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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

有害な砂糖

オーソモレキュラーメディシン・ニュースサービス(OMNS) 2012年4月24日号

論説: Robert G. Smith, PhD

(OMNS、2012年4月24日) 有名科学誌Natureに最近掲載された記事によると、砂糖、とくに果糖は、心疾患、ガン、糖尿病、肥満、肝不全など、多くの非伝染性の重篤疾患に関与している[1,2]。果糖は、清涼飲料などの加工食品に広く含まれているものである。その一因として、果糖および他の高カロリー物質(アルコールなど)は、体内組織が直接利用することができないため、肝臓で代謝されなければならないことが挙げられる。こうした物質は肝臓で毒性を生じ、体を糖尿病に向かわせる[3]。また、果糖は満腹感を感じにくくするため、カロリーが過剰摂取される傾向がある。すると肝臓に負担がかかり、過剰摂取された糖を肝臓で脂肪に変換しなければならなくなるので、肝臓が害され、場合によっては糖尿病に至る。加工食品に添加された形で果糖などの糖を摂った場合の中毒作用は、アルコールにたとえらえている。肥満でない人でも「メタボリックシンドローム」になりやすく、メタボリックシンドロームになると、果糖によって、高血圧、循環器疾患、インスリン抵抗性、生体分子(タンパク質、脂質など)の損傷が誘発される[1-3]。

炭酸飲料や、ろ過した果汁飲料など、砂糖を主成分とする清涼飲料には、体を健康で病気のない状態に保つ栄養素が十分には含まれていない。こうした飲料は、カロリーはあるが、果物を丸ごと食べれば摂取できる必須栄養素は得られない。こうした「エンプティー」カロリーを摂ると、必須栄養素の主要摂取源である他の食品(全粒穀物、果物、野菜など)を摂らなくなってしまう。しかし、砂糖の添加は、清涼飲料だけに限らない。高果糖コーンシロップや普通の砂糖(ブドウ糖50%+果糖50%から成る蔗糖)といった形態での果糖の添加は、多種多様な加工食品に見られ、朝食用シリアル、ジュース、ゼリー、ジャム、キャンディー、焼き菓子、ソース、デザートをはじめ、調理済みのおかずや加工肉にまで及んでいる。果糖は、甘い味はするが、それより栄養価の高い食品と同じくらい空腹感を満たすわけではない。

添加果糖を多く含む加工食品には、アルコールとよく似た常習性があり、とくに幼児は常習癖がつきやすい。その結果、子どもでも大人でも、肥満がまん延している。また、肝臓での果糖の代謝は、ブドウ糖代謝を混乱させ、脂肪を生成し、インスリン抵抗性を引き起こす傾向があり、肝臓の炎症や変性など、多くの問題につながることから、アルコールと類似している[4]。果糖による過重負担を体にかけたことによって生じたこのような食習慣は、概して、悪循環をもたらし、全身の損傷や炎症のほか、栄養素(ビタミンや必須ミネラルなど)の欠乏症のまん延にもつながる。こうした砂糖依存症の悪循環は、「メタボリックシンドローム」と一致し、現代の食事による高死亡率に大いに関与している。

カロリーを過剰摂取することなく空腹が満たされるように、また、必須栄養素の含有比率が高くなるように、現代の食事を調整することができれば、添加砂糖による疾病のまん延を防ぐことができるかもしれない。果糖は、果物の形で摂れば、腸でゆっくり吸収されるため、また、重要なこととして、必須栄養素も一緒に摂取されるため、有害性は低い。必須栄養素のサプリメントが役立つ場合もあるが、これは、適切な用量およびその効果に関する情報が広く入手可能となっている場合に限られる。たとえば、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、マグネシウム、オメガ3系脂肪酸およびオメガ6系脂肪酸のサプリメントは、適切な形態のものを適量用いれば、心疾患・ガン・糖尿病を引き起こす食事性欠乏症の予防に役立つ可能性がある[5]。総カロリー数を減らす、食物繊維の摂取量を増やす、運動量を増やすなど、他の生活習慣の選択が役立つ場合もある[3]。しかし、こうした健康に良い選択肢に効果があっても、現代の消費者は納得していない。こうした問題の一因は、随所で耳にする清涼飲料の高圧的な売込みにある。

砂糖の過剰摂取の問題を正すため、アルコールやタバコのように、砂糖を規制することも提案されている[1]。こうした規制では、食習慣を改善して摂取量を減らすことが目的となる。すでに多くの学校で炭酸飲料の販売が禁止されているが、替わりに、添加砂糖を含むジュースや人工飲料が売られている。この提案によると、学校の自動販売機や、授業時間中の他の販売場所にて、加糖飲料、および添加砂糖を含む加工食品の販売を制限する方法も考えられる。糖分が多い食品の販売に対し、店で年齢制限を課すという方法が役立つ可能性もある。また、添加砂糖を含む製品を宣伝するテレビコマーシャルを制限または禁止する方法も効果的かもしれない。砂糖、とくに高果糖コーンシロップに課税し、その税収を、必須栄養素の研究資金として、また必須栄養素による効果の宣伝に用いるという方法も考えられる。こうした規制を実施する場合、その背後の意図は、砂糖の摂取量を減らして栄養価の高い食品をもっと摂るよう、一般人、とくに子どもに促すことである[1, 2]。そうすれば、国民の健康に大いに役立つ可能性がある。

アルコールに対する同様の規制については、実際それによって絶えずアルコール摂取が抑制されているため広く受け入れられている、と論じられている[1]。たとえば、食事以外の生活部分では、公共の場を禁煙にする、アルコールを飲まない人を指定ドライバーにする、車にエアバッグを装備するなど、容認可能な行為として受け取られる事柄の変更は、問題なく行われている。砂糖に対する同じ類の政府規制を考えた場合、多少の個人的自由を犠牲にしても、健康状態が改善され、非感染性疾患のまん延が食い止められる可能性があるため、一部の人には理に適っているように見えるだろう。

一方、添加砂糖を含む食品に課税することによって砂糖を規制する方法を、忌まわしい厳罰とみなす人は多い。砂糖には常習性がある[4]といっても、結局のところ、酔っぱらい運転の危険が生じることも、喫煙に匹敵するような差し迫った健康危害をもたらすこともない。しかし、砂糖は、喫煙より油断がならないし、また、多くの文化において、食習慣の一部となって久しい。食品に対する政府規制はいかなるものであれ、多くの批判を受ける。規制しても効果はなく、また、どんな食品も自分の好みに従って購入・飲食できるべきである、と批判家は説明する。

この議論の基本的な争点は、栄養に関する情報を一般人が入手する方法である。添加果糖が健康にもたらす危害について、また、安価ですぐに利用できる健康的な代替策について、情報を広く知らしめることができれば、何百万という人の健康が改善される可能性がある。こうした情報を知っていれば、買い物客は、野菜ジュースを選んだり、コップ1杯の水を飲んだり、それと併せて栄養価の高い未加工食品や適量のビタミンサプリメントを摂るというような別の選択肢を考えるようになる。食事に関する実用的な情報、つまり、我々にはどんな栄養素が必要か、どのように適正量を決めるのか、加工食品を摂る食事にはどんな危険があるかという情報を提供する運動が必要なのである。方法としては、テレビを使った宣伝や健康プログラムの策定のほか、小学校レベルから医大レベルまでの教育カリキュラムなども考えられる。また、食品の栄養分に関するもっと詳しい情報をラベルに表示したり、レストランや食堂にて、より健康的でおいしい食品を出すという方法も考えられる。こうした状況になれば、食品会社は、市場圧力を受け、添加砂糖が最小限に抑えられていて十分な量の必須栄養素が含まれている健康的な食品をもっと売る気になるかもしれない。オーソモレキュラー医学は、十分な用量の必須栄養素を与えて欠乏症を防ぐことにより疾患を実際に治療するもので、こうした情報の提供に役立つ可能性がある[5-8]。砂糖が添加されている食品や、必須栄養素が入っていない加工食品を摂らないようにすれば、誰もがもっと健康になることができる。こうした食品を避けることができない場合は、肥満・循環器疾患・糖尿病・ガンのまん延を防ぐため、必須栄養素のサプリメントで補うことも可能である。

(Robert G. Smith医師は、ペンシルバニア大学医学部神経科学科の准教授である。多くの学術論文ならびに近刊書「The Vitamin Cure for Eye Diseases(眼疾患のビタミン療法)」を執筆している。)

 

参考文献

1. Lustig RH, Schmidt LA, Brindis CD (2012) The toxic truth about sugar.(砂糖に関する毒性の真実) Nature 482:27-29.

2. Jacobson MF (2005) Liquid candy: how soft drinks are harming Americans’ health.(リキッドキャンディー:清涼飲料がいかにアメリカ人の健康を蝕んでいるか) Center for Science in the Public Interest.
http://www.cspinet.org/new/pdf/liquid_candy_final_w_new_supplement.pdf.

3. Bremer AA, Mietus-Snyder M, Lustig RH. (2012) Toward a Unifying Hypothesis of Metabolic Syndrome.(メタボリックシンドロームの仮説の統一に向けて) Pediatrics. 129:557-570
4. Lustig RH. (2010) Fructose: metabolic, hedonic, and societal parallels with ethanol.(果糖:エタノールとの代謝的・快楽的・社会的な類似点) J Am Diet Assoc. 110:1307-1321.
5. Brighthope IE (2012) The Vitamin Cure for Diabetes: Prevent and Treat Diabetes Using Nutrition and Vitamin Supplementation.(糖尿病のビタミン療法:栄養素とビタミンの補給を用いた糖尿病の予防と治療) Basic Health Publications. ISBN-13: 978-1591202905.
6. Roberts H, Hickey S (2011) The Vitamin Cure for Heart Disease: How to Prevent and Treat Heart Disease Using Nutrition and Vitamin Supplementation.(心疾患のビタミン療法:栄養素とビタミンの補給を用いた心疾患の予防と治療の方法) Basic Health Publications. ISBN-13: 978-1591202646.
7. Hoffer A, Saul AW (2008) Orthomolecular Medicine For Everyone: Megavitamin Therapeutics for Families and Physicians.(万人のためのオーソモレキュラー医学:家族と医師のためのメガビタミン療法) Basic Health Publications. ISBN13: 9781591202264.
8. Hoffer A, Saul AW, Foster HD (2012) Niacin: The Real Story: Learn about the Wonderful Healing Properties of Niacin.(ナイアシン:本当の話:ナイアシンのすばらしい治癒力について学ぶ) Basic Health Publications ISBN-13: 978-1591202752

日本語訳監修:姫野 友美(ひめのともみクリニック)