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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

食物アレルギー

子どもの頃それを患っていた私が小児科医として治療

子どもの頃食物アレルギーを患っていた私が小児科医として治療

執筆者:Ralph K. Campbell, MD

(OMNS、2019年4月10日) 私は「自分もそうだったから」という確信からこれを書いている。厳密に何歳から食物アレルギーが出始めたのか自分でもわからないし、今や母にそれを教えてもらうこともできない。普通の子は話すとき、私が出すような音を出さないことを、就学前に私も母も知っていた。「鼻を洗濯バサミで挟んでいるみたいな声」と表現した者もいた。牛乳過敏による鼻アレルギーの話である。

幼少期の乳製品ジレンマ

1930~40年代、ビタミンに関する知識はかなり広まっていたが、食物アレルギーに関する一般知識はほとんどなかった。幸運だったのは、母が救済策を偶然見つけたことである(それともこれは神の介入か?)。私の体に良いと思って与えていた大きなコップ1杯の牛乳に対する耐性が私にないことに母は気付いた。一方、おいしくて簡単に買えるニューヨーク熟成チェダーチーズを食べても何の問題も起こらなかった。

そのとき何が起きていたのか、我々はその後知るに至った。牛乳過敏が原因で下鼻甲介の腫れが生じていたのだ。下鼻甲介は、隔壁方向に突き出ている瘤状の組織で、吸い込んだ空気を湿らせ、粉塵や花粉などの微粒子を捕える働きがある。私の場合、鼻の気道がほぼ完全に塞がれてしまうほど下鼻甲介が腫れていたのだ。腫れにはかゆみも伴ったが、腕先まで被せた袖で鼻をこする「アラージック・サリュート(アレルギーのあいさつ)」をするとかゆみは和らいだ。

このような状況だと分泌物は「裏口」に流れ落ちるしかなく、鼻の気道が喉に抜けたところの領域で分泌物による炎症が生じる。この場所には咽頭扁桃(アデノイド)がある。これは口蓋扁桃のようなリンパ系組織の塊で、有害細菌の侵入を阻止する働きがある。鼻アレルギーがある子どもの場合、上記の両リンパ系組織領域(咽頭扁桃と口蓋扁桃)が肥大すると思われ、口蓋扁桃を残しながらアデノイド切除をするという、両者の運命を分けた手術に至ることが多い。

耳の問題

上記の領域は、左右の耳管が合流する場所でもある。音波が鼓膜に達したとき鼓膜が振動することができるよう、耳管によって空気が中耳含気腔から出られるようになっている。鼓膜の部分は、3本の耳小骨により、内耳ならびにその太鼓のような膜につながっている。内耳はカタツムリのような形をしており(故に医学用語で「蝸牛」という)、液体で満たされている。そして蝸牛管に沿って「有毛細胞」が規則正しく並び、聴覚神経の一環を成している。音がこの内膜を打つと、液体が振動して有毛細胞がなでつけられ、膜の付け根に一番近いところの有毛細胞からは高音の信号が送られ、そこより離れていて蝸牛の中央付近にある有毛細胞からは低音の信号が送られるという驚くべきメカニズムである。

鼻づまりと後鼻漏の最終的な結果として、聴力低下など、いくつかの問題が考えられる。温暖で湿っていて通気が悪い暗所のほうが細菌は繁殖しやすいことから、結果的に中耳炎が起こる。痛みは、中耳炎が盛んな状態にあるときの顕著な特徴と考えられる。耳の炎症は、子どもに救急外来受診が必要となる原因のトップと認識されている。

喘息

喘息とは、呼吸樹(気管支)の枝の部分を囲んでいる平滑筋が様々な強さで収縮する状態をいう。周囲の肺胞からの圧力により気管支がさらに圧迫されるため、息を吐くほうが難しくなる。命を脅かすほど強い場合もあり、アドレナリンの皮下注射によって即座に緩和する必要がある。この気管支痙攣(気管支周りの平滑筋が収縮して気道が狭くなること)により、空気の出入りが困難(場合によっては危険)となる。こうした発作を突然引き起こすものには、患者の食物アレルギーのほか、粉塵などの刺激物をはじめとする多くの要因が考えられる。汚染された大気を吸い込もうとして生じることもある。また、動物の鱗屑、チリダニの排泄物、花粉というような他のアレルゲンが引き金となることもある。鼻アレルギーと喘息の原因はあまりにも多いため、どの食物アレルゲンが関係しているのか判断するのが難しい場合がある。私は1957年に、この判断プロセスに役立つ(下記)手順を考案した。食物アレルギーは消化管内で発現するものと我々は見込んでおり、症状を知ることは役に立つ。しかし、犯人捜しをする上で、もし呼吸器系にも症状が出るものであれば、症状はより特徴的なものであり、当該食品を摂取してから症状が出るまでの時間が短い可能性がある。

どれが犯人か?

食物アレルゲンを突き止めるには、何を食べたか思い出す必要がある。疑わしいのは、兆候と症状の発現に時間的関連がある食品である。通常スパゲッティにアレルギーはないが、トマト、タマネギ、ニンニク、小麦など、その材料の1つ以上にアレルギーがある、という人もいる。犯人は、朝食用シリアルに入っている着色料「赤色2号」くらい目立たないものかもしれない。これは冗談ではない。私が担当した患者で即時型口腔内過敏症、別名「血管性浮腫」の発作を2回おこした男の子は、まさにこの状況であった。彼は救急外来を受診して助かった。私自身の娘も2回、アナフィラキシーを経験し、救急科に急送された。こうした症状の発現は、緊急処置を要する。

我々にできることは?

まず最初に、大きな問題を防ぐため準備をしておくこと。血管性浮腫の症状が発現したことがある患者なら、再度発症した場合に備えて自己投与型のアドレナリンを処方してもらい手元に置いておけるようにするべきである。また、緊急処置が必要となってもそれを受けることができる診療所で、今後「フードチャレンジ(食物負荷試験)」を受けるべきである。

普通の種類のアレルギーについては、疑わしい食品と食材のリストを作ること。アレルギー反応がまた出たら、「除去とチャレンジ」の手順に進む。反応が出た場合は数日待って回復した後、再度その単独「容疑者」を食べてみる「チャレンジ」をする。それで反応が出れば、その物質を食事から除去すべきであることが確認されたことになる。ただし、血管性浮腫の症状が過去に現れたことがある場合、この手順では時間がかかり過ぎることを忘れてはならない。激しい反応が出たら、呼吸器への影響があるため、救命用のアドレナリンですぐ処置しなければならない。とくに、咽頭内膜の腫れおよび咽頭痙攣は、顔面の浮腫を伴うことがあり、見た目にはそちらの方がわかりやすい。多くの薬剤広告でこれは重篤な副作用として記載されている。こうしたアレルギー反応は、どんなものでも重症度に大きな幅がある。たとえば、腸管アレルギーでは、数日間体調がすぐれず頭痛や気分の悪さを伴う場合もある。呼吸や胃腸への明白な影響以外にも、食物アレルギーは「思考がぼんやりした状態」をもたらし、興奮性神経伝達物質に作用して正常な睡眠を妨げることもある。

ちなみに私は、1980年代のはじめ頃、ジョージア州の小児科アレルギー専門医Dr. William G. Crookと文通をしていた。彼が書いたある論文への感想を私が送ったことからペンフレンドになったのだが、その論文は米国小児科学会の刊行誌「Pediatrics」に公表されたもので、私がそのテーマについて考えていたことがすべて網羅されている感じがした。彼は自著「Tracking Down Hidden Food Allergy(隠れた食物アレルギーを探し出す)」を1冊送ってくれた。この本は、彼の娘が書いたイラストも入っていて非常に読みやすく、何よりも、医学界で受け入れられた。[1]

ビタミンCをはじめとする栄養素の助け

アレルギー症状が出た場合の緩和策には、犯人の回避のほかに、ビタミンCの高用量摂取がある。ビタミンCを2時間おきに2,000 mgずつ摂ると非常に効果的で即効性がある[2,3]。マグネシウムなどのミネラルの不足は、現代世界では珍しくなく、喘息など多くの健康問題を生じる可能性もある。多くの場合、喘息の症状は、適量のマグネシウム補給によって軽減または予防することができる[4-7]

食事の改善も役に立つ[2,7]

  • 人工の着色料、香味料、保存料を避ける。
  • コールドカット(加工肉の薄切り)など、保存料を使ったデリミートも、ホットドッグもやめる。
  • もっと葉野菜を食べる。とくに、新鮮な生野菜の量をもっとたくさん増やす。(ピーナッツアレルギーがなければ)もっとマメ科植物を食べる。
  • もっと水を飲む。そうすれば、抗原を体から押し流すのに役立つ。
  • 健康を手に入れ維持するため、毎日良質なマルチビタミン剤を摂り、加えて、ビタミンB群を余分に摂ることをお勧めする[2-8]

食物アレルギーについては、良い点として、軽度の反応であれば成長につれて見られなくなることが多い。また、アレルギー専門医によって、ついに航空機内へのピーナッツ持込み禁止令が不要となりつつある。彼らが実践している方法は、急変した場合に備えアドレナリンを用意して待機しつつ、診療所の環境内で、だんだん量を増やしながらピーナッツを与えることにより減感作をもたらす(反応させにくくする)ものである。このプログラムにはかつて並々ならぬ意気込みが見られたが、2019年1月29日、まさに興をそぐような論文がMedscapeに掲載された。食品に対する減感作についてのGary Stradmauer, M.Dによる論文である。ピーナッツ由来の経口薬AR101が使用されたのだが、1錠につき、ピーナッツ約2粒分への耐性しか認められなかった。このようなわずかな効能でも、その薬を飲み続けなければ持続しない。こうした経緯から、それよりも減感作が期待できそうな注射にまた注目が戻りつつある。アレルギー専門医はこれにずいぶん長い間頼ってきた。

ビタミンCは、喘息や花粉症を含め、通常のアレルギー反応ならほとんどどんなものでも抑えられる可能性がある。発作や激しい症状が出ているときは、「2時間ごとに2,000 mg」のビタミンC摂取を1~2日続けるという昔ながらの方法にかなうものはない。私の経験では、これは奇跡に近い。

私は常に自分のシンプルな信条に立ち返っている: 栄養素は安全で有効なものだから、良識が少しあれば失うものはほとんどない。

参考文献

  1.  Crook WG (1980) Tracking Down Hidden Food Allergy.(隠れた食物アレルギーを探し出す) Professional Books. ISBN-13: 978-0933478053.
  2. Saul AW (2005) Allergies.(アレルギー) http://doctoryourself.com/allergies.html , http://doctoryourself.com/allergies_2.html
  3. Downing D (2010) The Vitamin Cure for Allergies: How to Prevent and Treat Allergies Using Safe and Effective Natural Therapies.(アレルギーに対するビタミン療法:安全で有効な自然療法を用いてアレルギーを予防・治療する方法) Basic Health Pub. ISBN-13: 978-1591202714
  4. Davalos Bichara M, Goldman RD. (2009) Magnesium for treatment of asthma in children.(子どもの喘息治療に役立つマグネシウム) Can Fam Physician. 55:887-889. http://www.cfp.ca/content/55/9/887.long
  5. Daliparty VM, Manu MK, Mohapatra AK. (2018) Serum magnesium levels and its correlation with level of control in patients with asthma: A hospital-based, cross-sectional, prospective study.(喘息患者における血清マグネシウム値とコントロールレベルとの相関関係:病院ベースの横断的前向き研究) Lung India. 35:407-410. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30168460 .
  6. Dean C (2017) Magnesium.(マグネシウム) http://orthomolecular.org/resources/omns/v13n22.shtml
  7. Case HS (2016) Magnesium Decreases Hyperactivity in ADHD Children.(注意欠陥多動性障害児に見られたマグネシウムによる多動性の減少) http://orthomolecular.org/resources/omns/v12n20.shtml
  8. Campbell RK (2014) Food Allergy, Gluten Sensitivity and Celiac Disease (食物アレルギー、グルテン過敏症およびセリアック病). http://orthomolecular.org/resources/omns/v10n04.shtml