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眼精疲労の救世主、それはあの抗酸化成分だった!

「頑固な肩こりに悩まされている」
その肩こり、もしかしたら日々酷使している目からのSOSかもしれません。

人間は外界から得られる情報の80%以上を視覚に頼るとされていますが、近年のパソコンやスマートフォンの普及により、老若男女問わず目にかかる負担は上昇の一途をたどっています。これらの使用による目の疲れや痛み、慢性的な肩こり等の身体疲労を多くの人が抱えています。私も職業柄、目の疲れからくる肩こり等の身体疲労を感じることがあります。そのため、食事や運動、サプリメントの摂取には日頃から気を配っています。今回は、これらを改善する食品の1つとして注目されている「アスタキサンチン」についてお話ししたいと思います。

アスタキサンチンは、広く天然に存在する赤色のカロテノイドの1種でありエビ、カニ等の甲殻類、サケやマス等の魚類に含まれており、抗酸化作用、抗炎症作用、抗動脈硬化作用、抗糖尿病作用、アトピー性皮膚炎の改善、美肌作用における有効性が報告されています。アスタキサンチンの一重項酸素という活性酸素に対する抗酸化力は、βカロテンの約40倍、α-トコフェロールの約550倍、CoQ10の約300倍相当とされ、その強い抗酸化作用により眼精疲労の改善をもたらすと言われています。

前述の通り、アスタキサンチンは優れた抗酸化力を有するため、VDT作業(Visual Display Terminal:パソコンなどの画面を見て行う仕事)を行う人だけでなく、老眼で目が疲れやすい人にも適しています。

アスタキサンチンの働き

眼精疲労を緩和する?

消費者から「アスタキサンチンを摂取すると目の疲れが楽になった」という多くの報告を受け、眼精疲労を対象とした複数の臨床試験が行われています。長時間に及ぶパソコン等のVDT作業により眼のレンズの厚み調節を司る毛様体筋の緊張状態が続き、慢性的なストレスによる調節機能低下が生じることが疲れ目や眼精疲労の主な原因の一つと言われています。

臨床において、調節機能の指標としては調節力、調節緊張時間(速度)、調節弛緩時間(速度)、調節微動が主に用いられています。これらの指標及び疲れ目の自覚症状について、国内の大学病院眼科等で臨床試験が実施され、統計学的にアスタキサンチンを摂取した場合に有意に改善がみられたという報告がされています。

血流の改善に

健常被験者を対象に採取した血液の流動性を測定するMC-FANを用いて、①アスタキサンチンを1日量6mg、10日間摂取した群(10名)②プラセボ群(10名)の2つのグループを比較した試験が行われました。すると、アスタキサンチン摂取群の有意な血流改善が認められ、アスタキサンチンが血流改善作用を有する可能性が示唆されたのです。同じく健常被験者を対象にした試験において、アスタキサンチン摂取群の網膜毛細血管血流量の増加作用も報告されています。

この試験では、健常被験者を①アスタキサンチン摂取群(1日量6mgを4週間摂取、18名)②プラセボ群(18名)の2つのグループに分けました。そして、摂取前後でレーザードップラー網膜血流計を用いて網膜血流量を測定したところ、アスタキサンチン摂取群に有意な網膜血流の増加がみられました。(この網膜毛細血管血流は、同じ眼動脈から分枝した網膜中心動脈の分枝と考えられ、同じ眼動脈からの分枝となります。そのため、網膜毛細血管血流が増加している場合は毛様体筋への栄養血管の血流も増加している可能性が非常に高いです。)

例えば、VDT作業者の眼球周辺を温熱シートで温めると調節力が改善します。これは、温熱による血液循環の改善が毛様体筋を賦活化させ、その結果として調節機能が改善したと考察されます。したがって、アスタキサンチンの毛様体筋への血流増加作用が調整力の改善につながったと考えられます。

まとめ

細小血管が集まっている網膜は、特に活性酸素によるダメージを受けやすい部位です。抗酸化物質であるアスタキサンチンを摂取することで活性酸素の害を減らし、血流を流す働きにより眼のピント調節機能もスムーズになり、眼精疲労の改善にもつながると考えられます。また、アスタキサンチンは様々なエイジングと関係する疾患とのエビデンスが蓄積されているので、眼精疲労の改善のみならず疾病予防あるいは発症の遅延や防止、そして今後の健康寿命の延伸への貢献が期待されています。

しかし、アスタキサンチンは体内生成ができないため、食べ物から摂取する必要があります。アスタキサンチンを多く含んでいるのはサケ、キンメダイ、エビ、カニ、イクラ等の赤色の魚介類です。1日の摂取量の目安は約6mgと言われていますが、この量はサケの切り身で2~3切れ、エビでは10匹程に相当します。食品のみからの摂取が難しい場合は、サプリメントでの補充もおすすめです。





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