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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

ガンの発生率と生存率に対するビタミンDの効果

執筆者:William B. Grant

進行大腸ガンで化学療法を受けている患者139人に高用量もしくは低用量のビタミンD3補給を行った第II相試験である無作為化比較試験(RCT)の結果が最近JAMAにて報告されました[Ng et al., 2019]

 

高用量・低用量ビタミンD3治療

 高用量ビタミンD治療とは、最初の2週間は18,000 IU、その後は14,000 IUのビタミンD3を与えるものでした。低用量治療グループのほうは1400 IUのビタミンD3投与を受けました。この病気の増悪までの時間は、高用量治療グループで13カ月、低用量治療グループで11カ月という結果でした。また、高用量のビタミンD3補給による死亡リスクの低下率は36%P = 0.02)という有意な値でした。

二次分析では、健康的な体重を維持していた、もしくは他にも転移部があった治療グループの患者のほうが、この病気の増悪までの時間が有意に長かったことがわかりました。

低用量グループでは下痢の発症率が12%でしたが、高用量グループではわずか1%でした。ビタミンDには腸粘膜のバリア機能を完全な状態に維持する役割があり、この結果はそれと合致しています。

ビタミンD摂取量とガンリスクとの関係

このRCTによる調査結果を裏付けるような結果が、最近報告されたVITAL(ビタミンD・オメガ3試験)で得られています[Manson, 2019]。こちらのRCTでは、処置グループに12,000 IUのビタミンD3、別のグループにはプラセボが与えられました。その25,000人のグループ全体の分析では、ガンのリスクに有意な低下は見られませんでした。しかし、どうやらビタミンD値が高いほうが効果が出るまで時間がかかるようです。というのは、最初の12年に得られたデータを除外すると全ガン死亡率に25%という有意な低下が見られるからです。二次分析では、ビタミンDの摂取量が多いほうの効果として、全ガン発生率は、BMI25 kg/m2未満(つまり「正常体重」)のグループで24%、黒人グループで23%P = 0.06)低くなっていました。

ビタミンDにおけるガン研究の歴史

この2つの研究までの歴史を振り返れば、UVB(B波紫外線)とビタミンDとガンとの関連を示す仮説が最初に呈示されたのは1980年、Cedric GarlandFrank Garland兄弟の研究によるものであり、米国での結腸ガン死亡率を示す地図を見て、日照の多い南西地域で最も死亡率が低いことに彼らが気付いたことに因みます[Garland & Garland, 1980]。その後、さらに詳しいガンアトラス(地図帳)が利用できるようになると[Devessa, 1999]、多くの種類のガンについて、その発生率と、太陽光紫外線量との間に逆の相関関係があることが判明しました[Grant, 2002; Grant & Garland, 2006]。ビタミンDがガン発生とガン死亡のリスクを下げるメカニズムはよく知られており、これには、細胞、腫瘍周辺の血管形成、ならびに転移に対する効果が含まれます[Moukayed & Grant, 2013, 2017]

25-ヒドロキシビタミンD濃度

25-ヒドロキシビタミンD濃度が高いほど、乳ガンを含むあらゆる種類のガンのリスクが低くなるという強力なエビデンスもあります[Grant & Boucher, 2017; McDonnell et al., 2016, 2018]。よって、ガンのリスク低下に関心がある人なら、25-ヒドロキシビタミンD濃度が40 ng/mLを超えるよう、1日当たり数千IUのビタミンD3を摂るのが賢明でしょう。ガンと診断された人は、標準的な治療ケアの他に、高用量のビタミンD3補給を加えてもよいでしょう。

ビタミンDの補給と併せ、喫煙しない、アルコールを避ける、健康的な体重を維持する、定期的に運動をする、果物・野菜・全粒穀物を含んだ優れた食事をする[Aune et al., 2009a; Schwingshackl et al., 2017]、獣肉は少量にする[Aune et al., 2009b]ことにより、自分のガンのリスクはさらに下げることができます。食物繊維を含む生の野菜や果物を食べると共に、ビタミンとミネラルを含む十分な用量の必須栄養素(サプリメント)を摂ることも重要です。(訳註:dose(用量)という用語があるためサプリメントと解釈しました)

参考文献

Aune D, De Stefani E, Ronco A, et al. (2009a) Fruits, vegetables and the risk of cancer: a multisite case-control study in Uruguay.(果物・野菜とガンのリスク:ウルグアイでのマルチサイト症例対照研究)Asian Pac J Cancer Prev. 10(3):419-28.
http://journal.waocp.org/article_24939_7fcab7713313f3f4a332ddcec7d9dc2c.pdf

Aune D, De Stefani E, Ronco A, et al. (2009b). Meat consumption and cancer risk: a case-control study in Uruguay.(獣肉の摂取とガンのリスク:ウルグアイでのマルチサイト症例対照研究)Asian Pac J Cancer Prev. 10(3):429-36.
http://journal.waocp.org/article_24940_fdc21f9ea72e2cd3d0e1106cf564e346.pdf

Devesa SS, Grauman DJ, Blot WJ, Pennello GA, Hoover RN, Fraumeni JF Jr (1999) Atlas of Cancer Mortality in the United States, 1950-1994.(米国における19501994年のガン死亡率アトラス)NIH Publication No. 99-4564, 1999.
https://academic.oup.com/ije/article/29/3/602/771347

Garland CF, Garland FC. (1980) Do sunlight and vitamin D reduce the likelihood of colon cancer? (日光とビタミンDにより結腸ガンの尤度は下がるか?)Int J Epidemiol. ;9:227-231. 
https://academic.oup.com/ije/article/35/2/217/694653

Grant WB, Boucher BJ. (2017) Randomized controlled trials of vitamin D and cancer incidence: A modeling study.(ビタミンDとガン発生率に関する無作為化比較試験:モデリング研究)PLos One. 12(5):e0176448. 
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0176448

Grant WB, Garland CF. (2006) The association of solar ultraviolet B (UVB) with reducing risk of cancer: multifactorial ecologic analysis of geographic variation in age-adjusted cancer mortality rates.(太陽紫外線B波(UBV)とガンリスク低下との関連:年齢調整後のガン死亡率における地理的変動の生態学的多因子分析)Anticancer Res. 26:2687-2699. 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16886679

Grant WB. (2002) An estimate of premature cancer mortality in the U.S. due to inadequate doses of solar ultraviolet-B radiation.(不十分な太陽紫外線B波照射量による米国での早期ガン死亡率の推定)Cancer. 2002 Mar 15;94(6):1867-75.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11920550

Manson JE, Cook NR, Lee IM, et al. (2019); VITAL Research Group. Vitamin D Supplements and Prevention of Cancer and Cardiovascular Disease.(ビタミンDのサプリメントとガン・循環器疾患の予防)N Engl J Med.. 380:33-44.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30415629

McDonnell SL, Baggerly CA, French CB, et al. (2018) Breast cancer risk markedly lower with serum 25-hydroxyvitamin D concentrations ≥ 60 vs < 20 ng/ml (150 vs 50 nmol/L): Pooled analysis of two randomized trials and a prospective cohort.(血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が60 ng/mL150 nmol/L)以上あると20 ng/mL50 nmol/L)未満の場合に比べ乳ガンのリスクが顕著に低下)PLoS One. 13(6):e0199265.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0199265

McDonnell SL, Baggerly C, French CB, et al. (2016) Serum 25-Hydroxyvitamin D Concentrations ≥ 40 ng/ml Are Associated with > 65% Lower Cancer Risk: Pooled Analysis of Randomized Trial and Prospective Cohort Study.(血清25-ヒドロキシビタミンD濃度が40 ng/mL以上でガンのリスクが65%以上低くなるという関連:無作為化試験と前向きコホート研究の統合解析)PLoS One. 11(4):e0152441.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0152441

Moukayed M, Grant WB. (2013) Molecular link between vitamin D and cancer prevention.(ビタミンDとガン予防との分子リンク)Nutrients. 5:3993-4023. 
https://www.mdpi.com/2072-6643/5/10/3993

Moukayed M, Grant WB. (2017) The roles of UVB and vitamin D in reducing risk of cancer incidence and mortality: a review of the epidemiology, clinical trials, and mechanisms.(ガンの発生と死亡のリスク低下におけるUVBおよびビタミンDの役割:疫学・臨床試験・メカニズムのレビュー)Rev Endocr Metab Disord. 18:167-182. 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28213657

Ng K, Nimeiri HS, McCleary NJ, et al. (2019) Effect of High-Dose vs Standard-Dose Vitamin D3 Supplementation on Progression-Free Survival Among Patients With Advanced or Metastatic Colorectal Cancer: The SUNSHINE Randomized Clinical Trial.(進行性または転移性の大腸ガン患者にてビタミンD3補給が無増悪生存期間にもたらす影響―高用量投与と標準用量投与での比較:SUNSHINE無作為化臨床試験)JAMA. 321:1370-1379. doi: 10.1001/jama.2019.2402 
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2730112

Schwingshackl L, Schwedhelm C, Galbete C, Hoffmann G. (2017) Adherence to Mediterranean Diet and Risk of Cancer: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis.(地中海式食事法の実践度とガンのリスクとの関連:最新の系統的レビューとメタ分析)Nutrients. 9(10). pii: E1063. doi: 10.3390/nu9101063. 
https://www.mdpi.com/2072-6643/9/10/1063