黄斑変性と魚油に関するどこか怪しい研究

14.10.09 オーソモレキュラー医学ニュース

オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(点滴療法研究会)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)姫野 友美(ひめのともみクリニック)
齋藤 糧三(日本機能性医学研究所) 北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)
翻訳協力西本貿易株式会社ナチュメディカ事業グループ

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執筆者: Bill Sardi

(OMNS、2013年12月11日) ほんの7カ月前(2013年5月)、米国国立眼研究所の研究グループが、魚油は「黄斑変性に役立つとは思われない」と述べた論文を発表した(1)。黄斑変性は、視力を奪いシニア世代を悩ませる眼疾患である。

それなら、新たに公表された別の研究では、一体なぜ正反対の結果が得られたのだろうか。その研究では実際に、魚油によって、この眼疾患の潜行的な進行が遅くなっただけでなく、魚油の高用量投与を受けたすべての患者に視力の回復が見られた。魚油には、予防効果のみでなく、治療効果と治癒力が見られた。

引き合いに出した上記の研究は、却下される可能性が高い。試験群が小さく、患者25人のみであった。比較のため、別の患者グループに不活性プラセボ錠を与えることは、科学的妥当性を保証するための必要条件の一つであるが、その対照群もなかった。この研究の対象患者は全員、オメガ3系を含む魚油があわれなほど欠乏していたため異例な効果が生じた、と考えられるかもしれないが、この試験群の拠点は、魚をよく食べる地中海沿岸地域であった(従ってその考えは妥当と思われない)。また、プラセボ効果がかかわっている可能性も低い。

この研究は、最近10年間に行われた魚油に関する肯定的な全研究(下表参照)と合わせて考えた場合はとくに、説得力があるため、眼科医は、長生きしているすべての高齢者に対し、老年期もずっと視力を維持したいと思っているなら、もっと魚を摂るよう、またはいっそのこと魚油の濃縮カプセルを摂るように勧告することをなくすため、任務を怠ることになる。

エビデンスの増加
上記に挙げた研究は、つい最近、PharmNutrition誌で公表されたものである(2)。これは、多くの疑問を投げかけるもので、とくに疑問に感じるのは、魚油の高量摂取によって多数の米国人の失われた視力が回復する可能性があることを発見するのに、なぜそんなに長い時間を要したのか、ということである。加齢による視力低下を食い止める可能性がある食事由来の作用因子として魚油を挙げているデータは、この10年間で増加している。

「怪しげな」一つの研究を除き、この13年間に公表された魚油に関する他の人体臨床試験はすべて、魚油が黄斑変性の進行を遅らせる、または黄斑変性を防ぐことを示している。黄斑変性は、視力を奪う病気で、字を読んだり、車を運転したり、顔を認識するときに使われる中心視力を損うものである。

公表された一番新しい研究は、それまでの研究より画期的なものであった。それによると、魚油によって黄斑変性の進行が遅くなっただけではなく、高用量の魚油カプセルを毎日摂るという処方計画の開始後数日以内に、実際に、患者の視力が回復し始めたのである。
黄斑変性の進行を遅らせることと、黄斑変性を解消させることは、別ものである。萎縮型黄斑変性と呼ばれる一般的な形態の黄斑変性を治す方法はない。この病気に対して推奨されている抗酸化サプリメントは、進行を遅らせるが、その効果はせいぜい10%であろう。

上記の研究では、黄斑変性の患者に、最初から、視力の改善が見られ始めた。6カ月後の時点で、患者の3分の1は、視力検査表の3段分小さい文字が見えるようになっていた。別の3分の1は、2段下まで見えるようになり、残りの3分の1は、1段下まで見えるようになった。

黄斑変性では通常、中心視力の低下が知らない間に進むのであるが、この研究では、黄斑変性患者の100%に視力の改善が見られた。

高用量
上記の研究で用いられた魚油の用量は、5,000ミリグラム(EPA 3,400 mg、DHA 1,600 mg)、つまり1日当たり大さじ2杯より若干少ない量であり、これまでのあらゆる研究の中で最高値であった。これほど多くの魚油を摂るには、1日2ドル程度かかり、一定の収入しかない退職者にとっては手痛い恐れがある。とくに、一部の高齢者が運転免許を更新したり自立に役立つ活動を再開したりできる可能性があるのなら、半年コースであれば投資する価値は確かにある。

先に「怪しげな」一つの研究として述べた否定的研究は、今年(2013年)の5月にJournal of the American Medical Associationで報告されたものである(3)。ここで、国立眼研究所の研究グループは、魚油が「黄斑変性に役立つとは思われない」と述べている。

この研究は、オメガ3系を含む魚油の低量摂取による効果と、ルテイン、ゼアキサンチン、亜鉛、銅を摂る抗酸化物質処方による効果を比較したものであった(真のプラセボ群も偽薬も用いられなかった)。処置グループにおける魚油の用量は、以前の研究よりはるかに少ないものであった。

私が助言を求めた数人の懐疑的な研究者は、この研究の主たる被験者が、食事で魚をたくさん食べている可能性が高い、栄養状態の良い人々であったということに懸念を示していた。私が得た情報によると、比較群は、毎日の食事で魚油を最大720ミリグラム摂っていた。また、この比較群に含まれていた一部の被験者は、オメガ3系を含む油の血中値を高める葉酸を補給していた可能性もある(4)。この研究グループは、「調査対象の母集団は、教育水準が高く栄養状態の良い人々から成る厳選されたグループであるため、研究結果は一般化できないかもしれない」と認めている。この研究は、失敗するよう、あらかじめ仕組まれていたのだろうか?

(Bill Sardiは、栄養医学関係の著名なライターであり、Knowledge of Health社の創始者である。http://knowledgeofhealth.com/ Copyright (C) 2013 Bill Sardi 本人の許可を得て転載)

参考文献
1. http://www.sciencedaily.com/releases/2013/05/130513152403.htm

2. Georgiou T, Neokleous A, Nicolaou D, Sears B. Pilot study for treating dry age-related macular degeneration (AMD) with high-dose omega-3 fatty acids.(オメガ3系脂肪酸の高用量摂取を用いた萎縮型加齢性黄斑変性の治療のための試験的研究) PharmaNutrition, Available online 18 October 2013. http://dx.doi.org/10.1016/j.phanu.2013.10.001

3. The Age-Related Eye Disease Study 2 (AREDS2) Research Group.(加齢性眼疾患研究2 (AREDS2)研究グループ) Lutein + Zeaxanthin and Omega-3 Fatty Acids for Age-Related Macular Degeneration: The Age-Related Eye Disease Study 2 (AREDS2) Randomized Clinical Trial.(加齢性黄斑変性に対するルテイン+ゼアキサンチンの効果とオメガ3系脂肪酸の効果:加齢性眼疾患研究2 (AREDS2) 無作為化臨床試験) JAMA. 2013;309(19):2005-2015. doi:10.1001/jama.2013.4997. http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1684847

4. Das UN. Folic acid and polyunsaturated fatty acids improve cognitive function and prevent depression, dementia, and Alzheimer’s disease–but how and why? (葉酸と多価不飽和脂肪酸は認知機能を改善し、うつ・認知症・アルツハイマー病を防ぐ – しかしその仕組みと理由は?)Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids.2008 Jan;78(1):11-9. Epub 2007 Nov 28. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18054217