悪いのはラロピプラントであり、ナイアシンは現在も過去も未来も常に善きものである

15.04.16 オーソモレキュラー医学ニュース

オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(点滴療法研究会)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)姫野 友美(ひめのともみクリニック)
齋藤 糧三(日本機能性医学研究所) 北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)
翻訳協力西本貿易株式会社ナチュメディカ事業グループ

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

執筆者: W. Todd Penberthy, PhD

(OMNS、2014年7月25日) ナイアシンは、60年以上、何万人もの患者に使われ、きわめて好ましい治療効果をもたらしている(Carlson 2005)。NY Times(ニューヨークタイムズ)のベストセラーリストに掲載された一人称形式の(著者が一人称で語る)本「8 Weeks to a Cure for Cholesterol(和名:8週間で安全にコレステロールを下げる法)」には、著者が、歩く心臓発作時限爆弾であった状態から健常人となるまでの遍歴が書かれており、ナイアシンの高用量摂取療法について、著者は、そのひどい脂質プロフィールの是正効果が他のいかなる療法より高かったとして称賛している(Kowalski 2001)。脳卒中を経験したことがある患者の場合、ナイアシンの高用量摂取(即時放出性の簡素な旧型ナイアシン3,000~5,000 mgを1日の間に分散させて分割摂取すること)により、全死亡率が劇的に低下することが、多くの臨床研究によりわかっている(Creider 2012)。また、数千ミリグラム単位の即時放出性ナイアシンの投与を伴う、被験者が合計一万人を超える複数の研究により、ナイアシンの高用量摂取が多くの統合失調症患者に実際的な変形的軽減をもたらすことも、臨床的に証明されている(Hoffer 1964; Osmond 1962)。最も重要なのは、60年使用された今でも、ナイアシン(とくに即時放出性ナイアシン)の安全性プロフィールは、最も安全と言われる薬よりもはるかに安全である、ということである(Guyton 2007)。

 

悪い報道

それなのにマスコミは、New England Journal of Medicineに掲載されたつい最近の研究に応えて、なぜ突然、ナイアシンに物議を醸すような下記の見出しを載せたのだろうか?

「Niacin drug causes serious side effects, study says (ナイアシン薬は重篤な副作用をもたらすという研究結果)」: 2014年7月16日付Boston Globe紙
「Niacin safety, effectiveness questioned in new heart study (新たな心臓関連研究でナイアシンの安全性と有効性が疑問視される)」: 2014年7月17日付Healthday News
「Doctors say cholesterol drug risky to take (コレステロール薬の服用は危険という医師の意見)」: 2014年7月16日付 Times Daily
「Niacin risks may present health risks claim scientists (ナイアシンのリスクは健康リスクをはらむ、と科学者が主張)」: 2014年7月17日付Viral Global News
「Studies reveal new niacin risks (ナイアシンの新たなリスクが複数の研究で明らかになる)」: 2014年7月17日付Drug Discovery and Development
「No love for niacin (ナイアシンへの愛はない)」: 2014年7月17日付 Medpage Today
「Niacin could be more harmful than helpful (ナイアシンは益よりも害をなすおそれがある)」: 2014年7月18日付Telemanagement

 

実際のところ、前述の研究で引用および使用されたのは、ラロピプラント(商品名:コルダプティブおよびトレダプティブ)であった。ラロピプラントは問題のある薬で、研究結果では、ナイアシンについてほとんど触れられていない。この研究は、ナイアシンとラロピプラントの組合せ、もしくはプラセボによる処置を受けた患者25,000人を比較したものであり、被験者は、心筋梗塞、脳血管疾患もしくは末梢動脈疾患の既往歴か、症候性冠動脈疾患の徴候がある糖尿病の既往歴がある患者であった。その結果、ラロピプラントとナイアシンの組合せを服用したグループのほうが、重篤な副作用が見られ、総死亡率も高く、糖尿病の発症リスクも有意に高くなっていた。

責任ある記者たちは、こうした結果を見て、犯人はどちらの化合物か、つまりロピプラントという薬か、ナイアシンというビタミンか、疑問に思ったに違いない。

 

そのような副作用は、数万人の患者が関与しているナイアシン関連の10を超える大規模な臨床試験でも見られていないし、全国の診療所での60年以上に及ぶナイアシンの通常使用においても見られたことはない。ただ、ナイアシンは皮膚の紅潮(フラッシュ)を引き起こす。このナイアシンフラッシュを不快と感じる人もいるが、多くの人は、この一時的な感覚を享受している。前述の研究にて、ナイアシンと組み合わせて与えられたラロピプラントは、このナイアシンフラッシュを防ぐ薬である。ナイアシンと一緒に一定用量のラロピプラントを加えて紅潮をなくすことにより、不平なくナイアシンの恩恵を受けられる患者が増えるかもしれない、という考えであった。しかし、実際、ナイアシンフラッシュは健康的なものである。ナイアシンに対する紅潮反応が少ないということは、統合失調症の発生率が高いことを示す特殊症状の一つであり、こうした分析結果は、いろいろな文献で見ることができる(Horrobin 1980; Messamore, 2003; Liu 2007; Smesny, 2007)。

ラロピプラントに関する問題

それでは、相方であるラロピプラントという薬はどうなのだろう?
•ラロピプラントは、米国内での使用がFDAによって承認されたことはなく、単独で服用すると胃腸出血が増えることがわかっている。*
•ラロピプラントは、健康状態を良くする上で重要である基本的なプロスタグランジン受容体の経路を妨げる。
•昨年、メルク(米国の製薬会社)は、大陸ヨーロッパからの苦情を理由として、世界的にラロピプラントを撤退させると発表した。したがって、つい最近行われた前述の研究にある臨床試験は、英国、スカンディナビアおよび中国で行われただけの可能性がある。

それなら、なぜ、これほど多くのメディア局が、また一部の医師でさえもが、ナイアシンに問題があったと結論付けているのだろうか? 答えは単純。どの見出しもラロピプラントに触れていないからである。報告された副作用を引き起こした本当の犯人はラロピプラントであることは極めて明白である。これを最も簡単な方法で言い換えれば、マスコミが広めるセンセーショナル(煽情的)な話というのは、完全に間違っていることがきわめて多い。つまり、隠された意図があるのだ。

紛らわしい見出しや空想的な見出しにすると、読者が増え、興奮状態を利用したビジネスモデルに役立つことがある。「ラロピプラントはまだFDAによって承認されていない危険な薬」という見出しと、「ナイアシンは重篤な副作用を引き起こす」という見出しでは、どちらが最大の注目を集める可能性が高いか? 正しい見出しにするなら、「ナイアシンは重篤な副作用を引き起こさないが、薬は引き起こす」となる。

ビタミンB群がそれほど重要である理由

ビタミンB群は、ペラグラ(ナイアシン/ビタミンB3の欠乏症)と脚気(チアミン/ビタミンB1の欠乏症)という恐ろしい栄養疾患が多発したことにより、発見された。我々は、ナイアシンの欠乏に対しては非常に敏感である。アメリカ南部では、20世紀の最初の20年間に、食事でのナイアシン不足によって10万人以上が死亡した。かつて近代に見られた栄養疾患の流行としてはおそらく最悪のものであり、人間という動物がナイアシン欠乏症に対していかに弱いかということを示す恐ろしい証拠となった。ペラグラと脚気の流行は、精白米や精白小麦粉というような加工食品が導入された直後に勢いづいた。質の悪い食事、精神的・肉体的なストレス、および特定の病気は、すべて、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)値を激減させることがわかっており、そのため、患者は、平均を上回るナイアシン用量に好反応を示すことになる。

なぜ、ナイアシンが様々な病気に役立つことがあり得るのだろうか。話がうますぎるように見える。理由としては、ナイアシンを必要とする生化学反応の数が、他のどんなビタミン由来分子よりも多く、遺伝子によってコードされる450種類以上の酵素反応に必要だからである(スイス・バイオインフォマティクス研究所のUniproKBデータベース(Penberthy 2013))。その反応の数は、他のどんなビタミン由来の補因子よりも多いのである! ナイアシンは、ほぼすべての主要な生化学的経路に関与している。酵素タンパク質のNAD結合領域内に、遺伝子によってコードされたアミノ酸多型を有している人は、NADに対する結合親和力が低いため、他の人より多くナイアシンを投与することにより、正常な健康状態に必要なNAD量にしなければ治療できない。この例のような遺伝的な違いがあるため、多くの人は、自分が持つ酵素を正しく機能させるために、大量のナイアシンが必要となる(Ames 2002)。

こうした情報を、マスコミがこれほど頻繁に無視するというのは、全く恥ずべきことである。幸い、多くの医師は、ナイアシンの高用量摂取療法が循環器疾患の予防にいかに効果的であるか、すでに自ら目にしているため、ナイアシンについて誤った情報を伝えている最近の見出しの正体はお見通しだろう。

 

栄養剤(栄養素)は解決策であり、問題ではない

それならどんな解決策があるのだろうか? 結局、コレステロール/LDL値に問題がある患者のデータによっても、健康的な脂質プロフィールを維持するためには即時放出性ナイアシンを3,000~5,000 mg摂ることが、臨床的に証明された最良の方法であることが裏付けられている。用量が250~1,000 mgのナイアシンは、安く購入することができ、入手源もたくさんある。持続放出(除放)性のナイアシンは、処方箋によって販売されることが最も多い形態のナイアシンであるが、即時放出性のナイアシン(簡素な旧型ナイアシン)より副作用が多く、価格もはるかに高い。

ナイアシンとは関係ないが、循環器疾患という点では、ついに伝統医学でも、キレーション療法(キレート療法)が一つの方法として尊重され始めた。これは、糖尿病がある循環器疾患患者に対する無比の臨床成果が最近見られているためである。その成果は、再発性心臓発作を最大50%予防し、あらゆる原因による死亡率を最大43%下げるというものである(Avila 2014)。場合によっては、キレーション療法は高額となり得る。しかし、伝統医学ではまだ真価が認められていないIP6の高用量療法など、他にも安価な方法はある。典型的な循環器疾患の場合、栄養療法として、その他にもビタミンC、マグネシウム、コエンザイムQ、脂溶性のビタミン(A、D、EおよびK2)のサプリメントを摂取し、草で育てられた牛の乳でできたオーガニックのバターを摂ることが望ましい。理想的な摂取量は、個人個人によって異なる。

必要なのは、ナイアシンのような栄養剤(栄養素)であり、マスコミの誤情報ではない。(訳注:nutrientsには、栄養素という意味も、栄養剤と意味もありますが、ここでは栄養剤としました)

 

参考文献

Ames BN, Elson-Schwab I, Silver EA. High-dose vitamin therapy stimulates variant enzymes with decreased coenzyme binding affinity (increased K(m)): relevance to genetic disease and polymorphisms.(高用量ビタミン療法は、コエンザイム結合親和力が低い(k(m)が高い)変種酵素を刺激する:遺伝的疾患と多型との関連性) Am J Clin Nutr. Apr 2002;75(4):616-658.

Avila MD, Escolar E, Lamas GA. Chelation therapy after the Trial to Assess Chelation Therapy (TACT): results of a unique trial.(キレーション療法評価試験(TACT)後のキレーション療法:特異な試験の結果) Curr Opin Cardiol. Jul 11 2014.

Carlson LA. Nicotinic acid: the broad-spectrum lipid drug. A 50th anniversary review.(ニコチン酸:広域脂質薬。50周年のレビュー) J Intern Med. Aug 2005;258(2):94-114.

Creider JC, Hegele RA, Joy TR. Niacin: another look at an underutilized lipid-lowering medication.(ナイアシン:十分活用されていない脂質低下薬の見直し) Nature reviews. Endocrinology. Sep 2012;8(9):517-528.

Group HTC, Landray MJ, Haynes R, Hopewell JC, Parish S, Aung T, . . . Armitage J. Effects of extended-release niacin with laropiprant in high-risk patients.(ラロピプラントと一緒に持続放出(除放)性ナイアシンを用いた場合の、高リスク患者における効果) N Engl J Med. Jul 17 2014;371(3):203-212.

Guyton JR, Bays HE. Safety considerations with niacin therapy.(ナイアシン療法に関する安全性の考慮) Am J Cardiol. Mar 19 2007;99(6A):22C-31C.

Hoffer A, Osmond H. Treatment of Schizophrenia with Nicotinic Acid. A Ten Year Follow-Up.(ニコチン酸を用いた統合失調症の治療。10年間のフォローアップ) Acta Psychiatr Scand. 1964;40:171-189.

Horrobin DF. Schizophrenia: a biochemical disorder?(統合失調症:生化学的障害の一つ?) Biomedicine. May 1980;32(2):54-55.

Kowalski RA. The New 8-Week Cholesterol Cure: The Ultimate Program for Preventing Heart Disease.(新版 8週間で安全にコレステロールを下げる法:心疾患予防のための究極のプログラム) Harper Collins; 2001.

Liu CM, Chang SS, Liao SC, Hwang TJ, Shieh MH, Liu SK, . . . Hwu HG. Absent response to niacin skin patch is specific to schizophrenia and independent of smoking.(ナイアシンの皮膚パッチに対する無反応は統合失調症に特有のもので喫煙とは無関係である) Psychiatry Res. Aug 30 2007;152(2-3):181-187.

Messamore E, Hoffman WF, Janowsky A. The niacin skin flush abnormality in schizophrenia: a quantitative dose-response study.(統合失調症におけるナイアシン皮膚紅潮異常: ある定量的用量反応調査) Schizophr Res. Aug 1 2003;62(3):251-258.

Osmond H, Hoffer A. Massive niacin treatment in schizophrenia. Review of a nine-year study.(統合失調症におけるナイアシン大量投与療法。9年間の調査のレビュー) Lancet. Feb 10 1962;1:316-319.

Penberthy WT. Niacin, Riboflavin, and Thiamine.(ナイアシン、リボフラビンおよびチアミン) 出典: Stipanuk MH, Caudill MA編 Biochemical, physiological, and molecular aspects of human nutrition.(ヒトの栄養の生化学的・生理的・分子的側面) 3rd ed. St. Louis, Mo.: Elsevier/Saunders; 2013:p.540-564.

Smesny S, Klemm S, Stockebrand M, Grunwald S, Gerhard UJ, Rosburg T, … Blanz B. Endophenotype properties of niacin sensitivity as marker of impaired prostaglandin signalling in schizophrenia.(統合失調症におけるプロスタグランジン・シグナル伝達障害の標識としてのナイアシン感受性のエンドフェノタイプ特性) Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. Aug 2007;77(2):79-85.