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「メチレン・ブルーの冒険」 vol.2

この記事の執筆者

一般社団法人 日本オーソモレキュラー医学会

メチレンブルーは、診断や治療の現場で幅広く活用されているだけでなく、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアを守り、脳の健康維持にも役立つ可能性が注目されています。パーキンソン病やアルツハイマー病など神経変性疾患への応用も研究されており、健康長寿を支える新たな可能性を感じる内容です。

画像診断および神経保護

メチレナは、さらに多くの用途を持つことも証明されました。手術中の神経の識別や瘻孔(感染などにより臓器や血管の間に形成される異常なトンネル状の連結)の検出、病理学における組織染色、さらにがん患者におけるイホスファミド誘発性神経毒性の予防において、診断・治療の両面で極めて有用な存在となりました。

イラスト1

血管拡張性ショック(バソプレジックショック)

心肺バイパス後、手術患者が血管拡張性ショックに陥ることがあります。これは、動脈血圧が危険なレベルまで低下する状態を指します。この現象は、グアニル酸シクラーゼおよび一酸化窒素合成酵素が血管拡張(動脈の拡張)を促進することで起こり、結果として血圧が低下します。メチレナはこれら2つの酵素を阻害することで、血圧を正常範囲へと回復させます。

イラスト2 Guanylate Cyclase = グアニル酸シクラーゼ, NO =  一酸化窒素

ミトコンドリア保護

メチレナは、ミトコンドリア内で触媒的な酸化還元リサイクラーとしても機能します。電子伝達系(ETC)の複合体Iを介してNADHから電子を受け取り、無色のロイコ・メチレナ(LMB)へと変換されます。その後、LMBはシトクロムCに電子を受け渡し、再びメチレナへと再生されます。この作用は、酸化ストレスによって複合体IおよびIIIが損傷し機能不全に陥った際に特に有用です。損傷した経路を迂回することで、修復のための時間を確保することができます。

脳は体内で最も代謝活動の高い組織の一つであり、神経細胞のミトコンドリアでは電子漏出により活性酸素種(ROS)が発生し、電子伝達系に大きな損傷を与えます。メチレナは、こうした損傷の原因となるROSを抑制し、フリーラジカルによって引き起こされる神経変性の進行を遅らせる働きを持ちます。このようなミトコンドリア機能の補助は、神経変性疾患の進行を緩やかにする一助となります。

イラスト3

神経変性疾患

パーキンソン病においては、αシヌクレインと呼ばれるタンパク質の凝集体であるレビー小体の存在が特徴的です。このタンパク質は電子伝達系(ETC)の複合体IおよびIVの機能を阻害し、その結果、ATP(エネルギー)産生やミトコンドリアの再生(マイトファジー)に障害をもたらします。これにより、振戦、異常運動、姿勢異常、運動機能障害といったパーキンソン病特有の症状が引き起こされます。メチレナは複合体Iに作用して電子伝達系を補助し、さらに酸化ストレスを軽減することで、特に初期段階において疾患の進行を遅らせる可能性が示されています。

また、メチレナはアルツハイマー病で見られるタウタンパク質のもつれ(タングル)を、タウ線維を安定化させることで抑制する働きもあります。例えるなら、遊び場で子ども同士のけんか(=もつれ)を未然に防ぐ教師のような存在と言えるでしょう。

イラスト4

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