編集部:オーガニックのイメージとして、一般のものと比較すると値段が高いと感じる方が多いかと思います。若者や小さなお子様がいる家庭で、「まず、これからオーガニックに切り換えるといい」食材があったら教えていただきたいです。
白川:やはり妊娠をきっかけにオーガニックに切り換える方が多いです。こうしたことを踏まえて考えると、牛乳、卵、肉といった畜産物・畜産加工品が一番農薬投与(成長ホルモン、抗生物質など)による危険性が高いです。ですので、畜産物・畜産加工品、次に野菜・果物、そして米・パンといった主食を切り換えていくのがよろしいかと思います。アイスクリームなどの嗜好品に関しては、毎日頻繁に食べるものでもないと思うので、まずは毎食欠かせないものから切り換えられるといいですね。
編集部:オーガニックの牛乳や肉類は入手できますか?
白川:まだ難しいのが現状です。農産物・農産加工品は手に入れやすくなった一方、畜産物・畜産加工品に関しては「認証」自体は存在するものの生産者が少ないのです。牛乳や肉類は、まず飼料から変えなければいけないですが、日本国内においては有機飼料がありません。そのため、飼料を自分たちで生産するか海外から輸入する必要があるので、どうしても負担が大きくなってしまいます。
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たどり着いた「オーガニック」という答え【後編】
先週に引き続き、ナチュラルハウス代表取締役会長 白川洋平氏インタビュー後編をお届けします。
まず切り換えるなら?
ですが、最近では有機の飼料米の普及を目指す方も現れたので、有機の畜産物を目にする日もそう遠くないかもしれません。生産者の方の中では「本当は有機と言いたい。餌もきちんと選んでいます。」とおっしゃる方がいます。どういう意味かというと、日本の流通において、生産者と肉を解体・加工する場所は異なります。例えば、加工現場で吊るしているチェーンから落下し、別の場所にかけられることが絶対に100%ないとは言い切れません。もし、そうなった場合に「有機」と掲げれば法律違反となってしまいます。そのため、彼らは有機と口に出すのが難しいのです。
<写真>一般菓子とオーガニックの違い(青山店内にて)
「3つの無関心」と今後の展望
編集部:今後、農協などがオーガニックの重要性を取り上げていく可能性はあると思いますか?
白川:出てくると思います。日本で有機が広がらない理由として「3つの無関心(①行政の無関心②農協の無関心③消費者の無関心)」が言われています。行政に関しては先ほどもお話しした通り、アメリカでは公的機関が有機食材を推奨していますが、国内においてはあまり聞いたことがありません。
農協に関して言えば、だんだん有機栽培に取り組み出しているように思います。ですが、現状では有機生産者は農協に出荷できません。そのため、彼らは自分たちで配達を依頼しなければいけないので、物流面での負担が大きいです。有機生産者も農協に出荷できる仕組みができれば、価格も下がり結果として消費者の手にも届きやすくなると思います。TPP以降、「国産品の付加価値を高めていかなくては」という流れが生まれてきて、一部の農協がこうしたことに関心を持ち始めています。これからの農協の取り組みに期待しています。
編集部:取り組み次第で家庭においてもオーガニック食材を買いやすくなる。農協については、これからの展開に要注目ということですね。
白川:今の日本では、オーガニック商品は倍とまではいかなくとも約80%ほど高値です。これでは、一般の方たちが日常的に継続して購入するのが大変なのは言うまでもありませんよね。アメリカ・ヨーロッパのこれまでの傾向からみると、一般商品との価格差が20~30%になった時に、オーガニック商品がブレイクしてきました。
編集部:頭では「いいもの」とわかっていても、値段が高すぎては現実的に継続が難しいですよね。
白川:そうですね。国内における価格高騰の一番のネックとなっているのが、前述の“物流コスト問題”です。この部分が解決されることを切に願っています。
編集部:国民の関心という側面から考えると、オーガニックに関心のある層とそうでない層で二極化しているように思います。国民の意識改革のためにはどういったことが必要と思われますか?農協や行政が取り組み出すほかないのでしょうか。
白川:アメリカとの違いについて前述しましたが、アメリカでは行政によるオーガニックキャンペーンがあり、国民皆保険ではないため、国民は自分の健康は自分で守る意識が高いです。対して日本では、「国産なら安心」と考える傾向があります。たしかに衛生基準に関してはとてもレベルが高いですが、添加物の基準について話せば、認可されている添加物の数はアメリカと比較すると3倍ほどにもなるそうです。多くの国民はこうしたことを知らないですよね。“食育”と呼ばれる部分が足りていないと思います。
編集部:添加物の数もそこまで違うのですね。日本国内では農薬・添加物が及ぼす影響などについて、自分で調べない限りはなかなか知る機会がないように思います。
白川:アメリカでは、OTA(The Organic Trade Association:https://ota.com)という民間団体がオーガニックの普及活動をしています。OTAでは、農薬の使用の有無でガンや不妊症の発症率がこれだけ変わる、といった明確なデータを公表しています。アメリカにおいては価格面での差も日本ほどないので、こうした情報を目の当たりにし「それならオーガニックを買おう」と考える国民が多いです。
編集部:国民一人ひとりの意識改革が鍵を握っているのですね。
白川:国内においては、これまでお話ししてきたような情報を知る機会がまだまだ限られています。ですので、地道にオーガニック食材の安全性を伝えていくことが大切だと思っています。ナチュラルハウスでは、店舗に足を運んでくださった方に知っていただくため、店舗内にパネルやチラシの設置を行っています。これからいらっしゃる方々には、是非こうした設置物を一度チェックしてもらえたら嬉しいです。
編集部:大変勉強になりました。ありがとうございました。
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