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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

ナイアシンの副作用について理解する

執筆者:Robert G. SmithAndrew W. Saul

(OMNS、2019年12月10日)ナイアシン(ビタミンB3)は、かなりの量を初めて摂ると、ほとんどの人に体のほてりが生じることはよく知られています。ナイアシン療法における世界一のエキスパートAbram Hoffer, MD, PhDは自分の患者に、最初の2週間はそれが起こるものと思って我慢するよう指導したものでした。そうして摂取を続ければ、ほてりは徐々になくなっていきます。そうしたほてりを完全に避けたい人は、徐放性のナイアシン、ナイアシンアミドまたはイノシトールヘキサニコチネートを選ぶこともできます。徐放性のナイアシンは、副作用が最も大きいことがわかっています。ナイアシンアミドは、血中脂質に影響を及ぼしません。イノシトールヘキサニコチネートは、ミリグラム単位で比較すると、有効性がナイアシンより若干低いようです。

肝酵素値の上昇

高用量ナイアシン療法による副作用の一つとして、肝酵素値が上昇する可能性があることが挙げられます。これは、医師が喚起するナイアシンへの最大の警告の一つですが、その懸念具合は若干大げさです。Mayo ClinicのWilliam B. Parsons, Jrは、肝酵素値の軽度~中程度の上昇は肝臓の異常ではなく肝臓の活性の現れであると明示しています。ナイアシンはNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)の前駆体であり、NADは何百もある必須生化学反応における補因子として体中の多数の臓器、とくに肝臓で利用されるため、ナイアシン濃度が高くなると肝臓の活性が高まるのは当然のことです[1]

「医師は、ナイアシンを使うためにナイアシンについて理解しなければならない。」
                          (William Parsons, Jr., MD)

 

網膜浮腫

稀で、かつ可逆的なナイアシンの副作用として、網膜浮腫や嚢胞様黄斑浮腫が考えられます。ナイアシンが眼疾患を引き起こすというマスコミの激しい非難は、この論点を中心に展開されています。この副作用は数十年前から知られていましたが[2,3]、メガビタミン療法が招いた新たな恐ろしい結果として報道されてきました。これは誤解に過ぎません。なぜなら、数グラム単位の量を使うナイアシン療法は数十年前から行われていてコレステロールの低下に成功しており、前述のほてりや肝酵素値上昇のほかには、ほとんど問題の報告がないからです。

ナイアシンが嚢胞様黄斑浮腫の原因となり得るメカニズムは、まだわかっていません。この疾患では、網膜層が肥厚し、体液の蓄積によって網膜層に歪みが生じます。網膜の光走査を行って網膜層の断面図を作る光干渉断層撮影(OCT)という現代の可視化手法を使えば、これを見ることができます。網膜の嚢胞様黄斑浮腫をOCT画像で見ると、病変部位(黄斑- 視覚の中心近くにあるもの)では網膜が光受容体(視細胞)の層から分離し、「嚢胞状の空間」ができていることがわかります。この疾患は可逆性があるので、糖尿病性網膜症における血管からの漏出とは無関係です。こうしたナイアシンの稀な影響について、ある仮説では、ナイアシンが一種の炎症メカニズムを引き起こし、それによって、毛細血管壁に浸透している血液からの体液漏出が誘発され、たまった細胞外体液が網膜内の嚢胞状の空間に入り込むのではないか、と推測しています。この疾患で、標準的な蛍光眼底血管撮影法を用いた場合、血液漏出は見られませんが、毛細血管からの選択的ろ過作用により、比較的大きい蛍光トレーサー分子は漏れ出ることができないのかもしれません[4]。類似した仮説を示唆している最近のレポートによると、網膜電図(ERG)を用いた検査では、ミュラー細胞の機能を反映するとされている網膜b波に有意な減衰が見られるということです[5]。しかし、このb波に反映される電流の流れは複数の経路を通っているので、たとえミュラー細胞の充溢がなくても、網膜の外側における電流の流れに歪みがあれば、これと似た結果となり得ます。また、この疾患は極めて稀であるため、罹患者は、網膜内の一部の細胞が高濃度のナイアシンに有毒反応を示すといった遺伝的素因を持っている可能性もあります。

閾値効果

正確な原因はまだわかっていないものの、網膜の嚢胞様黄斑浮腫は、永久的な損傷をもらすことなく、ナイアシンの用量を減らせばすぐに回復することがわかっていることから、一種の「閾値効果」が見られます。閾値を超えない用量(一般的には1日1,000 mgを上限として数回に分けて摂る方法)であれば、網膜の黄斑浮腫は生じません[6]。こうした稀な罹患者の場合も、ナイアシンの摂取を完全にやめる必要はありません。この閾値量が体重に関係していることはほとんど間違いありません。つまり、罹患者の中でも、体が大きい人ほど閾値量は高いのです。これは、嚢胞様黄斑浮腫になるおそれがある人でも、用量を減らせば、ナイアシンの効果を受け続けながら、網膜の正常な機能を回復できる可能性があることを意味します[7,8]

用量

高用量でのナイアシン摂取を考えている人には、「かなり低い量、たとえば1日25 mgから始める」よう助言するのが一番良いようです。この量だと最初は皮膚紅潮を生じる(30~60分間、皮膚がほてる)かもしれませんが、数日かけて、体がだんだんこの量に順応していき、皮膚紅潮が出なくなります。そうしたら、かかりつけの医師と相談の上、ナイアシンの用量をゆっくり増やし、1日を通し、数回に分けて摂るようにして、数週間後には500 mg/日、数カ月後には1,000 mg/日以上といった量に達するようにします。最初は、100 mg錠を4つに割った25 mg分を1日1個摂ることから始め、数日後にはそれを1日2個、後に1日4個まで増やし、間食や食事の前に1個ずつ摂るという方法もあるでしょう。体がこの量に順応したら、100 mg錠を1日1錠以上に増やしていっても良いでしょう[7]。極めて高い用量(1日1,000 mg以上)としたときに、視覚の変化、とくに、細かい活字を読むときに使う中央部分(中心窩および黄斑)の変化に気付いたら、ナイアシンの1日用量を50%以上減らしてでも1,000 mg以下とし、数回に分けて摂るようにしたほうが良いでしょう。そうすれば、視覚の問題が数週間で消失することもあります。こうした閾値効果は、この疾患の研究をしてきた眼科医によって報告されています[6]。もちろん、どのような計画でナイアシンの高用量摂取を行う場合であれ、かかりつけの医師に相談して一緒に取り組むべきです。

(Robert G. Smith, PhDは、ペンシルべニア大学ペレルマン医学大学院の神経科准研究教授であり、オーソモレキュラー医学ニュース配信サービス(OMNS)の共同編集者である。著書に「眼疾患のビタミンC療法」がある。OMNSの創設者で編集長であるAndrew W. Saul は、4冊の著書をAbram Hoffer, MDと共同執筆しており、テキストブック「慢性疾患のオーソモレキュラー療法」の編集者でもある。)

 

参考文献

  1. Parsons WB (2000) Cholesterol Control Without Diet! (食事療法なしでコレステロールを管理!)2nd ed, Lilac Press; ISBN-13: 978-0966256871
  2. Gass JD. (1973) Nicotinic acid maculopathy.(ニコチン酸黄斑症)Am J Ophthalmol. 76:500-510. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4743805
  3. Millay RH, Klein ML, Illingworth DR. (1988) Niacin Maculopathy.(ナイアシン黄斑症)Ophthalmology 95:930-936. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3174043
  4. Dajani HM, Lauer AK. (2006) Optical coherence tomography findings in niacin maculopathy. (ナイアシン黄斑症における光干渉断層撮影検査所見)Can J Ophthalmol. 41:197-200. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16767207
  5. Lee JG, Patel A, Bertolucci A, Rosen RB (2019) Optical Coherence Tomography, Fluorescein Angiography, and Electroretinography Features of Niacin Maculopathy: New Insight Into Pathogenesis (ナイアシン黄斑症の光干渉断層撮影、蛍光眼底血管撮影ならびに網膜電図の特徴:病因に関する新たな識見)Journal of VitreoRetinal Diseases, 3:474-479.
  6. Freisberg L, Rolle TJ, Ip MS. (2011) Diffuse macular edema in niacin-induced maculopathy may resolve with dosage decrease.(ナイアシン誘発性黄斑症におけるびまん性黄斑浮腫は用量低減により消散する可能性がある)Retin Cases Brief Rep. 5:227-228. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25390170
  7. Hoffer A, Saul AW, Foster HD (2015) Niacin: The Real Story.(ナイアシン:本当の話)Basic Health Pubs, Inc. ISBN-13: 978-1591202752
  8. Smith RG (2012) The Vitamin Cure for Eye Disease.(眼疾患のビタミンC療法)Basic Health Pubs, Inc. SBN-13: 978-1591202929