(OMNS、2013年2月11日) 最近、ビタミンCのサプリメントによって腎臓結石の発生リスクがほぼ2倍に増える、と主張している研究論文がある。[1] この論文によると、腎臓結石はシュウ酸カルシウムから形成される可能性が最も高く、これはビタミンC(アスコルビン酸塩)の存在下で形成される可能性がある。しかし、この研究は、被験者の腎臓結石を分析したものではなく、アスコルビン酸塩の試験を行っていない別の腎臓結石の研究を引用したものであった。秩序に欠けるこの研究は、医療従事者にも一般人にも役立たず、むしろ混乱を引き起こしている。
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ビタミンCは腎臓結石の原因ではない!(反対にビタミンCは腎臓結石のリスクを減らしている)
この研究は、23,355人のスウェーデン人男性を10年間追跡したものであった。この被験者は、何のサプリメントも摂っていないグループ(22,448人)と、ビタミンCのサプリメントを摂っているグループ(907人)の2つに分けられた。各グループの平均的な食事内容が表にまとめられたが、それほど詳しいものではなかった。次に、腎臓結石ができた各グループの被験者を表にまとめたところ、ビタミンCを摂っていたグループのほうが、腎臓結石のリスクが高く見えた。この研究に示されている、アスコルビン酸塩による腎臓結石のリスク増加は、きわめて小さいものであり、100,000人年あたり147、つまり1年あたり0.15%に過ぎない。
マスコミは、以下の重要な点を見落としている。
?アスコルビン酸塩を摂っていた被験者グループにおける腎臓結石数がきわめて少なかったため(10年間で31個)、この研究に統計誤差がある可能性はかなり高い。
?これは観察研究であり、ビタミンCの摂取量と腎臓結石の数を表にまとめて、その2つの関連を見出そうとしたものに過ぎない。
?これは無作為化された比較試験ではなかった、つまり、無作為に選んだグループにビタミンCを与えたのではなかったため、この方法では原因はわからない。
?この種の観察研究は制約を伴うため、結論に信頼性がない。
?これは、アスコルビン酸塩の高用量摂取が腎臓結石の原因とならないことを明らかに示している以前の諸研究と矛盾する。[2-6]
?アスコルビン酸塩によって低い率の結石が生じたという論文執筆者の結論は、ビタミンCのサプリメントを摂るという選択と、被験者による食事の別の面との相関関係によるものである可能性が高い。
?この研究では、推定原因のヒントを得るために、各被験者の食事に関する詳しい調査も、各結石の化学的分析もしなかったため、この種の相関関係を正しく判断することができなかった。
よって、この研究は計画が不完全で、どういう種類の結石が形成されたのか、また、形成された結石の原因が何かについて究明されていない。これは重大な欠陥である。このような研究から結論を出すことは、「科学的根拠にもとづく医療」の良い手本とはなり難い。
様々な種類の腎臓結石
腎臓結石には、かなりの種類がある。以下の5種類はよく知られているものである。
1.?リン酸カルシウム結石はよく見られるものであり、ビタミンCによって酸性化された尿中で容易に溶ける。
2.?シュウ酸カルシウム結石もよく見られるものであるが、酸性尿中では溶けない。この種の結石について、以下に考察する。
3.?リン酸アンモニウムマグネシウム(スツルバイト)結石は、それほど多くは見られず、感染症の後に現れることが多い。これは、ビタミンCによって酸性化された尿中で溶ける。
4.?尿酸結石は、プリン体(アデニン、キサンチン、テオブロミン[チョコレートの一成分]および尿酸の化学塩基)の代謝異常によって生じる。痛風などの病気で形成されることもある。
5.?シスチン結石は、シスチンを再吸収できない遺伝的要素に起因する。子どもの結石はほとんど、この種類であり、稀にしか見られない。
シュウ酸にまつわる矛盾
シュウ酸塩/ビタミンCの問題は、矛盾しているように見える。シュウ酸結石は、シュウ酸塩を含むもので、よく見られる。アスコルビン酸塩(ビタミンC中の活性鉄)によって、体内でのシュウ酸産生がわずかに増える可能性がある。しかし、実際には、ビタミンCによってシュウ酸結石の形成が増えることはない。Emanuel Cheraskin, MD, DMD, アラバマ大学口腔内科教授は、「尿中のビタミンCによってカルシウムが結合し、その遊離型が少なくなる傾向がある」ことの理由を説明している。「これは、カルシウムが、シュウ酸カルシウム(結石)として分離する可能性が少なくなるということである」。[7] また、ビタミンCの利尿作用により、シュウ酸塩の尿中濃度が低くなる。流れの早い川には、沈泥がほとんどたまらない。もし、医師の診察時に、シュウ酸結石がとくにできやすい体質であると言われたら、ビタミンCによる効果を見捨てる前に、下記の忠告を読んでほしい。再度言うが、ビタミンCは、シュウ酸塩を増やすが、カルシウムとシュウ酸塩の結合を阻止するのである。
シュウ酸塩は、食事に含まれる多くの食品によって発生する。主なものに、ホウレンソウ(ホウレンソウ1オンス(約30g)あたりのシュウ酸塩含有量は100~200 mg)、ダイオウおよびビートがある。[8~10] 茶とコーヒーは、多くの人の食事における最大のシュウ酸塩摂取源で、1日の最大摂取量は150~300 mgと考えられている。[8、11] これは、アスコルビン酸塩を1日あたり1,000 mg摂った場合に発生すると推定される量よりかなり多い。[5、12]
上記で述べた研究では、被験者によるシュウ酸塩の摂取量を表にまとめていなかったが、平均して、茶とコーヒーの摂取量が比較的多かった(数杯飲んでいた)。腎臓結石があった被験者については、シュウ酸塩の摂取量がとくに多かったために、この調査の開始前にすでに結石があった可能性や、調査期間中に結石ができた可能性もある。たとえば、ビタミンCを摂っていた被験者は、健康維持に努めていたのかもしれないが、腎臓結石ができた被験者グループも、茶やコーヒーをたくさん飲み、ホウレンソウなど緑の葉野菜を食べることにより健康維持に努めていたかもしれない。または、脱水症になった高齢者だったのかもしれない。脱水症も、夏期に屋外で活動している男性にはよく見られる。腎臓結石の最も重要な要因の一つに、とくに高齢者における脱水症がある。[13]
まとめ:
?アスコルビン酸塩の低量摂取も高量摂取も、通常は、尿中シュウ酸塩濃度の有意な増加を引き起こさない。[2~6]
?アスコルビン酸塩は、シュウ酸カルシウム腎臓結石の形成を防ぐ傾向がある。[3、4]
?腎臓結石のリスク要因には、高血圧既往、肥満、慢性脱水症、質の悪い食事、食事での低マグネシウム摂取などがある。
マグネシウム
腎臓結石とマグネシウム欠乏については、砂糖・アルコール・シュウ酸塩・コーヒーを多く摂る食事など、原因として挙げられるものは共通している。マグネシウムは、腎臓結石の形成を予防する上で重要な役割を担う。[14] マグネシウムは、血液および軟部組織からカルシウムを引き出して骨に戻すカルシトニンの産生を促進することにより、一部の種類の関節炎と腎臓結石を防ぐ。また、副甲状腺ホルモンを抑制することにより、副甲状腺ホルモンによる骨の破壊を防ぐ。マグネシウムは、ビタミンDをその活性型に変換することから、カルシウムの吸収に役立つこともある。新しい骨の形成に必要な酵素を活性化するためにはマグネシウムが必要である。また、マグネシウムは、能動カルシウム輸送を制御する。こうした要因はすべて、カルシウムを、腎臓結石の中ではなく、必要とされる場所に置くのに役立つ。
たくさんあるマグネシウムの仕事の一つは、カルシウムを溶けた状態に保つことにより、結晶状に凝固するのを防ぐことである。脱水症になった場合でも、十分なマグネシウムがあれば、カルシウムは溶けたままとなる。マグネシウムは、腎臓結石の極めて重要な治療法となる。カルシウムの溶解を助けるのに十分なマグネシウムが体内にないと、様々な形態の石灰化に至ることになる。これは、結石、筋けいれん、結合組織炎、線維筋痛、アテローム性動脈硬化(動脈の石灰化の場合)につながる。Dr. George Bunceは、腎臓結石とマグネシウム欠乏との関係を臨床的に実証している。1964年という早い時点で、Bunceは、頻繁な結石形成歴がある患者に1日420 mgの酸化マグネシウムを投与したことによる効果を報告している。[14,15] 吸収が悪い酸化マグネシウムが作用する場合、もっと吸収の良い他形態のマグネシウムは、それ以上の作用をもたらす。
シュウ酸カルシウム結石は、マグネシウムが多く含まれている食品(ソバ、青野菜、豆類、ナッツ類)もしくはマグネシウムのサプリメントによって十分な量のマグネシウムを摂れば、効果的に予防できる可能性がある。最低でも、米国での一日あたりの推奨摂取量(US RDA)である300~400 mg/日のマグネシウムをサプリメントで摂ること(マグネシウムとカルシウムが1:1という理想的なバランスを維持するためには、もっと多い量が望ましい場合がある)。瀉(しゃ)下作用を防ぐため、クエン酸マグネシウム、マグネシウムキレート、リンゴ酸マグネシウム、塩化マグネシウムなど、容易に吸収されるサプリメントを摂ること。上記の酸化マグネシウムは、安価であり広く入手可能であるが、わずか5%しか吸収されないため、大抵は下剤として作用する。[14] マグネシア乳(水酸化マグネシウム)にはもっと下剤作用があり、補給には適さない。クエン酸マグネシウム(Magnesium Citrate) を選ぶのが良く、これは、どこでも安価に購入でき、吸収も良い。
腎臓結石の予防と溶解におけるビタミンCの役割
リン酸カルシウム腎臓結石は、酸性ではない環境で唯一存在できるものである。アスコルビン酸(ビタミンCの最も一般的な形態)は、尿を酸性化することにより、リン酸結石を溶かし、結石の形成を防ぐ。
酸性尿は、リン酸アンモニウムマグネシウム結石も溶かすが、この結石は時に外科的除去が必要となる。これは、尿路感染症に関連がある同じスツルバイト結石である。感染症も結石も、ビタミンCの大量摂取によって容易に治癒する。推奨摂取量をはるかに上回る量のアスコルビン酸を毎日摂れば、感染症も結石も、実質的に100%予防可能である。ゴリラは、自然の食事で1日約4,000 mgのビタミンCを摂る。人に対する米国の推奨摂取量は、わずか90 mgである。ゴリラがみな間違っているとは思えない。
よく見られるシュウ酸カルシウム結石は、ビタミンC摂取の有無にかかわらず、酸性尿中で形成されることがある。しかし、この種の結石は、十分な量のビタミンB群とマグネシウムを摂れば予防が可能である。一般的なビタミンB群のサプリメントを1日2回摂るとともに、マグネシウムを約400 mg摂れば、普通は十分である。
腎臓結石のリスクを下げるための12の方法
1. 最大限の水分を摂る。[13] とくに、果物と野菜のジュースを飲む。オレンジジュース、グレープジュースおよびニンジンジュースには、尿酸の蓄積を抑制するとともにカルシウム塩の形成も阻止するクエン酸塩が多く含まれている。[16]
2. 尿pHをコントロールする。尿がわずかに酸性であると、尿路感染症の予防に役立ち、リン酸結石もスツルバイト結石も溶ける。これは、シュウ酸結石の原因とはならない。尿をわずかに酸性にする方法の一つが、ビタミンCの摂取であることは言うまでもない。
3. ダイオウ、ホウレンソウ、チョコレート、濃いお茶やコーヒーを(多く)摂らないようにすることにより、過剰なシュウ酸摂取を避ける。
4. 体重を減らす。過体重には、腎臓結石の実質的なリスク増加との関連が見られている。[17]
5. カルシウムはおそらく、真の原因ではない。低カルシウム自体がカルシウム結石の原因となり得る。[18]
6. ほとんどの腎臓結石はカルシウムの化合物であるが、米国人の多くはカルシウム不足である。カルシウムの摂取量を下げる代わりに、炭酸清涼飲料、とくにコーラを避けることにより食事での過度のリン摂取を減らすこと。コーラ清涼飲料には、過剰な量のリンがリン酸として含まれている。これは、歯科医が接着用の樹脂を塗る前に歯のエナメル質を溶かすのに用いる酸と同じものである。
7.?最低でも、米国での一日あたりの推奨摂取量である300~400 mg/日のマグネシウムをサプリメントで摂ること。マグネシウムとカルシウムが1:1という理想的なバランスを維持するためには、もっと多い量が望ましい場合がある。「現代の」加工食品を食事で摂っている人の多くは、最適な量のマグネシウムを摂っていない。
8. ピリドキシン(ビタミンB6)が含まれている良質なビタミンB群のサプリメントを1日2回摂る。動物実験では、ビタミンB6の欠乏によって腎臓結石ができることがわかっている。人におけるビタミンB6欠乏は、非常に多く見られる。ビタミンB1(チアミン)の欠乏も、結石との関連が見られている。[19]
9. 尿酸/プリン体結石(痛風)の場合は、獣肉の摂取をやめる。栄養成分表や教科書を見ると、獣肉が食事における主なプリン体摂取源であることがわかる。自然療法では、ジュース断食をする、サワーチェリーを食べるという方法もある。
※上記内容は以下の内容が適切である考えます(翻訳監修者 姫野友美)
「尿酸/プリン体結石(痛風)の場合は、糖質の摂取を減らす。糖質過剰摂取に伴う高インスリン血症が尿酸値を上昇させるからである。」
ビタミンCの摂取量が増えると、尿酸の尿中排せつが改善されることによって効果が得られる。[12] こうした結石の場合は、pHを安定させたアスコルビン酸塩(buffered Vitamin C)を用いる。
10. シスチン結石がある場合は(これは腎臓結石全体の1%に過ぎない)、低メチオニン食を実践し、pHを安定させたビタミンC (buffered Vitamin C) を用いるべきである。
11. 腎臓結石は、砂糖の高量摂取との関連が見られているため、添加された砂糖をほとんど(または全く)食べないようにする。[20]
12. 感染症は、(発熱による発汗、嘔吐、下痢による)過度の濃縮尿など、結石の形成に好都合となる状態を引き起こす。十分な予防的健康管理を実践すれば、利子を付けて返ってくる。
参考文献
1. Thomas LDK, Elinder CG, Tiselius HG, Wolk A, Akesson A. (2013) Ascorbic acid supplements and kidney stone incidence among men: A prospective study.(男性におけるアスコルビン酸サプリメントと腎臓結石発生率との関係:前向き研究) Published Online: February 4, 2013.(オンラインで公表:2013年2月4日) doi:10.1001/jamainternmed.2013.2296
2. Wandzilak TR, D’Andre SD, Davis PA, Williams HE (1994) Effect of high dose vitamin C on urinary oxalate levels.(尿中シュウ酸値に対するビタミンCの高量摂取の効果) J Urology 151:834-837.
3. Hickey S, Saul AW. (2008) Vitamin C: The Real Story, the Remarkable and Controversial Healing Factor.(ビタミンC:本当の話、注目に値する論争中の治癒因子) Basic Health Publications ISBN-13: 9781591202233
4. Hickey S, Roberts H. (2005) Vitamin C does not cause kidney stones.(ビタミンCは腎臓結石の原因ではない)?http://orthomolecular.org/resources/omns/v01n07.shtml
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6. Padayatty SJ, Sun AY, Chen Q, Espey MG, Drisko J, Levine M. (2010) Vitamin C: intravenous use by complementary and alternative medicine practitioners and adverse effects.(ビタミンC:補完代替医療開業医による静脈内使用および副作用) PLoS One. 5(7):e11414. doi: 10.1371/journal.pone.0011414.
7. Cheraskin E, Ringsdorf, M Jr, Sisley E (1983) The Vitamin C Connection.(ビタミンCの結合) Bantam Books. ISBN-13: 9780553244342
8. Noonan SC, Savage GP (1999) Oxalate content of foods and its effect on humans.(食品のシュウ酸塩含有量および人に対するその影響) Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition. 8:64-74.
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10. Proietti S, Moscatello S, Famiani F, Battistelli A. (2009) Increase of ascorbic acid content and nutritional quality in spinach leaves during physiological acclimation to low temperature.(低温への生理的順化期間中におけるホウレンソウの葉のアスコルビン酸塩含有量と栄養価の増加) Plant Physiol Biochem. 47(8):717-23.
11. Gasinska A, Gajewska D. (2007) Tea and coffee as the main sources of oxalate in diets of patients with kidney oxalate stones.(腎臓シュウ酸結石がある患者の食事における主要シュウ酸塩摂取源としての茶とコーヒー) ROCZN. PZH 58(1):61-67.
12. Pauling L. (2006) How to Live Longer And Feel Better.(寿命を長くし気分を良くする方法) OSU Press ISBN-13: 9780870710964
13. Manz F, Wentz A. (2005) The importance of good hydration for the prevention of chronic diseases. (慢性疾患の予防に重要となる十分な水分補給) Nutr Rev. 63(6 Pt 2):S2-S5.
14. Dean C. (2007) The Magnesium Miracle.(マグネシウムの特効) Ballantine Books. ISBN-13: 9780345494580
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日本語監修:姫野 友美(ひめのともみクリニック)
柳澤厚生(点滴療法研究会)