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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

ビタミン剤に対するNBCの無知 弁明

目次
    執筆者: Andrew W. Saul オーソモレキュラー医学ニュースサービス編集員

    (OMNS、2013年11月12日) 私は NBCニュースに代わって弁明したいと思う。Lowell Thomas、John Cameron Swayze、Chet Huntley、David Brinkleyというジャーナリストを我々に差し向けたこのNBCという組織は、その報道基準を下げたように見える。「ビタミン剤は心疾患もガンも予防しないことが専門家により判明」という大見出しを付けてサプリメントを強く非難しているNBCの記事では、無視しがたい臨床栄養学に対する全くの無知が見られる。NBCは有名なメディアなので、そんなはずはないのだが。http://www.nbcnews.com/health/vitamins-dont-prevent-heart-disease-or-cancer-experts-find-2D11577445

    ビタミン補給について、NBCはこう明言している:「これまでに行われた研究をきわめて広範囲にわたって見たところ、死亡する可能性が最も高い病気の予防という面では、時間の無駄かもしれない。」

    ここで「きわめて広範囲にわたって見た」研究には、事前に選ばれた24の研究が含まれていた。もしかしたら、以下に挙げるような研究論文をいくつか見逃しただけなのかもしれない。

    マルチビタミンサプリメントによって、ガンのリスクが8%低下する。死亡数の8%低下ということは、安価なビタミン錠を毎日摂るだけで、米国内だけで毎年48,000人の命を救えるかもしれないことを意味する。 (Gaziano JM, Sesso HD, Christen WG, Bubes V, Smith JP, MacFadyen J, Schvartz M, Manson JE, Glynn RJ, Buring JE (2012) Multivitamins in the Prevention of Cancer in Men: the Physicians’ Health Study II Randomized Controlled Trial (男性におけるマルチビタミン剤のガン予防効果:医師健康調査II 無作為化比較試験) JAMA. 2012;():1-10. doi:10.1001/jama.2012.14641.)

    医師の72%が個人的にサプリメントを使用している。マルチビタミン剤は、医師が摂っている一番人気のサプリメントである。(Dickinson A, Boyon N, Shao A. Physicians and nurses use and recommend dietary supplements: report of a survey.(医師と看護師はサプリメントを使用し推奨している:ある研究の報告) Nutrition Journal 2009, 8:29 doi:10.1186/1475-2891-8-29)

    血清中のビタミンB6、メチオニンおよび葉酸の値が高いと、肺ガンのリスクが50%低くなる。これらの栄養素の値が高い人ほど、喫煙の有無にかかわらず、肺ガンのリスクに有意な低下が見られた。(Johansson M, Relton C, Ueland PM, et al. Serum B vitamin levels and risk of lung cancer.(血清中ビタミンB値と肺ガンのリスク) JAMA. 2010 Jun 16;303(23):2377-85.)?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20551408

    ビタミンDはガンのリスクを下げる。乳ガンと結腸直腸ガンに関する研究から、血清中の25(OH)D濃度が10 ng/mL増えるごとに、結腸直腸ガンの発生率が15%、乳ガンの発生率が11%低くなることがわかっている。 (Gandini S, Boniol M, Haukka J, Byrnes G, Cox B, Sneyd MJ, Mullie P, Autier P. Meta-analysis of observational studies of serum 25-hydroxyvitamin D levels and colorectal, breast and prostate cancer and colorectal adenoma.(血清中25-ヒドロキシビタミンD値と結腸直腸ガン・乳ガン・前立腺ガン・結腸直腸腺腫との関係を調べた観察研究のメタ分析) Int J Cancer. 2011;128(6):1414-24.)?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20473927

    ビタミンDによって、乳ガンの生存率が高くなる。乳ガンと診断された女性の場合、血清中25(OH)D濃度が高いほうのグループでは生存率が高くなっていた。ビタミンDの濃度が低いほうのグループでは死亡率が8%高くなっていた。(Vrieling A, Hein R, Abbas S, Schneeweiss A, Flesch-Janys D, Chang-Claude J. Serum 25-hydroxyvitamin D and postmenopausal breast cancer survival: a prospective patient cohort study.(血清中25-ヒドロキシビタミンD値と閉経後の乳ガン生存率:前向き患者コホート研究) Breast Cancer Res. 2011;13(4):R74)?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21791049

    ビタミンCの血中値が高いほど、心疾患のリスクは低くなる。血漿中ビタミンC値が20ミクロモル/リットル (μmol/L)増えるごとに、心不全による死亡が9%少なくなるという関連が見られている。誰もが十分高用量のビタミンCを摂って血漿中ビタミンC値を80 μmol/Lまで高めれば、死亡数が年間216,000件減ることになる。この血漿中値に達するためには、ビタミンCを1日約500 mg摂る必要がある。(Pfister R, Sharp SJ, Luben R, Wareham NJ, Khaw KT. Plasma vitamin C predicts incident heart failure in men and women in European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition-Norfolk prospective study.(欧州前向きガン・栄養調査-ノーフォーク前向き研究の被験者男女における、血漿中ビタミンC値による新規発症心不全の予測) Am Heart J, 2011. 162:246-253.)?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21835284

    ビタミンCは放射線障害の予防と好転をもたらす。(Yanagisawa A. Effect of Vitamin C and anti-oxidative nutrition on radiation-induced gene expression in Fukushima nuclear plant workers.(福島原子力発電所の作業員における放射線誘発性遺伝子発現に対するビタミンCおよび抗酸化作用がある栄養素の効果) 全文は、http://www.doctoryourself.com/Radiation_VitC.pptx.pdf?のサイトから無料でダウンロードできる。
    以下も参照のこと: Korkina L, et al. Antioxidant therapy in children affected by irradiation from the Chernobyl nuclear accident.(チェルノブイリ原発事故による放射線被爆児における抗酸化物質療法) Biochem Soc Trans,1993. 21:314S. PMID: 8224459?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=8224459
    日本点滴療法研究会では、ビタミンCの大量投与について詳しく知りたい人のために、以下の映像を作成している。

    第1部:?http://www.youtube.com/watch?v=Rbm_MH3nSdM
    第2部:?http://www.youtube.com/watch?v=j4cyzts3lMo
    第3部:?http://www.youtube.com/watch?v=ZYiRo2Oucfo
    第4部:?http://www.youtube.com/watch?v=51Ie8FuuYJw

    この映像の全4部をhttp://firstlaw.wordpress.com/?のサイトで見ることもできる。

     

    ビタミンCはガンを抑制し小さくする。ガン専門医であるVictor Marcial, M.Dは以下のように述べている:「我々は進行ガン(ステージ4)の患者について詳しく調べた。40人の患者が週に数回、40,000~75,000 mgのビタミンCの静脈内投与を受けていた…(中略)…加えて、この患者には栄養補助食品などのサプリメントも与えられた。腫瘍の大きさが50%以上縮小することと定義された当初の腫瘍反応率の達成が、患者の75%において見られた。」(2010年4月12日、プエルトリコ大学医療科学キャンパスでの講演) Marcial博士が用いているビタミンC点滴療法のプロトコルについては、下記サイトから無料でダウンロード可能:http://www.doctoryourself.com/RiordanIVC.pdf?またはhttp://www.riordanclinic.org/research/vitaminc/protocol.shtml

    ガンに対するビタミンC点滴療法について詳しく説明している映像があり、下記サイトにアクセスすれば無料で見ることができる:
    http://www.riordanclinic.org/education/symposium/s2009?(12種類の講演)
    http://www.riordanclinic.org/education/symposium/s2010?(9種類の講演)

    NBCニュースによると、「ビタミンEはガンや心疾患の予防には何の役にも立たない。」

    ここでNBCが報道しそびれたことについて、以下にもっと挙げる。

    天然ビタミンEの因子は 前立腺腫瘍形成に75%の減少をもたらす。天然ビタミンE剤に含まれている補助因子γ-トコトリエノールは、前立腺ガンの幹細胞を殺す。(Sze Ue Luk1, Wei Ney Yap, Yung-Tuen Chiu et al. Gamma-tocotrienol as an effective agent in targeting prostate cancer stem cell-like population.(前立腺ガン幹細胞様集団を標的とした場合に効果的な作用因となるγ-トコトリエノール) International Journal of Cancer, 2011. Vol 128, No 9, p 2182-2191.)?http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.25546/abstract

    γ-トコトリエノールは既存の前立腺腫瘍にも効果がある。(Nesaretnam K, Teoh HK, Selvaduray KR, Bruno RS, Ho E. Modulation of cell growth and apoptosis response in human prostate cancer cells supplemented with tocotrienols.(トコトリエノールを補給したヒト前立腺ガン細胞における細胞増殖の変化とアポトーシス反応) Eur. J. Lipid Sci. Technol. 2008, 110, 23-31.)?http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ejlt.200700068/abstract
    また、以下も参照のこと: Conte C, Floridi A, Aisa C et al. Gamma-tocotrienol metabolism and antiproliferative effect in prostate cancer cells.(前立腺ガン細胞におけるγ-トコトリエノールの代謝と増殖抑制効果) Annals of the New York Academy of Sciences, 2004. 1031: 391-4.?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15753178?dopt=AbstractPlus

    ビタミンEにより、71歳以上のグループにおける死亡率が24%低下。(Hemila H, Kaprio J. Age Ageing, 2011. 40(2): 215-220. January 17.)?http://ageing.oxfordjournals.org/content/40/2/215.short

    1日300 IUのビタミンEにより、肺ガンのリスクが61%低下。(Mahabir S, Schendel K, Dong YQ et al. Dietary alpha-, beta-, gamma- and delta-tocopherols in lung cancer risk. (肺ガンのリスクにおける食事性α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールの効果) Int J Cancer. 2008 Sep 1;123(5):1173-80.)?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18546288

    ビタミンEはアテローム性動脈硬化の有効な治療法となる。「ビタミンEサプリメントを1日当たり100 IU以上摂取していた被験者は、ビタミンEサプリメントの摂取量が1日当たり100 IU未満であった被験者よりも、冠動脈の病変進行が少なかった。(Hodis HN, Mack WJ, LaBree L et al. Serial coronary angiographic evidence that antioxidant vitamin intake reduces progression of coronary artery atherosclerosis.(抗酸化ビタミンの摂取により冠動脈アテローム性硬化の進行が抑制されることを示す、連続冠動脈造影法によるエビデンス) JAMA, 1995. 273:1849-1854.)?http://jama.ama-assn.org/content/273/23/1849.short

    1日400~800 IUのビタミンEにより、心臓発作のリスクが77%低下。(Stephens NG et al. Randomized controlled trial of vitamin E in patients with coronary artery disease: Cambridge Heart Antioxidant Study (CHAOS).(冠動脈疾患患者におけるビタミンEの無作為化対照試験:ケンブリッジ心臓・抗酸化物質研究(CHAOS)) Lancet, March 23, 1996; 347:781-786.)?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8622332

    サプリメントによるビタミンEの摂取量増加がCOPD(慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎)を防ぐ。?(Agler AH et al. Randomized vitamin E supplementation and risk of chronic lung disease (CLD) in the Women’s Health Study.(ビタミンE補給と慢性肺疾患(CLD)リスクとの関係を調べた女性健康調査における無作為化試験)American Thoracic Society 2010 International Conference, May 18, 2010 (2010年5月18日、2010年度米国胸部疾患学会国際会議)) 要旨は下記サイトに掲載されている:http://www.thoracic.org/newsroom/press-releases/conference/articles/2010/vitamine-e.pdf

    1日当たり800 IUのビタミンEを摂ることが、脂肪肝疾患の治療法として成功する。(Sanyal AJ, Chalasani N, Kowdley KV et al. Pioglitazone, vitamin E, or placebo for nonalcoholic steatohepatitis.(非アルコール性脂肪性肝炎に関する、ピオグリタゾン、ビタミンE、プラセボを用いた比較試験) N Engl J Med. 2010 May 6;362(18):1675-85.)?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20427778

    アルツハイマー病の場合、1日当たり2,000 IUのビタミンEを摂っている患者のほうが生存期間が長い。(Pavlik VN, Doody RS, Rountree SD, Darby EJ. Vitamin E use is associated with improved survival in an Alzheimer’s disease cohort.(アルツハイマー病のコホートにおける、ビタミンEの使用と生存期間の改善との関連) Dement Geriatr Cogn Disord. 2009;28(6):536-40.) 要旨は下記サイトに掲載されている:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20016184
    また、以下も参照のこと: Grundman M. Vitamin E and Alzheimer disease: the basis for additional clinical trials.(ビタミンEとアルツハイマー病:追加臨床試験の根拠) Am J Clin Nutr. 2000 Feb;71(2):630S-636S. Free access to full text at?http://www.ajcn.org/cgi/content/full/71/2/630s?)

    1日当たり400 IUのビタミンEにより、子どものてんかん性発作が60%以上減少する。(Ogunmekan AO, Hwang PA. A randomized, double-blind, placebo-controlled, clinical trial of D-alpha-tocopheryl acetate [vitamin E], as add-on therapy, for epilepsy in children.(子どものてんかんに関する、追加療法としての酢酸D-α-トコフェロールの無作為化二重盲検プラセボ比較臨床試験) Epilepsia. 1989 Jan-Feb; 30(1):84-9.)?http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2643513

    ビタミンEサプリメントは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の予防に役立つ。この重要な研究結果は、100万人以上を対象とした10年以上にわたるハーバード大学での研究から得られたものである。(Wang H, O’Reilly EJ, Weisskopf MG, et al. Vitamin E intake and risk of amyotrophic lateral sclerosis: a pooled analysis of data from 5 prospective cohort studies.(ビタミンEの摂取と筋萎縮性側索硬化症のリスク:5つの前向きコホート研究によるデータの統合分析) Am. J. Epidemiol, 2011. 173 (6): 595-602. March 15)?http://aje.oxfordjournals.org/content/173/6/595.short

    慢性肝疾患(非アルコール性脂肪性肝炎)の治療では、処方薬よりビタミンEのほうが有効である。この論文執筆者によると、「安価で容易に入手できるビタミンEがこの病気を抱える人の多くに役立つ可能性があることがこの研究でわかったのは朗報である」。(Sanyal AJ, Chalasani N, Kowdley KV et al. Pioglitazone, vitamin E, or placebo for nonalcoholic steatohepatitis.(非アルコール性脂肪性肝炎に関する、ピオグリタゾン、ビタミンE、プラセボを用いた比較試験) N Engl J Med. 2010 May 6;362(18):1675-85.)?http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa0907929

    私は、これを書くことによって、NBCの悪意に満ちたビタミン剤批判に対する埋合せをしたいと思う。NBCは、少なくとも原則としては、公正でバランスのとれた報道に誠心誠意努めていると私は信じているが、そうした報道のために、話の続きはお分かりいただけたであろう。

    Andrew W. Saulは、38年間にわたってオーソモレキュラー医学の講演を行っており、多数の著書と共著書がある。また、映画「FoodMatters(邦題:フードマタース~食に隠された秘密)」でも取り上げられている。日本点滴療法研究会会員であり、オーソモレキュラー医学会では名誉の殿堂入りを果たしている。