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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(みぞぐちクリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

スタチン剤を服用する前に

目次
    W. Todd Penberthy, PhDによる論評

    (OMNS、2013年12月3日) スタチン剤を服用する、その前に自分に問いかけてみよう。環境的背景が全く同じ人が2人いるとして、平均的にそのうち1人が循環器疾患によって早死にするのはなぜだろうか。その人のほうがスタチン剤の摂取量が少なかったせいだろうか。もちろん違う。その理由は恐らく、2人の遺伝的性質がどこか異なっているためであり、それによって、酵素や、他のタンパク質値に違いが生じる。こうしたことから、必須ビタミンと必須ミネラルの所要量は人によって異なるのである。

    循環器疾患の大きな原因は、必須栄養素の欠損である。よって、食事を調整するという方法は道理にかなっている。自分の車が故障したら、その車のパーツリストにない装置を修理店で取り付けてもらうだろうか。当然そんなことはせず、洗浄したり、ボルトを締めたり、作り直したり、正しい部品交換を行ったりする。これと同じように、体にも、メンテナンスと、愛情のこもった多少のケアが必要である。スタチン剤は、自分のパーツではない。我々に必要なのは必須栄養素である。

    人が循環器疾患で死亡する理由として最初に挙げられるのは通常、炎症と進行性の石灰化であって、コレステロール値ではない。炎症および石灰化と、循環器疾患による死亡との相関関係は、コレステロール値と、循環器疾患による死亡との相関関係よりも、はるかに強い(Bolland et al, 2008)。

    米国心臓学会(AHA)のガイドラインに従うことは、義務付けや商売繁盛には役立つかもしれないが、最適な健康状態を維持するために必ずしも役立つとはかぎらない。体内で何が起こっているか把握するため、血管石灰化を示す画像を一度見てほしい。動脈内の炎症に反応して、プラークが形成される。動脈プラークの中心部には、炭酸カルシウムを含む硬い石灰化部分がある。この石灰化核部の周りに、脂肪沈着と線維性被膜とともに、プラークができる。多くの場合、プラークは優良な栄養摂取によって解消することができる。

    スタチン剤に対するマスコミの注目度を考えれば、循環器疾患による死亡リスクがスタチン剤によって1%も下がらないというのは、かなり驚くべき事実である。これに対し、8,000人以上の患者を参加させた6年に及ぶ臨床試験では、ナイアシンの高用量摂取(1日3,000 mg)により、死亡率が11%低下していた。しかも、このリスク低下は、その臨床試験が終了してから15年後に記録されたものであった。註釈)この論文のアブストラクトでは平均追跡期間が15年で、このような低下の効果が見られたのは試験終了から約9年後となっている。(Canner et al., 1986)。これは、スタチン剤による治療を上回る大幅な改善を表している。分子生物学における最近の進歩により、ナイアシンが効く仕組みが解明されている。ナイアシンの驚くべき持続効果の原因は、DNA構造に長期にわたる後成的変化をもたらすサーチュイン(という酵素である)タンパク質の調節にナイアシンが影響しているためと推定される。この種の後成的調整は、長期にわたる効果をもたらすことがわかっている。自分が幼児期に摂取した栄養素が、また、生まれる前に両親が摂取していた栄養素さえも、長期にわたり自分の遺伝子に影響を与える可能性がある。上記の研究から得られたデータを見れば、循環器疾患による死亡を防ぐ上で、1日3,000 mgのナイアシンを摂るほうが、スタチン剤よりはるかに優れていることがわかる。これなら1日わずか35セントで済む。

     

    循環器疾患による死亡のリスク因子がある人は、普通の「即放性」ナイアシンを、最大で1日3回1,000 mgずつ摂る(フラッシング(顔の紅潮)を抑えたい場合は1日12回250 mgずつ摂る)ことを検討してみると良いだろう(Hoffer et al, 2012)。また、毎回ナイアシンと一緒に、MK7という形態のビタミンK2を100 g、亜麻仁油を1,000 mg加えるのも賢明な方法である。これらの栄養素は、フラッシングを軽減し、また、抗炎症効果をもたらす。心臓の健康を保つためには、毎日、3,000~10,000 mgのビタミンC (Roberts and Hickey, 2011)、400~1,200 IUの天然ビタミンE、ならびに、ケールに色とりどりの野菜と、草で育てられた牛のバター少々を混ぜたもの5カップも摂ること。さらに、石灰化した部分をなくすためには、マグネシウム(クエン酸マグネシウム、マグネシウムキレート、リンゴ酸マグネシウムまたは塩化マグネシウム)200~400 mgを1日2回摂ると役立つと思われる。マグネシウムは、動脈内に沈着したカルシウムの溶解に役立つ可能性がある(Dean, 2007)。上記の必須栄養素はどれも、処方箋が要らないだけでなく、スタチン錠と比べれば健康に多大な効果をもたらすのである。
    (Dr. Todd Penberthyは、リサーチコンサルタント、医療ライターであり、世界的に有名なナイアシン研究者の一人である。彼の最近の論文リストは、http://www.cmescribe.com/resume/ に掲載されている。)

     

    参考文献

    Bolland, M.J., Barber, P.A., Doughty, R.N., Mason, B., Horne, A., Ames, R., Gamble, G.D., Grey, A., and Reid, I.R. Vascular events in healthy older women receiving calcium supplementation: randomised controlled trial.(カルシウムサプリメントを与えた健康な高齢女性における血管イベント:無作為化対照試験) Bmj; 2008. 336(7638): 262-266.
    Canner, P.L., Berge, K.G., Wenger, N.K., Stamler, J., Friedman, L., Prineas, R.J., and Friedewald, W. Fifteen year mortality in Coronary Drug Project patients: long-term benefit with niacin.(冠動脈薬プロジェクトの対象患者における15年後の死亡率:ナイアシンによる長期効果) J Am Coll Cardiol; 1986. 8(6): 1245-1255.
    Dean, C. The Magnesium Miracle.(マグネシウムの軌跡) New York, NY: Ballantine, 2007.
    Hoffer A, Saul AW, Foster HD. Niacin: The Real Story.(ナイアシン:本当の話) Basic Health Publications, 2012.
    Roberts H, Hickey S. The Vitamin Cure for Heart Disease: How to Prevent and Treat Heart Disease Using Nutrition and Vitamin Supplementation.(心疾患に対するビタミン治療:栄養素とビタミンの補給による心疾患の予防法と治療法) Basic Health Publications, 2011.

    日本語訳監修:北原 健 (日本オーソモレキュラー医学会)