結核は治療が進歩したのか、それとも暗黒時代に戻るのか?

13.07.10 オーソモレキュラー医学ニュース

オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(点滴療法研究会)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)姫野 友美(ひめのともみクリニック)
齋藤 糧三(日本機能性医学研究所) 北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)
翻訳協力西本貿易株式会社ナチュメディカ事業グループ

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執筆者: Steve Hickey, PhD、William B. Grant, PhD

(OMNS、2013年6月17日)  結核は、かつて人類にとって最も潰滅的な災難の一つであった。そして今でも死亡原因の上位にある。この病気は、有史以来ずっと人間とともにあり、おそらく、人類の進化全体を通してあったと思われる。産業革命を通して、また、20世紀にさしかかり、結核は、とくに貧困層について長期にわたる医学上の緊急事態となった。この頃、イングランドでは、ざっと4人に1人が結核で死亡しており、他の近代化国家でも同様の死亡率が見られた。解決策の一つは、罹患者を療養所に隔離することであった。当時実践された、新鮮な空気と日光による解決法は、少なくとも一部には効果があった可能性がある。

日光とビタミンDは、結核の予防と治療において早期の役割を果たした。20世紀初旬、結核患者は、山中の療養所に送られることが多く、そこで日光を浴びた。Dr. Auguste Rollierは、スイス・アルプスにそうした施設を建立した [1]。日光暴露には、6カ月後の結核発症率低下との関連が見られている [2]。2006~2007年になって初めて、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の研究グループにより、日光がビタミンD値を高めること、および体内の免疫系による細菌感染防止に役立つことの仕組みが確認された [3]。25-ヒドロキシビタミンD値が高いほど、治療期間中の結核抑制に要する時間が短くなる可能性がある [4,5]。療養所での治療法は、少なくとも一部には効果があった可能性があることが、最近の研究で示唆されている。

結核のような潰滅的な感染症に関する現代の通説では、ワクチン接種と抗生物質が救いの手を差し伸べ、以前の苦難から人類を救った、とされている。しかし、命を脅かす他の重大な感染症と同様に、結核は、こうした介入策が導入される前に、すでに低いレベルまで減少していたのである。結核菌は、1882年にRobert Kochによって確認されたのであるが [6]、その時点までに、イングランドおよびウェールズにおける死亡率は以前の値の約半分まで低下していた。1950年代初めにおけるイソニアジドという薬剤の導入は、抗生物質を用いた治療においては飛躍的な進歩ではあったが、全死亡率にはほとんど影響を及ぼさなかった。同様に、1920年代の初めにはBCG接種が初めて人に試されたが、その広範な導入は、第二次世界大戦のずいぶん後まで遅延された。イングランドおよびウェールズにおける、結核による死亡率のグラフを見ると、その歴史的な減少がわかる [7]。この地域については、最も広範な歴史的統計が入手可能となっている。結核のこうした減少は、他の重大な感染症に関する死亡率の低下と類似している。このグラフは、ワクチン接種と抗生物質という化学療法による相対的寄与を示したものである。上記の3つの介入策が導入された頃には、重大な感染症はすでに、おおかた阻止されていたのである。

このグラフを見て疑問に思うのは、実際には何が、結核その他感染症による死亡率を低下させたかということである。この質問には、簡単に直接答えることができる。まず最初に、結核は無くなっていない。読者にも結核が潜んでいる可能性は少なからずある。世界中のざっと3人に1人(20~30億人)は感染している。しかし、これが活動性の疾患として表れているのは、1,000万~2,000万人に過ぎない。よって、感染者のうち、症状が出るのは100人に1人程度である。残りの感染者は幸いにも、問題が生じることなく、自己の「感染症」と共存することになる。

結核にかかるのは、免疫系が弱いか、免疫系に障害がある人である。恵まれない人々は、スラム街的な混み合った状態や湿った状態の中で生活していた。こうした状態は感染の拡大を促進するが、それだけは説明として不十分である。栄養不足という理由を挙げれば、なぜ一部の感染者だけがこの病気に負けてしまうか、もっと直接的に説明することができる。

 

結核とビタミンCとの関係

栄養による影響を強く示唆しているデータがあるにもかかわらず、集団的な医学では、一貫してサプリメントの使用を非難している。しかし最近、とっくの昔にやるべきだった進展があった。Catherine Vilchèzeとその同僚のグループが、立ち返って、結核に対するビタミンCの並外れた抗菌特性の試験を行ったのである [8]。この試験で、「ヒト型結核菌はビタミンCによる殺菌の影響を非常に受けやすい」ことが判明した。これは、以前のデータと一貫性がある [9]。注目すべきこととして、この作用メカニズムは、厄介な細胞を殺す過酸化水素を局所的に生成する上でビタミンCが果たす抗ガン効果と類似している [10]。とくに、我々は、ビタミンCベースのレドックス療法がガンに対して果たす役割に関し、結核の抗生物質治療をモデルとしている。体を微生物から守るのにも、異常なガン細胞から守るのにも、同じメカニズムが用いられている。

ビタミンCの補給は、結核感染が顕性となるのを防ぐ可能性がある。さらに、ビタミンCは、何百年にも及ぶ進化によって精緻化された有利なメカニズムとともに、結核に対する効果的な生物学的治療をもたらす可能性もある。科学的な歴史によって実証されているとおり、十分な栄養、とくにビタミンCとDは、結核などの危険な感染症の予防において、抗生物質やワクチン接種よりはるかに効果的である可能性が高い。

ビタミンCと似た作用メカニズムを持つ薬剤が開発される可能性はある、とVilchezeらは示唆している(おそらく多大な商業的メリットが伴うだろう)。ビタミンCは安全であるが、そのような薬剤を使えば不自然な介入となり、不要な副作用をもたらす可能性が高い。高用量の栄養サプリメントを与えるという、どちらかといえば明らかな暗示は、ここでも無視されている。サプリメントを広く適用したならば、結核の抑制は予想外に簡単であることが社会全体でわかるかもしれない。

抗生物質の近況は一種の乱用であり、微生物が耐性を持つようになっている。多剤耐性結核(MDRTB)と超多剤耐性結核(EDRTB)に続き、今では、完全薬剤耐性結核(TDRTB)なるものに直面している。抗生物質がどんどん効かなくなっていることから、潜在的な治療法としてのビタミンC研究への回帰が進んでいる。それでも、はるかに大きい脅威に直面するおそれがある。抗生物質の乱用歴は、安心できるものではない。ビタミンCへの耐性はきわめて生じにくいことは、Vilchezeらによって確認されたにもかかわらず、もっと悪性度の高い菌が生じる可能性がありうる。ビタミンCに似たメカニズムを持つ薬剤を使用すれば、我々の基本的な生物学的防御メカニズムへの耐性ができるおそれがある。言い換えれば、こうした最新の開発を集団的に乱用すれば、先進国で4人に1人が結核で死亡していたという、感染を抑制できなかった暗黒時代に戻ってしまうおそれがある。

 

結論

近年、致命的な感染症から解放されたことについて、その多くは、栄養面における歴史的な改善を反映している。栄養素が感染症への耐性を高める上で役立つメカニズムは、徐々に解明されつつある。ビタミンD値を高めることにより、ビタミンDの欠乏症であるくる病だけでなく、結核などの感染症のリスクも低下した可能性がある。ビタミンCは、結核菌を殺す効果が「並外れている」ことが、今ではわかっているようである。重要なのは、ビタミンCが、ガン細胞を壊すときと基本的に同じ方法で、結核菌を殺すということである。Linus PaulingやRobert Cathcartたちは、ビタミンCが独特の方法で良好な健康状態を維持することを示唆したという点で、予知能力があったのかもしれない。

 

参考文献

1. Hobday R.A. (1997) Sunlight therapy and solar architecture (日光療法と太陽光利用建築), Med Hist, 41(4), 455-472.

2. Koh G.C. Hawthorne G. Turner A.M. Kunst H. Dedicoat M. (2012) Tuberculosis incidence correlates with sunshine: an ecological 28-year time series study (結核発症率と日照との相関:28年間の生態学的時系列研究), PLoS One, 8(3), e57752.

3. Liu P.T. Stenger S. Tang D.H. Modlin R.L. (2007) Cutting edge: vitamin D-mediated human antimicrobial activity against Mycobacterium tuberculosis is dependent on the induction of cathelicidin (最先端: ヒト型結核菌に対する人間のビタミンD媒介性抗菌活性はカテリシジンの誘発によって左右される), J Immunol, 179(4), 2060-2063.

4. Sato S. Tanino Y. Saito J. Nikaido T. Inokoshi Y. Fukuhara A. Fukuhara N. Wang X. Ishida T. Munakata M. (2012) The relationship between 25-hydroxyvitamin D levels and treatment course of pulmonary tuberculosis (25-ヒドロキシビタミンD値と肺結核の治療経過との関係), Respir Investig, 50(2), 40-45.

5. Coussens A.K. Wilkinson R.J. Hanifa Y. Nikolayevskyy V. Elkington P.T. Islam K. Timms P.M. Venton T.R. Bothamley G.H. Packe G.E. Darmalingam M. Davidson R.N. Milburn H.J. Baker L.V. Barker R.D. Mein C.A. Bhaw-Rosun L. Nuamah R. Young D.B. Drobniewski F.A. Griffiths C.J. Martineau A.R. (2012) Vitamin D accelerates resolution of inflammatory responses during tuberculosis treatment (ビタミンDは結核の治療期間中における炎症反応の消散を促進), Proc Natl Acad Sci U S A, 109(38),15449-15454.

6. Mörner K.A.H. (2005) Nobel Prize in Physiology or Medicine 1905, Presentation Speech (1905年ノーベル生理学・医学賞 プレゼンテーションスピーチ), www.nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1905/press.html.

7. McKeown T. (1979) The Role Of Medicine (医学の役割), Blackwell.

8. Vilchèze C. Hartman T. Weinrick B. Jacobs W.R. (2013) Mycobacterium tuberculosis is extraordinarily sensitive to killing by a vitamin C-induced Fenton reaction (ヒト型結核菌はビタミンCによって誘発されるフェントン反応による殺菌の影響をきわめて受けやすい), Nature Communications, doi:10.1038/ncomms2898.

9. Hickey S. Saul A.W. (2008) Vitamin C: The Real Story, the Remarkable and Controversial Healing Factor (ビタミンC: 本当の話 顕著で賛否の分かれる治癒要因), Basic Health.

10. Hickey S. Roberts H. (2013) Vitamin C and cancer: is there a role for oral vitamin C? (ビタミンCとガン: ビタミンCの経口投与には役割があるか) JOM, 28(1), 33-46.

日本語訳監修 齋藤 糧三(日本機能性医学研究所)