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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

サプリメントと健康:現実主義者の入門書

目次

はじめに

米国で売られているサプリメント製品は5万種類を超え、米国人の約75%がその1つ以上を常用しています。サプリメントを摂っている人のほうが健康的な生活を送っている、つまり運動とバランスの取れた食事を実践し、定期的にかかりつけ医の診察を受け、毎夜十分な睡眠を取っている傾向が強いようです[1]

私は、サプリメントについて学ぶよう導かれ、それ以来ずっと摂っていることから、サプリメント製品に関する質問を受けることがあります。本号では基本的な考え方を紹介してみようと思います。賢明な選択を促すことにより、読者自身が自分の健康戦略を立て効果を得ることができれば幸いです。

基準1

サプリメントを摂る目的は、現代の生活に栄養摂取の機会を加えること、つまり不足を補うことと、個別の酵素欠乏症の克服に役立てることです。サプリメントは食品の代わりに摂るものではなく、悪い食品選択を打ち消すものでもありません。できれば有害物質にさらされる機会を無くすか最小限に抑えましょう。

基準2

「何を食べるか」は極めて重要ですが、それは健康の一要素に過ぎません。自分の体は食べるものによって構成されますが、何を考え、何をするかによっても体は変わります。

基準3

生化学的な個別性の認識が重要です。我々は皆、遺伝的特徴も生活習慣も違うため、生化学的ニーズは人によって大きく異なります。ニーズも最適なプランも全く同じという人々は二人としていません。

基準4

栄養摂取の目標は、自分にとって最も機能的でベストな生き方ができるようにすること、自分が持っているものを最大限に活用することです。出生異常のリスクを下げる効果が証明されている必須栄養素もあります(神経管欠損に対する葉酸など)。

不運な遺伝性疾患があっても、必須栄養素を各自のニーズに適した量だけ摂ることにより、うまく管理できるようになる場合もあります(基準3参照)。ガンになってもその発症年齢が80歳、60歳、40歳の場合では異なります。機能寿命をたとえ数年でも延ばすことには意味があり、その現れ方は人によって異なるでしょう。

健康の柱となるもの

<心の持ち方>

喜び、感謝、平和、そして立ち直る力は、成功と健康の重要な要素です。人間の脳は、並外れた能力と柔軟性を持つ活動的な器官であり、十分な栄養を与えることによってその膨大な代謝と構造の要求を支える必要があります。

一方、戦場や捕虜収容所、ホロコーストの収容所などで極めて恐ろしい経験をし、摂取する栄養もほとんど選べなかったのに生き延びることができた人々の存在は、我々に、自制心、気概、励ましが何よりも重要であることに気付かせてくれます。希望と心の持ち方が重要です。

「古典的なパブロフの条件付けによって従来の免疫反応の抑制とNK(ナチュラルキラー)細胞活性の増進が見られた研究により、(免疫系による)神経系コントロールの見事な証拠が得られている。
… 非常に多くの調査で、死別などの心理的要因が免疫機能に悪影響を及ぼすと主張されていることから、我々はためらいながらも新時代の「精神免疫学」に向かって少しずつ歩を進めている」

〜Ivan Roitt(ミドルセックス大学医学部の元免疫学・リウマチ研究部長でEssential Immunology(必須免疫学)の著者)

※読むと良い本の一例:

1.Marion Cleeves Diamond (1988) Enriching Heredity: The Impact of the Environment on the Anatomy of the Brain.(遺伝形質の拡充: 環境が脳の解剖学的構造に及ぼす影響) The Free Press.

2.Dale Carnegie (1948, revised 2018) How to Stop Worrying and Start Living.(悩むのをやめて生活を始める方法) General Press.

3.Shawn Achor (2018) Big Potential.(大きな可能性) Currency Press.

 

<体を動かすこと>

正式な運動であろうとなかろうと、体を動かすことを続けましょう。活動的でいることは全身と心の健康に役立ちます。運動は白血球の働きを活性化し、血行を改善し、持久力を養い、睡眠の質を良くします。また、何千もの遺伝子にエピジェネティック(後成的)な好影響をもたらします。

Theodore Roosevelt(セオドア・ルーズベルト)がSquire Bill Widenerから学んだように、「自分ができることを、これまでに得たものを使って、今いる場所でやる」のです。動き続けましょう!

 

<睡眠>

我々は皆、休息が必要です。睡眠は、精神と身体の再生効果をもたらす複雑な一連の段階から成ります。特定の睡眠段階の間のみ活発に修復作業を行う器官特異幹細胞もあります。

モチベートがうまいJon Gordonの言葉を借りれば、「ダブルラテ(2倍量のエスプレッソ)を睡眠の代わりにすることはできません」。人間の生態はコーヒーショップより複雑です。健康を長く保つために睡眠は絶対不可欠です。

栄養摂取

<質の良い食事をする>

栄養素密度の高い多様な食事を摂りましょう。果物や野菜の食べすぎで害を受けた人の症例研究はなかなか見つけられません。市販のフルーツジュースを飲むことは、果物を食べることと同じではありません。単位体積当たりでの比較で、フルーツジュースのほうが糖分が多く栄養素は少ない傾向があります。

脂肪酸は必ず摂りましょう。目標として、長鎖オメガ3系脂肪酸であるDHAとEPAを1日500 mg以上摂り、オメガ3:オメガ6比が1/4を超えるようにします。オレイン酸など、オメガ9系脂肪酸の摂取を恐れてはなりません。

オリーブオイルと「地中海食」を摂っている人々を調べた研究では、一貫して好ましい結果が見られています[2]。人工のトランス脂肪は摂らないようにし、単糖類の摂取も制限しましょう。ヨーグルト、納豆、味噌、オリーブ、ザワークラウトというような発酵食品は、栄養素と腸内善玉菌の重要な供給源です。卵と全乳は、栄養素濃度の高い優良食品となり得ます。

何を食べるか、また、食事を変えたときどう感じるか、注意を払いましょう。食物アレルギーと食物不耐症は一般によく見られ、個別的に配慮します。小麦アレルギーやセリアック病の人は小麦(グルテン)をすべて避けましょう。オーツ麦、トマト、ピーナツにアレルギーがある人は、そうした食品を避けましょう。

成人の多くは、乳糖(ラクトース)を生成する能力を失うことから、乳製品を摂ると胃部不快感を生じます。ラクターゼのサプリメント、もしくはラクターゼを添加した乳製品を摂れば、栄養素密度の高い乳製品を適切に消化できる可能性があります。また、胃の手術、胆嚢摘出、膵疾患の経験がある人はとくに、胃の酵素のサプリメントを摂ると脂肪とタンパク質の消化に役立つ可能性があります。超加工食品は便利ですが、しばしば望ましくないサプライズを伴います。

米国の食品における人工トランス脂肪酸の使用は2020年まで認められていました。カリフォルニア州は最近、臭素化植物油、臭素酸カリウム、プロピルパラベン、赤色3号(着色料)および二酸化チタンの使用を2025年から法で禁止する最初の州となりました。何を食べるべきか判断するより、何を食べるべきではないか知ることのほうが重要です。

サプリメント

「リスクは取らず、ビタミンを摂ろう」(Helen Saul Case)

<一般常識>

鉄や銅などのミネラルが代謝されない疾患(鉄がたまるへモクロマトーシス、銅がたまるウィルソン病など)がある人は、そのミネラルを含むサプリメントを摂らないようにしましょう。

グルコース-6リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症の人は、ビタミンC点滴も、ビタミンCサプリメントの高用量摂取も避けるべきです。小さな子がいる家庭では、サプリメントや医薬品の誤飲防止策など、子どもを守る安全策を講じておきましょう。

サプリメントの用量単位:  1グラム(g) = 1000ミリグラム(mg) = 1,000,000マイクログラム(mcg)
1mg=1000mcg

サプリメントはFDA(米国食品医薬品局)の規制対象ではないが、信用して良いのか?

実際にはFDAもFTC(公正取引協議会)も、サプリメントの製造、ラベリング、健康強調表示、売買の規制に関与しています。FDAは、サプリメントの完成品と食品成分の両方を規制しています。製造業者はFDAに登録していなければならず、製品の生産施設と保管施設は定期検査を受けます。21 CFR(連邦規則集21条)のパート190と211が適用されています。

サプリメント消費者の96%がビタミンとミネラルのサプリメントの安全性と品質を信頼しています。特殊なサプリメントの場合はこの信頼度が75%に下がっており、薬草・植物のサプリメントでは72%、スポーツ栄養・体重管理のサプリメントでは63%となっています[3]

「ケミカルフリー(化学物質を含まない)」ビタミンのほうが良いのか?

厳密に言えば、物質はすべて、原子が配列されてできた化学物質から成ります。ビタミンは小さな生体分子であり、比較的容易に大量生産できます。ビタミンCの製造品(L-アスコルビン酸、C6H8O6)は、オレンジに含まれるL-アスコルビン酸というビタミンC分子と同じものです[4]

「化学物質」に関する問題には、その製品にどんな「望ましくない物質」が他に含まれているのかという疑問もあります。不純物のほか、賦形剤、結合材、接着剤などの添加剤にも問題があるかもしれません。注意してラベルを読みましょう。

ビタミンCやナイアシンなどは大量摂取や頻繁な摂取が必要な場合が多いのですが、そうした場合は、錠剤の形にまとめるのに要する余分な非栄養成分の摂取を最小限に抑えるため、粉末製品を使うことを考えましょう。錠剤が入った瓶を開けたときにアセトン(除光液)のような臭いがしたら、別メーカーの製品を検討しましょう。

「ホールフード」ビタミンのほうが良いのか?

ホールフードのビタミン剤とは、果物や野菜に天然成分として含まれている栄養素を幅広くミックスして濃縮し、錠剤の形にしたものです。天然の相乗効果ならびに、まだ特徴付けも他のサプリメントへの使用もなされていない物質の含有をコンセプトとします。

ただし通例、こちらのほうが価格は高く主要栄養素の量は少なくなってしまいます。「丸ごと食べる」ことに関心があるなら、錠剤を抜きにして、イチゴ、キウイフルーツ、ブルーベリー、カカドゥプラム、ジャマイカチェリー、ブロッコリー、芽キャベツ、アスパラガス、赤タマネギなら栄養素が詰まった優れたホールフードとして、食料品店の青果コーナーや農産物直売所で手に入ります[5]

マルチビタミンの使用率

2019年は58%で、2022年は70%に増えています[1,3]。1回量を必ず確認しましょう。良質のマルチビタミン剤の多くは「1日1錠」型ではなくなっています。2~3錠摂らないとラベルに記載されている用量に達しないこともあります。マルチビタミンは、簡単に飲める錠剤に有意な量の栄養素が入っているという利点はありますが、製品価値を計算して適正量を確実に摂る上で上記のことを知っておくべきです。

COSMOS-Mindという前向き無作為比較試験で、マルチビタミンミネラルサプリメントを3年間毎日摂取していた65歳以上のグループは、全体的な認識力、記憶力および実行機能がプラセボグループより良くなっていました[6]

ビタミンC

サプリメント消費者のうちビタミンCを摂っているのは3分の1だけというのは困ったことです。人間は体内でビタミンCを作ることができません。

ビタミンCは、多くの生物学的プロセス、たとえば神経ペプチドと神経伝達物質の合成、カテコールアミン生合成、テトラヒドロビオプテリンのリサイクル、レドックス(酸化還元)制御、コラーゲンとエラスチンの合成、カルニチン生合成、L-チロシンの分解、主要な抗酸化機能、プロテアソームによるHIF-1αの分解、エピゲノム制御、体性幹細胞の再プログラミング、免疫機能などに必要とされます[7-14]

1950~1960年代のDr. Leeから2017年のDr. Catravasまで、複数の研究者が、内皮(血管)の健康と修復におけるビタミンCの重要性を示しています[15-21]。ビタミンCは幅広いニーズを満たす上に、用量にも広い安全域があります[22]。腸許容上限に達する前までの最大経口ビタミンC摂取量として知られているのは1日120グラムです。これは極端な例で、職業上かなりの農薬暴露を受けていたケースです[23]

これまで世界中で50万回を優に超えるビタミンC点滴が安全に行われています(注入量は1回1~100 g)。血流中でのビタミンCの半減期は短く、良好な健康状態で数時間、リサイクル機構の障害によりビタミンCが不可逆的に酸化される重篤な疾患時には数分という短さです。

よって、食事のたびに摂るなど、用量を分けて摂ることが推奨されています。ビタミンC粉末は、水などの飲み物に混ぜ込むのに便利であり、賦形剤の摂取も抑えることができ、また複合投与も可能となります。ビタミンCは経皮吸収できるだけでなく、消化管のどこからでも吸収することができます。ビタミンC粉末は容易にペースト状にできるので皮膚の損傷部に塗ったり、うがい薬や飲み物に入れたり、嚥下ができない人の直腸投与に使ったりすることもできます。

無機塩アスコルビン酸型のビタミンCは酸過多がないので、胃腸への刺激は大抵こちらのほうが少ないです。この型の製品では通例、ビタミンC 1グラム(1,000 mg)につき100~120 mgのミネラル(ナトリウム、カルシウム、マグネシウムまたは亜鉛)を摂ることになります。アスコルビン酸ナトリウムには塩化物イオンがないため、高用量で摂取しても塩化ナトリウム(食卓塩)のような悪影響を体に及ぼすことはありません。

高齢者の場合、ビタミンCの吸収力が低下して体内での需要が増えるため、ビタミンC摂取の必要が高まります。腎臓結石を懸念する声もありますが、ビタミンCの高用量投与を受けた人々の臨床経験による裏付けはありません。

ビタミンB

ビタミンBには、チアミン(B1)、リボフラビン(B2)、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、ピリドキシン(B6)、ビオチン(B7)、葉酸(B9)、シアノコバラミン(B12)の8種類があります。総合的な健康のためなら、バランスよく配合された「Bコンプレックス(ビタミンB群)」サプリメントでまとめて摂るのも賢明な策です。

B1、B2、B3、B5、B6の用量はミリグラム(mg)単位であるのに対し、B7、B9、B12の用量単位はマイクログラム(mcg)が一般的です。1種類以上のビタミンBを、用量を増やして摂ることが必要と思われる疾患も多くあります。グラム単位の量のビタミンB3摂取で効果を得る人もいます。

ナイアシンとナイアシンアミドはどちらもビタミンB3の一形態であり、ニコチンアミドはナイアシンアミドの別名です。ニコチンアミドリボシドとニコチンアミドモノヌクレオチドは関連する薬物分子ですが、高価なためナイアシンの代替品として勧められることは通常ありません[24]

ナイアシンは皮膚紅潮(スキンフラッシュ)を生じることがありますが、血中コレステロールの低下に役立ちます。ナイアシンアミドは紅潮を生じない一方、血中コレステロールの低下作用はありません。皮膚疾患には通例、ナイアシンアミドのほうが好まれます[25-27]。ガン治療でもナイアシンアミドのほうが好まれるのは、腫瘍によってはそれを使ったほうが進行しにくく、健康な細胞がこの栄養素の恩恵を優先的に受けることができるためです。

マグネシウム

マグネシウムは、神経と筋肉の機能、ビタミンDの代謝、膜透過性、DNAとタンパク質の合成、ならびに血圧に影響する何百種類もの生化学反応に必須の補因子です。1日所要量は体重1 kg当たり3~4.5 mgが一般的ですが、体に必要なこの量を満たすためにはもっと摂取しなければなりません。

すべて腸で吸収されるわけでなく、吸収率は、摂取するマグネシウムの形態や用量、マグネシウムの存在状態、腸内の酸性度、マトリクス効果によって80%から20%未満にまで及びます。何回かに分けてタンパク質と一緒に摂ると吸収率は上がります。

制酸薬を飲んでいる場合や、カルシウムやリン酸、鉄、マンガン、銅、亜鉛と同時に摂取した場合には吸収率が大きく低下します。マグネシウムの吸収率は年齢とともに低下する傾向があります。酸化マグネシウムより、クエン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、塩化マグネシウムのほうが良く吸収されます[28-31]

ビタミンD

血中ビタミンD値を40~80 ng/mLの範囲内に保つことには、多くの健康効果との関連が見られています[32] 。ビタミンD摂取源として良いのは、真昼に頭の上から浴びる日光、脂肪の多い魚、そしてビタミンD3のサプリメントです。

ロサンゼルスやアトランタ(北緯34度)より北に位置する地域では、10月から2月までの日光からはビタミンDを十分に生成することができません。フロリダ州のマイアミでさえ、11月から1月までは日光を浴びてもビタミンDをほとんど生成することができません。体内でのビタミンDの半減期は約2カ月です。

ホルモンのような働きをするこの重要なビタミンの血中濃度を健康的な値に保つため、米国大陸の人々は冬の間サプリメントに依存しています。

ビタミンK2

ビタミンK2(メナキノン)は、健康的なカルシウム代謝、心臓と脳の健康、炎症への対処に重要とされています。体内での機能はビタミンK1とは異なります。ビタミンD3を125~250 mcg(5,000~10,000 IU)摂るごとにビタミンK2を100 mcg摂ることが推奨されています。

ビタミンK2D3のサプリメントを別々に摂るほうが安価ですが、錠剤の数をなるべく少なくしたい場合はビタミンD3K2を組み合わせたサプリメントは価値があるかもしれません。ビタミンK2は、緑色の葉野菜、納豆、乳製品に含まれています。1180 mcgのビタミンK2を用いたプラセボ比較臨床試験では、1年後に効果が見られており、23年後の各時点でさらに顕著な効果が見られています[33]

脳や心臓、血液の健康に不可欠です。鉄欠乏性貧血は若い女性や高齢者によく見られます。小球性貧血は、それが生じた時点で脳と心臓にはすでに障害が生じています。ビスグリシン酸鉄という鉄キレート剤のほうが吸収は良く、硫化第一鉄やフマル酸第一鉄など無機鉄塩の摂取時によく見られる副作用を最小限に抑えることができます。

獣肉、魚、鶏もも肉、七面鳥、卵は鉄の摂取源として優れており、葉野菜、ブロッコリー、エンドウ豆、豆類など様々な野菜からも摂取できます。葉酸、ビタミンB12、ビタミンCは、鉄の吸収ならびに赤血球の増量のパートナーとして役立ちます[34-36]。鉄の摂りすぎは中毒性があるので避けるべきです。

セレン

アミノ酸であるセレノシステインとしてセレンを含んでいるタンパク質は25種類あることが知られています。これらのタンパク質は、DNA転写やRNA翻訳の調整、免疫機能、凝固、脳の機能など、体じゅうで広範な機能を果たしています。

セレノシステインは、一部のウイルスとヒト細胞間の相互作用における重要因子でもあり、ウイルスによってはその病原性突然変異(病原性変異株への突然変異)を低減する働きもあります。メチルセレノシステイン(MSC)は、複数のガン予防臨床試験で好ましい結果が見られています。

一方、セレノメチオニンを用いた臨床試験ではまだ良い結果は見られていません。亜セレン酸注射の短期使用は、急性ウイルス症候群の治療において、また、ガンの補助治療の一つとして、好ましい結果が見られています[37-42]。セレンの高用量摂取(1400 mcgを超えるもの)は中毒を生じる可能性があるので避けるべきです。

ビタミンE

ビタミンE族は8種類の化合物から成り、そのうち4つがトコフェロール、4つがトコトリエノールです[4]。トコフェロールとトコトリエノールをミックスした製品は割高ですがその価値があります。強力なほうのトコトリエノールを最大限吸収するため、一番良い方法は、トコトリエノールとトコフェロールとの摂取間隔を6時間以上空けることです(一方を朝食時、もう一方を夕食時に摂るなど)。

δ-トコフェロールは固形腫瘍ならびに心疾患の研究で用いられていて興味深い結果が得られています。様々な環境における最善のビタミンE補給方法について学ぶべきことはまだたくさんあります[43-66]。一つわかっているのは、着実な摂取の年数が多いほど、良い結果が見られるということです。

1970年代にLinus PaulingとRichard Passwaterが行った、18,000人近くを対象とした集団調査では、ビタミンEの摂取量と心疾患の低減との間に強い統計的関連性が見られました。この関連性は時間と用量に関係していました。80歳までに10年以上にわたって400 IU以上のビタミンEを摂っていた場合、心疾患の発症率が当時の標準発症率の10%(標準32%に対し3%)まで低下、1,200 IUを4年以上摂っていた場合は、標準32%に対し10%まで低下していました。[Prevention Magazine, 1976 Jan - May and Jul - Sep issues; Chapter 10, Supernutrition for Healthy Hearts, 1977]

主流メディアでは、ビタミンEの安全性について警告を鳴らし続けていますが、こうした警告は多くの研究結果と矛盾しています [67]

リシン

リシン(リジン)は、9つの食事必須アミノ酸(食事で摂取する必要がある必須アミノ酸)の一つです(他の8つはロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、バリン、ヒスチジン)。リシンはタンパク質の構成に欠かせません。

また、循環器疾患に対するPauling-Rath療法では、リシン(56 g/日)をビタミンC618 g/日)とプロリン(12 g/日)と併せて用います(http://orthomolecular.org/resources/omns/v18n27.shtml)。リシンには抗ウイルス特性と抗線溶特性もあります。

プロバイオティクス

厳密に言うとこれは食事必須アミノ酸サプリメントではありませんが、健康に良い腸内微生物叢の重要性が年々さらに明らかになっています。抗生物質を用いた治療で副作用を少なくするために治療中または治療後にプロバイオティクスを摂ると良いというエビデンスもあります。

まずは、安価で信頼実績のあるプロバイオティクスの定番、アシドフィルス菌を使ってシンプルに始めるのが妥当です。必要に応じて菌株の強さと数を増やしていきましょう。

フッ化物

フッ化物は栄養素ではありません。一般的な働きとして、歯のエナメル質の硬度を増し、脊椎骨の密度を高くしますが、腕と下肢の骨密度の低下をもたらします。政府が出資した複数の研究で、胎児~幼児の発達期における人工フッ化添加水への暴露にはIQ低下との関連が見られています。この環境有毒物質の使用は、可能なかぎり、とくに妊娠中と授乳中は避けましょう。

Dr. Paul Connettはこう指摘していますー 「日本など先進国のほとんど、そして西欧の人口の97%はフッ化添加水を使っていない。米国では公共水道水の約70%にフッ化物が添加されている。これは、人の数で言うと約18,500万人に相当し、世界中で人口フッ化添加水を飲んでいる人の数の半分を超える」https://fluoridealert.org/articles/50-reasons/ [68]

必須栄養素以外の好ましいサプリメント

<レシチン(ホスファチジルコリン)>

・・・胆汁の3番目に重要な成分であり、腸や胆管(胆石)、血液の中でコレステロールなどの脂質の分解を助けます。良質のレシチンサプリメントには、バランスよく配合されたリノール酸とリノレン酸も含まれています[69-71]

<グレープシードエキス>

・・・これに含まれるレクチンはノロウイルスと親和性があります。ノロウイルスの大発生は、秋と春の季節、ならびにクルーズ船でよく見られます。グレープシードエキス入りのクリーナーを使っているレストランもあります。レクチンは、乳製品など一部の食品粒子によって中和されます。グレープシードエキスは、必要に応じて、空腹時に水と一緒に摂る方法がベストです。

<コエンザイムQ10とベンフォチアミン>

・・・コエンザイムQ10は体内で生成することができますが、加齢に伴い必要量が生成量を上回る傾向があります。コエンザイムQ10とベンフォチアミン(脂溶性型のチアミン)は、細胞のエネルギー生産にとって重要なものです。この2つの栄養素のサプリメントは、うっ血性心不全と格闘している人やその看護をしている人から良い評判を得ています。

 

<緑茶・紅茶>

・・・抗酸化作用、抗炎症作用、抗凝固作用があることが多くの臨床試験で実証されています。

 

<ピクノジェノール>

・・・フランスカイガンショウ(海岸松)の樹皮エキス。強力な抗炎症作用があることが多くの研究で裏付けられています [72]

 

<N-アセチル-システイン(NAC)>

・・・含硫アミノ酸であるシステインを豊富に含み、体内で多くの用途があります。主要な細胞内抗酸化物質であるグルタチオンの生合成における前駆体です。救急医療ではアセトアミノフェンの過剰摂取に対する標準的解毒剤としてNACが用いられおり、アセトアミノフェンを使っている家庭ではNACも備えておくべきです。

α-リポ酸もシステインの補給源として優れており、これは水にも脂にも溶ける特性があります。リポ酸とビオチンは神経障害に役立ちます。

 

<オメガ3>

・・・DHAを1日500 mg以上確実に摂るならオメガ3サプリメントが役立つでしょう。DHAは必須栄養素ではなく、短鎖脂肪酸であるオメガ3系脂肪酸(α-リノレン酸)から体内で作ることができますが、脳の重量の半分はDHAが占めており、その重要性は体の至る所に及びます。

魚アレルギーの人はよくいますが、大豆、藻類、海藻など、魚を含まないDHA摂取源もあります。α-リノレン酸は、クルミ、亜麻仁粕に良く含まれています。血中オメガ3指数を8%以上に保つことは、健康状態の改善に関与しています。

 

<ルチン>

・・・リンゴに含まれる天然物質で、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)の阻害物質として分類されます。血栓の予防と分解の両方を助けるという独自の能力があります。避妊薬を服用している時(血栓のリスクが1~1.5倍になる)、長時間(6時間を超える)移動の最中およびその後数日間、ならびに全身感染症からの回復期(血栓のリスクが2~20倍になる)は、ルチンのサプリメント摂取を検討すべきです[73-77]

 

<月見草オイル>

・・・私はこのサプリメントを摂ったことはありませんが、30歳以上の女性は摂取を考えても良いでしょう。私の妻も母も、このサプリメントを切らすことはありません。

まとめ

「我々は答えを全部知っているわけではない。...(略)…もっと知識を得るために、見て、探して、試し続ける」(Francois Henri "Jack" LaLanne)

我々は、世界のことやヒューマンバイオロジー(ヒト生物学)、加工食品と自然食品の供給源について、膨大な知識を持っていますが、それでもまだ不完全です。最大限の健康効果を引き出すための具体的なサプリメント製剤、投与量、投与経路、投与のタイミングについて、もっと詳しく多くのことを知る必要があります。

しかし、知らないことがあるという理由で、すでに知っていることを活かさずにおく必要はありません。誰もが独自の遺伝子セットと環境ストレスを有しています。よって、健康の実現計画も成功に至る道も、人によって異なります。

広範なビタミン欠乏に高用量のマルチビタミン剤で対処し、試行錯誤を繰り返しながら検査を受けて、欠乏している栄養素を個別に特定すれば、食品とサプリメントの最善の使い方がわかるかもしれません。様々なサプリメントが入手できれば、各個人のニーズを効率良く満たし、アレルギーを回避し、食品の嗜好を変えないで済むベストな製品を選ぶことができます。

栄養摂取と生活習慣の良い選択を重ねることは、利子を生む銀行口座に少しずつ預金を重ねるように、年々利益を倍加させます。

私の基本的なサプリメント摂取プラン

(1回目の食事と一緒に)

・ビタミンC: 1 g、(小売原価)11セント
・ビタミンD3: 125 mcg(5000 IU)、8セント
・ビタミンK2: 100 mcg、28セント
・オメガ3系脂肪酸: 500 mg EPA/DHA、18セント
・優れたマルチビタミン・マルチミネラル: 83セント
・セレン(Se-メチルL-セレノシステイン): 200 mcg、9セント
・プロバイオティクス(アドバンストアシドフィルスプラスなど): 12セント

(2回目の食事と一緒に)

・ビタミンC: 1g、11セント
・ビタミンE: 268 mg(400 IU)(トコフェロール混合のハイガンマビタミンEなど): 42セント
・Bコンプレックス100(ビタミンB群): 25セント
・クエン酸マグネシウム: 200 mg、12セント

小売原価合計 = 2.59ドル/日(945.35ドル/年)

サプリメントは保存可能期間が長いので、セール時に買いだめすることもできます(上記の量で年間710ドルに抑えることも容易です)。




執筆:Michael Passwater 副編集長
OMNS (2023年6月6日)