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血液などからがんを見つける最新がん検査「リキッドバイオプシー」

この記事の執筆者

医療法人医新会よろずクリニック

自己紹介

敷居は低く、志は高くをモットーにあらゆる難病へ最善の医療を。

皆さん、がん検診と言えば何を思い浮かべますか?人間ドック、市町村のがん検診からPET検診などが広く認知されていますが、リキッドバイオプシー(liquid biopsy)という言葉を聞いたことがある方はいらっしゃるでしょうか。日本人の死亡原因の1位は、男女ともにがんです。生涯でがんに罹患する確率は、男性で62%(2人に1人)、女性では47%(2人に1人)と非常に高くなっています。

そして、この傾向は日本のみに当てはまるものではありません。世界的にみても、がんの罹患率は年々増加傾向にあります。全世界でも実に男性の3人に1人、女性の4人に1人はがんにかかると言われています。 

しかしながら、今日において、がんは早期に発見することで生存率が上がり、極端に恐れる必要はない病へと認識が変わりつつあります。“不治の病”というイメージは、もはや昔の話です。ステージⅠでの5年生存率は約92%と高い生存率となっており、この数値からも早期発見の重要性が極めて高いことは明らかです。

オーソモレキュラー栄養療法は血液検査の結果などをもとに、より詳細に身体の栄養解析を行い、未病ならびに発病に対する栄養学的介入を実施・治療するものだと認識しています。一方、リキッドバイオプシーは血液中や唾液、尿中に含まれる微量な物質を計測することでがんの早期発見に役立てようというものです。これからは「体液(リキッド)から詳細な診断が可能な時代」になっていくでしょう。

これからは血液や唾液、尿でがんの早期発見が可能な時代に

リキッドバイオプシーは血液中や唾液、尿中に含まれる微量な物質の計測によって、がんの早期発見に役立てようというものです。

マイクロRNA血液検査(13種類のがんを血液から診断)

国立がん研究センターは、血液の血清中に含まれるマイクロRNAという核酸の一種を調べることで、胃がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、肉腫、神経膠腫(こうしゅ)の13種類のがんを早期発見できる技術の研究開発に取り組んでいます。

「ヒトのマイクロRNAは、全部で約2600種類あります。がんになると、がん種ごとに特定のマイクロRNAが血液中で増加します。それらを調べることで、高い感度(陽性を正しく陽性と判定する確率)と特異度(陰性を正しく陰性と判定する確率)での早期発見が可能になります」

すでに多数の腫瘍マーカーが認知されています。しかし、従来のマーカーは、がん細胞の死滅に伴い、偶然血液中に放出される物質であるため、徐々にがん細胞が増殖する初期の段階では検出が困難です。そのため、早期診断での活用は現実的ではありません。一方、マイクロRNAは、がん細胞が体内で生き延びるために発生初期から積極的に分泌している物質であることなどから、早期検出が可能となります。(2019年12月時点では情報提供のみで実用化は未定です)

(以上、2018年(平成30年)8月6日月曜日 徳洲新聞 NO.1145 三面より一部引用・改変)

プロテオ検査(血液一滴で固形がんを検出)

新規物質【過酸化銀メソ結晶】を用いたバイオチップ【プロテオⓇ】は、がん患者の血液中にごく微量存在する「がん関連物質」を吸着し、簡便かつ迅速にがんの検査が行えます。また、ごく初期、ステージ0の段階から、がんの有無や進行度を判定することが可能です。

特徴としては、マイクロRNAや線虫尿検査(線虫検査については後ほどご説明します)などと異なり陰性・陽性判定ではなく、定量的判定(数値で分かる)を行うことが挙げられます。ひと言で表すならば、血液でPET検査※1を行う印象です。

私たちの身体には毎日数千個のがん細胞ができていると言われています。そして、それらが免疫に退治される(=アポトーシス)ことで残骸である「ヌクレオソーム」という物質が血中に放出されます。このプロテオチップは、それらの物質を特異的に吸着させる(くっつける)ことで、がんと体内の免疫反応を調べることができます。

プロテオ検査の対象となるのは全ての固形がんです。現在オリンパスと共同研究も行われており、今後は部位判定も可能になります。


※1:核種を用いる核医学検査の一つで、体内でより活発に代謝している細胞を画像としてあらわす。

<画像1>マイテックホームページ(https://jpn-mytech.co.jp/?page_id=32)より引用

アミノインデックス(AICS)

アミノインデックス(以下AICSと表記)は、血液中のアミノ酸濃度を測定し、健康な人とがんである人のアミノ酸濃度バランスの違いを統計的に解析することで、がんに罹患しているリスクを評価する検査です。

健康な人の血液中のアミノ酸濃度は、それぞれ一定に保たれるようにコントロールされています。しかし、様々な病気になると一定に保持されている血液中のアミノ酸濃度のバランスが変化することが判明しています。この性質を応用したのが「AICS」です。

1回の採血(約5ml)で、複数のがんを同時に検査することが可能であり、早期のがんにも対応しています。血液中のアミノ酸濃度の計測によって、男性では胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、膵臓がんの合計5種、女性では胃がん、肺がん、大腸がん、膵臓がん、乳がん、子宮がん・卵巣がんの合計6種のがんに対するリスクを評価します。

将来、自分がどういった種類のがんになりやすく、検診においてはどのようなことに気をつければいいのか効率的に知ることができます。また、高リスクの場合は精査することで早期発見にもつながります。簡単に説明すると、ご自身の各臓器のがんのなりやすさ、なりにくさを個別に知ることができる検査です。

<図2>一般の方ががんであるリスクを1とした場合のがんリスクの倍率

アミノインデックス®生活習慣病リスクスクリーニング(AILS)

また、アミノインデックス®生活習慣病リスクスクリーニング(AILS)は、血液中のアミノ酸濃度バランスから、10年以内に脳卒中・心筋梗塞を発症するリスクと、4年以内に糖尿病を発症するリスク、そして大切な栄養素である必須・準必須アミノ酸が現在血液中で低下していないかを評価する検査です。アミノ酸には、下記の2種類があります。

1.体内で合成できないアミノ酸=必須アミノ酸
2.十分な量が作り出しにくいアミノ酸=準必須アミノ酸


タンパク質を作り出すには20種類のアミノ酸が必要ですが、そのうち約半分を必須アミノ酸および準必須アミノ酸が占めています。これらは食事から継続的にバランス良く摂取する必要がある必須栄養素です。これらの検査とオーソモレキュラー医学・栄養療法の併用によって、効果的な栄養指導が可能となります。また、サプリメントの併用は様々な疾患を未然に防ぐために有用です。

ドッグラボ(犬の嗅覚でがんの有無を判定)

人間の息の“ニオイ”で、がん細胞の有無がわかる簡易キットです。専用バッグにご自身の息を吹き入れて郵送するだけなので、普段忙しくなかなか病院に行けない方、ご年配の方やお体の不自由な方、そして妊娠中の方でも簡単に行うことができます。

さて、このドッグラボ、がん細胞の有無を判定するのは、名称からも推測できる通り特殊な訓練を受けたがん探知犬です。千葉県にある育成施設では現在5頭のがん探知犬が活躍しています。がんが細胞化したばかり、ステージ0の状態から沈黙の臓器、膵臓がんにいたるまで発見した実績があります。その実証報告は、国際的な医学誌『GUT』にも掲載されています。

唾液によるがん検査「サリバチェッカー」

唾液は「身体の鏡」と言われ、血液や尿と同様、健康状態の指標となる多くの情報を含みます。唾液中の成分の大部分は血液由来のため、がん細胞から染み出す代謝物質は血管を通り、唾液中にも染み出します。SalivaChecker®は、最新の測定装置を用いてこれらの物質の濃度を解析することで、現在がんの疑いがあるか否かを調べます。

人間の唾液には ⑴ 安静時唾液 ⑵ 刺激唾液の2種類があります。SalivaChecker®は、血液成分に近いとされる ⑴ 安静時唾液 を用いて検査を行います。現在、SalivaChecker®での検査対象となっているのは肺がん、膵がん、大腸がん、乳がん、口腔がんの4種です。

線虫がん検査

がんの1次スクリーニング検査『N-NOSE』は、線虫C. elegans (シー・エレガンス)の化学走性(好きな匂いに近付き、嫌いな匂いから遠ざかる特性)を指標にした、これまでにない新しいタイプのがん検査です。がんの検査に生物である「線虫」を用いるというアイデアの発端は、線虫が機械には真似できないほどの優れた嗅覚センサーを持つという点、そして飼育コストが非常に安価という点にありました。

既存の検査は、早期がんには反応を示さないものが多く、そのため早い段階でがんを見つけることは非常に困難であるとされてきました。 しかし、線虫は既存の検査で検知できないがんの微かな匂いにも反応し、リスクを予見するのです。

<グラフ> HIROTSUバイオサイエンスホームページ(https://hbio.jp/srv/nnose3)より引用

リキッドバイオプシーを活用し、がんの早期発見を

以上、様々ながんを検出するリキッドバイオプシーをご紹介しましたが、完璧な検査はありません。各検査の特性を理解し、通常検診の補助的ツールとして上手に用いて、是非がんの早期発見にご活用下さい。また、がんリスクを早期に発見し、オーソモレキュラー医学的アプローチによる免疫機能の向上、抗酸化や生活習慣の改善によって未然に発症を防ぐことも重要です。

今や、画像としてハッキリと写し出される前にリスク判定を行い、発症前に治療および予防する時代が訪れたとも言えるでしょう。

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