慈恵医科大学の論文

なぜなら、ビタミンDは骨代謝、がん、感染症、精神疾患、代謝疾患、免疫などあらゆる疾病や代謝に関わってきます。

このままでは近い将来に様々な疾病が増加する可能性があります。

がんのリスクとビタミンD

これまでの研究から血清ビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD)が40 ng/ml以上の女性は25 ng/ml以下の女性と比べて乳がんと診断されるリスクは50-80%低くなります。

ニューヨーク州立大学のウエルシュ博士は、「全ての細胞にはビタミンD受容体があり、この受容体タンパクが遺伝子発現をコントロールしています。ビタミンDは血中から乳腺細胞に入ってビタミンD受容体と結合して遺伝子発現を起こすことにより、がんの予防、進行の抑制を引き起こしていると考えられます。」と述べています。

卵巣がん(47 ng/ml以上)のリスクは血清ビタミンDが25 ng/ml未満と比べて17%低くなります。同様に大腸がん(43 ng/ml以上)は60%、非ホジキン悪性リンパ腫(38 ng/ml以上)は18%、腎臓がん(48 ng/ml以上)は49%、子宮内膜がん(50 ng/ml以上)で37%もリスクが低くなると報告されています。

がんの遅漏とビタミンDは効果があるか?

2019年4月9日、米国ボストン市にあるダナ・ファーバー癌研究所のキミー・ウン部長の率いる消化器がん研究チームは、「転移のある進行性大腸がんの患者に高用量のビタミンDと化学療法を併用することにより、がんの進行を遅らせることができる」と米国医師会雑誌(JAMA)に発表しました。ウン部長は「私たちの知る限りでは、転移を有する進行性大腸がんに対するビタミンDのランダム試験はこれが初めてです。」と述べています。この研究には、米国各地のがん治療センター11施設が参加し、過去に治療を受けていない進行性大腸がん患者139名無作為にビタミンD高用量群69名と低用量群70名の2群に分けました。高用量群はビタミンD 8,000単位(200µg)を2週間投与。それ以降は4,000単位(100µg)を長期投与。低用量群は市販のマルチミネラル・ビタミン製剤に標準的に含まれているビタミンD 400単位(10µg)を長期投与しました。 いずれの患者にも、化学療法として分子標的薬であるベバシズマブを併用したFOLFOX6療法を行いました。結果は23ヶ月の経過観察期間において、高用量ビタミンD摂取群では病状の進行や死亡率が低用量群より36%も低下したのです(p<0.02)。

ダナ・ファーバー癌研究所チームは、「進行性大腸がん患者にとって、低コストで安全かつ即導入できる新しい治療になる可能性があります。それは患者の経済状態に影響されず、どんな国でも行うことができる画期的な治療となるでしょう。」とビタミンDに期待を込めています。

ビタミンDの服用法

ビタミンDを服用する前に、血清ビタミンDを測定するのが原則です。不足気味程度であるならば日光を浴びる、あるいは食事でビタミンDを摂取します。かなり不足している場合、あるいは予防的な理想値である40-60ng/mlにするには、ビタミンDをサプリメントとして摂取します。一般的に血中濃度が最高値になるまで約3ヶ月は継続的に飲み続ける必要があります。

 <表>は米国非営利医療研究機関のグラスルーツヘルスが紹介している、7,324人のデータを下に算出した1日ビタミンD推奨摂取量です。

例えば血清ビタミンD濃度が20ng/mlと低いため、40ng/mlにするために必要な1日ビタミンD摂取量は5,000IUとなり、まずは3ヶ月服用します。

<表>ビタミンDサプリメントの1日摂取量の目安

おわりに

病気にならない体、すなわち疾病予防目的の血清濃度の基準値と、欠乏症を防ぐ基準値は当然ながら異なります。

米国のグラスルーツヘルスでは、疾病予防のための血清ビタミンD濃度として40〜60ng/mlを推奨しています。

特にウイルスによるパンデミックから自分の身体を守るにはビタミンC,ビタミンD,亜鉛の組み合わせが必要であると私は考えています。

日本オーソモレキュラー医学会では日本人の健康レベルを高めるためにビタミンDの情報の普及に努めて行きます。

参考文献

(1)「東京都民の98%はビタミンD低下〜欠乏状態であった」という慈恵医科大学の論文 Miyamoto H, et al.  J Nutrition 2023; 153@1253-1264.

(2)慶応大学医学部附属病院勤務者のビタミンDを測定した論文 Miyamoto T. et al. Keio J Med 65 (2) : 33–38, 2016

(3)米国グラスルーツヘルスのホームページhttps://grassrootshealth.net

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