毎日摂るマルチビタミン剤でガンのリスクが低下

12.12.12 オーソモレキュラー医学ニュース

オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(点滴療法研究会)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)姫野 友美(ひめのともみクリニック)
齋藤 糧三(日本機能性医学研究所) 北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)
翻訳協力西本貿易株式会社ナチュメディカ事業グループ

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低用量のサプリメント摂取でも年間48,000人の命が救われる

執筆者: Robert G. Smith, PhD

(OMNS、2012年10月26日)先週、ネット上で発表された新しい大規模健康調査の結果によると、毎日のマルチビタミン・サプリメント摂取により、ガンのリスクが8%低くなることがわかった [1]。この重要な結果は、栄養学者や医学研究者が50年も前から知っていたこと、つまり、必須栄養素のサプリメントは健康と疾患予防に有益であるということを裏付けるものである。これは、すべての人にとって素晴らしいニュースである! 米国におけるガン死亡者数は近年、年間60万人(10万人当たり190人)前後となっており、増加している [2]。毎日マルチビタミン剤を摂れば、このうち8%の死亡を防ぐことができる。つまり、安価なビタミン剤を毎日摂るだけで、毎年48,000人の米国人の命が救われる可能性がある。

 

調査の詳細

上記の調査は、約15,000人の高齢男性に対して行ったものであり、その半数はマルチビタミン錠、残りの半数はプラセボを摂るよう、無作為に割り当てた。調査に含まれたのは、50歳以上の男性医師で、その一部は70歳を超えており、平均年齢は約64歳、最もよく見られたガンは前立腺ガンであった。全体的に、ガンのリスクは低く、1人1年あたり約2%であった。約11年経ってから、この15,000人の被験者におけるガン件数が表にされた。マルチビタミン錠剤を摂っていたグループのほうが、ガンと診断された件数が89件少なく(1379件対1290件)、これは8%の低下を示している [1]。これは小幅な差ではあるが、有意な結果である。なぜなら、このリスク低下率は、偶然期待されるものよりも高かったからである。しかし、前立腺ガンなど、ガンの種類別に表にしたところ、有意なリスク低減は見られなかった。これはおそらく、この調査で用いられた実験的方法で統計的に有意な結果を得るためには、特定の種類別のガンの発生数が少なすぎたためである。しかし、ガン件数を全部まとめて考えると、全体としてガンのリスクは下がることが、この調査からわかることとなった。

優れた食習慣を実践するとともに、必須栄養素のサプリメントを適量摂れば、ガンなど、加齢に伴う慢性疾患のリスクが低くなる可能性があることは、何十年も前からわかっている。こうした認識は、患者を観察している医師によって、また、健康効果を調べる観察試験によって得られたものである [3, 4]。禁煙する、肥満度を減らす、適度な運動をするなど、他の生活習慣の改善によっても、ガンおよび他の慢性疾患のリスクが下がることがわかっている [4]。よって、上記の新しい調査結果は、我々の現存知識にそれほど多くを付け足すものではない。この調査の被験者は、医師であり、良好な健康状態にあり、そのほとんどは定期的に運動し、果物と野菜をたっぷり摂っていて、喫煙はしていなかった [1]。したがって、この調査結果は、厳密に言えば、健康な人々にのみ当てはまる。しかし、ビタミンやミネラルなど、必須栄養素のサプリメントを毎日摂ることは、健康状態や生活習慣に関係なく、誰にとっても、加齢に伴うガンなどの疾患のリスク低下に役立つ可能性が高い。これを確認するものとして、この調査では、以前にガンを患っていた被験者についても、マルチビタミン錠剤を毎日摂ることによってガンのリスクが低下したことがわかっている。

 

これまでに行われた試験の欠陥

上記の新しい調査結果を大局的に見るためには、この20年間、個別のサプリメントの健康効果を調べる多数の無作為化対照試験が行われているのに肯定的な健康効果が全く報告されていないことに注意することが重要である。多くの場合、その原因はおそらく、用量が不十分であったこと、不適切な形態のビタミンやミネラルが使われたこと、試験期間の長さが十分でなかったこと、または、試験対象である特定の栄養素に対して疾患の過少診断が不適切であったことにある。こうした問題があることは、栄養学者にはわかっている。つまり、こうした試験は失敗するように設計されていたのである。また、個別の栄養素を1種類だけ補給することは、マルチビタミン剤を1錠飲むよりも、多くの健康状態に対する効果が小さいことがわかっている。たとえば、ビタミンB群の錠剤を1錠飲むほうが、いずれか1つのビタミンBだけを含む錠剤を1錠飲むよりも、健康促進効果が高いことが多い。これは、その効果が相乗的なためであり、つまり、体の生化学的プロセスが正常に機能するためには、すべてのビタミンBが必要なのである。その他にも、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質にも相乗作用があり、適量を一緒に摂取するほうが効果がある(ビタミンCは、1日3,000~6,000 mgを数回に分けて摂り、ビタミンEは、トコフェロールとトコトリエノールの混合物を1日400~1,200 IU摂る [3])。毎日摂るマルチビタミン錠剤の試験を選んだことに対し、上記の研究を称賛しなければならないが、必須栄養素の用量があまりにも低かったため、この研究は絶好の機会を逃した。

マルチビタミン剤は、最もポピュラーなサプリメントであり、米国では成人女性の56%、成人男性の48%が摂っている [15]。医師の72%が個人的にサプリメントを使用している。マルチビタミン剤は、医師が摂っている最もポピュラーなサプリメントである [16]。

 

用量

上記の調査で使用されたマルチビタミン錠剤の用量に含まれていたのは、低品質のビタミンとミネラルであり、中には、酸化マグネシウムなど、inaccessibleな形態のものもあった(訳註:inaccessibleは「アクセスできない」という意味ですが、この場合は「(医薬品扱いとなっているため)サプリメントとして入手することができない」というような意味と推測されます)。この用量は、米国の医学研究所が発表した推奨一日量とほぼ同じであった [5]。医学研究所が示しているのは、健康のための平均最低用量に過ぎないため、このような低い用量が、どんな人にとっても最適な量であると思うべきではない。上記の調査では、高用量での試験は行わなかったため、どんな人の特定のニーズも満たす最適用量を判断することができなかった [6]。この調査の被験者は、医師であったため、最も健康な人のグループに属していたことはほぼ間違いない。しかし、ほとんどの人は、そのような健康的な生活習慣を実践していない。我々の多く、おそらくほとんどは、質の悪い食事をし、ストレスの多い生活を送り、また遺伝的背景がそれぞれ異なるため、それよりはるかに多い量の必須栄養素が必要である [6~8]。したがって、多くの人の場合、ガンや、他の加齢に伴う病気(糖尿病、眼疾患、心疾患など)のリスクを下げるためには、オーソモレキュラー医学にて推奨している、これよりずっと多い量のサプリメントを摂ることが、安価で非常に効果的な方法の一つとなる [3, 4, 8]。

ビタミンとミネラルのほとんどのサプリメントは、適量摂取すれば極めて安全である [9]。多くの栄養学者が推奨している用量は、ビタミンB1、B2、パントテン酸、B6が1日50~100 mg、ビタミンB3(ナイアシン)が1日200~1,000 mg(数回に分けて摂取)、ビタミンCが1日3,000~6,000 mg(数回に分けて摂取)、ビタミンDが1日1,500~2,000 IU(37.5μg~50μg)もしくは体が大きい成人や肥満の成人の場合は1日5,000~10,000 IU(125μg~250μg)まで、ビタミンEが400~1,200 IU(267mg~800mg)である [3,10,11]。そしてほとんどの人はマグネシウムが欠乏している。このことは、ガンのリスク増加に関係しているとみなされており、1日200~500 mgまたはそれ以上のマグネシウムを、欠乏症回復のための適切な形態で摂ると、ガン予防に役立つ [12]。極めて安全であるものの、こうしたはるかに多い量を摂ることについて、担当医に相談すれば役に立つかもしれない。優れた食習慣を実践するとともに、ビタミンとミネラルのサプリメントの用量を増やせば、体がガンや他の慢性疾患に立ち向かう上で最大の助けとなる [3,4,11~14]。

 

参考文献

1. Gaziano JM, Sesso HD, Christen WG, Bubes V, Smith JP, MacFadyen J, Schvartz M, Manson JE, Glynn RJ, Buring JE (2012) Multivitamins in the Prevention of Cancer in Men: the Physicians’ Health Study II Randomized Controlled Trial (男性のガン予防におけるマルチビタミン剤の効果:医師健康調査II無作為化対照試験) JAMA. 2012;():1-10. doi:10.1001/jama.2012.14641.

2. National Cancer Institute (米国ガン研究所). http://www.cancer.gov/newscenter/newsfromnci/2012/ReportNationRelease2012

3. Hoffer A, Saul AW (2008) Orthomolecular Medicine For Everyone: Megavitamin Therapeutics for Families and Physicians (万人のためのオーソモレキュラー医学:家族と医師のためのビタミン大量療法). Basic Health Publications, ISBN: 978-1591202264

4. Gonzalez MJ, Miranda-Massari JR, Saul AW (2009) I Have Cancer: What Should I Do?: Your Orthomolecular Guide for Cancer Management (ガンになったらどうすべきか?:ガン治療のためのオーソモレキュラーガイド) Basic Health Publications. ISBN: 978-1591202431

5. Institute of Medicine list of RDA for vitamins and minerals(米国医学研究所によるビタミン・ミネラル推奨所要量リスト): http://www.iom.edu/Activities/Nutrition/SummaryDRIs/DRI-Tables.aspx

6. Hickey S, Roberts H (2011) Tarnished Gold: The Sickness of Evidence-based Medicine (色褪せた金:科学的根拠に基づく医療という病.) CreateSpace Independent Publishing ISBN: 978-1466397293

7. Williams RJ, Deason G. (1967) Individuality in Vitamin C Needs (ビタミンC必要量の個別性). Proc Natl Acad Sci USA 57:1638-1641.

8. Pauling L (2006) How to Live Longer and Feel Better (寿命を延ばし、具合を良くする方法). Oregon State University Press ISBN: 978-0870710964

9. Schuitemaker G (2012) Restrictions on Food Supplements are Based on Misinformation: An alert from Europe to the rest of the world (サプリメントに対する制約は誤情報に基づいている:欧州から世界の他地域への警告). Orthomolecular News Service, Oct 16, 2012. http://orthomolecular.org/resources/omns/v08n31.shtml

10. Holick MF. (2012) Evidence-based D-bate on health benefits of vitamin D revisited (ビタミンDの健康効果に関する、科学的根拠に基づく論争:再考). Dermatoendocrinol. 4:183-190.

11. Levy TE (2011) Primal Panacea (原始万能薬). MedFox Publishing ISBN: 978-0983772804

12. Dean C. (2006) The Magnesium Miracle (マグネシウムの奇跡). Ballantine Books. ISBN-13: 978-0345494580

13. Ames BN. (2010) Prevention of mutation, cancer, and other age-associated diseases by optimizing micronutrient intake (微量栄養素摂取の最適化による、突然変異、ガン、その他の加齢に伴う疾患の予防). J Nucleic Acids. 2010: article ID. 725071. doi:10.4061/2010/725071

14. McCann JC, Ames BN. (2011) Adaptive dysfunction of selenoproteins from the perspective of the triage theory: why modest selenium deficiency may increase risk of diseases of aging (トリアージ理論の観点によるセレンタンパク質の適応機能障害:なぜ中程度のセレン欠乏症が加齢に伴う疾患のリスクを高める可能性があるか). FASEB J. 25:1793-814.

15. Council for Responsible Nutrition (米国有用栄養物審査会(CRN)). (2012). CRN Consumer Survey on Dietary Supplements (サプリメントに関するCRNの消費者調査). Retrieved October 4, 2012, from http://crnusa.org/CRNPR12-ConsumerSurvey100412.html

16 Dickinson A, Boyon N, Shao A. Physicians and nurses use and recommend dietary supplements: report of a survey (医師と看護師によるサプリメントの使用と推奨:調査レポート). Nutrition Journal 2009, 8:29 doi:10.1186/1475-2891-8-29

日本語訳監修: 姫野 友美(ひめのともみクリニック)