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新型コロナ感染において「喫煙」はリスク因子となるのか?

この記事の執筆者

SPIC Clinic

一般社団法人日本オーソモレキュラー医学会代表理事。スピッククリニック名誉院長。 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育セン ... [続きを見る]

新型コロナ感染拡大により世界が様変わりしてから、世界中で新型コロナウイルス に関する研究が行われています。
では、喫煙と新型コロナの関係についてはどうでしょう。今回はこの「喫煙」が「新型コロナ」にどのような影響を与えるかについて、すでに発表された研究・調査の結果を踏まえてお話ししたいと思います。

新型コロナウイルスと喫煙

疫学データによると、喫煙はインフルエンザウイルスに感染しやすく、かつ重症度を高めるとされています。これは、タバコの煙が肺の上皮の抗ウイルス機能を阻害するためと言われています。また、コロナウイルスによって引き起こされた中東呼吸器症候群の集団発生 (2012年)では、喫煙者の死亡率が高いことを示すデータもあります。

これらの傾向から推測すると「新型コロナウイルスの場合も喫煙者は感染および重症化しやすいだろう」という結論に辿り着きますが、どうやら実際はそれほど単純な話ではないようです。新型コロナウイルスのアウトブレイクが起きて2ヶ月ほど経った3月頃より、喫煙と新型コロナウイルス感染に関する論文が続々と出始めました。

CASE1:禁煙によって症状は改善する

ハーバード大学公衆衛生学部門の研究者らは、中国とイタリアの5つのデータを分析し、喫煙状態に関連する好ましくない結果を発見しました。(1)  最も患者数の多い(n = 1099)研究から、COVID-19において喫煙者は重篤となる可能性が1.4倍、集中治療室への入室や死亡するリスクに至っては2.4倍高くなることがわかったのです。

WHOはこれまで禁煙を推奨しています。(3) 喫煙している人が禁煙してから20分以内に心拍数と血圧は低下し、12時間後に血流中の一酸化炭素レベルは正常値に戻ります。 そして、2〜12週間以内に循環が改善し、肺機能が増加します。 1〜9か月後には咳や息切れが減少します。すなわち、新型コロナウイルスへの感染を考えると、今は「禁煙することによってあなたの命が救われる」ということです。

CASE2:喫煙と新型コロナ重症化はイコールではない

ところが一方、イスラエルの公衆衛生局が市民114,545人にPCR検査を実施したところ、喫煙者における陽性率の有意な減少が発見されました。(2)   そして、喫煙者が感染しても重症化しやすいという証拠は見出せなかったのです。中国でも一般の喫煙率が26.6%なのに対し、PCR陽性患者における喫煙率は6.5%と低くなりました。(4)  

このような結果を示した理由として、広く知られているニコチンのアンジオテンシン変換酵素(ACE)受容体発現増加作用によるものではないかと推定されています。

まとめ:喫煙が絶対悪とは言い切れない

さて、本稿ではタバコとウイルス感染についてのいくつかの研究・調査をご紹介しました。喫煙者が新型コロナに感染しにくい可能性が否定できないとはいえ、喫煙が心臓や血管、そして肺の機能を低下させてしまうことは揺らぐことのない事実です。トータルで判断すれば、健康でいるために推奨されるのはやはり非喫煙である点は、ここで改めて強調しておかなければなりません。

しかしながら、イスラエル公衆衛生局のPCR検査ならびに中国における陽性患者における喫煙率のデータを鑑みると、「タバコを吸っているからあの人は新型コロナウイルスに感染した」とは断言できなくなったと言えるでしょう。





<参考文献>

(1) Vardavas CI and Nikitara K: COVID-19 and smoking: A systematic review of the evidence. Tob Induc Dis. 2020; 18: 20.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7083240/

(2) Israel A et al.: Smoking and the risk of COVID-19 in a large observational population study. BMS in press, 2020.https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.06.01.20118877v2

(3) WHOの見解:https://www.who.int/news-room/detail/11-05-2020-who-statement-tobacco-use-and-covid-19

(4) Farsalinos K. et al.: Systematic review of the prevalence of current smoking among hospitalized COVID-19 patients in China: could nicotine be a therapeutic option? Intern Emerg Med 2020 Aug;15(5):845-852.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32385628/