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オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(国際オーソモレキュラー医学会会長)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)
姫野 友美(ひめのともみクリニック)
北原 健(日本オーソモレキュラー医学会理事)
翻訳協力Wismettacフーズ株式会社ナチュメディカ事業G

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

どうすれば新型コロナウイルス感染のパンデミックを1カ月で収められるか

執筆: Damien Downing, MBBS, MRSB

(OMNS、2020年10月6日)

オーソモレキュラー医学配信サービス(OMNS)では、1月に始まったこのパンデミックに対して、ビタミンDとビタミンC、ならびにミネラルである亜鉛とマグネシウムの重要性を訴えてきました[1]。私は30年以上前からビタミンDと日光との関係についてさまざまな機会で執筆してきましたが[2]、今ほどこの問題との直接的関連が見られたことはありません。

仮に、たった今、新型コロナウイルスが体内に入った場合でも、ビタミンDのサプリメントをすでに摂っていて状態が良ければ、感染症の発症、重症化や死亡のリスクは大幅に低くなります。ビタミンDは、炎症反応を軽くし、抗酸化活性をサポートしながら、自然免疫の働きを高めます[3]。ビタミンDが欠乏すると、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)および敗血症の発症リスク、それによる死亡のリスクとの相関が見られています[4]。日当たりの良い場所に住むだけでも何らかの予防効果はあります[5]。さらに良いのは、ビタミンDが充分に摂取できるような食環境の場所に住むことです。[6]

欧州諸国の場合、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の発症とそれによる死亡の確率は、血中ビタミンD濃度の母平均と負の相関関係にあり、濃度が75 nmol/Lあたりを超えるといずれの確率もゼロになることが下図からはっきりわかります[7]。このグラフはオリジナルデータから再描画されたもので、上のほうに目を向けると、スペインとイタリアの高齢者は血中ビタミンD濃度がかなり低いことがわかります。

<図>縦軸:人口100万人あたりの死者数  横軸:平均25(OH)D値(nmol/L)

ビタミンDによる介入

感染したときにウイルスに大きな打撃を与える有益な方法があります。これも今や周知の事実ですが、前から我々は、ビタミンC、亜鉛、マグネシウムが役立つことを知っていました(数多くのOMNSバックナンバーをご覧ください)。予防のために推奨されている成人用量は、ビタミンCが1日3,000 mg以上(数回に分け、腸許容量上限まで)、マグネシウム400 mg(リンゴ酸マグネシウム、クエン酸マグネシウムまたは塩化マグネシウムの形で)、亜鉛20 mgです[1]

ビタミンDは急性期でも役立ちます。特効薬が欲しいならそれこそビタミンDです。

5年前、カナダのエドモントンの開業医師が、インフルエンザへの劇的な効果を報告しています。それはビタミンD3を10,000IUを1日3回で3日間もしくは50,000 IUの1回投与によって「症状が48~72時間で完全に解消」したというものです[8]。今では新しい研究により、COVID-19に対する同様の効果が報告されています。

スペインのコルドバで行われた新しい研究[9]では、COVID-19による急性呼吸器感染症状の兆候を伴って入院した患者76人に臨床試験を行いました。26人には病院の標準的治療のみを施し、50人にはその治療に加えビタミンDを与えました。使用したのは25-ヒドロキシビタミンD3という活性の高い形態のもので、血液検査では通常これが測定されます。1日目、3日目、7日目に与えたので投与期間は実質1週間、その用量は、通常のビタミンD3を1週間で128,000 IU、つまり毎日18,000 IUといった量に相当します。用量としては多いですが、危険な量ではありません。

さてその結果は? 下のグラフをご覧ください。集中治療室(ICU)に移る必要があった患者の割合は、対照群では50%であったのに対し、25 (OH) D (25-ヒドロキシビタミンD )投与群ではわずか2%(つまり50人のうち1人だけ)でした。

 

投与量の重要性と一般的な誤解

今すぐ使えば命を救えるかもしれない強力な治療手段があるのに、我々はなぜこれを使わないのでしょう? 一つの理由は、用量に関する誤解が広まっていることにあります。ビタミンDだけでなくビタミンCも同じです。英国の場合、こうしたことはすべて政府のとある委員会に責任があるように思われます。

前の方で引用した疫学論文[7]によれば、COVID-19の予防には最低75 nmol/L(30 ng/ml)の血中ビタミンD3値が必要です。確実に75 nmol/Lに達するためには、成人なら1日4,000 IUのビタミンD摂取を3カ月間続ける必要があります[10]。有色人種はその倍の量を要するとも考えられます[11]。この用量で、予防できる可能性、つまり重症疾患のリスクが大幅に下がる可能性はあります。しかし、急性ウイルス感染症の「治療」目的では不十分であり、その場合60,000~120,000 IUという用量での急性期介入が必要です。

一方、各政府によるビタミンDの推奨1日摂取量は、英国で400 IU、米国で600 IU(70歳以上は800 IU)、欧州連合でも600 IUとされ、主に骨の健康に設定基準が置かれているので、このパンデミックに対処する上では全然足りません。最近公表された論文の中に、1日4,000 IUを超えるビタミンD3摂取は危害をもたらす可能性があることを示唆したものがいくつかあり、推奨上限摂取量を1日2,000 IU(50 μg)に設定した英国の「栄養に関する科学的諮問委員会(SACN)」による2016年の報告書がよく引用されています[12]。この報告書には「ビタミンDの過剰摂取は有毒作用をもたらすことがわかっている (Vieth, 2006)という記述があります。

これが誤解を招く表現であることは、2006年のViethの論文[13] を見ればわかります。それには、25(OH)D濃度が500 nmol/Lを超えると毒性が生じるおそれがあることが公表済の報告書で示唆されている」とあります。それならまだまだ安全です。1日4,000 IUの摂取で血中濃度がだいたい75 nmol/Lまで上がるということは、有毒作用を生じる危険を冒してまで血中濃度を500 nmol/Lまで上げるためには、1日30,000 IUを超える量を3カ月摂り続けなければならないのです。

私たちにできることは何か?

このパンデミックのすべてが始まった半年前、つまり、北半球では冬が完全に終わっておらず、体内のビタミンD量が最も低くなっていた3月という時期に、もし全員に十分なビタミンDを与えていたら、どう変わっていたでしょう? そうしていれば(英国内だけでも)黒人とアジア人の医療従事者数百人の命が助かっただろうし、多くの人の高齢者が養護施設で死なずに済んだだろうと私は確信しています。

20年前、ランセット誌の編集者Richard Hortonはこう述べています[14]:「人の健康状態が危機に瀕している場合、たとえ科学的知見の確証がなくてもそのリスクを軽減する措置を講じる覚悟がなければならない」。この場合、確証を得るためにプラセボ対照試験を待つ理由はありません。ビタミンD、ビタミンC、亜鉛、マグネシウムは益をもたらし害はないことがわかっているのです。

それなら、今すぐ全員に十分なビタミンDを与えたら何が起こるでしょう? 集団内では、感染症にかかるリスクも、重症化するリスクも、死亡するリスクも大幅に下がるでしょう。これは自分の安全が100%保証されるということとはもちろん違います。個人ではなく不特定多数の集団の中のことだからです。集団調査では個人に関する結果はわかりません。そもそも、今の個人のビタミンD濃度や、他に考えられる問題といった情報を知らないのですから。

政府にとって、将来に現れないかもしれないワクチンより、こうした方策のほうがはるかに安全で安く済むでしょう。マイナス面も無視できる程度で、もし単に効果がなかったとしても、英国での損失は、首相がちょうど専用機の塗り直しに払った金額くらいのものでしょう。また、誰一人、具合が悪くなることもありません。行動を起こさないことによるリスクのほうが、行動によるリスクよりはるかに大きいのです。

今すぐ動き出そう

今すぐ動き出せば人の命を救えます。政府が適切な措置を講じるまで気楽に待て、と言うつもりはありません。自分でやらなければならない時もあるのです。

偉大なビタミンD研究者の一人であるMichael Holickの新しいアプリ「dminder」から始めてみても良いでしょう。ビタミンDの状態管理において、このアプリはかなり良い仕事をし、しかも無料でダウンロードできます。そして、力価の高いビタミンD3サプリメントをいくつか買ってみましょう(魚はビタミンDを含みますが、魚にこうした働きはなく、タラ肝油は特にビタミンDが豊富ですが、ビタミンAを過剰に含みます)。

我が英国の首相は簡潔で短いスローガンが好きなので、これを全員の合言葉としましょう:

GET YOUR "D" UP! (もっとDを稼ごう!)

執筆者メモ: 私が最初にこれを書いたのは6月で、当時まだ公表前であった2本の論文にもとづいて最初の部分を書いたのですが、その2本の論文にあったデータの検証ができないという知らせを受けたため、その部分を削らざるを得ませんでした。今回はそれを顧慮して書き直したものであり、コロナウイルス感染症におけるビタミンD療法について考察した新しい論文も考慮しました。

参考文献
  1. Saul AW. (2020) Vitamin C Protects Against Coronavirus.(ビタミンCはコロナウイルスから体を守る) Orthomolecular Medicine News Service. http://orthomolecular.org/resources/omns/v16n04.shtml
  2. Downing D. (1988) Day Light Robbery.(奪われた日光) Arrow Books, London. ISBN-13: 978-0099567400
  3. Grant WB, Lahore H, McDonnell SL, Baggerly CA, French CB, Aliano JA, Bhattoa HP. (2020). Evidence that vitamin D supplementation could reduce risk of influenza and COVID-19 infections and deaths.(ビタミンD補給によってインフルエンザならびに新型コロナウイルスの感染と死亡のリスクが下がる可能性を示すエビデンス) Nutrients, 12, 988. https://www.mdpi.com/2072-6643/12/4/988
  4. Dancer, R. C. A., Parekh, D., Lax, S., et al (2015). Vitamin D deficiency contributes directly to the acute respiratory distress syndrome (ARDS).(ビタミンD欠乏症は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の直接原因となる) Thorax, 70(7), 617-624. https://doi.org/10.1136/thoraxjnl-2014-206680
  5. Tang, L., Liu, M., Ren, B., Wu, Z., Yu, X., Peng, C., & Tian, J. (2020). Sunlight ultraviolet radiation dose is negatively correlated with the percent positive of SARS-CoV-2 and four others common human coronaviruses in the U.S.(米国におけるSARS-CoV-2ほか4種類の一般的なヒトコロナウイルスの陽性率と太陽紫外線照射量は負の相関関係にある) Science of The Total Environment, 751, 141816. 
    https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2020.141816
  6. Laird, E., Rhodes, J., & Kenny, R. (2020). Vitamin d and inflammation - potential implications for severity of COVID-19.(ビタミンDと炎症 - 新型コロナウイルス感染症の重症度への潜在的影響) Irish Medical Journal, 113:81-87. 
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32603576 http://orthomolecular.org/resources/omns/v16n04.shtml
  7. Ilie, P., Stefanescu, S., Smith, L. (2020) The role of Vitamin D in the prevention of Coronavirus Disease 2019 infection and mortality.(新型コロナウイルス感染症と死亡を防ぐ上でビタミンDが果たす役割) Aging Clinical and Experimental Research, 32:1195-1198 
    https://link.springer.com/content/pdf/10.1007/s40520-020-01570-8.pdf
  8. Schwalfenberg, G. (2015). Vitamin D for influenza.(ビタミンDのインフルエンザへの効果) Canadian Family Physician, 61: 507. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4463890
  9. Castillo, M. E., Entrenas Costa, L. M., Vaquero Barrios, J. M., Alcalá Díaz, J. F., Miranda, J. L., Bouillon, R., & Quesada Gomez, J. M. (2020). "Effect of Calcifediol Treatment and best Available Therapy versus best Available Therapy on Intensive Care Unit Admission and Mortality Among Patients Hospitalized for COVID-19: A Pilot Randomized Clinical study".(利用できる最善療法にカルシフェジオール療を加えた場合と、利用できる最善療法のみの場合の、新型コロナウイルス感染症入院患者における集中治療室入室率と死亡率に対する効果の比較:パイロット無作為化臨床研究) The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology, 105751. 
    https://doi.org/10.1016/j.jsbmb.2020.105751
  10. Vieth R, Chan PC, MacFarlane GD. (2001) Efficacy and safety of vitamin D(3) intake exceeding the lowest observed adverse effect level.(最小毒性量を超えるビタミンD(3)摂取の効果と安全性) Am J Clin Nutr, 73:288-294. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11157326
  11. Cashman KD, Ritz C, Adebayo FA, et al. (2019) Differences in the dietary requirement for vitamin D among Caucasian and East African women at Northern latitude.(寒冷地域におけるカフカス系女性と東アフリカ系女性におけるビタミンDの食事摂取必要量の違い) Eur J Nutr. 58:2281-2291. 
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30022296
  12. UK Scientific Advisory Committee on Nutrition (SACN) (2016) Vitamin D and Health.(ビタミンDと健康)
    https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/537616/SACN_Vitamin_D_and_Health_report.pdf
  13. Vieth R (2006) Critique of the considerations for establishing the tolerable upper intake level for vitamin D: critical need for revision upwards.(ビタミンDの許容上限摂取量設定のための考察の批判:引き上げ修正が緊急に必要) J Nutr, 136:1117-1122. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16549491
  14. Horton R. (1998) The new new public health of risk and radical engagement.(リスクと徹底的関与に関する新しい「ニューパブリックヘルス」) Lancet. 352:251-252. 
    https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(05)60254-1/fulltext