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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

ビタミンDが糖尿病の予防と治療に役立つ可能性

目次

2型糖尿病

最近のエビデンスによると、十分なビタミンD補給によって、2型糖尿病、1型糖尿病、妊娠糖尿病といった一般的なほとんどの種類の糖尿病を防ぐことができる可能性があります。観察研究のメタ分析で、ビタミンD値が低い状態が2型糖尿病発症の独立したリスク因子となることがわかっています[7]。ビタミンD値が25 ng/mlを超えていたグループは、ビタミンD値が14 ng/ml未満であった重度欠乏グループと比べて、2型糖尿病の発症リスクが43%低くなっていました[8]

また、正常な血糖値もしくは糖尿病前症があった人を調べた別の研究では、ビタミンD値が18 ng/ml未満であったグループと比べ、ビタミンD値が28 ng/mlを超えていたグループは、2型糖尿病を発症もしくは2型糖尿病に進行する確率が42%低くなっていました[9]

しかし、ビタミンD値の最適範囲は30 ng/mlを優に上回ります。インスリン抵抗性(2型糖尿病の前段階)とビタミンD欠乏があった女性を対象とした試験において、1日4,000 IUのビタミンD補給を数カ月間続けたグループは、プラセボ群より、インスリン抵抗性とインスリン感受性に改善が見られました。重要な結果として、インスリン抵抗性の改善効果が最も強く見られたのはビタミンD値が32 ng/ml以上の場合でした。

この研究では、インスリン抵抗性を下げて2型糖尿病を予防するために最適なビタミンD値が32~48 ng/mlであることがわかりました[10]。また、保健研究組織Grassrootshealthが行った研究でも、ビタミンD値が41 ng/mlに達していると、22 ng/mlの場合と比べて、2型糖尿病の発症リスクが60%低くなるという関連が見られています[11]

ビタミンD値が高いほど2型糖尿病のリスクが低くなるという関連には因果関係と用量依存性があることが、無作為化比較試験(RCT)を調べた最近の複数のメタ分析でわかっています。糖尿病予備軍患者の場合、2型糖尿病に進むリスクはビタミンD補給によって大幅に低下しています[12,13]。ビタミンD補給によって達したビタミンD値が高いほうが(50 ng/ml以上と30 ng/ml以下での比較)、糖尿病のリスク低下率が大きくなっていました(76%)[14]。高い値に達するほど効果が大きくなるのは60 ng/mlまででした。このリスク低下効果は、肥満ではない患者のほうが強く見られました。

体重や体脂肪が多い人ほどビタミンDを多く摂らないと健康的なビタミンD値に達することができないので、肥満の人は、必要な量のビタミンDが得られず、結果として、肥満ではない人と同じ強いリスク低下が見られなかったとも考えられます。また、糖尿病予備軍患者の中でも、ビタミンDの投与を受けたグループのほうが、糖尿病前の正常な状態に戻る可能性が約50%高くなっていました。

ビタミンDの最適用量は、体重やマグネシウム値など、多くの要因によって左右されます。ビタミンD値が150 ng/mlを超えると中毒の一因となるおそれがありますが、それを超えることは滅多にありません。

皮膚が十分露出した状態で夏の真昼の日光を直射皮膚に浴びれば、ビタミンDが十分に生成されます。一方、ビタミンD値が高くなると体はビタミンD生成をやめるので、日光でビタミンD中毒が生じることはありません。なお、日光に当たっても、太陽が地平線から45度より低い位置にある場合や、ガラス窓を通して浴びた場合、日焼けをすることはありますが、ビタミンDは生成されません(UVB(紫外線B波)が必要なため)。

ほとんどの人は日光を浴びる機会が少ないので十分なビタミンDを得ておらず、冬場は特にそうです。皮膚科医は、日光曝露が皮膚ガンの原因となり得ると警告していますが、(ビタミンDを生成する)適度な日光曝露は、ガンを防ぐ可能性があることが最近のエビデンスで示唆されています。

世界の成人人口の75%はビタミンD値が不十分(30 ng/ml未満)であるため[15]、ほとんどの人は糖尿病の発症リスクが高いと言えます。よって、糖尿病の世界的増加は驚くにあたりません。ビタミンDが足りない状態は、深刻な疾患促進要因となります。

一方、すべての人が非常に好ましいビタミンD値(40~60 ng/ml)に達していれば、ほとんどのケースの2型糖尿病を防ぐことができる可能性が高く、また、糖尿病による年間100万件もの死亡の多くを防ぐ効果もあるでしょう。また、前述のとおり、Covid-19による死亡のうち100万件以上は糖尿病に起因しています。世界中のビタミンD欠乏症を正す措置を広く講じていたら、Covid-19のような感染症による死者をもっと減らすことができたでしょう。

数年前、多数の医師や研究者がこの「ビタミンD欠乏症の世界的蔓延」について一般の人や政府に知らせようとしました[16-18]。しかしこの憂うべき事態の解決策に、残念ながらほとんど何の関心も持たれなかったのです。その理由はWilliam Grantによる記事に明記されています[19]。もし、ビタミンD値が20~30 ng/mlの間にあれば足りているとかかりつけ医が言ったら、William Grantの記事を引き合いに出し、そのレベルは重度の欠乏症であり感染症や糖尿病というような疾患の発症リスクを大いに高めるという説明をしましょう。

ビタミンDは、2型糖尿病の発症リスクを下げるだけでなく、2型糖尿病の好転にも役立ちます。ビタミンD値が低かった2型糖尿病患者にビタミンD補給を行った結果、血糖値(空腹時血糖値と長期血糖値、HbA1c)の有意な低下とインスリン抵抗性の改善が見られています[20]

2型糖尿病は、抗糖尿病薬と併せて、軽い時間的カロリー制限、植物中心の健康食への切替え、運動、減量から成るプロトコルを用いれば好転可能です。こうしたプロトコルを2型糖尿病患者に実践させた試験では、12カ月後の時点で約50%が寛解に達して非糖尿病状態となり抗糖尿病薬が不要になりました[21]。この試験で理想的な量のビタミンD補給を併用していたら、おそらく1年後の糖尿病患者の寛解率はそれよりずっと高くなっていたでしょう。

また、ビタミンDは、糖尿病から生じる可能性があるいくつかの合併症の予防と治癒にも役立ちます。例えば、糖尿病患者は非糖尿病患者と比べてうつ病の発症リスクが倍になりますが[22]、最近の無作為化比較試験の結果から、ビタミンDは抑うつ症状を効果的に軽減すること、ならびに2型糖尿病患者における大うつ病性障害の発症予防に役立つ可能性があることがわかっています[23,24]。糖尿病患者はガンの発症リスクも高くなりますが[25]、ビタミンDには抗ガン作用があり、無作為化比較試験のメタ分析で、ビタミンD補給によってガン死亡率が有意に低下することがわかっています[26]

糖尿病患者の約半数が発症する末梢神経障害は、(高血糖と血流低下による)神経損傷の一形態であり、下腿、足部、腕など四肢の障害と、痛みを伴う非常に不快な症状が生じます[27]。ビタミンD欠乏は末梢神経障害のリスクを高めるようです。糖尿病性末梢神経障害の患者にビタミンDを補給した結果、疼痛スコアに有意な低下(数カ月連続摂取した後に最大50%の低下)が見られました[28]

糖尿病性足潰瘍(神経障害と虚血が重なったもの)は、糖尿病の最悪な結果の一つです。毎年、何百万もの糖尿病患者が足潰瘍を発症しており、世界中の全糖尿病患者の最大33%が足潰瘍に一生苦しむことになります。足潰瘍になると下肢の切断が必要となることも少なくありません。また、足潰瘍を発症した糖尿病患者のグループは、足潰瘍を発症しなかったグループより5年死亡率が2.5倍高くなっています[29]

ビタミンD値が低いと、糖尿病性足潰瘍の発症リスクが大幅に高くなるという関連が見られており、これは、十分なビタミンD値に達すればこの合併症の発症率が下がることを示唆しています[30]。ビタミンD補給によって糖尿病性足潰瘍の治癒が有意に早まることもわかっています[31]。足潰瘍の治癒には、ビタミンDと併せて、マグネシウムと亜鉛の両方を十分補給することが同じく重要であることが最近の研究で確認されています[32,33]

2型糖尿病の予防において、ビタミンDの補助因子も重要な役割を果たします。マグネシウムおよびビタミンK2の欠乏も国民の間で非常に多く見られ、米国の人口のほぼ半数はマグネシウムの摂取量が不十分であり[34]、ビタミンK2の欠乏は高齢者の最大97%に見られます[35]。2型糖尿病には低マグネシウム値との関連が見られており[36]、食事でのマグネシウム摂取量が多いと2型糖尿病の発症リスクが低くなっていました[37]

マグネシウム補給は、糖尿病予備軍と2型糖尿病の治療にも役立ち、患者のグルコース値の有意な低下とインスリン感受性の改善をもたらします[37]。2型糖尿病患者は、健常対照群と比べてビタミンK2値が有意に低く[38]、糖尿病患者へのビタミンK2補給は、血糖値(空腹時血糖およびHbA1c)の有意な低下をもたらすことがわかっています[39]

すべての人が、ビタミンDならびに重要度の高いその補助因子(マグネシウム、ビタミンK2など)を十分に摂ることができれば、2型糖尿病の発症率はおそらく劇的に下がると思われます。

1型糖尿病

1型糖尿病は自己免疫疾患です。自己免疫疾患の発症リスクはビタミンDの長期補給によって有意に下がることがVITAL(ビタミンD・オメガ3)研究によるエビデンスに示されています[40,41]。1型糖尿病と明確に診断される場合に関して言えば、ビタミンD値が十分なレベルにあったグループは、それが最低レベルにあったグループより、1型糖尿病のリスクが約60%低くなっていました。

ビタミンD値が45 ng/mlのあたりで、1型糖尿病のリスク低下率が最大(72%)になっていました[42]。ビタミンD値が40 ng/mlを超えていると、自己免疫疾患に対する最適な予防効果が得られるようです。先にも述べましたが、世界中の成人の大半はビタミンD 値が30 ng/ml未満で不足しており、この重要な情報に気付いていない人がほとんどと思われます。

別のメタ分析によると、乳幼児期にビタミンD補給を受けると、一生のうちに1型糖尿病を発症するリスクが約30%低くなります[43,44]。これは、ビタミンDが良好な免疫系の発達に役立つことを示唆しています。

十分なビタミンD値を保つことにより、1型糖尿病の発症リスクを下げられる可能性があります。すでに1型糖尿病が確認されている場合でも、ビタミンDを治療剤の一つとみなすべきです。無作為化比較試験により、ビタミンD補給は、空腹時ならびに刺激時のC-ペプチド値を改善することによって「その疾病の自然史」に減衰をもたらし、必要なインスリン用量を下げられる可能性があることがわかっています。これは、ビタミンDによって膵臓の機能が向上したことを意味します[45]

1型糖尿病は自己免疫疾患なので、Coimbraプロトコル(Coimbra博士が開発した高用量ビタミンD投与プロトコル)によって大幅に改善できる可能性があり、(段階によっては)寛解に至る可能性さえあるのです。Coimbraプロトコルは多くの形態の自己免疫疾患にきわめて有効な治療法であることがわかっています。このプロトコルは、非常に高用量のビタミンD投与を中心とします。

Coimbraプロトコルに興味がある人は、そのトレーニングを受けた療法士または医師と一緒に取り組む必要があるので、Coimbraプロトコルを実践している医師をまず探してください。その1日用量は、ビタミンD研究者が通常推奨している量よりはるかに多いため、いくつかの検査値に基づいて絶えず用量を調整しないと弊害をもたらすおそれがあります。

この療法で効果を得るため、また高ビタミンD値による害を防ぐためには、各個人の必要量と検査結果に基づいて用量を調節すること、食事をこの療法に適応させること(低カルシウム食など)、血液検査を頻繁に行って安全上の問題が生じていないことを確かめることが必要です。

ビタミンD反対派による否定的な記事が主流メディアでいくつか取り上げられていますが、何千もの患者における大幅な改善、ならびに多くの人の公表データを伴う、世界中の多数のCoimbra療法士の経験から、トレーニングを受けたCoimbra療法士/医師が患者を十分監視していればCoimbraプロトコルは確実に安全であることがわかります[46]。自己免疫疾患の治療にCoimbraプロトコルを採用する人は、強力な臨床的改善、さらには寛解までも経験する可能性が高いと思われます。

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病(GDM)の発生率も、他の種類の糖尿病と同じように増えており、世界中で数百万もの妊婦がGDMを患っています。米国では妊婦の最大10%がGDMを発症します[47]。GDMは妊娠時の合併症の中でも頻度が高く、早産や帝王切開、新生児の呼吸窮迫症候群やICUへの入院を要する状況など、妊娠と新生児における有害転帰のリスクを高めます[48]。また、GDMの罹患者は、後に2型糖尿病を発症するリスクが高くなります。

ビタミンDの欠乏は重要な原因の一つと思われます。25(OH)D値が低かったグループでは、25(OH)D値が十分なレベルに達していたグループと比べてGDMのリスクが有意に高くなっていました[49]。妊娠中のビタミンD補給は血糖値を改善し、妊娠糖尿病の発症リスクを58%下げることが無作為化比較試験のメタ分析でわかっています[50]。妊娠中の糖尿病予防のためには2,000 IUを上回る1日用量が必要です[51]。GDMは多くの場合、十分なビタミンD補給によって予防可能と思われます。

GDMを発症した場合でも、ビタミンDを補給すれば新生児の有害転帰のリスクが大幅に下がる可能性があります。実際、GDMになった妊婦において、ビタミンD補給により早産のリスクに63%の低下が見られました。また、出生後に新生児の入院が必要となるリスクも、妊娠中のビタミンD補給によって62%低下していました[52]。つまり、ビタミンDはGDMの発症を防ぐだけでなく、GDMを発症した患者においても胎児をGDMによる害から守って胎児や新生児の不良転帰が生じるリスクを下げる可能性があります。

また、重要なこととして、妊娠中に十分なビタミンD補給を行うことで、妊娠糖尿病を別にしても、多くの命を救える可能性があります。妊娠中に十分な用量のビタミンD補給を受けると、胎児の子宮内死亡や新生児死亡が生じるリスクが30%以上低くなることが無作為化比較試験の新しいメタ分析でわかっています[53]。すべての妊婦が組織内ビタミンD値を十分なレベルまで上げて維持していれば、数千もの胎児や新生児が命を落とさなくても済むかもしれません。

結論

ビタミンDおよびその補因子であるマグネシウムとビタミンK2の欠乏は世界中の人々に広く見られています。こうした欠乏は、体の免疫系の機能低下をもたらし、広範な疾患ならびに死亡の一因となりますが、十分に補給すればそれを予防できると思われます。

多くの場合、2型糖尿病は、ビタミンD、マグネシウム、ビタミンK2などの必須栄養素を摂り、色とりどりの生野菜と調理野菜を含む低糖質食を実践して軽い食事制限を行うプロトコルによって予防や好転が可能です。医療専門家を含め、多くの人は、この問題とその解決法に気付いていません。ぜひこれを広めてください。