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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

マグネシウムはADHD児の多動性を軽減する

執筆者: Helen Saul Case

(OMNS、2016年11月23日) マグネシウム欠乏が見られる頻度は、健常児より、注意欠陥・多動性障害(ADHD)がある子どものほうが高い。ADHD児を調べた研究の一つでは、被験者の95%にマグネシウム欠乏が見られた(1)。これは、多動児にマグネシウムを補給することの正当な理由となるか? 答えはイエスである。

マグネシウムの補給は、とくに、子どもの多動性を軽減するのに役立つようである(2)。1日当たり200mgのマグネシウム補給を6カ月間受けた子どものグループでは、マグネシウムを補給する処置を受けたことがなかった対照グループの子どもと比較して、「髪におけるマグネシウム含有量の増加ならびに多動性の有意な減少」が見られている(3)。

マグネシウムは安全で役に立つ

あるレビューでは、子どものADHDを治療するためのマグネシウム療法に関する諸研究を調べ、次のような結論を下している-「マグネシウムがADHDの治療に有効であることは、諸研究によって裏付けられているが…(中略)…その有効性と安全性を示す強力なエビデンスがもっと得られるまで、マグネシウムはADHDの治療には勧められない」(4) 。これは、「科学的根拠に基づいた」現代の医学文献にありがちな結論である。既知の事実であっても、十分な数の無作為化二重盲検比較試験が実施されていないかぎり耳を貸さない医学専門家もいる。マグネシウムの補給は、安全で有効であり、マグネシウムが欠乏している子どもには非常に重要である。

マグネシウムの安全性は、すでに十分確立されている。マグネシウムの補給による死亡例はこれまで報告されたことがない。1件もない(5)。マグネシウムの過量摂取は軟便を引き起こすことがあるが、これは一時的なものであり、用量を減らしたり、少量ずつに分けて1日に何度も摂るようにしたりすれば解消する。マグネシウムの補給は安全であり、とくにADHD治療薬の危険性を考えれば、試す価値はある。

ADHD治療薬は危険である

どのADHD治療薬を服用しているかにもよるが、過量摂取の副作用には、散瞳(瞳孔散大)、震戦(震え)、不安、心的動揺、反射亢進、頭痛、消化器不調、闘争的挙動、精神錯乱、幻覚、譫妄(せんもう)、眩暈(めまい)、ジストニア(筋失調症)、不眠症、パラノイア(偏執症)、運動障害、頻脈、高血圧症、発作、そして活動過多さえある。活動過多は、ADHD治療薬が治すはずである、まさにその症状である。それだけでなく、この薬で死ぬおそれもある(6,7)。たとえ、「死亡者は滅多にいない」(7)と言っても、患者にとっては、ほとんど慰めにならないだろう。また、処方されたとおりにADHD治療薬を服用した場合に最もよく見られる副作用には、食欲不振、腹痛、頭痛、睡眠障害、成長力の低下、幻覚、精神障害などがある(8)。マグネシウムは、こうした副作用を一切もたらさない。マグネシウムは安全かつ有効であるにもかかわらず、ADHDの臨床実践ガイドラインに関する米国小児科学会(APP)からのレポートには、マグネシウムの補給が推奨されるという記述がどこにもない(8)。

処方されたADHD治療薬の服用によって子どもが突然死する可能性に関しては、APPが、「刺激薬が突然死のリスクを高めるか否かについては、エビデンスの相反がある」(8)と述べることによって、懸念は打ち消されている。死亡するリスクがこれくらい不確実であれば、医師はADHD治療薬の使用に反対するだろうと期待してもおかしくない。それなのに、米国食品医薬品局(FDA)は、「医療専門家が処方するとおりにADHD治療を続ける」ことを推奨している(9)。「ADHD薬について疑問があれば担当の医療専門家に相談する」ことを忘れてはならない。「相談する」ことによって薬剤の危険性が下がったことは一度もないのだが。

マグネシウムによるその他の恩恵

マグネシウムには、活動過多(多動性)の治療効果以外にも、子どもに深い恩恵をもたらす。夜間の睡眠の改善や、筋肉痛や成長痛による不快感の軽減、便秘の緩和、不安の軽減、頭痛日数の減少に役立つ可能性がある(10)。

「私は、マグネシウムの追加補給によって誰もが恩恵を得られる可能性があるという結論に至った。」
– Carolyn Dean, MD, ND

ADHDに用いるマグネシウムおよび他の栄養素

ADHDは薬物の欠乏によって引き起こされるわけではない。自分の子どもに薬剤を与える代わりに、最適な栄養を子どもに施す利点に目を向けるべきである。ADHD児の場合、数種類の栄養素を最適な量摂ることによって効果が得られる可能性がある。これには、ビタミンD(11)、鉄(12)、ナイアシン(B3)、ピリドキシン(B6)、ビタミンC、オメガ3系脂肪酸(13)が含まれる。食事から精白糖を排除し、人工の食用色素を避け、健康に良い食品を提供することに加え、小児科医であるRalph Campbell, MDは、ADHD児に対し、朝食時にビタミンB群のサプリメントを与え、昼食時か夕食時にビタミンB6をさらに100mg与え、かつ、1日当たり200mg以上のマグネシウムを与えることを勧めている。その他、役立つ助言として、画面を見ている時間を制限することや、運動、とくに屋外での運動を増やすことなどがある。

用量

マグネシウムの1日当たりの推奨摂取量(RDA)は、1歳~3歳児の場合80mg、4歳~5歳児では130mgである。9歳までは、1日当たり(少なくとも)240mgのマグネシウムを摂るよう、米国政府は勧めている。14歳の推奨摂取量は、1日当たり360~410mgである。留意すべき点として、食事性のマグネシウムは、30~40%程度しか体に吸収されない(14)。吸収が良くない形態のマグネシウムを摂りすぎると、軟便を生じる可能性があることを覚えておこう。この副作用は、マグネシウムの投与量を減らしたり、もっと吸収の良い形態のマグネシウムを与えたりすれば防ぐことができる。必要とされる1日当たりのマグネシウム総量がそれより多い場合は、少量ずつに分けて1日に何度も摂るようにする。

形態

クエン酸マグネシウムの経口剤は、安価で吸収もかなり良い。その他にも、これより高価であるが、有益な経口摂取型のマグネシウムとして、グリシン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、タウリン酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどがある。酸化マグネシウム(吸収が非常に悪い)は避け、また、グルコン酸マグネシウムも、アスパラ銀酸マグネシウムも避けること(10)。硫酸マグネシウムは安価であり、エプソム塩を入れた湯船に定期的に浸かれば、経皮吸収することができる。

自分の子どもにマグネシウムを摂らせる方法

マグネシウムの経口補給:

我が家では、毎日摂るチュアブル・タイプのマグネシウム錠またはマグネシウムの経口液剤を子どもたちに与えている(多くのサプリメントにはカルシウムも含まれている)。

我が家では、大人用のマグネシウム錠を砕いた一部を、ハチミツやアップルソース、アイスクリームなど、味があるものに混ぜて子どもたちに与えている。

吸収を良くするため、我が家では、用量を分けて、食間にもマグネシウムを与えている。

マグネシウムの経皮吸収:

我が家の子どもたちは、週2回、エプソム塩浴をしている。一掴みか二掴みのエプソム塩を浴槽に放り込んで、子どもたちを10~15分程度浸からせている。彼らはこれを「ウォーターソルト」と呼んでいる。

食事でのマグネシウム摂取:

以下のとおり、我が家の子どもたちは、多くの摂取源からマグネシウムが得られる植物性食品中心の食事をしている。
我が家では、ニンジン、ホウレンソウの幼葉、ビートの葉など、有機野菜を入れて、自家製の新鮮な生野菜ジュースを作っており、子どもたちはこれを週2~3回飲んでいる。
我が家では、パンやピザ生地、スムージーに小麦胚芽を入れている。
子どもたちのおやつにカシュ―を出している。
子どもたちのサラダには、ヒマワリの種を散らしている。
我が家では、魚をよく食べる。
タコスには、ブラックビーンズとピントビーンズを入れている。
我が家では、豆のスープやレンズ豆のスープをよく食べる。
子どもたちは、グアカモーレ(ワカモレ:メキシコ料理のサルサの一種)が好きである。
子どもたちは、バナナとベリー類をたくさん食べる。
子どもたちは、全乳ヨーグルトを食べている。
子どもたちは、ピーナツバターが好きである。
子どもたちは、オートミール、玄米、ジャガイモを食べる。

多くの食品におけるマグネシウム含有量は、下記サイトで見ることができる:?http://www.whfoods.com/genpage.php?tname=nutrient&dbid=75

我が子たちはADHDではない。しかし、栄養上の問題が現れるのをのんびり待っていたくはない。我が家では、子どもたちが成長途中の体に必要な栄養素を摂ることができるよう気をつけている。「運まかせにせず、ビタミンとミネラルを摂ろう」が我が家のモットーである。これからもそうである。

(OMNSの副編集長であるHelen Saul Caseは、「The Vitamin Cure for Women’s Health Problems(女性の健康問題に対するビタミン治療)」、「Vitamins & Pregnancy: The Real Story(ビタミン剤と妊娠:本当の話)」の著者であり、「Vegetable Juicing for Everyone(誰でもできる野菜ジュース)」の共著者でもある。最新の著書「Orthomolecular Nutrition for Everyone(誰でも実践できるオーソモレキュラー栄養学)」は、2017年3月に刊行予定である。)

もっと詳しく知りたい場合は:

Campbell, R., and Saul, AW. The Vitamin Cure for Infant and Toddler’s Health Problems.(乳幼児の健康問題に対するビタミン治療) Basic Health Publications (2013).

Campbell, R., and Saul, AW. The Vitamin Cure for Children’s Health Problems.(子どもの健康問題に対するビタミン治療) Basic Health Publications (2011).

Dean, C. The Magnesium Miracle.(マグネシウムの奇跡) Ballantine Books (2007).

Mercola, J. Raising a Generation of Pill-Poppers; How Abuse of “Uppers,” “Downers,” and Stimulants Threatens an Entire Generation (いかに「興奮剤」・「鎮静剤」・刺激剤の乱用が全世代を脅かすか)?http://articles.mercola.com/sites/articles/archive/2014/05/01/antidepressants-adhd-drugs.aspx

Rimland, B. An Orthomolecular Study of Psychotic Children.(精神障害児に関するオーソモレキュラー研究)?http://orthomolecular.org/library/jom/1974/pdf/1974-v03n04-p371.pdf

Vitamin Supplements Help Protect Children from Heavy Metals, Reduce Behavioral Disorders.(ビタミンサプリメントは重金属から子どもを守り行動障害を減らすのに役立つ)?http://orthomolecular.org/resources/omns/v03n07.shtml

Bipolar Kids Need Nutrition, Not Junk Food and More Drugs.(双極性障害児には、ジャンクフードでも薬の追加でもなく、栄養が必要)?http://orthomolecular.org/resources/omns/v04n15.shtml

Case, HS. Tips from a Megavitamin Mom: Getting Kids to Take Vitamins and Lots of Them.(ビタミンを大量に与えている母からの助言:子どもにビタミンをたくさん摂らせること)?http://orthomolecular.org/resources/omns/v12n09.shtml

参考文献:

1. Kozielec, T., B. Starobrat-Hermelin. “Assessment of magnesium levels in children with attention deficit hyperactivity disorder (ADHD).” (注意欠陥・多動性障害(ADHD)児におけるマグネシウム量の評価) Magnes Res 10(2) (June 1997):143-148.

2. Starobrat-Hermelin B. “[The effect of deficiency of selected bioelements on hyperactivity in children with certain specified mental disorders].” (選ばれた生元素が特定の精神障害がある子どもの多動性にもたらす効果) Ann Acad Med Stetin 44 (1998):297-314.

3. Starobrat-Hermelin, B., T. Kozielec. “The effects of magnesium physiological supplementation on hyperactivity in children with attention deficit hyperactivity disorder (ADHD). Positive response to magnesium oral loading test.” (マグネシウムの生理的補給が注意欠陥・多動性障害(ADHD)児の多動性にもたらす効果:マグネシウム経口負荷試験への好反応) Magnes Res 10(2) (June 1997):149-156.

4. Ghanizadeh, A. “A systematic review of magnesium therapy for treating attention deficit hyperactivity disorder.” (注意欠陥・多動性障害の治療を目的としたマグネシウム療法の系統的レビュー) Arch Iran Med 16(7) (July 2013:412-417. doi: 013167/AIM.0010.

5. Saul, AW. No Deaths from Supplements. No Deaths from Minerals. No Deaths from Amino Acids. No Deaths from Herbs.(サプリメントによる死者はいない。ミネラル剤でも、アミノ酸製品でも、ハーブ製品でも、死んだ人はいない。)?http://orthomolecular.org/resources/omns/v12n02.shtml

6. Childs, D., and T. Neale. “ADHD Drugs Linked to Sudden Death.” (ADHD治療薬と突然死との関連) ABC News Medical Unit. June 15, 2009.?http://abcnews.go.com/Health/MindMoodNews/story?id=7829005&page=1(2016月7月閲覧)

7. Spiller, HA., H. L. Hays, A. Aleguas Jr. “Overdose of drugs for attention-deficit hyperactivity disorder: clinical presentation, mechanisms of toxicity, and management.” (注意欠陥・多動性障害治療薬の過量摂取:臨床症状、毒性機構および対処法) CNS Drug 27(7) (July 2013):531-543. doi: 10.1007/s40263-013-0084-8.

8. Subcommittee on Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder; Steering Committee on Quality Improvement and Management (注意欠陥・多動性障害調査会:品質の向上と管理に関する運営委員会), M. Wolraich, L. Brown, R.T. Brown, et al. “ADHD: clinical practice guideline for the diagnosis, evaluation, and treatment of attention-deficit/hyperactivity disorder in children and adolescents.” (ADHD:子どもおよび青少年における注意欠陥・多動性障害の診断・評価・治療に関する臨床実践ガイドライン) Pediatrics 128(5) (Nov 2011):1007-1022. doi: 10.1542/peds.2011-2654. Epub 2011 Oct 16.

9. “FDA Drug Safety Communication: Safety Review Update of Medications used to treat Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD) in children and young adults.” (FDA医薬品安全通信:子どもおよび若年成人における注意欠陥・多動性障害の治療に使用される薬剤の安全性審査最新情報)?http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm277770.htm

10. Dean, C. The Magnesium Miracle.(マグネシウムの奇跡) Ballantine Books (2007).

11. Kamal, M., A. Bener, M.S. Ehlayel. “Is high prevalence of vitamin D deficiency a correlate for attention deficit hyperactivity disorder?” (ビタミンD欠乏の有病率の高さは、注意欠陥・多動性障害の関連要因の一つであるか?) Atten Defic Hyperact Disord 6(2): (June 2014)73-78. doi: 10.1007/s12402-014-0130-5. Epub 2014 Mar 9. Bener A., M. Kamal. “Predict attention deficit hyperactivity disorder? Evidence -based medicine.” (注意欠陥・多動性障害を予測? 科学的根拠に基づいた医療) Glob J Health Sci 6(2) (Nov 2013):47-57. doi: 10.5539/gjhs.v6n2p47.

12. Bener, A., M. Kamal, H. Bener, et al. “Higher prevalence of iron deficiency as strong predictor of attention deficit hyperactivity disorder in children.” (子どもにおける注意欠陥・多動性障害の強力な予測因子としての鉄欠乏の有病率の高さ) Ann Med Health Sci Res 4(Suppl 3) (Sept 2014):S291-7. doi: 10.4103/2141-9248.141974.

13. Campbell, R, AW Saul. The Vitamin Cure for Children’s Health Problems.(子どもの健康問題に対するビタミン治療) Laguna beach, CA: Basic Health Publications, 2011.

14.?https://ods.od.nih.gov/FactSheets/magnesium/